問1

次の放射線のうち、真空中での速度が最も遅いものはどれか。

1 波長 1 nm の光子

2 運動エネルギー 10 MeV の中性子

3 運動エネルギー 10 MeV のα粒子

4 運動エネルギー 5 MeV の陽子

5 電圧 1 MV で加速した電子

解答 3

光子の速度は最も速い。光に比べて速度が小さい非相対論的領域では、運動エネルギーは T = (1/2)・mv^2 となる。v^2 = (2T)/m であるから、T/m の比較で、速度も比較することができる。

1 波長 1 nm の光子・・・光の速度なので一番速い。

2 運動エネルギー 10 MeV の中性子・・・10/1 = 10

3 運動エネルギー 10 MeV のα粒子・・・10/4 = 2.5

4 運動エネルギー 5 MeV の陽子・・・5/1 = 5

5 電圧 1 MV で加速した電子・・・1 MeV の電子では、相対論的に扱う必要がある。c を光の速度、m を電子の精子質量とすれば、T = [(mc^2)/[√1-(v/c)^2]] – mc^2 より、v = c√[1-[(mc^2)/(T+mc^2)]^2] = c√[1-[0.511/(1+0.511)]^2] = 0.94c となり、光の速度の 94% となる。

問2

次のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 原子の半径は原子番号に比例する。

B 水素のイオン化エネルギーは 1.36 eV である。

C 原子質量単位 u は 12C の質量を基準にして、その 12分の1 を 1u として定義される。

D 原子質量単位 1u はエネルギーに換算すると約931 MeV に相当する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 原子番号にあまり依存しない。

B 誤 イオン化エネルギーとは、原子の基底状態から 1個の電子を無遠に引き離すのに要する最小のエネルギーであり、水素では 13.6 eV である。。

C 正 原子質量単位 u は 12C の質量を基準にして、その 12分の1 を 1u として定義される。

D 正 原子質量単位 1u はエネルギーに換算すると約931 MeV に相当する。これは覚えておいたほうが良い。

問3

水素原子のスペクトル系列 1/λ = R[(1/n^2) – (1/m^2)](n及びmは整数で m > n)で、n = 1、m = 2,3,4・・・に対応する系列は次のうちどれか。ただし、λは波長[m]を、Rはリュードベリ定数を表す。

1 バルマー系列

2 パッシェン系列

3 プント系列

4 ライマン系列

5 ブラケット系列

 

解答 4

K殻に転移する際に放出されるX線をK系列といい、n = 1 に相当する。水素の場合の K系列をライマン系列という。

問4

 

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 内部転換電子の放出はオージエ電子の放出要因となる。

B 光電効果はオージエ電子の放出要因となる。

C オージエ電子の放出は低原子番号の核種で起きやすい。

D オージエ電子のエネルギーは放出軌道電子の結合エネルギーと等しい。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

 

解答 1

A:正 光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線の エネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子という。

B:正 上の解答と同じ。

C:正 特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。逆に原子番号の小さい原子ほど蛍光収率は小さくなり、オージエ電子は放出されやすい。

D:誤 特性X線のエネルギーから放出された軌道電子の結合エネルギーを引いた値である。

問5

陽電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 固体中において、α線により電子と対の形で生成される。

B 電子と結合して消滅し、その際光子が放出される。

C 金属中において 100 ms 程度の平均寿命を持つ。

D 電子対生成で放出される場合は、連続スペクトルを示す。

E 電子に比べて静止質量が大きい。

1 AとC 2 BとD 3 BとE 4 CとD 5 AとE

解答 2

A 誤 エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。

B 正 エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。

C 誤

D 正

E 誤 陽電子と陰電子の質量は等しい。

問6

次の核種のうち、1壊変当たりのオージエ電子の放出確率が一番大きいものはどれか。

1 51Cr

2 54Mn

3 55Fe

4 64Cu

5 65Zn

 

