問1
次の記述のうち、相対論的立場から正しいものの組み合わせはどれか。
A 光子のエネルギーは、波長に逆比例する。
B 光子の運動量は、エネルギーに比例する。
C 粒子のド・ブロイ波長は、運動量に比例する。
D 粒子の運動量は、速度に比例する。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 1
A:正 エネルギーE = h・ν = (h・c)/λ
B:正 運動量P = E/c = (h・ν)/c
C:正 運動量P = mv = √2Em = c/λ λ = c/(mv)・・・これを物質波(ド・ブロイ波)という。
D:誤 速度 v が小さい非相対論的領域ではこのような式が成り立ち、運動量P = mv = √2Em = c/λ 正しいが、v が大きい相対論的領域では、運動量 p は m を質量、c を光速として、p = (mv)/[√1-(v/c)^2]で与えられる。
問2
水に 2 Gy の吸収線量が与えられた場合、平均の温度上昇(℃)として最も近い値はどれか。ただし、この水は断熱環境下にあり、照射による吸収エネルギーはすべて温度上昇に費やされるものとする。
1 1.0 × 10^(-4)
2 5.0 × 10^(-4)
3 1.0 × 10^(-3)
4 2.0 × 10^(-3)
5 5.0 × 10^(-3)
解答 2
水の比熱は 1 [cal・℃(-1)・g(-1)] = 4.2 × 10^3 [J・℃(-1)・kg(-1)]であるから、温度上昇 ΔT[℃]は、ΔT = 2/(4.2 × 10^3) = 4.8 × 10^(-4) [℃]
問3
同一原子のK殻とL殻の電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
1 ボルツマン定数 ー J・kg
2 アボガドロ定数 ー mol・kg(-1)
3 プランク定数 ー J・s
4 ファラデー定数 ー J・mol(-1)・K(-1)
5 リュードベリ定数 ー m
解答 3
1:誤 ボルツマン定数・・・通常 k で表し、k = 1.38 × 10^(-23) [J/K]
2:誤 アボガドロ定数・・・通常 N(A) で表し、N(A) = 6.02 × 10^23 [mol^(-1)]
3:正 プランク定数・・・通常 h で表し、h = 6.63 × 10^(-34) [J・s]
4:誤 ファラデー定数・・・通常 F で表し、F = N(A)・e = 6.02 × 10^23 × 1.602 × 10^(-19) = 9.65 × 10^4[C/mol]
5:誤 リュードベリ定数・・・通常R(∞)で表し、R(∞) = 1.10 × 10^7[m^(-1)]
問4
原子核に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 原子核の半径は 10^(-14) m より小さい。
B 原子核を構成する核子には、中性子、陽子及び電子がある。
C 核子間の結合力は、距離の2乗に反比例する。
D 56Fe の原子核においては核子当たりの結合エネルギーは 8 MeV 程度である。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 4
A:正 原子核の半径は 10^(-14) 〜 10^(-15) m 。
B:誤 原子核を構成する核子は陽子と中性子である。
C:誤 核力の到達距離は有限で極めて短い。2乗に反比例するのは電気力、万有引力などである。
D:正 正確には 8.8 MeV である。
問5
内部転換に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 同時にニュートリノが放出される。
B 原子核の励起エネルギーの放出過程である。
C 原子の軌道電子が放出される。
D 原子番号が 1 つ増加する。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 4
核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換といい、放出される電子、つまり内部転換電子は線スペクトルをもつ。 この放出される電子が K殻、L殻等の電子にエネルギーを与えることで特性X線が放出される。 よってニュートリノは放出されない。
問6
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 内部転換に伴って特性X線が放出されることがある。
B 光電効果に伴って特性X線が放出されることがある。
C 特性X線の波長は制動X線の波長より長い。
D 同じ原子において、KX線の波長はLX線の波長より長い。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
