第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説 第2弾
問1
次のうち、1(又は100%)を超える可能性のあるものの組み合わせはどれか
A 内部転換係数
B 蛍光収率
C ファノ因子
D 同位体存在度
E 線量ビルドアップ係数
1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE
解答 5
解説
A 正:内部転換係数 = [内部転換電子放出数]/[γ線放出数] であり、0 から無限大までの値をとりうる。
B 誤:蛍光収率 = 電子軌道の空席あたりに放出される特性X線の割合 <= 1 である。
C 誤:ファノ因子は検出器のエネルギー分解能に関する因子。放射線が検出器に入射した際に生成されるチャージキャリアなど(電子-イオン対、電子-正孔対など)の個数を N とすると、ファノ因子 F は、F = [観測された N の分散]/[ポアソン統計から予測される N の分散]で定義される。シンチレーション検出器では F = 1 であるが、Ge検出器では F = 0.13 程度であり、電子-正孔対の生成が独立した現象出ないことを示している。F <= 1
D 誤:同位体存在度 = 天然に存在する元素中の各同位体の原子数割合(百分率) <= 100
E 正:線量ビルドアップ係数 = [ある点に到達する全光子による線量]/[散乱を受けていない一次光子による線量] >= 1 となる。
問2
次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 光子の真空中での速度は、光子のエネルギーにより異なる。
2 光子のエネルギーは、振動数に比例する。
3 光子の運動量は、エネルギーに比例する。
4 光子は粒子性とともに波動性を示す。
5 X線とγ線はいずれも光子である。
解答 1
解説
1 誤:真空中の光の速度は一定で、c = 3.0 × 10^8(m/s)。物質中と真空中では異なる。光の速度 = c/[物質の屈折率]
2 正:E = h・ν より、光子のエネルギーは振動数に比例する。
3 正:運動量P = E/c = (h・ν)/c となり、光子の運動量はエネルギーに比例する。
4 正:
5 正
問3
原子の軌道電子の結合エネルギーが関係するものとして正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。
A 内部転換電子のエネルギー
B 吸収端のエネルギー
C 特性X線のエネルギー
D 消滅放射線のエネルギー
E 弾性散乱中性子エネルギー
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 1
解説
A 正:核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換というため関係がある。
B 正:吸収端とは軌道電子の結合エネルギーが切れて、外側の電子軌道に移れるエネルギーを指します。
C 正:特性X線は軌道電子の結合エネルギーが切れて、原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される。
D 誤:電子対生成で発生した陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅放射線が発生する。
E 誤:原子核の質量と散乱角度に依存する。
問4
次のうち、特性X線を放出しないものはどれか。
1 高速電子の電離・励起作用
2 光電効果
3 軌道電子捕獲(EC)
4 α線のラザフォード散乱
5 内部転換
解答 4
解説
1 誤:電離によって深い軌道に空席が生じた場合、あるいは励起にともなって特性X線が放出されることがある。
2 誤:光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。
3 誤:軌道電子捕獲が起こると空席の軌道を外側の電子が埋めるので、特性X線の発生あるいは、オージエ電子の放出がある。
4 正:ラザフォード散乱は、α線等の荷電粒子が原子核のつくる電場によって散乱される現象であり、正の電荷をもつ原子核が、原子の中心に、ほぼ点状に存在することが見出された。したがって特性X線は放出されない。
5 誤:核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換といい、この放出される電子が K殻、L殻等の電子にエネルギーを与えることで特性X線が放出される。
問5
β壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 最大エネルギーが同じでも、β+壊変とβ-壊変では、エネルギースペクトルの形状は異なる。
B β+壊変は、壊変前後の中性原子の質量差が電子の質量以上で起きる。
C β-壊変における壊変の最大エネルギーは、壊変前後の中性原子の質量差で決まる。
D β壊変の壊変エネルギーは、常に娘核種とβ粒子に分配される。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 2
解説
A 正:β-壊変とβ+壊変では下図のようにスペクトルの形状は異なる。
B 誤:電子の質量の 2 倍以上の質量差が必要。
C 正
D 誤:β+壊変 p → n + ν + e+ という壊変をする。一方 β-壊変は n → p + ν- + e- となり、ニュートリノも放出される。
問6
ヘリウム原子核4Heの結合エネルギー(MeV)として最も近い値は、次のうちどれか。
1 0.3
2 1
3 3
4 10
5 30
解答 5
解説 核子あたりの結合エネルギーは約 7 eV であり、7 × 4 = 28 eV となる。
問7
10GBqの241Amの質量(g)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし241Amの半減期を1.4×10^10s、アボガドロ定数を6.0×10^23mol^(-1)とする。
1 4×10^(-5)
2 2×10^(-4)
3 6×10^(-3)
4 8×10^(-2)
5 1×10^(-1)
解答 5
解説
R = Nλ、λ = 0.693/T、N = (m/M) × 6.0 × 10^(23) という計算式が成り立つので質量 m = (241/6.0×10^(23)) × (1.4×10^(10)/0.693) × 1.0 × 10^(9) = 8.1 × 10^(-2) g となる。
問8
次の放射性核種のうち、β線スペクトロメータのエネルギー校正に最も適したものはどれか。
1 14C
2 22Na
3 60Co
4 137Cs
5 241Am
解答 4
解説
β線スペクトロメトリーにおいて線スペクトルを測定するため、内部転換電子を放出する核種 109Cd, 137Cs が用いられる。この137Cs は娘核種の 137mBa が線スペクトルを有する内部転換電子を放出する。
問9
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 内部転換は、β壊変に属する。
B 軌道電子捕獲(EC)は、β壊変に属する。
C 内部転換では、ニュートリノは放出されない。
D 軌道電子捕獲(EC)では、ニュートリノは放出されない。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 4
解説
A 誤:内部転換は核異性体転移や、壊変後の娘核種が励起状態のときに生じるものである。EC、α壊変に伴うこともある。
B 正:軌道電子捕獲は不安定な原子核が軌道電子を核内に取り込むことにより、陽子が中性子に変わることを軌道電子捕獲という。核内ではp + e- → n + ν となり、原子番号が1つ減少し、質量数は変わらない反応をする。
C 正:内部転換は原子番号も中性子数も同じで、核内エネルギー準位の異なる核種を互いに核異性体というが、エネルギーが不安定状態にある核異性体より安定なエネルギー準位の核異性体となるためにγ線を放出する。よってニュートリノは放出されない。
D 誤:軌道電子捕獲の反応は、核内ではp + e- → n + ν となりニュートリノは放出される。
問10
次の記述のうち、シンクロトロンに関する説明として誤っているものはどれか。
1 粒子を周回させるために磁場を用いる。
2 粒子を加速するために高周波電場を用いる。
3 加速するにしたがって粒子の軌道半径は大きくなる。
4 電子や陽子の高エネルギー加速器として用いられる。
5 あらかじめ、粒子を加速する前段の加速器が必要である。
解答 3
解説
シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事でX線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。
問11
核反応で原子核XがYに変わるとき、起こり得るものの組み合わせは次のうちどれか。ただし、M、Nは質量数、原子番号を、また、( )内のn、p、d、αは中性子、陽子、重陽子、α粒子を、それぞれ表す。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 2