解答 1

それぞれの核種の性質は表の通りである。

核種 51Cr 54Mn  55Fe  64Cu  65Zn
原子番号 24 25 26  29  30
EC による壊変確率(%) 100 100  100  43.6  98.6

結合エネルギーの大きいK殻等に空席を生じるのは、ECおよび内部転換である。ただし、いずれの核種も内部転換電子の放出は無視できる。原子番号の小さい元素ほど蛍光収率は小さく、オージエ電子が放出されやすいので、EC 100% DE原子番号が最も小さい 51Cr からの放出確率が最も大きい。

問7

次の放射線のうち、連続したエネルギー分布をもつものの組み合わせはどれか。

A オージエ電子

B 内部転換電子

C 熱中性子

D 制動放射線

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

線スペクトル・・・原子が放射または吸収する光などの電磁波を通して見たときに線状にに見えるスペクトル。線スペクトルにはα線、γ線、オージエ電子、特性X線、内部転換電子、光電子がある。

連続スペクトル・・・ある波長範囲にわたって連続的に分布したスペクトル。分光装置の性能をいくら高めても線スペクトルに分解できないもので、連続スペクトルにはβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックス ウェル・ボルツマン分布(0.025 eV のエネルギーを有する熱中性子)に従う連続分布がある。

問8

核壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 核異性体転移が起こると質量数が1つ減少する。

B 内部転換により電子が放出されて原子番号が1つ増加する。

C β- 壊変と EC 壊変の両者が起きる核種も存在する。

D EC 壊変する核種のうちγ線を放出する核種も存在する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 核異性体転移は原子番号・質量数とも変化しない。

B 誤 内部転換で放出されるのは軌道電子であり、原子番号は変化しない。

C 正 例えば 192Ir は 95% がβ-壊変、5% が EC 壊変する。

D 正 例えば 54Mn は 100% EC 壊変し、835 keV γ線を 100% 放出する。。

問9

次の加速器のうち、交流電磁石を用いるものはどれか。

1 サイクロトロン

2 電子直線加速器

3 ファン・デ・グラーフ型加速器

4 ベータトロン

5 シンクロトロン

解答 4

1 誤 サイクロトロン・・・D電極の上下に磁石を設置し、D電極に+、ーの高周波を掛けると、荷電粒子は回転運動を始め、ギャップで加速され、回転半径は大きくなり、ビームとして取り出される。D電極上下の磁界は直流磁界(直流電磁石)で 高周波は一定周波数を用いギャップ間で加速する。高周波静磁場を用いてイオンのみを加速させる。現在は粒子線治療とPET薬剤生成加速器に用いられる。

2 誤 電子直線加速器・・・線形加速器は直線状に並べられた多数の電極に粒子の速度に合わせた高周波の高電圧を印加することによって加速するため磁石を用いない。

3 誤 ファン・デ・グラーフ型加速器・・・超高圧タンク内に絶縁ベルトを回転させ、電荷を帯電球に貯めて、超高電圧を抵抗によって分圧し、加速管に電圧を加えて加速する。帯電球に電荷が貯まると、ベルト上の電荷と 斥力が作用し、ベルトの回転数が低下したり放電を発生する。超高圧ガスはは放電防止用窒素ガスである。直流高電圧、静電場を使っているため磁石は用いない。

4 正 ベータトロン・・・ベータトロンは交流励磁によって作られる磁界(電磁石によって作られる磁界)により、電子に一定の円運動させ、その磁場により生じる電場で電子を加速する。交流電場で行い、電子だけを加速させる。 また磁場の変化で誘起される電場で加速される。

5 誤 シンクロトロン・・・シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化するが極性は変わらないため交流ではない。

