中性子照射による核反応

中性子照射による核反応の記述

ライフサイエンスの分野でよく用いられる 32P(半減期14日 (1.2×10^6秒))は、β- 壊変して 32S になる。32P は、天然同位体存在度のリン(31P:100%)をターゲットとして原子炉での中性子照射による 31P (n,γ) 32P 反応で得られる。この場合は担体の 31P を含んでおり、生成する 32P の比放射能は、核反応断面積にも照射中性子フルエンス率にも依存する。また、照射時間にも 冷却時間にも依存する。一方、32P の製造には天然同位体存在度の硫黄(32S:95%)をターゲットとする原子炉での中性子照射で、32S (n,p) 32P のように、照射の前後で原子番号が変わる核反応が利用される。この場合、ターゲットから化学分離により無担体の 32P が得られ、この 32P の比放射能は、核反応断面積にも照射中性子フルエンス率にも依存しない。また、照射時間にも冷却時間にも 依存しない。無担体で 1 kBq の 32P では、その計数率は検出効率 10% としても 6000 cpm あり、容易に検出できるが、その質量は 10^(-13) グラムと超微量であり、トレーサーとして使用するとき、対象への化学的生物学的影響はほとんど無視できる。なお、無担体の 32P 製品中に、ターゲット硫黄中の 33S(0.8%) 由来の 33P(半減期 25日 (2.2×10^6秒)) が不純物として放射能比で 1 % 含まれていると、100 日後における 32P の放射性核種純度はおおよそ 92 % となる。

 

解説

放射能の単位は Bq で 1秒あたりの壊変数である。
1.0 kBq = 1000[s^(-1)] = 60000[min^(-1)] よって検出効率 10% とすると、6000 cpm となる。
放射能:A[Bq]、壊変定数:λ、[s^(-1)]、半減期:T[s]、質量:W[g]、質量数:M[g/mol] とすると、
A = (0.693/T) × (W/M) × 6.02 × 10^23
1.0 × 10^3 = (0.693/(1.2×10^6)) × (W/32) × 6.0 × 10^23
W = 9.2 × 10^(-14) ≒ 10^(-13) [g] となる。
続いて、放射能 A0 の放射性核種を用いているとき、その半減期を T とすると経過時間 t における放射能 A は、A = A0 × e^(-0.693t/T) となる。この式は A = A0 × (1/2)^(t/T) と書き直せる。
32P:A × (1/2)^(100/14) ≒ A × (1/2)^7
33P:0.01A × (1/2)^(100/25) = 0.01A × (1/2)^4
よって、[A × (1/2)^7]/[A[(1/2)^7] + 0.01 × (1/2)^4] = 0.925 したがって 92.5% となる。

 

上空大気中で宇宙線により生じる中性子と空気中の 14N との (n,p) 反応により 14C(半減期 5730年(1.8×10^11秒))が生成する。宇宙線強度が変わらなければ常に同じ割合で生成し壊変するので、地球大気中の 14C の量は一定に保たれる。その比放射能は炭素 1g 当たり約 0.23 Bq であり、その炭素同位体原子数比(14C/(12C+13C))の値は 1.2 × 10^(-12) である。 14CO2 の化学形で存在する大気中の 14C が、光合成により植物体内に取り込まれ、食物連鎖により動物体内にも入り、生物体中の 14C 比放射能は、大気中とほぼ同じになる。しかし、生物が死ぬと、14C の供給が途絶えるので、14C 比放射能は時間とともに減衰する。したがって、これら生物試料中の 14C を測定すれば、その生物の死後の経過時間が求められる(年代測定)。14C はこれまで、試料を気体にして 比例計数管により、あるいは、炭素含有率の大きい有機液体にして液体シンチレーション検出器により、その放射能で測定されてきた。しかし、試料量が少量のとき、あるいは数万年前の試料では、含まれる 14C 放射能が mBq 程度となり、その放射能測定は極めて困難あるいは不可能となるが、近年、加速器質量分析法を用いて、1ミリグラム程度の 試料でも、あるいは数万年前の試料でも、高感度に炭素同位体原子数比を測定して 14C の量を求め、その年代を決定することが可能になってきた。例えば、1ミリグラムの炭素を含む試料を測定して、13C/12C 原子数比の値が 0.0108、14C/13C 原子数比の値が 10^(-11) であったとすると、この試料の年代として最も近い値は 20000 年前である。

 