解説
n:中性子、p:陽子、d:重陽子、α:He原子核 と覚えておけば質量数、原子番号の変化がわかる。
問12
質量数204の原子核が7.0MeVのα粒子を放出した。その生成核の反跳エネルギー(MeV)として最も近い値は、次のうちどれか。
1 0.062
2 0.14
3 0.62
4 1.4
5 6.2
解答 2
解説
α粒子を放出した後の娘核種の質量数は 200 である。壊変のエネルギーを E とすると、α線のエネルギーEα = 200/(200+4) × E、反跳エネルギーED = 4/(200+4) × E、したがってED = (4/200) × Eα = 0.14 MeV となる。
問13
次の放射線のうち、水中に入射すると0.5MeV以上のエネルギーの光子が発生するものの組み合わせはどれか。
A 1MeVのX線
B 1MeVの電子
C 0.1MeVの陽電子
D 熱中性子
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正:コンプトン効果が起こり、散乱光子が放出される。散乱光子エネルギー hν を求める式は hν = (hν0)/[1 + ((hν0)/m0c^2) × (1 – cosθ)]となり、散乱角度が 0° ~ 60° のときに 0.5 MeV の光子が放出される。
B 正:電子が水中に入射するとチェレンコフ光が発生する。1 MeV × [(1/(√1-(v/c)^2))-1] = 1 Mev × [(1/(√1-(1/n)^2))-1] = 1 Mev × [1-(1/(√1-(1/1.33)^2))-1] ≒ 515 kev のエネルギーを持つ光子が発生する。
C 正:陽電子はエネルギーによらず、0.51MeV の消滅放射線を放出する。
D 正:熱中性子はエネルギーの低い中性子であるが、エネルギーの高い励起状態の核が形成される。この励起状態からγ線が放出される。水素による捕獲で約 2 MeV のγ線が放出される。
問14
制動放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 入射した電子が原子核に吸収されて発生する。
B 吸収物質の原子番号が大きくなるにつれて発生しやすくなる。
C エネルギー分布は連続スペクトルである。
D 最大エネルギーは入射電子エネルギーの1/2乗に比例する。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 3
解説
A 誤:制動放射は原子核の電場によって進行方向が曲げられたり、減速することにより発生する。
B 正:制動放射は原子番号が大きくなるにつれて発生しやすくなる。発生強度 I = K × i × V^2 × Z と表せる。K:定数。i:電流。V:電圧。Z:原子番号
C 正:制動放射線は連続スペクトルを示す。連続スペクトルを示す光子・粒子はβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックスウェル・ボルツマン分布に従う連続分布がある。
D 誤:制動放射線の最大エネルギーは入射エネルギーと変わらない。
問15
等速のα粒子の阻止能(A)と重陽子の阻止能(B)との比(A/B)として正しいものは、次のうちどれか。
1 0.2
2 0.5
3 1
4 2
5 4
解答 5
解説
衝突阻止能 S ≈ Z^2/v^2 と表されるので、速度が等しいことから、A/B = 2^2/1^2 = 4 となる。
問16
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。ただし、空気の密度を1.3mg/cm3とする。
A 5.3MeVのα線が空気中で停止するまでに生成されるイオン対の数は約1.5×10^5である。
B 5MeVのα線の空気中の飛程は5cm以下である。
C 空気中での飛程が3cmのα線の水中での飛程は50μm以上である。
D α線の空気中の飛程については、そのエネルギーE(MeV)の2乗に比例する実験式が成立する。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
解説
A 正:W値は約 34 eV なので、イオン対数 = 5.3×10^6/34 ≒ 1.56×10^5
B 正:α線の空気中の飛程は R = 0.318E^(3/2) (E は MeV 単位のα線エネルギー)の近似式があり、代入すると約 3.6 cm である。飛程が 5 cm を超えるα線のエネルギーは 6.3 MeV である。
