過去問と解説を日々更新していきたいと思います。まずおすすめの勉強方法
① まず物理、化学、生物の基本的な単語の定義は覚えておく必要がある。
② 過去問を解きまくる。過去問こそ最大の教科書である。直近の過去5年分は解かずに置いておき、模擬試験形式できちんと解けるように残しておく。
③ 解いた問題は自分のノートに書いてまとめると良い。問題を解いてノートにそれをまとめることで、間違えたとき見直しがしやすく、より覚えがよくなります。
④ 物・化・生の問題は最初解かずに過去5年以上の問題を全て写し、それを自分の教科書として覚える方が良い。
⑤ 管理・計測(実務)も同じことが言える。最初写すのはものすごく大変だが、参考書にも載っていないようなことが書かれているため勉強の効率は逆にいいと考える。
⑥ 法令に関しては私がまとめた資料を覚えていただくと7割の問題は解けると思 う。残りの3割は問題を解いていきながら徐々に覚えていく方が望ましい。また法令を覚えるの は試験の3~4ヵ月前でいいかと思います。やってないと忘れるため。
下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。
下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。
問1
運動エネルギーが 2.0 MeVのα粒子を進行方向に電位差 3.0 MVで加速した後の速度(m/s2)として、
最も近い値は次のうちどれか。
ただし、原子質量単位を 1.7×10^(-27)kg、電子の電荷を 1.6×10^(-19)Cとする。
1 1.0×10^7
2 2.0×10^7
3 3.0×10^7
4 4.0×10^7
5 5.0×10^7
解答
α粒子はHeの原子核であるため、質量数4、電荷+2の粒子であることから、3 MVで加速されて増加するエネルギーは 3.0×2 = 6.0 MeV となり、もともと2.0 MeVのエネルギーを持っていたα粒子の運動エネルギーTは T=2.0+6.0=8.0 MeVとなる。
よって、T=1/2×mv^2から 8.0×10^6×1.6×10^(-19)=1/2×(1.7×10^(-27)×4)×v^2
v^2 = 3.8×10^14 v ≒ 1.9×10^7
よって解答は 2 となる。
問2
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 原子質量単位(u)では、1uは 0.93 GeVに等しい
B 原子質量単位(u)では、1uは水素原子の質量として定義されている。
C 電子の静止エネルギーの値は 0.51 MeV である。
D 陽子の質量は電子の質量の約210倍である。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答
1uは炭素12を基準とし、1/アボガドロ定数で定義しているので、1u = 1.66×10^(-27)kgである。質量エネルギーはE=mc^2であるから、エネルギーで換算すると uc^2 = 931.5×10^6 eVとなり0.93GeVとほぼ等しくなる。また、電子の静止エネルギーは 0.51 MeV 陽子の静止エネルギーは 938.2 MeV 中性子のエネルギーは 939.6 MeVであるため、これは覚えておく必要がある。
これにより、陽子の質量/電子の質量 = 938/0.51 ≒ 1800 倍となる。
よって解答は 2 となる。
問3
同一原子のK殻とL殻の電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 内部転換電子のエネルギーは、K殻よりもL殻から放出される場合の方が大きい。
B 軌道電子の結合エネルギーは、K殻よりL殻の方が大きい。
C K殻オージエ電子のエネルギーは、L殻オージエ電子のエネルギーより大きい
D 同じγ線で放出される電子のエネルギーは、K殻よりL殻からの方が大きい。
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて
解答
K殻、L殻の電子エネルギーの関係性を示す。
① 内部転換電子のエネルギー K殻<L殻
② オージエ電子のエネルギー K殻>L殻
③ γ線で放出されるエネルギー K殻<L殻
④ 軌道電子の結合エネルギー K殻>L殻
よって解答は 1 となる。
問4
核異性体の定義として次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 核子の総数が互いに等しい原子核
2 陽子の数が互いに等しい原子核
3 中性子の数が互いに等しい原子核
4 陽子と中性子のどちらの数も互いに等しくエネルギー準位の異なる原子核