解説

14C は天然に 14N から (p,n) 反応で生成する。炭素の安定同位体は、12C 98.89% のほかに、13C 1.11% がある。
14C 年代測定:大気の上層部で宇宙線が 14N に衝突すると、 14C ができる。これが酸化されて 14CO2 となり、植物や動物の組織内に吸収されて生体の一部となる。14C の半減期は 5730 年であり、1つの炭素サイクル内では、炭素の比放射能はほぼ一定とみなしてもよい。生体の死後、その中に止まるようになった炭素はサイクルからはずれるので、14C 固有の壊変定数で放射能を失う。したがって、試料中の 14C の比放射能を測定すれば年代が分かる。
A = (0.693/T) × N より、0.23 = 0.693/(1.8×10^11) × N
N(14C) = 6.0 × 10^10
N(12C+13C) = (1/12) × 6.0 × 10^23 = 5.0 × 10^22
よって、N[14C/(12C+13C)] = (6.0×10^10)/(5.0×10^22) = 1.2 × 10^(-12)

測定による年代の算出

N(13C)/N(12C) = 0.0108、N(14C)/N(13C) = 10^(-11) より、
N(13C) = 10^11 × N(14C)・・・(1)
N(12C) = N(13C)/0.0108 = (N(14C) × 10^11)/0.0108・・・(2)
ここで、N = (W/A) × 6.0 × 10^23 より、
N(12C) + N(13C) = (1×10^(-3))/12 × 6.0 × 10^(23)・・・(3)
(1)、(2)、(3)より、
(N(14C) × 10^11)/0.0108 + 10^11 × N(14C) = (1×10^(20))/2.0
N(14C) = (1/2) × 10^7 個(1mg中)
A = λN = (0.693/T)×N より、
A = (0.693/1.8×10^11) × (1/2×10^7) = 1.9 × 10^(-5) Bq
地球大気中の 14C の比放射能は 0.23 Bq/g であるから、1ミリグラム当たりの放射能は o.23 × 10^(-3) Bq となる。
1.9 × 10^(-5) = 0.23 × 10^(-3) × (1/2)^(t/5730)
0.083 = (1/2)^(t/5730)
左辺の(1/2)^n について検討すると、(1/2)^3 = 0.125、(1/2)^4 = 0.0625 である。
3 < t/5730 < 4 より 17190 < t < 22920 となり、約 20000 年前のものと推定できる。

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試料中の放射性核種を調べる場合に用いられるGe検出器

試料中の放射性核種を調べる場合に用いられるGe検出器に関する記述

試料中の放射性核種を調べる場合、Ge 検出器を用いたγ線スペクトロメトリ法により行うことが一般的である。この理由の一つとしては、ゲルマニウム結晶中で電子と正孔の対が生成されるのに必要なエネルギーが約 3 eV と小さく、エネルギー 1MeV の光子に対し 2 keV 程度の良好なエネルギー分解能が得られることがあげられる。核種の決定において着目すべきピークは、通常 全吸収ピークであるが、これ以外にも種々のピークが形成されるため、個々のピークの成因を十分理解する必要がある。1壊変当たり複数のγ線がカスケードに放出される場合にはサムピークが形成される。また、γ線エネルギーが高い場合には、電子対生成により生じた陽電子が電子と結合して 消滅光子が放出されるため、この光子が相互作用を起こさず Ge 検出器の有効体積外に出ると、エスケープピークが形成される。

 

解説

例えば 60Co のように壊変に伴い複数の励起レベルをたどり、複数のγ線が放出される様子をカスケード(階段状に連続した滝のこと)という。

 

純β線放出核種の場合では、プラスチックシンチレーション検出器や Si(Li) 半導体検出器などを用いてエネルギースペクトルを測定する。この場合、β線の最大飛程が有効検出領域を超えないことに注意するとともに、β線が有効検出領域へ入射する前に生じる吸収などにも注意する必要がある。エネルギーの指標としては、0.5 MeV 以上では 137Cs 線源などから放出される内部転換電子のピークが利用される。β線のエネルギーは連続分布のため、測定されたエネルギースペクトルの形状や最大エネルギーに基づいて核種を決定する。この方法の他、アルミニウムの吸収板と端窓型GM計数管などを用いて吸収曲線を作成し、フェザー法と呼ばれる方法でβ線最大飛程を決定して核種を推定することもできる。32P のβ線に対し、アルミニウム 中の最大飛程 R[g・cm^(-2)] とβ線最大エネルギー E[MeV] との関係は、R = 0.542E – 0.133 の実験式で表される。これにより、32P の最大飛程は約 0.8 g・cm^(-2) となる。