問10

α粒子と原子核原子核との衝突において、反跳エネルギーが大きくなる原子核は次のうちどれか。

1 1H

2 4He

3 12C

4 28Si

5 56Fe

解答 2

中性子と水素の弾性散乱と同様、同じ質量の原子核同士の正面衝突では、衝突粒子の全ての運動エネルギーが標的核の反跳エネルギーとして移り、最も大きくなる。

問11

5.5 MeV α線のシリコン(A=28)における飛程を R1 [mg/cm2]、金[A=197] における飛程をR2[mg/cm2] とした時、R2/R1 の値として最も近いものはどれか。

1 0.8

2 1.0

3 1.5

4 2.0

5 3.0

解答 5

重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、質量数の平方根に比例する(ブラッグ・グレーマンの法則)というものにより、物質M(原子量A、密度ρ)中の飛程Rと、物質M0(原子量A0、密度ρ0)中の飛程との比は次のように表される。 R/R0 = (√A/A0)/(ρ/ρ0) = (√A/A0) × (ρ0/ρ) これにより R2/R1 = (√197/28) × (2.3/19.3) = √7.03 × 0.12 = 0.31 g/cm2 単位が mg/cm2 なので、約 3.0 mg/cm2

問12

1.0 MeV の陽子の空気中における飛程[cm]に最も近い値は、次のうちどれか。ただし、エネルギーE [MeV] のα線の空気中における飛程 R[cm] は R = 0.32・E^(3/2) で与えられるとする。

1 0.8

2 1.0

3 1.5

4 2.0

5 3.0

解答 3

質量阻止能の観点から飛程 R は 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 に比例する。陽子 1 MeV の飛程は α線のエネルギー 4 MeV と等しいことがわかる。したがってα線の空気中における飛程 R[cm] は R = 0.32・E^(3/2) から R = 0.32 × 4^(3/2) = 2.56 [cm] となる。

問13

次の3種類の荷電粒子、A 1MeV陽子、B 2MeV重陽子、C 3MeV α線 について、空気中の飛程の大きい順に並んでいるものはどれか。

1 A > B > C

2 A > C > B

3 B > A > C

4 B > C > A

5 C > A > B

解答 3

質量阻止能の観点から飛程 R は 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 に比例するため、R(A) = 1、R(B) = 2、R(C) = 0.565 となり、B > A > C となる

問14

ある物質中に核子当たり 2.5 MeV のエネルギーを持つ 4He(2+) と 1H(+) が入射するとき、その物質の 4He(2+) に対する阻止能 S1 と 1H(+) に対する阻止能 S2 の比(S1/S2) として最も近い値はどれか。

1 0.5

2 1

3 2

4 4

5 16

解答 4

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] と近似でき、核子あたりのエネルギーが同じ、すなわち速度が同じとき、電荷 z の2乗に比例するため、S1/S2 = 2^2/1^2 = 4 となる。

問15

次の物質と放射線の組み合わせのうち、発生するイオン対又は電子・正孔対の数が最も多いものはどれか。ただし、放射線のエネルギーは物質中で全て吸収されるものとする。

1 ヘリウムガス3気圧中の 5 MeV α線

2 空気4気圧中の 4MeV β-線

3 シリコン中の 200 keV γ線

4 キセノンガス1気圧中の 5 MeV 電子線

5 ダイヤモンド中の 2 MeV 陽子線

解答 4

イオン対または正孔対を1個生成するのに必要なエネルギーを W 値といい、生成する対数は放射線のエネルギーを E[eV] として E/W で表される。。それぞれの W 値は、He:43 eV 空気:34 eV Ar:26eV C:18 eV Xe:22 eV Si:3.6 eV である。

1 ヘリウムガス3気圧中の 5 MeV α線・・・(5 × 10^6)/43 = 1.16 × 10^5

2 空気4気圧中の 4MeV β-線・・・(4 × 10^6)/34 = 1.18 × 10^5

3 シリコン中の 200 keV γ線・・・(200 × 10^3)/3.6 = 5.56 × 10^4

4 キセノンガス1気圧中の 5 MeV 電子線・・・(5 × 10^6)/22 = 2.27 × 10^5

5 ダイヤモンド中の 2 MeV 陽子線・・・(2 × 10^6)/18 = 1.11 × 10^5

問16

2 MeV の光子がコンプトン散乱を起こした場合、散乱角 90° の光子エネルギー E1 と散乱角 180° の光子のエネルギー E2 の比(E1/E2)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 1.2