5 中性子の数と陽子の数が互いに入れ替わった原子核
解答
1 核子の総数が互いに等しい原子核・・・同重体
2 陽子の数が互いに等しい原子核・・・同位体
3 中性子の数が互いに等しい原子核・・・同中性子体
4 陽子と中性子のどちらの数も互いに等しくエネルギー準位の異なる原子核・・・核異性体
5 中性子の数と陽子の数が互いに入れ替わった原子核・・・特に名称は無い
よって解答は 4 となる。
問5
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 中性子数が等しく陽子数が異なる核種を互いに同位体であるという。
B 陽子の質量は中性子の質量より大きい。
C 原子核の質量は、構成核子の質量の総和より結合エネルギー分だけ小さい。
D 原子核の核子当たりの結合エネルギーは質量数が4の場合に極大となる。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答
同位体は陽子の数が等しく、中性子の数が異なる。陽子と中性子の質量エネルギーで考えると、陽子の質量エネルギーは938.2 MeV、中性子の質量エネルギーは939.6 MeVで若干中性子の方が大きい。
C 原子核の質量は、構成核子の質量の総和より結合エネルギー分だけ小さい・・・結合エネルギー=中間子であり、中間子 → 消滅 → 消滅するため軽くなる。
D 原子核の核子当たりの結合エネルギーは質量数が4の場合に極大となる・・・結合エネルギーの最大はFe(鉄)であるが、質量数4はHeであり、α粒子であり、特異的に結合エネルギーが大きいため極大値となる。
よって解答は 5 となる。
問6
水素原子のスペクトル系列を表わす式、ν = cR〔1/n^2-1/m^2〕(n及びmは整数でm>n)において、n = 1に対応するライマン系列と呼ばれる。
ここでRはリュードベリ定数、νは振動数(Hz)、cは光速度(m/s)を表わす。ライマン系列で最長の波長λ(m)として最も近い値は、次のうちどれか。
ただし、R = 1.1×10^7(/m)とする。
1 9.8×10^(-8)
2 1.0×10^(-7)
3 1.2×10^(-7)
4 1.4×10^(-7)
5 1.6×10^(-7)
解答
λ = c/ν から振動数νが最小の時、波長λが最大となる。今 n = 1であるから m = 2でνは最小になる。
よって、n = 1、 m = 2を代入して計算するとλ = 1.2×10^(-7)となる。
よって解答は 3 となる。
問7
Ge検出器の校正(50keVから1.5MeVの範囲)に用いられている核種について、放出されるγ線エネルギーの大きさの順に正しく並んでいるのは次のうちどれか。
1 241Am < 60Co < 137Cs < 57Co < 54Mn
2 54Mn < 137Cs < 60Co < 57Co < 241Am
3 241Am < 57Co < 137Cs < 54Mn < 60Co
4 57Co < 241Am < 54Mn < 137Cs < 60Co
5 57Co < 60Co < 137Cs < 241Am < 54Mn
解答
それぞれの放出されるγ線エネルギーを覚えておくしかない。241Am : 59.5 keV、60Co : 1.17 MeVと1.33 Mev、137Cs : 662 keV、57Co : 136 keV、54Mn : 835 keV
よって解答は 3 となる。
問8
次の加速器のうち、ほぼ一定の周回軌道を保って荷電粒子を加速するものはどれか。
1 コッククロフト・ワルトン型加速器
2 サイクロトロン
3 ファン・デ・グラーフ型加速器
4 シンクロトロン
5 マイクロトロン
解答
1 コッククロフト・ワルトン型加速器と 3 ファン・デ・グラーフ型加速器は静電型加速器のため加速経路は直線である。
2 サイクロトロンと 5 マイクロトロン は磁場を曲げて周回しながら加速する。
4 シンクロトロンは一定の周期軌道を保って加速する。
よって解答は 4 となる。
問9
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 核反応の前後で電荷の総量は変化しない。
B バーンは核反応断面積の単位に用いられる。
C 核反応のQ値は、常に負の値をとる。
D 核反応の全断面積は弾性散乱と非弾性散乱の断面積の和である。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答
C 核反応のQ値は、常に負の値をとる・・・正の場合もあり、発熱反応といい、負の場合は吸熱反応という。
D 核反応の全断面積は弾性散乱と非弾性散乱の断面積の和である・・・全断面積には吸熱反応や核分裂反応など様々な反応も含まれる。