A:正 K殻電子が多く放出され、その空席をL殻などの上位のエネルギー順位の電子が遷移して埋める際に特性X線が放出される。
B:正 光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。
C:誤 制動X線のエネルギーは 0 から入射荷電粒子のエネルギーまで分布するため、波長の最大値(エネルギーは最小)は特性X線の波長よりも長い。
D:誤 K殻の空席をL殻以上の電子が遷移して埋める際に放出されるのがKX線、同様にL殻の空席に伴うのがLX線である。KX線の最小エネルギーはL殻電子が遷移する場合であるが、K殻とL殻のエネルギー差はL殻の結合 エネルギーよりもずっと大きい。すなわち特性X線の中ではKX線のエネルギーが最も大きく、波長が短い。
問7
次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 22Na の半減期は、24Na の半減期より短い。
2 57Co の半減期は、60Co の半減期より短い。
3 125I の半減期は、131I の半減期より短い。
4 134Cs の半減期は、137Cs の半減期より短い。
5 235U の半減期は、238U の半減期より長い。
解答 2 基本的には半減期を覚えておくしかない。
1 誤 22Na:2.6年 > 24Na: 15時間
2 正 57Co:272日 < 60Co: 5.3年
3 誤 125I:60日 > 131I: 8.0日
4 誤 134Cs:2.1年 < 137Cs: 30年
5 誤 235U:7.0億年 < 238U: 45億年
問8
次のうち、純β線放出核種でないものはどれか。
1 14C
2 35S
3 47Ca
4 90Sr
5 90Y
解答 3
47Caは半減期 4.5日で 1.3 MeV のγ線を放出する。
問9
232Th(原子番号90)が208Pb(原子番号82)に壊変するまでに起こる壊変の回数の正しい組み合わせはどれか。
(α壊変の回数) (β-壊変の回数)
1 5回 3回
2 5回 4回
3 6回 3回
4 6回 4回
5 6回 5回
解答 4
α壊変では質量数Aが4、原子番号Zが2減る。β-壊変ではAは変化せす、Zが1増える。両者のAの差は24であるから、α壊変数は 24/4 = 6 回である。6 回のα壊変によって Zは12減る。両者のZの差は8であるから、β-壊変数は 12-8 = 4回である。
問10
加速器に関する次の関連のうち、適切なものの組み合わせはどれか。
A シンクロトロン ー 静磁場
B サイクロトロン ー ディー電極
C ファン・デ・グラーフ型加速器 ー 高周波電圧
D コッククロフト・ワルトン型加速器 ー 絶縁ベルト
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ABCDすべて 5 1から4の選択肢以外
解答 5
A 誤 シンクロトロン・・・シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。
B 正 サイクロトロン・・・D電極の上下に磁石を設置し、D電極に+、ーの高周波を掛けると、荷電粒子は回転運動を始め、ギャップで加速され、回転半径は大きくなり、ビームとして取り出される。D電極上下の磁界は直流磁界で 高周波は一定周波数を用いギャップ間で加速する。高周波静磁場を用いてイオンのみを加速させる。現在は粒子線治療とPET薬剤生成加速器に用いられる。
C 誤 ファン・デ・グラーフ型加速器・・・超高圧タンク内に絶縁ベルトを回転させ、電荷を帯電球に貯めて、超高静電圧を抵抗によって分圧し、加速管に電圧を加えて加速する。帯電球に電荷が貯まると、ベルト上の電荷と 斥力が作用し、ベルトの回転数が低下したり放電を発生する。超高圧ガスはは放電防止用窒素ガスである。直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。
D 誤 コッククロフト・ワルトン型加速器・・・コンデンサーと整流器を組み合わせた倍圧整流回路を利用して、コンデンサーに高電圧を貯めて、コンデンサーから加速管に高電圧を印加する事で荷電粒子を加速する。直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。
問11
熱中性子と 3He との核反応に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。
A 水素の原子核(陽子)が放出される。
B トリチウムの原子核が放出される。
C 重水素の原子核が放出される。
D ヘリウムの原子核が放出される。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
3He(n,p)3H 反応に関する問題である。