C 誤:重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、質量数の平方根に比例する。R = √A/ρ という式となる。ここで空気と水では実効的な質量数はあまり変わらないので、密度依存だけを考えれば良い。空気の密度は約 1.3×10^(-3) (g/cm^3)、水の密度は 1.0 (g/cm^3) であるから、水中での飛程 = 3 × 1.3×10^(-3)/1.0 = 3.9×10^(-3)(cm) = 39(μm)
D 誤:α線の空気中の飛程は R = 0.318E^(3/2) (E は MeV 単位のα線エネルギー)の近似式がある。
問17
γ線のビルドアップに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 吸収体中のコンプトン散乱が主として寄与する。
B 吸収体の線減弱係数が大きいほど小さい。
C 吸収体が厚いほど大きい。
D γ線のフルエンス率が高いほど大きい。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 2
解説
A 正:ビルドアップは散乱による補正で用いるため、散乱を起こすコンプトン散乱が主として寄与する。
B 誤:線減弱係数は光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱されるためビルドアップは線減弱係数が大きいほど大きくなる。
C 正:吸収体が厚いほど物質との相互作用により減弱されるためビルドアップは線減弱係数が大きいほど大きくなる。
D 誤:フルエンス率は単位時間当たりの単位面積を通過する粒子数をあらわす。ビルドアップはエネルギーに依存するため粒子数には依存しない。
問18
角度60度でコンプトン散乱した結果生じた散乱光子のエネルギーとコンプトン電子のエネルギーとが等しかった。この場合、入射光子のエネルギー(MeV)として最も近い値は次のうちどれか。
1 0.3
2 0.5
3 0.7
4 1.0
5 1.2
解答 4
解説 コンプトン効果によるエネルギーと運動量の関係式は次の通りとなる。hν0 = hν + E。hν = (hν0)/[1 + ((hν0)/m0c^2) × (1 – cosθ)]。ここで hν0:入射光子のエネルギー、hν:コンプトン散乱した結果生じた散乱光子のエネルギー、E:コンプトン電子のエネルギー、cosθ:コンプトン散乱角度。ここに代入し計算すると、hν0 ≒ 1.0 MeV
問19
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 光電子のエネルギーは、入射光子のエネルギーに比例しない
B 照射線量は、光子が空気と相互作用する場合のみ定義される。
C 光電効果の断面積は、入射光子エネルギーとともに常に増大する。
D コンプトン電子のエネルギーは、入射光子のエネルギーと同じになる場合がある。
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 2
解説
A 正:Ee(光電子エネルギー) = Eγ(入射光子エネルギー) – Eb(軌道電子の束縛エネルギー) という関係式が成り立つため比例はしない。
B 正:照射線量の定義はdmという質量の空気の容積要素内で光子(X線、γ線)によって発生する全ての電子が空気中で完全に静止するとき、空気中に発生した一方符号のイオンの全電荷の絶対値をdQとするとX = dQ/dmと表せる。
C 誤:吸収端以上では減少する。
D 誤:コンプトン効果ではコンプトン電子と散乱光子が放出されるため必ず入射光子のエネルギーより小さくなる。
問20
光電効果に対する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 光電効果に対する質量エネルギー吸収係数は、同じ入射光子エネルギーの質量減弱係数よりも小さい。
B 光子と軌道電子との弾性衝突である。
C 原子当たりの断面積は、物質の原子番号のほぼ5乗に比例する。
D 光子エネルギーがK吸収端より高い場合にしか起きない。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 2
解説
A 正:エネルギー吸収係数はエネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値であるため、エネルギー転移係数 > エネルギー吸収係数という関係式が成り立つ。