よって解答は 1 となる。
問10
電子の静止質量の約10^4倍大きい質量を持つ原子核から1MeVの光子が放出されるときに原子核が受ける反跳エネルギーとして最も近い値は次のうちどれか。
1 1 MeV
2 5 MeV
3 10 MeV
4 100 MeV
5 1 keV
解答
この問題は運動量保存則を用いる。放出される光子のエネルギーをEg、光の速度をc、とおくと、運動量PgはPg =Eg/c である。
反跳原子核の質量をm(=10^4me meは電子の静止質量)、速度をvとおくと運動量Pn = mv となる。運動量保存則よりPg = Pn が成り立つためEg/c = mvとなり、v = Eg/mc となる。
よって、反跳核の運動エネルギーEn = 1/2(mv^2) = Eg^2/(2mc^2) = 1/(1.022×10^4) = 100 eV
よって解答は 4 となる。
問11
連続なエネルギースペクトルを有する放射線として正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A 109Cdから放出される電子。
B 光電効果により放出される電子。
C コンプトン散乱により放出される光子。
D 電子の制動により放出される光子。
E 252Cfから放出される中性子。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答
109Cdは100%EC(軌道電子捕獲)であるため、連続スペクトルは示さない。光電効果で放出される電子はオージエ電子なので、線スペクトルを示す。コンプトン散乱では反跳電子が放出されるため連続スペクトルを示す。同様に制動放射と中性子も連続スペクトルを示す。
よって解答は 5 となる。
問12
陽電子に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A γ線と物質との相互作用において生成される場合がある。
B 電子と結合して光子を放出して消滅する。
C 核壊変に伴って放出される場合、連続エネルギースペクトルとなる。
D 静止質量は電子に比べて重い。
E EC壊変において放出される。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 陽電子、陰電子共に静止エネルギーは 0.51 MeVである。EC(軌道電子捕獲)では P + e- → n + ν という反応が起こり、中性子とニュートリノが放出される。
よって解答は 1 となる。
問13
荷電粒子が速度vで物質中を通過するとき、粒子の進行方向とチェレンコフ光の放出方向とが成す角度θの関係は、次のうちどれか。ただし、物質の屈折率をn、真空中での光速をcとする。
1 sinθ = n・v/c
2 cosθ = n・c/v
3 sinθ = c/(n・v)
4 cosθ = c/(n・v)
5 sinθ = v/(c・n)
解答
チェレンコフ光は荷電粒子が透明な誘導体内に入射した時、その物質中の光速度 c がより粒子速度 v が大きい時に可視光線が発生する。cosθ = c/(n・v) この条件を満たせば良い。
水中でチェレンコフ光が発生するためには、二次電子の速度が c/1.33 以上(c : 真空中の光速、1.33 : 水の屈折率)、運動エネルギーにして 0.26 MeV以上であることが必要である。
したがって解答は 4 となる。
問14
α粒子に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A 質量衝突阻止能は、物資の原子番号の2乗に比例する。
B 大角度で散乱される場合がある。
C 原子核との弾性衝突の前後において、運動エネルギーの和が変わらない。
D 比電離は速度の減少とともに急激に増大する。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答
質量衝突阻止能S ~ z^2/v^2 = (Mz^2)/E z:荷電粒子の電荷 v:粒子の速度 M:電荷の質量 E:電荷のエネルギーとなり原子番号には依存しないことがわかる。
B 大角度で散乱される場合がある。・・・これをラザフォード散乱という。
C 原子核との弾性衝突の前後において、運動エネルギーの和が変わらない。・・・弾性散乱なのでエネルギー保存則が成り立つ。
D 比電離は速度の減少とともに急激に増大する。・・・α粒子はブラッグピークを形成し、飛程の終わりで電離能が急激に増加する。
よって解答は 4 となる。
問15
β+線に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A β+線の最大飛程は、同じエネルギーのβ-線の最大飛程とほとんど同じである。
