過去問と解説を日々更新していきたいと思います。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

放射線防護について

ICRP 2007年 勧告では、放射線防護にあたって個人の被ばく状況を計画被ばく状況、緊急被ばく状況、現存被ばく状況の3つに区分し、全ての状況に正当化と最適化の2つの原則が適用される。また被ばくを職業被ばく、公衆被ばく、患者の医療被ばくに区分している。妊娠中の作業者の胚と胎児の被ばくについては公衆被ばくとして規制している。 放射線防護のための個人線量のレベルは、線量限度、線量拘束値、参考レベルによって制限されている。線量限度は、計画被ばくにおいて医療被ばくを除くすべてに適用される。線量拘束値は計画被ばくにおけるある線源からの被ばくに対して用いられ、選択可能な数値幅が示されており、その線源に対する防護の最適化における予測線量のの上限値である。例えば、職業被ばくに対する 線量拘束値は 1 ~ 20 mSv/年の範囲で、公衆被ばくに対しては 1 mSv/年以下が適用される。内部被ばくについては、吸入、経口摂取した場合にはすみやかに、吸入、又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入るものは3月を超えない期間ごとにさらに吸入、経口摂取するおそれのある場所に立ち入る場合で妊娠中の女性については1月を超えない期間ごとに測定する。放射線業務従事者の女子について線量限度は妊娠不能と 診断された者。および妊娠の意思のない女子については実行線量限度として 5 mSv/3月。妊娠の事実を知った時から出産までの間について、外部被ばくに関しては腹部の等価線量として 2 mSv と定められ、1 cm 線量当量で評価する。預託実効線量として 1 mSv と定めている。妊娠した、もしくは 妊娠した可能性のある従事者の胚や胎児を一般公衆として扱い、胚や胎児についてその線量限度である 1 mSv/年を超えないことを担保するためである。

放射線管理について

放射性同位体の管理は受け入れに始まる。放射性同位元素はその種類や数量に対応した形態で事業所外から搬入される。134Cs γ線源(点線源)を収納した(20cm × 20cm × 20cm)がL型輸送物として運び込まれた。線源は輸送物の中心に位置している。L型輸送物表面の 1 cm 線量当量率は 5 μSv/h 以下であった。この場合、輸送物表面から 1 m の位置での線量当量率は 0.04 μSv/h 以下である。 受け入れた放射性同位元素は事業所内でさらに運搬されて使用・貯蔵される。一般的には、事業所外から搬入された輸送物はそのまま事業所内を運搬することとなるが、事業所内では不物定の一般公衆や一般車両が存在しないため、事業所外を運搬する場合を比べ、その基準が緩和されている。事業所内の運搬の際の 1 cm 線量当量の基準を運搬物の表面から 1 m で 100 μSv/h 以下とする。例えば、貯蔵されている別の 134Cs γ線源(点線源)を容器に封入し、立体(20cm × 20cm × 20cm) の中心に収納した運搬物の表面から 1 m で 100 μSv/h とした場合、前述のL型輸送物として受け入れた線源のおよそ2400倍の数量までこの運搬物で 1 cm 線量当量率の基準を満たすことができる。遮蔽体を用いる場合、その遮蔽材料には、放射線と物質との相互作用を考慮して、線質・エネルギーに注意する。使用時にも遮蔽体の適切な使用は外部被ばく線量の低減に効果がある。例えば、 100 keV 以下の低エネルギーγ線源として使用される。 109Cd のγ線遮蔽では薄い鉛板が用いられる。しかし、エネルギーの高いβ線源の 32P の遮蔽に鉛板を用いると制動放射線が発生する。鉛板の代わりに、実効原子番号が小さくて加工も容易なアクリル板を用いると、大幅に制動放射線の発生を抑止できる。放射性同位元素の使用の際 には、その挙動に注意を払うことで作業リスクの低減を図ることがことができる。放射性核種の空気中への揮発は作業者の内部被ばくを招く可能性があるので特に注意する。揮発の可能性は放射性核種を含む化合物の化学的性質に依存する。 131I などのハロゲンや 3H(T) には揮発し易い化合物が数多く知られているので、これらの核種を取り扱う際にはその化学形に注意する。有機標識化合物の沸点 は揮発のリスク指標であり、分子構造からもある程度予測が可能である。例えば、同程度の分子量である。カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エーテルではカルボン酸の沸点が最も高い。揮発が避けられない場合には、発生する放射性気体を吸収して固定化する。気体状の CH3(131I)が発生する場合の吸収材としては有機アミン添着活性炭が有効である。 また 14CO2 が発生する場合には水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。この他に非密封の 210Po などのα放射体を使用する場合には内部被ばくの防止が特に重要である。密封線源の場合も、密封状態に影響するような変化が発生しないように注意する。241Am 密封線源は低エネルギーγ線源として蛍光X線分析に用いられているが、α放射体でもなる。 α線源としての利用では金が窓材によく用いられるが、非常に薄いので破損しないように注意する。放射性同位元素の使用の際には作業室の実験台や床面の汚染に注意する。汚染が発生した場合には、汚染核種の特定、汚染範囲の確認、汚染拡大の可能性の予測などが必要となる。サーベイメータを利用して汚染状況の把握が対策の第一歩である。スミア法による汚染検査を併用することで、汚染核種の特定や固着性 の状況についての基礎データを得る。汚染状況に基づいて除染計画が立案される。短半減期核種による汚染では、汚染が広がらないような措置等を講じて、除染せずに壊変による放射能の減少を待つ場合もある。例えば、3H、18F、57Co。131I、134Csを使用する場合、最も短い半減期を持つ 18F も使用し、汚染した場合には、このような対処法をとる。複数の核種を使用している施設での汚染では 汚染核種の特定が必要である。γ線放出核種の同定には、Ge検出器によるエネルギースペクトル測定が有効である。ただし、134Cs などの定量にの際にはサムピークの寄与の補正を要する場合もある。除染作業ではまず、吸湿紙で拭き取ることがよく行われる。水溶性の汚染に対しては水、中性洗剤の他、EDTA水溶液などのキレート性除染剤を脱脂綿に染み込ませて ふき取ることもよく行われる。