B 誤:光電効果は非弾性散乱である。
C 正:原子当たりの断面積は、物質の原子番号の 4 ~ 5乗に比例する
D 誤:低い場合にはL殻、M殻等の電子と相互作用する。
問21
コンプトン散乱に対する線減弱係数μを表わす式として正しいものは、次のうちどれか。ただし、物質の原子番号をZ、原子量をA、密度をρ、電子当たりの散乱断面積をμe、アボガドロ定数をNAとする。
1 μ = (μe・A)/(ρ・Z・NA)
2 μ = (μe・Z・NA)/(ρ・A)
3 μ = (μe・ρ・A)/(Z・NA)
4 μ = (ρ・Z・NA)/(μe・A)
5 μ = (μe・ρ・Z・NA)/A
解答 5
解説 単位体積あたりの原子数を N とすると、μ = μe × Z × N と表せる。N = (ρNA)/A であるから、μ = (μe・ρ・Z・NA)/A となる。
問22
10 MeVの中性子が2Hに弾性衝突する場合、中性子のエネルギーが0.1MeV以下となるための最小の衝突回数として正しいものは、次のうちどれか。
1 2回
2 3回
3 4回
4 5回
5 6回
解答 2
解説 エネルギー E0 の中性子(質量m)が 質量 M の物質に弾性衝突してエネルギー En になった時のエネルギーも求め方は En = [(M-m)/(M+m)]^2 × E0 と表せる。ここの問いにおいて、m=1、M=2 であるので、En=(1/9)E0 となる。10MeV から 0.1MeV へは、0.1/10 = 1/100 のエネルギー減少である。2H との散乱では1回に最大 1/9 に減少するので、最低3回の衝突が必要となる。
問23
物理量と基本単位に関する次の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。
1 エネルギー ・・・ kg・m^2・s^(-2)
2 運動量 ・・・ kg・m・s^(-1)
3 吸収線量 ・・・ m^2・s^(-2)
4 吸収断面積 ・・・ m^2
5 粒子フルエンス ・・・ m^(-1)
解答 5
解説
1 正
2 正
3 正:[J/kg] = [(kg・m^2)/(s^2・kg)] = [m^2/s^2]
4 正
5 誤:[m^(-2)]が正しい
問24
次の2つの量の積あるいは商のうち、無次元となるものの組み合わせはどれか。
A [質量エネルギー吸収係数]×[質量面密度]
B [核反応断面積]×[粒子フルエンス]
C [放射能]×[測定時間]
D [飛程]×[密度]
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 1
解説
A 正:[kg^(-1)・m^2] × [kg・m^(-2)] = [無次元]
B 正:[m^2] × [m^(-2)] = [無次元]
C 正:[Bq(=s^(-1))] × [s] = [無次元]
D 誤:[m] ÷ [kg・m^(-3)] = [kg^(-1)・m^4]
問25
金属板(直径 1 cm、厚さ 0.1 mm)に付着している 210Po からのα線を検出できる検出器として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。
A 4π比例計数管
B ZnS(Ag)シンチレーション検出器
C 液体シンチレーション検出器
D 固体飛跡検出器
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正:比例計数管は主にα線とβ線を測定するのに用いられる。
B 正:ZnS(Ag)シンチレータは通常α線の検出に用いられるが、多結晶のためエネルギースペクトルの測定に適さない。
C 正:液体シンチレータは低エネルギーβ線とα線の検出に用いられる。α線は0.1mmの厚さの金属板を通過できないので、付着している面が上になるようにシンチレータ中に沈める必要がある。また余談として、液体シンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる 陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)
D 正:プラスチックなどの絶縁性の固体中を陽子以上の重荷電粒子が通過すると、通路に沿って固体の原子配列に歪みが生じ、放射線損傷が生じる。α線も同様でその傷をエッチングして観測する。
問26
気体または半導体における電子、陽イオンまたは正孔の移動に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 気体中では、陽イオンの移動度は自由電子の移動度とほぼ同じである。