B β+線により、制動放射線が放出される。
C β+線の遮蔽は同じエネルギーのβ-線の場合と同じとして取り扱う。
D 消滅放射線はβ+線が放出された場所から放出される。
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて
解答
核内のエネルギー準位が不安定状態にある核種がエネルギーを放出して壊変し、別な核種に遷移するため、核内よりβ粒子と中性微子とγ線を放出することをβ崩壊という。
β+の場合 p → n + ν + e+
β-の場合 n → p + ν- + e-と表わすことができる。
またβ線が物質と相互作用を行えば、散乱、励起、電離、制動放射によりエネルギーが失われる。 β+線の場合エネルギーが0付近になると、その付近の陰電子と結合して、消滅放射線を放出するため、別の遮蔽が必要となる。
A β+線の最大飛程は、同じエネルギーのβ-線の最大飛程とほとんど同じである。・・・これは覚えておくほかない
よって解答は 2 となる。
問16
空気、アルゴン、ヘリウム中で210Poから放出されたα粒子が完全に静止するとき、発生する電荷量が小さい順に並んでいるものは、次のうちどれか。
1 空気 < アルゴン < ヘリウム
2 空気 < ヘリウム < アルゴン
3 アルゴン < 空気 < ヘリウム
4 ヘリウム < アルゴン < 空気
5 ヘリウム < 空気 < アルゴン
解答
発生する電荷量はW値が大きい気体で小さくなる。水素を除き、原子番号が小さい方がW値は大きい傾向がある。α線に対するW値は、ヘリウム(He) : 42.7eV、 空気 : 35.1eV、 アルゴン(Ar) : 26.4eV
よって解答は 5 となる。
問17
コンプトン効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A コンプトン電子のエネルギーは散乱光子のエネルギーより常に大きい。
B コンプトン効果は光子の波動性を示す現象である。
C 散乱光子の波長は入射光子の波長より長い。
D コンプトン効果の原子当たりの断面積は、原子の原子番号に比例する。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答
コンプトン散乱の特徴は
① 入射光の波長より散乱波長は長い。
② 入射光は一部のエネルギーを電子に与える。
③ 線減弱係数は原子番号Zに比例する。
④ 原子当たりの断面積は原子の原子番号Zに比例する。
⑤ 非干渉性散乱であり、粒子性を示す。
A コンプトン電子のエネルギーは散乱光子のエネルギーより常に大きい。・・・光子の散乱角度が小さいとき、散乱による光子のエネルギー低下は少なく、
コンプトン電子のエネルギーは小さい。
よって解答は 5 となる。
問18
光電効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 光子のエネルギーが軌道電子の結合エネルギーより少し大きいときに光電効果が急激に起きやすくなる。
B 光電効果に伴って特性X線が放出されることはない。
C 光電子の放出される角度分布は均一である。
D 原子核に近い軌道電子の方が光電効果をおこしやすい。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答
光電効果の特徴は
① 1 MeV以下の光子で特によく起こる。
② 同じエネルギーの光子では原子番号が大きいほどよく起こり、K軌道で最もよく起こる。
③原子当たりの断面積は原子の原子番号Z^5に比例する。
④ 軌道電子とのエネルギーの差が特性X線として放出される。
⑤ 特性X線がさらに軌道電子と衝突して軌道電子を放出する。これをオージエ効果と呼ぶ。
⑥ 特性X線が放出することを蛍光収率(ω)といい、オージエ電子が放出される割合はオージエ収率といい 1-ω となる。
A 光子のエネルギーが軌道電子の結合エネルギーより少し大きいときに光電効果が急激に起きやすくなる。・・・これは覚えておくと良い
C 光電子の放出される角度分布は均一である。・・・光子エネルギーが小さい場合、入射光子に対して90度の方向に光電子が放出される確率が高い。
よって解答は 3 となる。
問19
次のうち、光子の遮蔽計算に用いられるビルドアップ(再生)係数の値に直接関係ないものはどれか。
1 入射光子の線量率
2 コンプトン効果
3 入射光子のエネルギー
4 物質の原子番号
5 物質の厚さ
解答
ビルドアップ係数 = ある点に到達する全光子による線量/散乱を受けていない一次光子による線量 で表わす。 線量率は個々の光子の相互作用に影響しないため、ビルドアップ計数に影響しない。
よって解答は 1 となる。
