放射線防護のモニタリングについての記述
Ⅰ
放射線管理のために放射線を測定し、その結果を解釈・評価して放射線防護の目標が達成されているか否かを判断するための一連の行為を放射線モニタリングという。防護の対象は放射線業務従事者と一般公衆の2つに大別されるので、モニタリングもそれぞれ区別して行われる。放射線業務従事者のモニタリングには、作業環境モニタリングと個人モニタリングがある。作業環境 モニタリングの目的は、線源の管理状況を確認し、安全が守られていることを確認することにある。個人モニタリングの目的は、①放射線業務従事者の被ばく線量を測定又は算定し、被ばくが線量限度を超えないことを証明すること、②被ばく線量を解析評価することにより、作業環境が十分に管理されているかどうかを確認することにある。実効線量に関する放射線業務従事者の 線量限度は、1年間に 50 mSv、かつ 5 年間に 100 mSv である。また、ICRP 勧告では一般公衆の線量限度は1年間に 1 mSv である。
Ⅱ
人体の被ばくは、内部被ばくと外部被ばくに分けられる。14C のような低エネルギーの β 線源やα放射性物質の場合には、外部被ばくよりも内部被ばくを重視する必要がある。中性子線の場合には外部被ばくが主であるが、生体構成元素の放射化による内部被ばくも起こる。この放射化は被ばく線量推定に利用できる。例えば、血液中のナトリウムの放射化でできる。 24Na や毛髪に含まれるイオウの放射化でできる 32P から放出される放射線の測定が考えられる。
Ⅲ
内部被ばく線量を測定するためには、体内に摂取された放射性物質の放射能を評価する方法には、①体外計測法、②バイオアッセイ法、③空気中濃度計算法がある。①の体外計測法ではホールボディカウンタがよく利用される。この方法は体内に残留している放射能を体外より評価するので、X線やγ線を放出する放射性物質に適用されるが、体内に自然に存在するカリウムからの放射線の影響を考慮する必要がある。②のバイオアッセイ法では、放射性物質を摂取した人の尿、便、呼気、血液及び 毛髪などを処理して試料を作成し、その放射能を計測し、この値と該当核種の排泄率から体内に摂取された放射性物質の量を推定する。この方法は、X線やγ線だけでなく飛程の短い 35S のような β 線や 239Pu のような α 線を放出する核種にも適用できる。③の空気中濃度計算法は飛散率を利用した放射性物質の空気中濃度算出、あるいは空気サンプリング装置等を用いて対象となる場所の空気中の放射性物質を捕集してその放射能を適当な測定装置で測定することによる。 後者は特に、クリプトン、キセノン、ラドンなどの放射性希ガスや、ヨウ素、ラドン娘核種などの空気中に拡散する放射性物質の測定に有効である。希ガスやヨウ素の捕集には活性炭が、粒子状放射性物質の捕集にはろ紙が一般的に用いられる。測定対象者が立ち入った時間の呼吸量を用いて体内に摂取された 放射性物質の放射能を算定する。
補足
体外計測法は、自然バックグラウンド計数を提言するための遮蔽体(鉄室)が必要で、通常、大掛かりな装置となり、簡単には設置できない特殊な装置であるという欠点がある。バイオアッセイ法も核種を選ばないが、試料の採取のために被検者の負担を課すこと、排泄率関数(曲線)に大きな個人差があり精度が悪いことなどの欠点がある。空気中濃度計算法は簡単な実測と計算に基づくが、空気中への飛散率などパラメータにかなり保守的な仮定を含むことから、管理上の上限値を抑える目的で用いるのが適当である。
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