 

解説

吸収板には後方散乱などが起こりにくい低原子番号を有し、均一な厚さの板が得やすいアルミニウムがよく用いられる。吸収板を次第に厚くして最大飛程を求めようとすると、最大飛程に近くにつれて計数率が低下するため困難である。そこで吸収曲線を求め、標準試料のそれと比較することによって最大飛程を求める方法がよく利用され、フェザー法と呼ぶ。0.542E – 0.122 の式をフェザーの式という。

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細胞周期

細胞周期

G1期 → S期 → G2期 → M期 となる。G1後期とS期前期 では高感受性を示し、G1前期とS期後期 では低感受性を示す。

G1期・・・G1期に長くとどまっている時期をG0期と呼ぶ。このG0期に照射された場合主に染色体型異常となる。またG1期の被ばくにより、2動原体染色体が出現する。

G2期・・・この時に照射されると染色分体異常が起こる。また分裂遅延が起こる時期は主にG2ブロックである。この分裂遅延はタンパク質の合成阻害が起きるため。

染色体異常で起こる姉妹染色体はDNA複製後にできる同じ遺伝情報をもつ2本の染色分体であるので交換が起こっても遺伝情報は変化しない。

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中性子照射による放射性同位元素(RI)の製造

中性子照射による放射性同位元素(RI)の製造

中性子照射によって放射性同位元素(RI)を製造するとき、以下のように照射条件を設定する。生成核(半減期T)の放射能は、標的核の数が n、反応断面積が σ のとき、粒子フルエンス率 f で、照射時間を t とすると、 nfσ × [1-(1/2)^(t/T)] で与えられる。 [1-(1/2)^(t/T)] は飽和係数と呼ばれ、t が T の2倍に等しいときには 0.75 となる。また飽和係数は t が T に比較して十分小さい時には(0.693t)/T と近似することができる。197Au (n,γ) 198Au 反応及び 23Na (n,γ) 24Na 反応を用いて、198Au と 24Na を製造するために、金 2.0mg とナトリウム 2.3mg を同時に、熱中性子フルエンス率 1.0 × 10^12 cm^(-2)・s(-1) で 100 秒間照射した。それぞれの核反応断面積と生成核の半減期は 下の表に記載する。照射した 197Au と 23Na の原子数の比 (n(Au)/n(Na)) は 0.10 、198Au と 24Na の生成反応の断面積の比 (σ(Au)/σ(Na)) は 200、100 秒間照射による 198Au と 24Na の生成反応の飽和係数の比(Auの飽和係数/Naの飽和係数)は 0.23 となるので、生成した 198Au と 24Na の放射能の比 (A(Au)/A(Na)) は 4.6 となる。

 反応  反応断面積(バーン)  生成核の半減期(時間)
 197Au (n,γ) 198Au  100  65
 23Na (n,γ) 24Na  0.5  15

 

解説 198Au と 24Na の製造

197Au (n,γ) 198Au 反応による 198Au の放射能 A(Au)は A = Nfσ × (0.693t/T) より A(Au) = N(Au)fσ(Au)S(Au) ・・・①となる。
ここで、試料の金:2.0mg、198Au 半減期:65時間、照射時間:100秒より、試料は、N(Au) = (2.0×10^(-3)/197) × 6.02 × 10^23・・・・②
S(Au) = (0.693×100[s])/65[h]・・・・③
23Na (n,γ) 24Na 反応による 24Na の放射能 A(Na) は A = Nfσ × (0.693t/T) より A(Na) = N(Au)fσ(Na)S(Na) ・・・①’ ここで、試料ナトリウム:2.3mg、24Na 半減期:15時間、照射時間:100秒より、試料は、N(Na) = (2.3×10^(-3)/23) × 6.02 × 10^23・・・・④
S(Na) = (0.693×100[s])/15[h]・・・・⑤
照射した原子数の比(N(Au)/N(Na))は②と④より、N(Au)/N(Na) = 0.10
また、100秒間照射による 198Au と 24Na の生成反応の飽和係数の比(S(Au)/S(Na))は③と⑤より、S(Au)/S(Na) = 0.23
①式と①’式より生成した 198Au と 24Na の放射能の比(A(Au)/A(Na))を求めると、A(Au)/A(Na) = 4.6