問20
5 MeV の光子に対する物質の線減弱係数をμt、線エネルギー転移係数μe、線エネルギー吸収係数をμa、と記したとき、これらの係数が小さい順に並んでいるものは次のうちどれか。
1 μa < μt < μe
2 μt < μe < μa
3 μa < μe < μt
4 μe < μt < μa
5 μe < μa < μt
解答
① 線減弱係数・・・光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱される。その減弱の割合である。この減弱係数を密度で割ったものを質量減弱係数という。
② エネルギー転移係数・・・光電効果、コンプトン効果、電子対生成などにより、荷電粒子に与えられるエネルギーの割合
③ エネルギー吸収係数・・・エネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値 となる。
大小関係では 線エネルギー吸収係数 < 線エネルギー転移係数 < 線減弱係数 となり、解答は 3 となる。
問21
次の中性子と原子核の反応のうち、熱中性子の検出に使用できないものはどれか。
1 3He(n,p)
2 6Li(n,α)
3 1H(n,n’)
4 10B(n,α)
5 235U(n,f)
解答
熱中性子の検出に用いられる反応として、3He(n,p)3H、6Li(n,α)3H、10B(n,α)7Li がある。
また235U(n,f) の反応は核分裂反応であり、中性子放出反応であるため検出可能である。
よって解答は 3 となる。
問22
1.0 MeVのエネルギーに相当するものはどれか。
1 4.2 aJ
2 1.6 fJ
3 0.16 pJ
4 16 nJ
5 0.42 μJ
解答 1.0 [MeV] = 1.0 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) = 0.16 [pJ] となる。よって解答は 3 となる。
問23
次の単位記号のうち、物理的意味を持つものの組み合わせはどれか。
A C/kg
B Gy/kg
C Sv/kg
D Bq/kg
E J/kg
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答
A C/kg・・・照射線量の単位である。
B Gy/kg・・・=J/kg2 となり定義されたものがない。
C Sv/kg・・・=J/kg2 となり定義されたものがない。
D Bq/kg・・・比放射能の単位である。 E J/kg・・・吸収線量、カーマの単位である。
よって解答は 3 となる。
問24
液体シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A NaI(Tl)シンチレータに比べて発光の減衰時間が短い。
B 低エネルギーβ線放出核種の放射能測定に適している。
C 放射線のエネルギー情報が得られない。
D シンチレータ内での増幅作用が大きい。
E 速中性子の検出に用いられる。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答
液体シンチレータは有機シンチレータなので、発光減衰時間はおよそ10(-8)s と非常に短い。液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定できるため、検出効率が非常に良い。また、放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定には極めて有効である。さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことから、その原子核の反跳により生じる陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)
C 放射線のエネルギー情報が得られない。・・・液体シンチレータはエネルギー吸収量に応じて発光するため、エネルギー情報を得られる。
D シンチレータ内での増幅作用が大きい。・・・増幅作用は光電子増倍管であり、液体シンチレータには装備されていない。
よって解答は 2 となる。
問25
放射線測定器に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。
A 端窓型GM計数管はγ線、β線の検出に適している。
B 表面障壁型Si半導体検出器はβ線の検出に適している。
C NaI(Tl)シンチレータは中性子の検出に適している。
D BF3計数管はγ線の検出に適している。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答