2 1.4

3 1.6

4 1.8

5 2.0

解答 4

散乱光子のエネルギー E(γ)’は、E(γ)’ = E(γ)/[1 + (E(γ)/(m0c^2)) × (1 – cosθ)]。90°では E(γ)’ = 2/[1+2/0.511] = 0.41、180°では E(γ)’ = 2/[1+4/0.511] = 0.23。したがって E1/E2 = 0.41/0.23 = 1.8 となる。

問17

0.1 MeV の光子がタングステンと光電効果を起こし、K軌道電子が放出された。またこれに伴い、K(α)-X線が発生した。それぞれのエネルギー[keV]として正しい組み合わせはどれか。ただしK軌道とL軌道における結合エネルギーはそれぞれ 69.5 keV 及び 10.9 keV とする。

A 10.9

B 30.5

C 58.6

D 69.5

E 89.1

1 AとD 2 AとE 3 BとC 4 BとE 5 CとD

解答 3

光電子のエネルギーは 100 – 69.5 = 30.5 keV、K(α)-X線 のエネルギーは 69.5 – 10.9 = 58.6 keV である。

問18

次の記述で正しいものの組み合わせはどれか。

A 0.1 MeV の光子と水の相互作用は主にコンプトン効果である。

B 1 MeV の光子と鉛の相互作用は主に光電効果である。

C 2 MeV の光子と水の相互作用は主に電子対生成である。

D 10 MeV の光子と鉛の相互作用は主に電子対生成である。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性を示す。

アルミニウム(Z=13)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 50KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 50KeV ~ 20MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 20MeV]

水と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 30KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 30KeV ~ 30MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 30MeV]

鉄と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 100KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 100KeV ~ 10MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 10MeV]

鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

問19

中性子と 4He 原子核との弾性衝突において、衝突後の中性子がとる最小エネルギーは衝突前のエネルギーの何倍となるか。最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.12

2 0.24

3 0.36

4 0.50

5 0.74

解答 3

散乱後の中性子のエネルギーが最小、すなわち反跳核が受け取るエネルギーが最大となる正面衝突の時である。中性子の弾性散乱において原子核の反跳エネルギーEmax = [(2Mm)/(M + m)^2] × (1 – cos180°)En = 16/25・E(n) = 0.36・E(n) となる。したがって衝突後の中性子エネルギーは E(n) – 0.64E(n) = 0.36E(n) である。

問20

6Li(n , α)3H の反応において、この反応の Q 値 を 4.8 MeV とすると、生成核 3H に与えられるエネルギー[MeV]として最も近いものは次から選べ。

1 1.6

2 2.1

3 2.7

4 3.2

5 3.8

 

解答 3

熱中性子による発熱反応では、運動量 = 0 が保存されるため、運動エネルギーは生成核の質量に反比例して配分される。したがって 3H に与えられるエネルギー E(H) = 4/(4+3) × 4.8 = 2.7 MeV となる。

問21

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射線量は中性子及び光子について定義される。

B 空気カーマは照射線量より二次電子の放射損失の分だけ小さい。

C 照射線量の単位は C/kg で与えられる。

D 照射線量は空気に対して定義される。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 照射線量は光子について定義される。

B 誤 カーマ(K)は、ある物質の体積要素内で間接電離によって自由になった全荷電粒子の最初の運動エネルギーの和dEをその体積の物質の質量dmで除した商である。E = dE/dm。単位は1Gy = 1J/kg。 また、カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

