Ge半導体検出器に関する記述
Ⅰ
Ge半導体検出器によるγ線の測定によって放射性同位元素の種類・数量を求める場合、まず、既知数量の 152Eu などの標準線源を用いる検出器のエネルギーの校正及び計数効率のエネルギー依存性の測定が必要となる。ただし、サムピークの生成を最小限にとどめるために、距離を大きく取ることがある。 放射性同位元素を含む試料の放射能定量に、この計数効率を適用するには、標準線源と幾何学的配置を同一にする。
Ⅰ
解説
Ge半導体検出器はγ線用の検出器である。通常のGe半導体検出器で測定できるγ線のエネルギーの下限は 50keV 程度、広領域では数keV 程度の低エネルギーX線までである。核種の決定にはパルス波高の測定に用いるマルチチャネルアナライザーのチャネル番号とγ線のエネルギーとの関係を与えるエネルギー校正曲線を、また放射能の定量にはγ線エネルギーに対する計数効率曲線をあらかじめ作成しておく必要がある。 この場合の標準線源として、22Na , 54Mn , 57Co , 60Co , 88Y , 137Cs のように、半減期が長くかつγ線放出割合がよくわかった核種が選ばれる。
55Fe:半減期 2.73年、EC壊変・X線(低エネルギー)
99Tc:半減期 2.14×10^5年、β-線
152Eu:半減期 13.5年、γ線(多数)
210Po:半減期 138.4日、α線
※ 152Eu はγ線検出器の校正に用いられる。
また、測定において、線源の測定位置はGe検出器から距離を離し、カスケードγ線によるサム効果が無視できるようにするのが望ましい。一度ピーク計数効率曲線を作成しておけば、幾何学的配置(線源・検出器間距離や線源の形状)を変えない限り以後も活用可能である。
Ⅱ
液体でも、沸点の低い物質や分解しやすい物質では、放射性の気体が発生する場合があるので、放射性同位元素の科学形や反応性についても注意する。放射性ヨウ素の化学形が I2 の場合には揮発性が高くなるので、こうした化学形になることを避ける。例えば、125I で標識されたヨウ化ナトリウム水溶液の使用に際しては、H2O2 等の酸化剤の混入の可能性等を事前に検討する必要がある。 混合による急激な化学反応の進行により、特に、発熱反応である場合、放射性同位元素の飛散を招く可能性があるので、実験計画の段階から注意する。溶媒にエーテル類を用いる場合などは、特有の揮発性・引火性に注意が必要である。
Ⅱ
解説
トレーサ実験には、半減期の長い 125I や 131I が用いられる。放射性ヨウ素には、 I2、I-、IO3(-)、IO4(-) などの化学種がある。I2 は揮発しやすく放射性汚染を起こしやすい。更に、酸性にすると揮発しやすいため、酸性溶液にしたり、酸化剤を加えたりしないようにする。
放射性物質取扱作業:取扱行為は、一般的操作、機械加工、化学反応などの操作、加熱操作、静置に分けてみると、加熱操作が最も飛散を起こす可能性がある。加熱及び発熱を伴う操作には注意が必要である。また、溶媒としてエーテル類を用いる場合には、その揮発性と引火性にも注意が必要である。
Ⅲ
放射性の金属イオンの相互分離には、陽イオン交換樹脂による方法があるが、塩酸形でクロロ錯体を形成する場合には陰イオン交換樹脂による分離も可能である。陰イオン交換樹脂に吸着された放射性同位元素について、クロロ錯体の安定度定数が大きく異なると、溶離液の 酸濃度を順次変えることで、それらの元素を少量の溶離液で分離することができる。
Ⅲ
解説
(強塩基性)陰イオン交換樹脂の吸着能
Fe3+、Co2+、Zn2+は、塩化物イオンが存在すると、FeCl-、CoCl4(2-)、ZnCl4(2-)などのクロロ錯体を形成するので、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着するようになる。陽イオンと塩化物イオンのクロロ錯体の形成が強いものほど、塩酸溶液の濃度は、薄いものを使用しなければならない。この時に、Zn2+ が最も強い クロロ錯体を形成している。この性質を用いて溶離液の HCl 濃度を変えることで、以下のように重金属イオンを分別分離することが可能である。
塩酸濃度と陰イオン交換樹脂からの重金属の溶出順:Ni3+(12M) > Mn2+(6M) > Co2+(4M) > Cu2+(2.5M) > Fe3+(0.5M) > Zn2+(0.05M)
ここで Co2+、Fe3+、Zn2+ はクロロ錯体である。
Ⅳ
実験室の床面が 14C によりスポット状に汚染された場合、サーベイ法による汚染位置の特定にはGM管式サーベイメータが用いられる。汚染の固着性の程度により、汚染の拡大の可能性や除染の方針などが変わるため、スミア法による放射能測定も行われる。この場合には、液体シンチレーション計数装置を用いて測定するのが最も検出効率が高い。汚染核種が 32P の場合には 液体シンチレーション計数装置によるチェレンコフ光計測も利用できる。いずれの核種にも、固着性の汚染の場合には、スミア法で検出できない。遊離性の汚染の除去には、一般に、水、中性洗剤、酸、可溶性錯塩形成剤などが用いられる。可溶性錯塩形成剤としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが用いられる。ただし、14C が炭酸イオン として存在している場合には、酸を用いると 14CO2 の発生により汚染が拡大する可能性がある。
Ⅳ
解説
14C 及び 32P を使用する実験室において使用中に生じる表面汚染に対して測定のために適当な機器は以下の通りである。
14C:直接測定では薄窓のGM管式サーベイメータ、間接測定(スミア法)では薄窓のGM計数管または液体シンチレーション計数装置を使用する。特に液体シンチレーション計数装置は 14C のような低エネルギーβ線放出体測定のときは自己吸収がほとんどない優れた方法である。
32P:直接測定ではGMサーベイメータを使用する。間接測定(スミア法)ではGM計数管または液体シンチレーション計数装置を使用する。特に 32P エネルギーが高いため、液体シンチレータを用いず液体シンチレーション計数装置によるチェレンコフ光計測が可能である。
汚染の種類
固着性:表面に固着し、遊離しない汚染で体外被ばくだけを問題にすれば良い。
遊離性汚染:舞い上がり、室内の空気を汚染し、体内被ばくをもたらす。遊離性汚染の方が、危険性が高い。
直接法はサーベイメータにより表面を直接測定する方法で、固着性汚染と遊離性汚染の両方に適用できる。一方、間接法(スミア法)は、汚染表面をろ紙で拭き取り、そのろ紙を測定する方法となる。
遊離性の汚染の除去
RIによる汚染は、種々の状況が考えられるが、汚染の状況に応じて最も適切な除去法をとらなければならない。除染剤は、初めはなるべく温和なものを用い、除染できなければ順次化学的活性度の大きいものに移るようにする。化学的活性度の大きい除染剤の除染効果は大きいが、表面が侵食され再汚染のとき、除染が非常に困難になるからである。また除染剤の中には、、気体のRIを発生するものがあるので、(例として 14C の炭酸塩の場合、塩酸などの酸を加えると、分離して、14CO2 が発生する) 除染剤の選択には注意が必要である。一般に除染剤としては水、中性洗剤、酸、キレート形成剤などが用いられる。キレート形成剤としては Na-EDTA等がある。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。