 

荷電粒子で照射して RI を製造する場合には、まず励起関数に基づいて適切な照射エネルギーを設定する。ターゲット中で照射粒子が運動エネルギーを失い発熱するので冷却が必要となる。65Cu (p,n) 65Zn 反応によって 65Zn を製造するのに、銅箔のターゲットに 16 MeV の陽子をビーム電流 6.4 μA で照射した。ターゲット通過後の陽子のエネルギーが 10 MeV であるとすると、ターゲット内での発熱量は、ほぼ 38 W (ワット)となる。なお、電気素量は 1.6 × 10^(-19) C とする。

 

解説

核反応の起こる確率を核反応断面積とよぶ。RI の生成量は核反応断面積に比例するが、核反応断面積の値は標的核の種類だけでなく、衝撃粒子の特性とエネルギーによって異なる。一般に断面積とエネルギーの関係は、励起関数と呼ばれる。したがって励起関数に基づいて適切な照射エネルギーを設定する。また、ビーム電流 (6.4 × 10^(-6))/(1.6 × 10^(-19))。ターゲット中で失ったエネルギーは 16 – 10 = 6 [MeV] J(ジュール)に換算すると、6 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19)。したがって発熱量は (6 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19)) × [(6.4 × 10^(-6))/(1.6 × 10^(-19)] = 6 × 10^6 × (6.4 × 10^(-6)) = 38.4 [W]

 

RI の分離において、溶媒抽出法は有用な方法の一つである。今、1.0 kBq の 59Fe(Ⅲ)及び 1.0 MBq の 65Zn(Ⅱ) を含む 6M 塩酸溶液 100ml に、イソプロピルエーテル 100 ml を加えて振り混ぜ、59Fe を有機相に抽出する。この系での Fe(Ⅲ)と Zn(Ⅱ)の分配比が下表のような値にであるとき、有機相中の 59Fe の放射能は 0.99 kBq、65Zn の放射能は 2.0 kBq となる。 したがって、有機相の全放射能に占める 59Fe の放射能の割合は 33 % である。次に、この有機相から水相を完全に除去した後、RI を含まない新たな 6M 塩酸溶液 100ml を加え、同じ操作を繰り返すと、有機相中の 65Zn の放射能は 0.004 kBq となり、有機相の全放射能に占める 59Fe の放射能の割合は 99.6 % となる。

 化学種  分配比
 Fe(Ⅲ)  99
 Zn(Ⅱ)  0.002

解説

有機相中の溶質の全濃度を C0、水相中の溶質の全濃度を CA とすると、分配比は次のようになる。
D = C0/CA
分配比 D は水相を基準として有機相に何倍も多く抽出されるかを表し、D が大きいほど有機相に多く抽出されることを意味する。また、放射性核種がどれだけ有機相に抽出されたかを表す抽出率 E は、分配比 D で次のように表される。
E = D/[D + (Vw/V0)]・・・①
Vw と V0 は、それぞれ水相と有機相の容量(ml)を示す。水相と有機相を等容積で抽出を行う場合、Vw = V0 となり、①式は次のようになる。
E = D/(D+1)・・・②
②式より 59Fe(Ⅲ) の抽出率 E(Fe(Ⅲ)) は、E(Fe(Ⅲ)) = D(Fe(Ⅲ))/[E(Fe(Ⅲ))+1] = 99/100 = 0.99
②式より 65Zn(Ⅱ) の抽出率 E(Zn(Ⅱ)) は、E(Zn(Ⅱ)) = D(Zn(Ⅱ))/[E(Zn(Ⅱ))+1] = 0.002/1.002 = 0.002
したがって有機相の 59Fe 及び 65Zn の放射能はそれぞれ以下のようになる。
59Fe:1.0 kBq × 0.99 = 0.99 kBq
65Zn:1.0 MBq × 0.002 = 0.002 MBq = 2.0 kBq
よって、有機相の全放射能に占める 59Fe の割合は、[0.99/(0.99+2.0)] × 100 ≒ 33 %
65Zn(Ⅱ)の場合、溶媒抽出により 0.20 % が有機相に抽出される。65Zn(Ⅱ) を含む有機相に対して RI を含まない水相(有機相と等容量)を加え、同じ操作をすると水相への移行が起こり、0.20 % が有機相に残る。したがって、6M 塩酸溶液を加えた後に有機相に残る 65Zn の放射能は、2.0 kBq × 0.002 = 0.004 kBq。
よって2回目の抽出後の有機相の全放射能に占める 59Fe の割合は、0.99/(0.99+0.004) × 100 ≒ 99.6 %

