試料中の放射性核種を調べる場合に用いられるGe検出器に関する記述
Ⅰ
試料中の放射性核種を調べる場合、Ge 検出器を用いたγ線スペクトロメトリ法により行うことが一般的である。この理由の一つとしては、ゲルマニウム結晶中で電子と正孔の対が生成されるのに必要なエネルギーが約 3 eV と小さく、エネルギー 1MeV の光子に対し 2 keV 程度の良好なエネルギー分解能が得られることがあげられる。核種の決定において着目すべきピークは、通常 全吸収ピークであるが、これ以外にも種々のピークが形成されるため、個々のピークの成因を十分理解する必要がある。1壊変当たり複数のγ線がカスケードに放出される場合にはサムピークが形成される。また、γ線エネルギーが高い場合には、電子対生成により生じた陽電子が電子と結合して 消滅光子が放出されるため、この光子が相互作用を起こさず Ge 検出器の有効体積外に出ると、エスケープピークが形成される。
解説
例えば 60Co のように壊変に伴い複数の励起レベルをたどり、複数のγ線が放出される様子をカスケード(階段状に連続した滝のこと)という。
Ⅱ
純β線放出核種の場合では、プラスチックシンチレーション検出器や Si(Li) 半導体検出器などを用いてエネルギースペクトルを測定する。この場合、β線の最大飛程が有効検出領域を超えないことに注意するとともに、β線が有効検出領域へ入射する前に生じる吸収などにも注意する必要がある。エネルギーの指標としては、0.5 MeV 以上では 137Cs 線源などから放出される内部転換電子のピークが利用される。β線のエネルギーは連続分布のため、測定されたエネルギースペクトルの形状や最大エネルギーに基づいて核種を決定する。この方法の他、アルミニウムの吸収板と端窓型GM計数管などを用いて吸収曲線を作成し、フェザー法と呼ばれる方法でβ線最大飛程を決定して核種を推定することもできる。32P のβ線に対し、アルミニウム 中の最大飛程 R[g・cm^(-2)] とβ線最大エネルギー E[MeV] との関係は、R = 0.542E – 0.133 の実験式で表される。これにより、32P の最大飛程は約 0.8 g・cm^(-2) となる。
解説
吸収板には後方散乱などが起こりにくい低原子番号を有し、均一な厚さの板が得やすいアルミニウムがよく用いられる。吸収板を次第に厚くして最大飛程を求めようとすると、最大飛程に近くにつれて計数率が低下するため困難である。そこで吸収曲線を求め、標準試料のそれと比較することによって最大飛程を求める方法がよく利用され、フェザー法と呼ぶ。0.542E – 0.122 の式をフェザーの式という。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。