問12
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 24Naから放出されるγ線を重水に照射すると、中性子が放出される。
B 226Ra から放出される α線をベリリウムに照射すると、中性子が放出される。
C 150keV の 2H ビームを 3H に照射すると、中性子が放出される。
D 241Am から放出されるα線を天然ホウ素に照射すると、中性子が放出される。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ACDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
A 正 重水素 3H の結合エネルギーは 2.2 MeV であり、24Na の 2.75 MeV γ線によって光核反応を生じ、陽子と中性子に分解することがある。。
B 正 9Be(α,n)12C 反応を利用して中性子線源に用いる。
C 正 3H(d,n)4He 反応によって 14MeV の中性子が放出される。
D 正 通常用いられるのは 9Be(α,n)12C 反応を利用した 241Am – Be 線源であるが、10B(α,n)13N 、11B(α,n)14N 反応を利用した 241Am – B 線源も使われる。241Am – Be 線源の平均中性子エネルギーが約 5 MeV であるのに対し、241Am – B 線源では約 3 MeV と低く、中性子放出率は低い。
問13
1 MeV の陽電子線を銅に照射した時に放出されない放射線はどれか。
1 制動放射線
2 消滅放射線
3 特性X線
4 内部転換電子
5 オージエ電子
解答 4
1 発生する 制動放射線・・・速い電子又は荷電粒子が原子核の近傍を通るとき、核の陽電荷によるクーロン力を受けて強く制動されるとき、余るエネルギーが光子の形で放射される。これが制動放射で放射される。
2 発生する 消滅放射線・・・陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅する。 消滅時に0.51 MeVの消滅線を180°方向に2本放出する消滅放射線は0.51 MeV の単色光である。
3 発生する 特性X線・・・特性X線が放出されるのはβ-壊変、β+壊変あるいはα壊変の後に内部転換を生じた場合、または軌道電子捕獲ECの場合である。陽子は軌道電子捕獲 p + e- → n + ν という反応を示すので特性X線が発生する。
4 発生しない 内部転換電子・・・核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換といい、放出される電子を内部転換電子という。内部転換電子は核が励起状態でなければ発生しない。
5 発生する オージエ電子・・・光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線の エネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子という。
問14
陽電子に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A 真空中では陽電子は安定である。
B 消滅光子のエネルギーは、ドップラー効果により広がりを持つ。
C 陽電子の消滅に際して、3個の消滅光子を放出することがある。
D 陽電子と電子がポジトロニウムをつくる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
A 正 消滅することなく安定である。
B 正 ともに消滅する相手である軌道電子は相当な運動量を持っているので、消滅放射線は放出方向に依存してエネルギーが広がる。
C 正 電子と光子のスピンと呼ばれる性質のため、ポジトロニウムの状態によっては3個あるいはそれ以上の光子が対消滅によって放出されることがある。。
D 正 陽電子と電子の対は、互いの引力によってポジトロニウムと呼ばれる原子のような状態を示し、短時間で対消滅する。
問15
5 MeV のα線に対するアルミニウム中の飛程を R(Al)[cm]、鉄中の飛程を R(Fe)[cm]とすると、飛程の比[R(Al)/R(Fe)]に最も近い値は次のうちどれか。ただし、アルミニウム及び鉄の密度は、それぞれ 2.7 g/cm3、7.9 g/cm3 である。
1 0.1
2 0.5
3 1
4 2
5 3
解答 4