B 直流電離箱においては、電子移動による電気信号のみを利用している。
C 高純度Ge検出器においては、電子移動及び正孔移動による電気信号の両方を利用している。
D GM計数管においては、信号の大部分は陽イオンの移動によるものである。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 5
解説
A 誤:電子やイオンなどの電荷担体(キャリア)が物質内を移動する速度を v、電場を E とすれば、v = μE の関係がある。この時の比例定数 μ を移動度という。陽イオンは衝突の密度が大きく加速されにくいため、移動度は電子に比べて低い。
B 誤:イオンも同様に寄与する。詳しくは管理・計測学の電離箱についての記述に記載している。
C 正:半導体検出器は X線、γ線 を電気的なパルス信号に変換して計測します。その過程は次のようになります。
① X線、γ線が半導体結晶中にて光電吸収やコンプトン散乱を起こすことにより、二次電子や散乱X線を生成。
② 生成された電子は、電離作用によって多数の電子正孔対を生成。
③ 電子・正孔は、結晶にかけられた電場によって電極へ移動し、パルスシグナルを発生する。
この電子正孔対が生成されることで電荷信号ができ、 この電荷信号を波高分析することでエネルギーの測定が可能となる。
D 正:M計数管の動作過程では、計数ガス中に生成された電子が陽極心線へと移動しながら運動エネルギーを増し、新たに電離を起こすとともに、計数ガスの励起に起因した紫外線の介在による電離も加わり電子なだれが陽極心線全体に広がる。この結果、陽極心線周辺に生じた陽イオン の鞘ににより電界が弱まり、GM放電が停止する。これを不感時間という(およそ200μs程度)。GM放電の停止後、陽イオンは次第に移動して陰極へ到達するが、この際に陰極から電子が放出されると再放電を招く。このため、計数ガス中に内部消滅ガスとして働く少量の有機ガス(Qガスといい、ヘリウム+イソブタンの混合)を混ぜ、 このガスの分解により電子の再放出を防止する。これがGM計数管の原理である。
問27
0.6 MeV のγ線による空気吸収線量が 1 Gy のとき、照射線量(C/kg)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、電子に対する空気の W 値は 34 eV である。
1 0.03
2 0.08
3 0.3
4 0.8
5 3
解答 1
解説
着目している空気では2次電子平衡が成り立っていると仮定する。1kg の空気中に生じる電子イオン対数 N は、e を素電荷として、N = 1/(34e)[34e は J 単位で表した W 値]である。したがって 1kg の空気中に発生する電子またはイオンの電気量 C は、C = e × N = 1/34 = 0.029 (C)となる。
問28
次の検出器のうち、β線のエネルギースペクトルの測定に適しているものの組み合わせはどれか。
A NaI(Tl)シンチレーション検出器
B GM計数管
C Ge検出器
D Si半導体検出器
E プラスチックシンチレーション検出器
1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE
解答 4
解説
A 誤:NaI(Tl)シンチレーション検出器はγ線の線量測定やエネルギー測定に使用する検出器に適している
B 誤:GM計数管は放射能を決定するための検出器であるためエネルギースペクトルは測定できない。
C 誤:γ線のエネルギースペクトルを測定する場合、制度の高い測定器としてGe検出器が用いられる。
D 正:Si半導体検出器はα線のエネルギースペクトルを高分解能で測定。β線のエネルギースペクトルも測定可能。
E 正:プラスチックシンチレータは主としてβ線、中性子線などのエネルギー測定に用いられる。
問29
分解時間 0.12 ms のGM計数管を用いて係数したとき、1秒間に平均 500 カウントを得た。この場合の数え落としによる誤差(%)として最も近い値は次のうちどれか。
1 0.3
2 0.6
3 1
4 3
5 6
解答 5
解説 数え落としの誤差は、0.12 × 10^(-3) × 500 = 0.06 よって 6.0 % となる。
問30
NaI(Tl) と CsI(Tl) の2つのシンチレータの比較において、正しいものの組み合わせはどれか。
A 密度はNaI(Tl)シンチレータの方が大きい。
B ピーク発光波長はCsI(Tl)シンチレータの方が長い。