 

標識化合物を合成するときには、目的化合物の収率の高い反応が望ましいが、短寿命の RI の場合には反応操作に要する時間も考慮する必要がある。半減期が 20 分の RI の標識化合物を合成するときに、化学反応収率が 80% で 30分かかる操作では、化学反応収率が 50% で 10分かかる操作に比較して得られる標識化合物の放射能が 0.8 倍になる。副生成物は、クロマトグラフィ などの方法によって分離・除去する。

 

解説

反応操作に用いる短寿命(半減期:20分) RI の放射能を A0 とすると、RI の標識化合物を合成後の放射能はそれぞれの操作で以下の様になる。
化学反応収率 80% で 30分の場合は
A(30分) = A0 × (1/2)^(30/20) × 0.80・・・①
化学反応収率 50% で 10分 の場合は
A(10分) = A0 × (1/2)^(10/20) × 0.50・・・②
①式と②式より得られる標識化合物の放射能は
A(30分)/A(10分) = [A0 × (1/2)^(30/20) × 0.80]/[A0 × (1/2)^(10/20) × 0.50] = 0.80/0.50 × (1/2)^(20/20) = 0.8
標識化合物は、合成の際の副生成物の生成、購入後の時間経過による自己放射線分離などによって放射化学的不純物を含むことがあり、比放射能が一定になるまで化学的精製を繰り返す方法をとる。微量物質である標識化合物の放射化学的純度の測定には、各種のクロマトグラフィと逆希釈法の利用が適切である。得られた化合物は、ペーパークロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーで分離し、ラジオオートグラフィやペーパークロマトスキャナを使って放射能を測定する。

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放射線事故等での被ばく線量評価

放射線事故等での被ばく線量評価に関する記述

放射線事故等で被ばくする形態は、外部被ばく、内部被ばく、体表面汚染及び創傷汚染に分類することができる。外部被ばくは体外から被ばくするものであるが、中性子線による外部被ばくでは体内の物質が放射化され放射線を出すため、緊急時には内部被ばくや表面汚染がある場合と区別しにくいことがある。体内で放射化される元素のうち体外から放射線計測されるものとしては ナトリウムの寄与が大きく、中性子線による外部被ばく線量評価に用いられることもある。個人線量計や事故現場での空間線量計以外の全身外部被ばくにおける線量評価方としては、臨床症状・検査データからの線量評価、染色体分析による線量評価、放射化による線量評価の他に、歯や爪を用いた電子スピン共鳴(ESR)法による線量評価などがあげられる。 臨床症状による線量評価としては、嘔吐、下痢、頭痛、意識障害及び発熱などが指標として用いられる。これらの症状の発現時期、発現頻度、重篤度は線量に依存し、嘔吐、下痢、頭痛、発熱がほぼ 80 ~ 100% の頻度で 1 ~ 2 時間以内に認められるのは 8 Gy 以上の線量域である。末梢血の検査データによる線量推定として、リンパ球や血小板の減少が用いられる。リンパ球は放射線高感受性で主に アポトーシスにより細胞死が起こり、1 ~ 2 Gy の全身被ばくにより 24 時間以内に正常の約 50 % に減少する。また、末梢血中の顆粒球数は 2 Gy 以上の全身被ばくで 2 ~ 3 日以内に一過性増加が観測され、線量評価に用いられている。染色体異常の検査は、感度、精度、再現性が高く信頼度が高い線量評価法である。染色体異常による検出限界はγ線やX線の場合、約 0.2 Gy である。

 

内部被ばくの線量評価に関して、γ線放出核種による内部被ばくが疑われる場合にはホールボディカウンタを用いて放射能測定をして線量評価を行う。測定に際しては着衣に汚染がないことの確認と、体表面に汚染がない状況で測定することが必要である。また、吸入摂取が考えられる場合には鼻スミアにより試料を採取して放射能を測定する。この評価法は、試料の放射能と摂取量との相関性の点から線量評価制度が 低い。α線やβ線放出核種による内部被ばくが疑われる場合には、排泄物等の生体試料の放射能測定から線量評価を行う。便の場合には、排泄されたものの全量を数日間にわたり採取する必要がある。また、α線放出核種であるプルトニウムの吸入の場合には、肺モニタを用いてα壊変に伴い放出される特性X線を主に測定することで線量評価を行う。体表面汚染の測定に関しては、β・γ線放出核種による汚染の測定には GM計数管式サーベイメータが主に用いられ、α線放出核種による汚染の測定にはZnS(Ag)シンチレーション式表面汚染検査用サーベイメータが主に用いられる。創傷部位の汚染に関しては生理食塩水で洗浄・除染し、その際の洗浄液を回収して放射能測定のための試料として用いる。