飛程に密度を乗じた値は、物質の質量数の平方根に比例する(ブラッグ・グレーマン則)。重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、質量数の平方根に比例するというもの。物質M(原子量A、密度ρ)中の飛程Rと、物質M0(原子量A0、密度ρ0)中の飛程との比は次のように表される。R/R0 = (√A/A0)/(ρ/ρ0) = (√A/A0) × (ρ0/ρ)。 アルミニウム、鉄の質量数はそれぞれ約 27 と 56 であるから、密度をそれぞれ ρ(Al)、ρ(Fe)とすれば、R(Al)/R(Fe) = (√27/56)/(2.7/7.9) = (√27/56) × (7.9/2.7) = (√2)/2 × 7.9/2.7 = 2.1 となる。
問16
4.8 MeV のα線が空気中で停止するまでの間に生成するイオン対数として、最も近い値は次のうちどれか。
1 1.4 × 10^3
2 7.2 × 10^3
3 1.4 × 10^4
4 7.2 × 10^4
5 1.4 × 10^5
解答 5
空気のW値は約 34 eV であるので、イオン対数 = (4.8×10^6)/34 = 1.4 × 10^5 個
問17
次の3つの荷電粒子に対する水中飛程の大小関係として、最も適切なものはどれか。
A 100 MeV の陽子
B 200 MeV の重陽子
C 1200 MeV の 12C原子核
1 A<B<C 2 B<A<C 3 C<A<B 4 C<B<A 5 1 から 4 の選択肢以外
解答 3
飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 という式が成り立つで計算すると C<A<B が成り立つ。
問18
2 MeV の光子における線減弱係数と線エネルギー転移係数とが異なる要員として、正しいものの組み合わせはどれか。
A 2次電子の放射エネルギー損失
B コンプトン散乱光子の放出
C 軌道電子の結合エネルギー
D 電子ー陽電子対の生成
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 4
エネルギー転移係数は光電効果、コンプトン効果、電子対生成などにより発生する2次電子に転移されるエネルギーの割合を表す値であるため、2次電子がどのような過程でエネルギーを失うかについては無関係であるため A は誤りとなる。
問19
コンプトン散乱に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 入射光子と軌道電子との非弾性衝突である。
B 電子のコンプトン波長は散乱角 90° の散乱光子の波長と入射光子の波長との差に等しい。
C コンプトン電子は光子の入射方向と逆向きには反跳されない。
D 入射光子のエネルギーが大きくなるほど後方へ散乱光子の割合が大きくなる。
解答 3
A 誤 コンプトン効果は波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となるため弾性散乱となる。
B 正 h/(mc) をコンプトン波長λ0 という。散乱前後の光子のエネルギーをE、E’、波長をλ、λ’とする。90°方向への散乱では E’ = E/[1+(E/mc^2)] である。E = hc/λ、E’ = hc/λ’ を代入して整理すると、λ’ = λ + h/(mc) = λ + λ0 が得られる。
C 正 電子は入射方向に対して 0度 ~ 90度の範囲に反跳される。
D 誤 入射光子のエネルギーが大きくなるほど後方へ散乱光子の割合が小さくなる。
問20
コリメートされた 1 MeV 光子がコンクリート(密度:2.35 × 10^3 kg/cm3) に入射するとき、最初に相互作用を起こすまでのコンクリート中での平均距離(m)として最も近い値はどれか。 ただし、1 MeV 光子に対する質量減弱係数を 6.38 × 10^(-3) m2/kg とする。
1 0.07
2 0.1
3 0.13
4 0.16
5 0.19
解答 1
ここで求める平均距離は平均自由行程 L であり、平均自由行程L = 1/μ で表される。
よって L = 1/(6.38 × 10^(-3) × 2.35 × 10^3) = 0.067 [m] となる。
問21
異なる物質I及び物質Ⅱに対する室減弱係数(μ/ρ)及び質量エネルギー吸収係数(μ(en)/ρ)を下図に示す。これらの図に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 原子番号が小さいのは物質Ⅰである。
B 物質Ⅰにおける図の低エネルギー域で見られる曲線の不連続部分はK吸収端である。
C 物質Ⅱにおける図で実線と点線の重なる領域は主に光電効果に起因する。
D 実線は質量減弱係数を表す。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
物質Iで約 2 keV、物質Ⅱで約 90 keV に見られる不連続はともにK吸収端であり、物質Ⅱではさらに低エネルギー 領域にL、M吸収端が見られる。原子番号が大きくなると、吸収端のエネルギーは高くなる。エネルギー吸収係数は減弱係数よりも必ず小さいので、図では実線が質量減弱係数、点線が質量エネルギー吸収係数である。 低エネルギー領域では光電効果が優勢なため、両者の差は小さい。