C 正 照射線量の単位は C/kg で与えられる。

D 正 照射線量は空気に対して定義される。

問22

次の放射線のうち、カーマの適用できるものの組み合わせはどれか。

A 中性子線

B γ線

C α線

D β線

 

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 2

カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

問23

次のエネルギーに等価な量のうち、最も大きなものはどれか。

1 1 cal

2 1 J

3 1 GeV

4 2 W・s

5 0.5 N・m

解答 1

それぞれを J 換算する。

1 1 cal・・・4.2 J

2 1 J・・・1 J

3 1 GeV・・・1.6 × 10^(-19) × 10^9 = 1.6 × 10^(-10)

4 2 W・s・・・2 J

5 0.5 N・m・・・0.5 J

問24

次のシンチレータのうち、発光の減衰時間の一番短いものはどれか。

1 NaI(Tl)

2 CsI(Tl)

3 ZnS(Ag)

4 BGO

5 プラスチックシンチレータ

 

解答 5

無機シンチレータ特性表

シンチレータ 光収率(対NaI) 減衰時間(ns) 発光波長(nm)
 NaI(Tl)  100  250  415
 CsI(Tl)  45  1000  540
 CsI(Na)  85  630  420
 BGO  20  300  480
 BaF2  3  620  310
 CdWO4  30  14000  500
 LaBr3  165  16  380
 LSO  75  41  420
 ZnS(Ag)  130  110  450
 GSO  130  110  440

有機シンチレータにはプラスチックシンチレータ、液体シンチレータなどが挙げられる。これらの発光の減衰時間は通常数ナノ秒程度であり、NaI(Tl)シンチレータと比べると一桁以上短い。具体的にはプラスチックシンチレータは 2.4 ns

問25

Ge 検出器の Ge 結晶中で 1.33 MeV γ線のエネルギーがすべて吸収された場合、発生する電荷を電気容量 10pF のコンデンサーに送り込んで得られる電圧[mV] として最も近いものは、次のうちどれか。ただし ε値を 3.0 eV とする。

1 15

2 20

3 25

4 30

5 50

解答 4

εは電子ー正孔対を1個生成するのに必要な平均エネルギーであり、気体の場合の W 値に相当する。発生する電子ー正孔対数は (1.33 × 10^6)/3 = 4.43 × 10^5 個である。電子の電荷は 1.6 × 10^(-19) C、10 pF は 10 × 10^(-12) F であるから、得られる電圧は、[1.6 × 10^(-19) × 4.43 × 10^5]/(10 × 10^(-12)) = 7.1 × 10^(-3) V = 7.1 mV となる。

問26

気体検出ガス増幅に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 印加電圧が高くなるとガス増幅度は大きくなる。

B 計数ガスに少量の酸素を加えるとガス増幅度は大きくなる。

C 同じ印加電圧で陽極心線を細くするとガス増幅度は大きくなる。

D 計数ガスの圧力が増加するとガス増幅度は大きくなる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 2

ガス増幅について、

① 印加電圧が高くなると増幅度は大きくなる。

② 計数ガスに酸素を加えると酸素と電子が吸着し、増幅度は小さくなる。

③ 陽極心線を細くすると心線周辺の電場が強くなり、増幅度は大きくなる。

④ 計数ガスの圧力を強めると圧が高くなり増幅度は小さくなる。という特徴がある。

問27

β線に引き続き直ちにγ線を放出するβ線変核種の線源を βーγ 同時計数法により測定した結果、β線測定器の計数率が 800 s^(-1)、γ線測定器の計数率が 250 s^(-1) であり、同時計数率は 10 s^(-1) であった。この線源の放射能[MBq] に最も近い値は次のうちどれか。ただし、これらの測定器のバックグラウンド計数率は差し引いてあるものとする。

1 0.02

2 0.05

3 0.20

4 0.50

5 2.0

解答 1

β線測定器の計数率Nb(s^(-1))、γ線測定器の計数率Ng(s^(-1))、同時計数率Nc(s^(-1))とすると、A(Bq) = (Nb・Ng)/Nc の式から、A = (800 × 250)/10 = 2.0 × 10^4 = 0.02 MBq