放射線防護体系について

ICRP 2007 勧告では、放射線防護体系の目的を、放射線被ばくの有害な影響から人の健康と環境を適切なレベルで防護することとし、人の健康に対しては、確定的影響を防止し、確率的影響のリスクを合理的に達成できる程度に減少させることとしている。確定的影響はしきい線量を下回るように被ばくを抑えることでその発生を防止できる。一方 確率的影響には発がんと遺伝的影響が含まれ、線量の増加とともにリスクが増加する直線しきい値なしモデルに従うと考えて確率的影響に対する防護体系が構築されている。ICRP 2007年勧告では確率的影響に対する放射線防護の目的においては、代表的集団における 性別および年齢で平均化された生涯リスク推定値を用いることが適切であると判断をしている。その計算方法は、まず疫学研究によるがんの罹患率及び生殖腺に対する遺伝的リスクデータから各臓器・組織の生涯リスク推定値を求めた。次いで骨髄以外の臓器・組織について線量・線量率効果係数を考慮して生涯リスク推定値を2分の1に調整した。 さらに各臓器・組織について集団間で疾患の自然発生率が異なっていても適用可能な生涯リスク推定値から症例数を計算する方法を定めた上で、アジアの4集団と欧米の3集団に対して適用し、これを平均して各臓器・組織の1万人当たり 1 Sv 当たりに増加する症例数を求めた。これを名目リスク係数と呼ぶ。さらに致死率、非致死疾患における苦痛等による生活の質の低下、寿命損失を考慮したものを過剰相対リスク として評価し、各臓器・組織の1万人当たりの1Sv当たりの過剰相対リスクを計算した。全臓器・組織の過剰相対リスクの合計値に基づき、がんについて全集団で 5.5 %/Sv、成人では 4.1 %/Svという。過剰相対リスクで調整された名目リスク係数が推定された。また過剰相対リスク に基づいて、以下のように組織加重係数が定められた。まず過剰相対リスクの合計値に対する各臓器・組織の過剰相対リスクの寄与割合を計算した。この値に基づいて各臓器・組織を大まかに4つにグループ分けし、全臓器。組織の合計が 1 となるように各グループに1つの丸めた値を割り振った。組織荷重係数の値は、 ICRP 2007勧告では、ICRP 1990年勧告に比べ、乳房では大きく、生殖腺では小さくデータが不十分で個々に放射線リスクの大きさを判断できない複数の臓器・組織をまとめてひとつのカテゴリとした「残りの組織」では大きくなっている。



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