問22
次の反応のうち、中性子捕獲反応はどれか。
1 (n,α)
2 (n,p)
3 (n,n’)
4 (n,f)
5 (n,γ)
解答 5
1 (n,α)・・・α線放出
2 (n,p)・・・陽子線放出
3 (n,n’)・・・非弾性散乱
4 (n,f)・・・核分裂反応
5 (n,γ)・・・中性子捕獲反応
問23
量と単位に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A カーマ ー J・kg^(-1)
B 質量阻止能 ー MeV・kg^(-1)・m^2
C 線エネルギー吸収係数 ー MeV・m^(-2)
D 粒子フルエンス ー m^2・s^(-1)
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 2
A 正 カーマ ー J・kg^(-1)
B 正 質量阻止能 ー MeV・kg^(-1)・m^2
C 誤 線エネルギー吸収係数 ー m^(-1) が正しい単位
D 誤 粒子フルエンス ー m^(-2) が正しい単位
問24
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A W値は電子線に対して用いることができる。
B カーマは光子線に対して用いることができる。
C 照射線量は中性子に対して用いることができる。
D 吸収線量は陽子に対して用いることができる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ACDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
A 正 W値はすべての荷電粒子に対して用いることができる。
B 正 カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。
C 誤 照射線量は光子が空気と相互作用するときにだけ用いることができる。
D 正 吸収線量はすべての放射線に対して用いることができる。
問25
十分に長い半減期を持つ放射線源からのβ線を1秒間ずつ1000回計数したところ、平均値として200カウントを得た。この場合、計数値が228を超えた回数として期待される数は、次のうちどれか。
1 15
2 20
3 25
4 30
5 50
解答 3
標準偏差は σ = √200 ≒ 14 であり、228は平均値(x’) + 2σ に相当する。計数値が[x’± 2σ]の範囲になる確率は 95% であるから、約950 回は 172 から 228 のはずであり、228 を超えるのは残りの半分、約 25 回である。
問26
32P 線源を GM管式計数装置で 1分間測定したところ、60000カウントであった。32P の半減期に相当する 14.3日後に同じ条件で測定したところ、1分間に 33000カウントを得た。この計数装置の分解時間(μs)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、バックグラウンドは無視できるものとする。
1 150
2 180
3 200
4 220
5 250
解答 2
始めの測定の計数率は n1 = 1000 s^(-1)、2回目の計数率は n2 = 550s^(-1) である。数え落としを補正した計数率をそれぞれ n10 s^(-1)、n20 s^(-1)、分解時間を τs とすれば、n10 = n1/(1-n1τ)、n20 = n2/(1-n2τ)、1半減期による減衰から n10 = 2(n20) が成立する。すなわち、1000/(1-1000τ) = 2×550/(1-550τ)、これにより τ = 1.8 × 10^(-4) s = 180 μs となる。
問27
時定数 10s のサーベイメータに急激に一定の強さの放射線を照射した場合、指示値が最終値の 90% になるまでに要する時間(s)として、最も近い値は次のうちどれか。ただし、計数率はバックグラウンド計数率よりも十分高いものとする。また、ln10 = 2.3 とする。
1 20
2 23
3 26
4 29
5 32
解答 2
指示値 x は、十分時間が経過した後の指示値を x0、時定数を τ として、x = x0(1 – e^(-t/τ)) にしたがって上昇する。90% に達する時間を Ts とすると、0.9 = (1 – e^(-T/10)) すなわち 0.1 = e^(-T/10) となる。両辺の自然対数をとると、ln0.1 = -(T/10)、すなわち ln10 = T/10 よって T ≒ 23 s となる。
問28