問28

ビーム電流が 100 μA の 1.0 MeV 電子線が 1.0 kg の水に全エネルギーを吸収されるとき、この水での平均吸収線量率[Gy/s]に最も近いのはどれか。

1 1.0 × 10^2

2 1.6 × 10^2

3 1.0 × 10^3

4 1.6 × 10^3

5 1.0 × 10^4

解答 1

素電荷の値を q [C] とすれば、毎秒入射する電子数は (100×10^(-6))/q = 1.0 × 10^(-4)/q [個/s] である。1 eV は q [J]、1 MeV = 1 × 10^6 q[J] であるから、吸収線量率は 1.0 × 10^6 q [J] × 1.0 × 10^(-4)/q [個/s]/1.0[kg] = 1.0 × 10^2 [Gy/s] となる。

問29

無機シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

 

A NaI(Tl)は BGO に比べ単位エネルギー当たりの発光量が大きい。

B CsI(Tl) の密度は BGO よりも大きい。

C ZnS(Ag) は潮解性がある。

D CsI(Tl) のピーク発光波長は NaI(Tl) よりも長い。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

無機シンチレータについての表を下にまとめた。

無機シンチレータ特性表

シンチレータ 光収率(対NaI) 減衰時間(ns) 発光波長(nm)
 NaI(Tl)  100  250  415
 CsI(Tl)  45  1000  540
 CsI(Na)  85  630  420
 BGO  20  300  480
 BaF2  3  620  310
 CdWO4  30  14000  500
 LaBr3  165  16  380
 LSO  75  41  420
 ZnS(Ag)  130  110  450
 GSO  130  110  440

また無機シンチレータ・有機シンチレータに関するまとめを下記に記載する。

 

無機シンチレータの多くは、シンチレータの原子番号が比較的高く密度も高いことから、γ線の線量測定やエネルギー測定に使用する検出器に適している。無機シンチレータに分類される ZnS(Ag)シンチレータは通常α線の検出に用いられるが、多結晶のためエネルギースペクトルの測定に適さない。(ZnS(Ag)は多結晶 のため透明度が低く薄い膜状の検出器が用いられるため、飛程よりも厚い検出器が必要なエネルギー測定には適さない。)有機シンチレータのうちプラスチックシンチレータは主としてβ線、中性子線などの測定に用いられる。また原子番号が低く光電ピークの検出には適さないが、大容量のシンチレータが作成可能なためγ線ゲートモニタなどにも用いられる。液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定 できるためその放射性物質からの放射線について検出効率が高い。また放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定に極めて有効である。さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる 陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)

 

問30

イメージングプレート(IP)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子に対しては使用できない。

B 4 ~ 5 桁のX線強度変化に対する測定範囲を有する。

C 可視光を照射することにより再度使用できる。

D フェーディングはほとんど問題とならない。

E 溶解した有機シンチレータ結晶をプラスチックフィルムに塗布したものである。

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答 2

A 誤 荷電粒子は直接エネルギーを与えるのため高感度で測定できる。

B 正 4 ~ 5 桁のX線強度変化に対する測定範囲を有する。

C 正 可視光を照射することにより再度使用できる。

D 誤 室温では蛍光は 24 時間で約 60 % に低下する。

E 誤 IP には煇尽性蛍光体を塗布している。

α壊変・β壊変についての記述

α壊変は、原子核がα粒子すなわちヘリウム原子核を放出してより小さい原子核に壊変する現象であり、若干の例外を除いて質量数が 200 以上の重い原子核で起こる。アルファ壊変に伴い放出されるエネルギー、すなわち壊変エネルギーは Q値 と呼ばれ、親核、生成核並びにα粒子の質量欠損から求められる。このエネルギーが生成核及びα粒子に運動量を保存するように分配されるために、α粒子のエネルギーは線スペクトルを示す。226Ra が α粒子 を放出して 222Rn に壊変する 例を考えると、この壊変の Q値 は 4.9 MeV となる。また、α粒子のエネルギーは 4.8 MeV となる。ただし、226Ra、α粒子並びに 222Rn の結合エネルギーを、それぞれ 1731.6 MeV、28.3 MeV 並びに 1708.2 MeV とする。