C 発光の減衰時間はNaI(Tl)シンチレータの方が短い。
D 潮解性の影響はCsI(Tl)シンチレータの方が少ない。
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 5
解説 下の表に示す。
シンチレータ | 光収率(対NaI) | 減衰時間(10^(-3) μsec) | 発光波長(nm) | 密度(g/cm^3) | |
---|---|---|---|---|---|
NaI(Tl) | 100 | 250 | 310 | 3.67 | 潮解性有り |
CsI(Tl) | 45 | 1000 | 550 | 4.51 | 潮解性無し |
荷電粒子に対する質量阻止能に関する記述
Ⅰ
ある物質の荷電粒子に対する質量阻止能は、入射粒子の速度の 2 乗に逆比例し、その有効電荷の 2 乗に比例するが、入射粒子の質量には依存しない。また、その物質の原子番号に比例し、質量数に逆比例する。この比は元素によらずほぼ一定であるので、質量衝突阻止能はあまり物質によらない値となる。
Ⅱ
熱中性子が原子番号 5 の 10B 原子核に吸収されると、α線が放出される場合がある。この現象は荷電粒子生成反応と呼ばれ、発熱反応であり、α線と 7Li 原子核が生成される。この反応の断面積は約 3800 b(バーン)と大きい。ここで、1b = 10^(-24) cm^2 である。反応後の生成核は 93 % の確率で励起状態をとり、Q 値の絶対値は 2.3 MeV である。放出される α線のエネルギーは 1.5 MeV である。この反応は中性子の検出によく利用され、中・高速中性子に対して感度を高くするために中性子モデレータ(減速材)が用いられる。モデレータとしては水素を多く含む材料が適切である。
補足
熱中性子検出には 10B(n,α)7Li 反応がよく用いられる。天然ホウ素の熱中性子吸収断面積は 764 b(バーン)と大きいが、これはホウ素に 19.9 % の存在度で含まれる 10B の断面積が 3830 b のためである。
熱中性子エネルギー、運動量ともに 0 とみなすことができるので、運動量保存則から、発熱反応のエネルギーは質量に反比例して分配される。したがって α粒子のエネルギーは 2.3 × (7/(4+7)) = 1.46 MeV となる。
Ⅲ
図に 137Cs の壊変図を示す。図における核種 X は 137Ba である。核種(m)X は X の準安定状態であり、核異性転移により X となる。このとき、(m)X から光子が放出される代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与え電子を放出する場合があり、この現象を内部転換という。光子放出と電子放出は競合過程であり、光子の放出に対する軌道電子の放出割合 α を内部転換係数という。137Cs の放射能を 10 GBq とするとき、この線源 から放出される 662 keV の光子の数は、すべての軌道電子に対する α を 0.11 とすると、 8.5 × 10^9 s^(-1) となる。このとき、線源から 1 m 離れた位置の P における光子のフルエンス率は 6.7 × 10^4 cm^(-2)・s^(-1) であり、空気の密度を 0.0013 g/cm^3、線エネルギー吸収係数を 3.8 × 10^(-5) cm^(-1) とすると、位置 P における空気の吸収線量率は 7.5 × 10^(-4) Gy/h である。ただし、線源から位置 P までの光子の減弱は無視するものとする。
解説
γ線放出数を n(γ)、内部転換電子放出数を n(e) とすれば、α = n(e)/n(γ) で定義される。核異性体転移にともなうγ線放出割合は、
n(γ)/[n(γ)+n(e)] = 1/[1+(n(e)/n(γ))] = 1/(1+α) = 0.90 となる。
したがって線源からのγ線放出数は、10 × 10^9 × 0.94 × 0.90 = 8.46 × 10^9 s^(-1)
続いて光子のフルエンス率は (8.46×10^9)/(4π×100^2) = 6.73 × 10^4 s^(-1)・cm^(-2) となる。
続いてγ線のエネルギーを J 単位に換算すると、662 × 10^3 × 1.60 × 10^(-19) = 1.06 × 10^(-13) J である。したがって吸収線量率は、
1.06 × 10^(-13) × 6.73 × 10^4 × (3.8×10^(-5)/0.0013) × 10^3 × 3600 = 7.51 × 10^(-4) [J・kg^(-1)・h^(-1)] となる。