次の検出器のうち、熱中性子の測定に用いられるものの組み合わせはどれか。
A 水素充填比例計数管
B BF3比例計数管
C 金箔と放射能測定器
D 3He比例計数管
E ポリエチレンラジエータ付きSi半導体検出器
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 4
A 誤 水素充填比例計数管・・・高速中性子測定
B 正 BF3比例計数管・・・熱中性子測定
C 正 金箔と放射能測定器・・・熱中性子測定
D 正 3He比例計数管・・・熱中性子測定
E 誤 ポリエチレンラジエータ付きSi半導体検出器・・・高速中性子測定
問29
光子に対する個人被ばく線量測定に用いられる測定器として、正しいものの組み合わせはどれか。
A OSL線量計
B 蛍光ガラス線量計
C TLD
D 放射化箔検出器
E 固体飛跡検出器
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 1
A 正 OSL線量計
B 正 蛍光ガラス線量計
C 正 TLD
D 誤 放射化箔検出器・・・感度が低く、大線量の中性子測定に用いられる。
E 誤 固体飛跡検出器・・・中性子の個人被ばく線量測定に用いられる。
問30
次のうち、シンチレーション検出器に関係のあるものの組み合わせはどれか。
A POPOP
B 光電陰極
C スチルベン
D アクチベータ(活性炭)
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ACDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
A 正 POPOP・・・POPOPは、PPO、ブチルPBD、DMPOPOPなどと同様、液体シンチレータの溶質として用いられる。
B 正 光電陰極・・・光電子増倍管の光を受ける電極である。
C 正 スチルベン・・・固体有機シンチレータの一種である。
D 正 アクチベータ(活性炭)・・・NaI(Tl)シンチレータに微量に添加されている Tl はアクチベータとして作用する。
放射性物質の壊変についての記述
Ⅰ
β- 壊変の際は、核電荷が 1 だけ増加する。β+ 壊変の際は核電荷が 1 だけ減少すると同時に電荷を持つ陽電子と電荷を持たないニュートリノが放出される。電子捕獲の際には、核電荷が 1 だけ減少すると同時にニュートリノが 1 個放出される。 このとき K 軌道電子が最も捕獲されやすい。電子捕獲の後続過程として、特性X線又はオージエ電子が放出される。
Ⅱ
1 MeV の光子と軟組織との相互作用の大部分はコンプトン効果であり、その結果生じる二次電子が軟組織中の原子、分子を励起又は電離して、エネルギーが付与される。その平均線エネルギー付与の大きさは、α線に比べて小さい。放射線防護の立場では、このような二次電子に対する放射線荷重係数の値が 1 と定められている。
Ⅲ
その場所における 1 MeV の光子に対する軟組織の吸収線量が 240 mGy であるとき、その光子のエネルギーフルエンスは 8.0 × 10^(-3) J/cm2、光子フルエンスは 5 × 10^(10) cm^(-2)、軟組織の単位体積 1 cm3 中に生成するイオン対の平均数は 6 × 10^(13) 個である。ただし、1 MeV 光子に対する軟組織の質量エネルギー吸収係数を 0.03 cm2/g、軟組織の比重を 1、 軟組織で 1 イオン対を生成するのに必要な平均エネルギーを 25 eV とし、1 eV = 1.6 × 10^(-19) J とする。
解説
光子フルエンスを Φ、エネルギーフルエンスを φ、質量エネルギー吸収係数を μ(en)、軟組織の比重を ρ、W値を W、吸収線量を D、軟組織 1 cm3 中に生成するイオン対数を N と置けば、エネルギーフルエンスの定義より、
φ = 1.0 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) × Φ = 1.6 × 10^(-13)Φ J/cm2・・・①
光子によるエネルギー吸収より、
D = μ(en)φ × 10^3 J/Kg・・・②
一方、生成するイオン対数より、
D = (W × 1.6 × 10^(-19)N)/(ρ × 10^(-3)) J/kg・・・③
D = 0.24 Gy であるから、②より、
φ = D/(μ(en) × 10^3) = 0.24/(0.03 × 10^3) = 8.0 × 10^(-3) J/cm2 となる。
また、①より、
Φ = φ/(1.6 × 10^(-13)) = 5.0 × 10^10 cm^(-2) となる。
また、③より、
N = (D × ρ × 10^(-3))/(W × 1.6 × 10^(-19)) = (0.24 × 1 × 10^(-3))/(25 × 1.6 × 10^(-19)) = 6.0 × 10^13 cm^(-3) となる。