 

解説

Q = ΔM(222Rn) + ΔM(4He) – ΔM(226Ra) = 1708.2 + 28.3 – 1731.6 = 4.9 MeV
続いて、運動エネルギーは質量に反比例して分配されので、E(α) = 4.9 × [222/(222+4)] = 4.8 MeV となる。

 

β壊変には、β-壊変、β+壊変及び電子捕獲があり、いずれも弱い相互作用によって起こる。β-壊変では原子核内の中性子が陽子に変わり、電子と反ニュートリノが放出される。壊変エネルギーは、生成核、電子(β-壊変)及び反ニュートリノの運動エネルギーに分配され、β-線のエネルギーは連続分布となる。一般に、β線のエネルギーは、電子が持ち出す最大のエネルギーで表されることが多く、これは壊変エネルギーに対応する。β+壊変では陽電子とニュートリノが放出される。その結果、 生成核の原子番号は1 つ減少する。また、質量数は変わらない。陽電子のエネルギー分布も連続分布で、その分布の形状は β-線のエネルギー分布と異なる。β+壊変における親核の質量を X、生成核の質量を Y とすると、壊変エネルギーは、 (X-Y-2m(0))c^2 と表すことができる。ただし、c を光速度、m(0) を電子の静止質量とする。電子捕獲は、原子核の 陽子が軌道電子と結合して中性子になり、ニュートリノを放出する現象である。これにより、電子軌道に空孔が生じ、そこへ外側の軌道の電子が遷移した場合には、特性X線又はオージエ電子が放出される。電子捕獲は最も内殻、すなわち K 殻にある電子で起こりやすく、これが起こった場合、K 軌道及び L 軌道における電子の結合エネルギーを E(K) 及び E(L) とすると、特性X線と競合して放出される電子のエネルギーは E(K) – 2E(L) となる。

 

補足

この場合の特性X線のエネルギーは E(K)-E(L) であり、オージエ電子のエネルギーは放出される電子の結合エネルギーだけ下がるので、仮に L 殻の電子が放出されるときは、[E(K)-E(L)] – E(L) = E(K) – 2E(L) となる。

 

α壊変やβ壊変後の生成核は励起状態にある場合が多い。γ放射は、このような励起状態の核種がより安定になるためγ線を放出してエネルギーのより低い状態へ変化する現象をいう。γ放射において、核子の構成に変化はない。又、励起状態からの移行は一般に瞬時に起こるが、その励起状態の寿命が測定できるほど長い場合を核異性体転移という。γ線を放出する代わりに、軌道電子を放出する過程を内部転換といい、放出される電子のエネルギーは線スペクトルをします。