表面障壁型Si半導体検出器は表面の不感層が極めて薄く、また原子番号が比較的小さく後方散乱が少ないため、β線の検出に利用できる。またα線スペクトル測定によく使われる。他にも似たような検出器があるため追加で覚えておくとよい。
Si(Li)検出器は低エネルギーX線を高分解能で測定できる。Li(Eu)検出器、BF3計数管は、熱中性子の測定に用いられる。
NaI(Tl)シンチレータはX線、γ線の検出に適している。
よって解答は 1 となる。
問26
NaI(Tl)検出器で1000Bqの 137Cs 線源(0.662 MeV のγ線放出比は0.85)を200秒測定したところ7000カウントであった。線源を取り除き100秒間測定したところ100カウントであった。この測定系の検出効率(%)として、正しいのは次のうちどれか。
1 3.7
2 4.0
3 4.2
4 4.5
5 5.0
解答
正味の計数率は(7000/200) – (100/100) = 34(/s)、毎秒放出されるγ線数は1000 × 0.85 = 850(/s) したがって検出効率は 34/850 = 0.04
4%となる。
よって解答は 2 となる。
問27
放射線防護のための量には、人体影響の評価に主眼をおいた防護量と測定主眼においた実用量とあるが、次の量のうち、実用量の組み合わせはどれか。
A 等価線量
B 実効線量
C 周辺線量当量
D 個人線量当量
E 方向性線量当量
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答
防護量・・・等価線量、実効線量
実用量・・・周辺線量当量、個人線量当量、方向性線量当量となる。
よって解答は 5 となる。
問28
次のうち、α線のエネルギー測定に適している検出器として、正しいものの組み合わせはどれか。
A 表面障壁型Si半導体検出器
B Ge検出器
C BGO検出器
D ZnS(Ag)検出器
E グリッド付電離箱
1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE
解答
B Ge検出器・・・γ線(X線)の高分解能エネルギー測定に用いられる。
C BGO検出器・・・γ線(X線)の高検出効率測定に用いられる。
D ZnS(Ag)検出器・・・α線の検出に用いられるが、光の透過率が小さくエネルギー測定には普通用いられない。
よって解答は 2 となる。
問29
光子に対する個人被ばく線量測定に用いられる測定器として、正しいものの組み合わせはどれか。
A OSL線量計
B 蛍光ガラス線量計
C TLD
D 放射化箔検出器
E 固体飛跡検出器
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 1
A 正 OSL線量計
B 正 蛍光ガラス線量計
C 正 TLD
D 誤 放射化箔検出器・・・感度が低く、大線量の中性子測定に用いられる。
E 誤 固体飛跡検出器・・・中性子の個人被ばく線量測定に用いられる。
問30
次のうち、シンチレーション検出器に関係のあるものの組み合わせはどれか。
A POPOP
B 光電陰極
C スチルベン
D アクチベータ(活性炭)
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ACDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
A 正 POPOP・・・POPOPは、PPO、ブチルPBD、DMPOPOPなどと同様、液体シンチレータの溶質として用いられる。
B 正 光電陰極・・・光電子増倍管の光を受ける電極である。
C 正 スチルベン・・・固体有機シンチレータの一種である。
D 正 アクチベータ(活性炭)・・・NaI(Tl)シンチレータに微量に添加されている Tl はアクチベータとして作用する。
年代測定
上空の大気中で宇宙船から生じた中性子が空気中窒素の 14N と反応して 14C が生成する。したがって宇宙船強度が変わらなければ地球大気中の 14C の量は一定となり、炭素 1g 当たり約 0.23 Bq となる。 その炭素同位体の 14C/(12C+13C) 原子数比の値は 1.2 × 10^(-12) である。
求め方 14C の原子数は 0.23 = (0.693/1.8 × 10^11) × N N = 6.0 × 10^10
12C + 13C の原子数は N = 1/12 × 6.0 × 10^23 = 5.0 × 10^22 よって14C/(12C + 13C) = (6.0 × 10^10)/(5.0 × 10^22) = 1.2 × 10^(-12) となる。