Ⅱ
光子と物質との相互作用において主要な反応は、下図に示すように、光電効果、コンプトン効果及び電子対生成であり、入射光子エネルギーや物質の原子番号 Z に関連して起こる確率が異なる。図中に示された t、s、k をそれぞれの相互作用の線源弱係数とすると、t は Z^5 に、s は Z に、k は Z^2 に概ね比例する。これらの3つの相互作用のほかに、確率は小さくなるが、レイリー散乱や光核反応がある。光核反応は光子エネルギーが数 MeV 以上になった時に重要で、光子が物質の原子核に吸収され、中性子等を放出させる現象をいう。
Ⅱ
高速中性子と質量数 A の原子核との衝突が弾性散乱である場合には、原子核内部のエネルギーに変化は起こらず、入射中性子と原子核の間にはエネルギー並びに運動量の保存則が成り立つ。衝突の前後における中性子のエネルギーをそれぞれ E1 及び E2 とすると、衝突後の中性子の取り得るエネルギーが最小となるのが正面衝突、最大となるのが接線衝突の場合であるから、その範囲は、
α = [(A-1)/(A+1)]^2 とすると、
αE1 < E2 E1 ・・・①
となり、このエネルギー範囲で一様な確率分布となる。
一方、原子核の反跳エネルギー E(R) の取り得る値は、
0 < E(R) (1-α)E1 ・・・②
となる。特に標的となる原子核が水素の場合には、衝突後の中性子の取り得るエネルギー範囲は、
0 < E2 < E1 ・・・③
となり、平均エネルギーは、
E’2 = (1/2)E1・・・④
となる。
また中性子が 12C 原子核に衝突する場合の 12C 原子核の最大反跳エネルギーは、(48/169)E1 となる。
解説
衝突後の中性子エネルギーが最小になるのは、散乱角が 180 度、すなわち中性子が進んできた方向に戻っていく場合であり、正面衝突の際に生じる。逆に衝突後の中性子エネルギーが最大となるのは、かすかな衝突(接線衝突)の場合であり、散乱角は 0 度である。
次に中性子の質量を m、原子核の質量を M、実験室系での衝突前の中性子の速度を v0、衝突後の中性子の速度を v、原子核の速度を V とすれば、エネルギー保存則より次式が成り立つ。
(1/2)mv0^2 = (1/2)mv^2 + (1/2)MV^2・・・(1)
運動量の保存則より、接線衝突、すなわち θ = 0 度のときは次式が成立する。
mv0 = mv + MV・・・(2)
ここで、v > 0 の場合は衝突後の中性子の進行方向が衝突前と同じであることを示す。②より、
V = (m/M) × (v0-v)・・・(3)
(3)を(1)に代入して整理すれば、
(v0-v)[v0(M-m)+v(M+m)] = 0・・・(4)
(4)の解は2通り存在し、
v0 = v・・・(5)
または、v0(M-m) + v(M+m) = 0 v = -[(M-m)/(M+m)]v0・・・(6)
⑤の解は θ = 0 度の接線衝突に相当し、中性子速度は散乱によって変化せず、E2 = E1 である。
v < 0 の⑥の解は θ = 180 度 の正面衝突に相当し、中性子は来た方向に戻っていく。その時のエネルギーは、
E2 = (1/2)mv^2 = (1/2)m[(M-m)/(M+m)]^2 × V0^2 = [(M-m)/(M+m)]E1・・・(7)
u を原子質量単位とすれば、m ≒ 1u、M ≒ Au であるから、(7) は。
E2 = [(A-1)/(A+1)]^2 × E1・・・(8)
と書くことがきる。したがって αE1 < E2 < E1 である。重心系での散乱角度分布が等方でであるとき、このエネルギー範囲で E2 は一様な分布を示す。
E(R) = E1 – E2 であるから、
E2 = E1 -E(R)・・・(9)
(9)を①に代入すれば、
αE1 < E1 – E(R) < E1 ・・・(10)
(10)を整理すれば次式が得られる。
0 < E(R) < (1-α)E ・・・(11)
原子核が水素の場合は A = 1 であるから、α = 0 となり、次式が得られる。
0 < E2 < E1 ・・・(12)
E2 の分布は一様であるから、E2 の平均値 E’2 は、
E’2 = (1/2) × (0+E1) = (1/2)E1・・・(13) である。
原子核が 12C の場合は、A = 12 であるから、
α = [(12-1)/(12+1)]^2 = 121/169・・・(14) となる。
したがって反跳核の最大エネルギーは、
[1-(121/169)] × E1 = (48/169) × E1 である
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。
https://www.radiologist-study.org