溶解度積についての記述

難溶性塩 CuS の溶解度積 Ksp(cus)は飽和水溶液における固ー液平衡 CuS – CuS2+ + S2- のイオン濃度の積 Ksp(cus) = [Cu2+][S2-] で表される。溶液中のイオン濃度の積が Ksp(cus) よりも大きくなると溶液から固体が析出する。S2- は水溶液中で 弱酸である H2S の解離により生成するため [S2-] は溶液の pH に強く依存し、pH が大きくなると増加する。64Cu2+ を 1.0 kBq(1.1×10^(-16)mol)と 65Zn2+ を 1.0 kBq (5.1×10^(-14)mol)含む Cu2+ と Zn2+ の各濃度 1.0×10^(-3) mol/l の 0.3 mol/l 塩酸溶液 1l がある。これに H2S を吹き込んで飽和させる。(この条件では[S2-] = 7.6×10^(-23)mol/lとなる。)

ただし、Ksp(cus) = [Cu2+][S2-] = 6.5×10^(-30) (mol/l)2

Ksp = [Zn2+][S2-] = 2.2×10^(-18) (mol/l)2 とする。

この操作により硫化銅(Ⅱ)が沈殿し、溶液中に残る銅イオン濃度は 64Cu2+ と非放射性 Cu2+ も含めて Ksp(cus)/[S2-] で表され、(6.5×10^(-30))/(7.6×10^(-30)) = 8.6×10^(-8) (mol/l)2 となる。 なお、1.0 kBq/l の 64Cu2+ のみで硫化物のみで硫化物は沈殿しない。(イオン濃度より[64Cu2+][S2-] = 1.1×10^(-30) × 7.6×10^(-23) = 8.4×10(-39)となる。これは 溶解度積 Ksp(cus)の 6.5×10^(-30)より小さいので 64Cu2+ のみでは沈殿は生成しない)。

一方[Zn2+]と[S2-]との積は 1.0 × 10^(-3) × 7.6 × 10^(-23) = 7.6 × 10^(-26) (mol/l)2 であり、この値は Ksp(ZnS)より小さいので 65Zn2+ + Zn2+ は沈殿しないで溶液中に残り、Cu2+ + 64Cu2+ と Zn2+ + 65Zn2+ の相互分離が可能になる。

溶解度積の例題

100 kBq の 140Ba を含む硫酸バリウム(BaSO4)100 mg を 1l の水とよく撹拌して混合したとき水に溶解する 140Ba の放射能 [kBq] を求めよ。BaSO4 の式量 233。BaSO4 の溶解度積 Ksp = [Ba2+][SO4]2- = 1.0 × 10^(-10) (mol/l)2 とする。

解答

BaSO4 100mg は 0.1/233 mol である。この中に 100kBq の 140Ba が含まれるので、比放射能は 100kBq/(0.1/233) = 2.33 × 10^5 kBq/mol となる。溶解度積が 1.0 × 10^(-10) kBq/mol であるので、 溶液中に溶解する[Ba2+]および[SO4]2- はともに 1.0 × 10^(-5) [mol/l] となる。溶液は 1l であるので溶解する 140Ba は 2.33 × 10^5 kBq/mol × 1.0 × 10^(-5) mol/l × 1l ≒ 2.33 kBq となる。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です