例えば 1 mg の炭素を含む試料を測定して 13C/(12C+13C)原子数比の値が 0.0107、14C/13C原子数比の値が 7.0 × 10^(-12) であったとすると、この試料の年代を求めよ。
求め方 14C/13C = 7.0 × 10^(-12) より 13C = 1/7 × 10^12 × 14C となる。よって13C/(12C+13C) = 1/7 × 10^12 × 14C × 1/(12C+13C) = 0.0107
14C/(12C+13C) = 0.0107 × 7.0 × 10^(-12) = 7.5 × 10^(-14) 現在の14C/(12C+13C) を前問から 1.2 × 10^(-12) ということが分かっている。現在の存在度に対する放射能比は [7.5 × 10^(-14)]/[1.2 × 10^(-12)] = 6.25 × 10^(-2) = 1/16 となる。4半減期経過していることとなるため、14C の半減期が 5700 年であるので、5700 × 4 = 22800 年前となる。
原子核壊変について
励起状態にある原子核がγ線を放出してエネルギーのより低い状態に変わることをγ遷移という。励起状態の原子核はα壊変やβ壊変などによって生成するものが多く、励起状態の寿命は一般に短い。例えば 60Co は 5.27 年の半減期でβ±壊変し、 99.93% が 60Ni の 2.506 MeV の励起準位をとるが、その励起準位の寿命は 10^(-12) 秒のオーダーで直ちにγ線を放出して次の 1.333 MeV の励起準位になる。この準位の寿命も同程度でγ線を放出して 60Ni の安定状態になる。一方励起状態の原子核がγ線を放出せずエネルギーを軌道電子に直接与えて、その軌道電子を放出する現象がある。この現象は内部転換と呼ばれ、放出された電子エネルギー分布は 線スペクトルである。内部転換の起こる確率は、原子番号のほぼ 3 乗に比例し、原子核から放出されるエネルギーが小さい ほど大きい。内部転換にあずかる電子はK軌道電子が約 80% である。遷移の際に電子が放出される確率 Ie とγ線が放出される確率 Iγ の比 α(=Ie/Iγ)を 内部転換係数といい、軌道電子の種類に応じてαk、αL・・・・のように表す。全内部転換係数をαT、並びに遷移の確率をP(=Ie+Iγ)とすると、γ線放出の確率Iγは、 Iγ = P/(1+αT)となる。静止している質量 M の原子核がγ遷移により E だけ低いエネルギーに遷移するとき、原子核自体は反映される。遷移のエネルギーEは一部は反跳に費やされてその分だけ放出γ線エネルギーは 低下するのでこのγ線を同じ原子核に当てても共鳴吸収は起こらない。遷移において放出されるγ線のエネルギーが Eγ であるとき光の速さを c とすれば、γ線の運動量は Eγ/c となる。一方、反跳原子核の運動エネルギーERは、 (Eγ)^2/(2 × M × c^2)となる。(反跳原子核の速度を v、質量を M、運動量を PR、とすれば、ER = 1/2 × M × v^2、PR = M × v。運動量保存則によりPγ = PR より、Eγ/c = M × v これより v = Eγ/(M × c)、 したがって ER = 1/2 × M × (Eγ/(M × c))^2 = (Eγ)^2/(2 × M × c^2)
運動エネルギー保存則より ER は E と Er の差であるから ER に (Eγ)^2/(2 × M × c^2) を代入して Eγ を E を用いて表すと E – [E^2/(2 × M × c^2)]となる。これより質量数 57 の原子核の 励起準位のエネルギーの差が E = 14.4 keV のとき、この差で起こるγ遷移に対する ER は 2.0 × 10^(-3) eV となる。
計算式 質量数 57 の原子核の質量は近似的に M ≒ 57u ≒ 5.3 × 10^4 MeV (1u を 930 MeV と近似) したかって ER = E^2/(2 × M × c^2) = (1.44 × 10^(-2))MeV/(2 × 5.3 × 10^4)MeV = 1.96 × 10^(-3) eV
先にも述べたように共鳴吸収が起こらない理由はγ線の放出時と同様に吸収時にも原子核の反跳にエネルギーが消費されるためであるが、原子核が強く束縛されている固体中では共鳴吸収が起こる例が見出されている。原子核が強く束縛されているために 実効的に原子核の質量が大きくなり、ER がほとんど 0 となる場合である。これをメスバウワー効果という。原子核の共鳴エネルギーは、原子の化学状態や磁場の有無などによってごくわずかに変化する。 メスバウワー分光法では、線源となる原子核を運動させドップラー効果を利用してγ線エネルギーを増感させ、共鳴エネルギーを測定できる。