非密封の放射性同位元素を取り扱う作業に関する記述
Ⅰ
非密封の放射性同位元素を取り扱う作業では、空気汚染による内部被ばくを生じない作業環境を作ることが重要である。空気の汚染には放射性物質の空気中への飛散率が 関係している。飛散の度合いは放射性物質の化学的性質、物理的形状、そして作業形態が影響する。物質の化学的性質としての揮発性についてみると、例えば、137CsIでは 放射性同位元素は飛散しないが、 K(131I) では、化学反応によって放射性同位元素が揮発する可能性がある。また、 H2(35S) のような放射性気体を扱う作業ではさらに飛散し易くなる。 物理的形状についてみると、特に液状、粉末状、塊状では、塊状のもので飛散率は最も小さい。作業形態についてみると、溶媒抽出分離、蒸発乾固、静置の各操作では、一般に 蒸発乾固で最も飛散率が大きくなる。
Ⅱ
放射性同位元素を貯蔵施設にて保管する際には、放射性物質を直接入れる内容器の他に外容器を用意する。線源が入った内容器表面の汚染を調べるには、スミア法を用いる。 低エネルギーβ線放出核種である。 14C で標識された有機化合物は 14C で分解しやすい。このため、これらの化合物の水溶液は 2 ℃程度、ベンゼン溶液は 8 ℃程度で 貯蔵するのが望ましいとされている。
Ⅲ
排水中の45Ca濃度を液体シンチレーションカウンタで測定する場合には、水と溶け合うジオキサンにシンチレータを溶かしたものが用いられてきたが、現在では、水とエマルジョンを 形成する乳化シンチレータが多く用いられる。一方、排水中の32Pの放射能測定では、シンチレータを用いずチェレンコフ光を計測することができる。いずれの場合も、あらかじめ、測定 試料の透明度を調べ、それが不十分な場合にはろ過を行い、また。有機物で着色している場合には、活性炭を加えてこれを除去することが望ましい。
Ⅳ
放射性同位元素を取り扱う作業を計画する際には、必要な試薬などの数量について予測する必要がある。例えば、無担体の45Ca2+水溶液から10MBqを分取し、これに 安定なカルシウム(原子量:40)を加えて、カルシウムの比放射能を1 × 10^9Bq/gとするのに必要なCa2+の量は 0.01 グラムである。また、放射能は時間とともに減少すること から、これについても予測する必要がある。例えば、2007年10月1日に131Iを370MBq受け入れ、同日及び同年10月9日にそれぞれ74MBqを使用する。同年10月25日の時点で残る 131Iの数量は 18 MBqとなる。なお、131Iの半減期は8.02日である。
Ⅳ 解説
必要なカルシウムの量をm[g]とする。ここで混合前の全放射能は、混合後の全放射能と等しいはずである。10[MBq] = 1×10^9[Bq/g] × m[g] m = 10×10^6[Bq]/1×10^9[Bq/g] = 0.01[g]
10月1日:131Iを370[MBq]受け入れ・・・74[MBq]を使用 → 370[MBq] – 74[MBq] = 296[MBq]
10月9日:131Iの半減期に8.02日により、受け入れ8日後のこの時点の放射能は 296[MBq]×(1/2)^(8/8.02) = 148[MBq] 74[MBq]を使用 → 148[MBq] – 74[MBq] = 74[MBq]
10月25日:前回の使用より、16日が経過・・・・74[MBq]×(1/2)^(16/8.02) ≒ 18[MBq]
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。