荷電粒子の磁場中の運動についての記述

荷電粒子が磁場の中を運動するとき、軌道が曲がることはよく知られている。質量 M 、電荷 ze の荷電粒子が速度 v で磁束密度 B の磁場中で磁場に直角に運動するとき、粒子にはローレンツ力と呼ばれる力 F が働き、F = ze・v・B である。このとき、この力 F と粒子に働く遠心力が釣り合って円運動をすることから、その円運動の軌道半径を r とすると、F = M・v^2/r が成り立つ。粒子が円軌道を一周するのに要する時間 Tr は、Tr = 2・π・r/v = (2・π・M)/(ze・B) となる。非相対論的速度の範囲では、Tr は粒子のエネルギーによらずほぼ一定であると見なすことができる。このように、集会の周波数 1/Tr が粒子のエネルギーによらないという性質を利用している加速器がサイクロトロンである。この加速器では、磁場に直角にディーと呼ばれる2個の半円形電極を向かい合わせに起き、これに高周波電圧を印加する。粒子は2つの電極間ギャップを通過するときに印加された電圧に対応するエネルギーを得る。加速により粒子の軌道半径は大きくなるが、周期は変わらない。粒子が半回転して、もう一方の電極に達したときに電圧が逆転するようにすると、粒子はまた加速され、加速と共にその軌道半径は大きくなる。粒子の円軌道の最大半径を R とすれば、最終的に得られる粒子エネルギー E は、E = (B・ze・R)^2/(2・M) となる。最大軌道半径 0.5[m]、磁束密度を 2[T] とし (4He)2+ を加速すると、この粒子に与えられるエネルギーは 48 [MeV] となる。ただし、1[T] = 1[V・s・m^(-2)]、1[u] = 1.66 × 10^(-27) [kg] とする。

解説 素電荷は e = 1.60 × 10^(-19) [C] であり、(4He)2+ の質量は 4u と近似できるので、E = (2×2×1.6×10^(-19)×0.5)^2/(2×4×1.66×10^(-27)) = 7.71 × 10^(-12) [J] = (7.71×10^(-12))/(1.6×10^(-19)) [eV] = 4.81 × 10^7 [eV] = 48.1 [MeV]

質量数 a、運動エネルギー E の入射粒子と質量数 A の静止した標的核が衝突を起こし、一体となって複合核を形成した後、何らかの粒子を放出してある原子核に壊変する場合を考える。衝突の前後の粒子や原子核の質量差をエネルギーに換算したものは、反応エネルギーあるいは Q値と呼ばれる。Q値が正の場合を発熱反応といい、負の場合を吸熱反応という。吸熱反応の場合には、入射粒子のエネルギーが Q値の絶対値を超えないと反応は起こらない。核反応が起こるための入射粒子の最小エネルギー E(max)をしきいエネルギーという。ここで、複合核の概念を用いて最小エネルギー E(min)を求めてみる。複合核の運動エネルギー Ec は、運動量 保存則を用いて、Ec = a/(a+A)・E となる。E(min)は、反応の Q値の絶対値と複合核の運動エネルギーの和に等しくなる入射粒子のエネルギーに相当するから、E(min) = (a+A)/A・|Q| となる。ここで、27Al(n,α)24NA の核反応を考える。標的核は静止しているとすると、反応の Q 値は -3.13 MeV となり吸熱反応である。このとき、反応を起こすために必要な入射粒子である中性子の最小エネルギーは、 3.25 MeV である。ただし、27Al、4He、24Na、の結合エネルギーを、それぞれ 224.9520 MeV、28.2957 MeV、193.5235 MeV とし、陽子及び中性子の静止エネルギーをそれぞれ 938.2796 MeV 及び 939.5731 MeV とする。 放出粒子が荷電粒子の場合には、標的核が大きくなると、複合核からの粒子放出がその間のクーロン障壁によって妨げられることがある。

解説

質量をそれぞれ、27Al:M(Al)、中性子:M(n)、α粒子:M(α)、24Na:M(Na)、陽子:M(p)、結合エネルギーをそれぞれ、27Al:B(Al)、α粒子:B(α)、24Na:B(Na)、また光の速度を c とする。
Q = [M(Al) + M(n) – [M(α) + M(Na)]]・c^2
= [13M(p)c^2 + 14M(n)c^2 + – B(Al)] + [M(n)c^2] – [[2M(p)c^2 + 2M(n)c^2 – B(α)] + 11M(p)c^2 + 13M(n)c^2 – B(Na)] = -B(Al) + B(α) + B(Na) = -224.9520 + 28.2957 + 193.5235 = -3.1328 [MeV]

反応を起こすために必要な最小エネルギー「しきいエネルギー」は (1+27)/27 × 3.1328 = 3.249[MeV]

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

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