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確率的影響の名目リスク係数

ICRP2007年勧告における確率的影響の名目リスク係数

① 全年齢集団の名目リスク係数はがんで 5.5 × 10^(-2)/SV、遺伝的影響で 0.2 × 10^(-2)/SV

② 遺伝的影響名目リスク係数1990年勧告では、1.3 × 10^(-2)/SV、2007年勧告では、0.2 × 10^(-2)/SV

③ 就労年齢集団リスク係数(18 ~ 64歳)、がん 4.1 × 10^(-2)/SV、遺伝的 0.1 × 10^(-2)/SV

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分配係数

分配係数に関する記述

イオン交換樹脂を用いる分離系では、吸着の強さを表わす指標として分配係数が用いられる。U(Ⅵ)イオンを例にとると、吸着平衡の時にイオン交換樹脂に吸着した U量が1.0×10^4Bq/g(乾燥樹脂重量)、水溶液中に残ったUの濃度が5Bq/mlの時、分配係数は2.0×10^3である。それぞれ1.0×10^4Bqの137Cs(Ⅰ)、51Cr(Ⅲ)、95Zr(Ⅳ) の各イオンのトレーサーを含む0.2M H2SO4 水溶液10mlがある。その溶液に、陰イオン交換樹脂1g(乾燥重量)を加えてから、よく撹拌して吸着平衡した。この系における それぞれのイオンの分配係数を求めたところ、次表に示す値が得られた。

陰イオン交換樹脂ー0.2M H2SO4 137Cs(Ⅰ) 51Cr(Ⅲ) 95Zr(Ⅳ)
分配係数 1.0×10^(-3)  0.5 1.0×10^3

 

95Zr(Ⅳ)は、そのほとんどが樹脂に吸着した。溶液中の95Zr濃度は約 10 Bq/molとなった。137Cs(Ⅰ)はほとんどが溶液中に残った。137Cs(Ⅰ)は溶液中で陽イオンとして存在している と考えられる。51Cr(Ⅲ)では、95%が水溶液中に見出され、その分配係数はおよそ 0.5 であった。

 

解説

分配係数 Kd[ml/g] = イオン交換樹脂中のイオン濃度/溶液中のイオン濃度 で表される。U(Ⅵ)の場合:Kd = 1.0×10^4[Bq/ml]/5[Bq/ml] = 2.0×10^3[ml/g]
ここで、試料の初期イオン濃度C0、初期放射能A0、水溶液に残ったイオン濃度C、水溶液中放射能A、水溶液体積V、イオン交換樹脂重量mとすると、
Kd = (C0-C)/C = [(A0-A)/m]/(A/V)・・・①
分配係数より、137Cs(Ⅰ)と95Zr(Ⅵ)についてイオン交換樹脂への吸着量及び水溶液中濃度を算出する。初期放射能はそれぞれ 1.0×10^4[Bq]である。
137Cs(Ⅰ):溶液中Cs放射能Acsとすると、式①より 1.0×10^(-3) = [(1.0×10^4-Acs)/1]/(Acs/10) Acs ≒ 1.0×10^4[Bq]
よって、Ccs = 1.0×10^4[Bq]/10[ml] = 1.0×10^3[Bq/ml] また、イオン交換樹脂への吸着量は、(A0cs-Acs)/1[g] = 0[Bq/g]

95Zr(Ⅵ):溶液中Zr放射能をAzrとすると、式①より 1.0×10^3 = [(1.0×10^4-Azr)/1]/(Azr/10) Azr ≒ 100 よって、Ccs = 100[Bq]/10[ml] = 10[Bq/ml]
また、イオン交換樹脂への吸着量は、(A0cs-Acs)/1[g] = 9900[Bq/g] 次に水溶液中に51Crが95%見出されたことにより、51Crの分配係数を求める。

51Cr(Ⅲ):水溶液中濃度:1.0×10^4 × 0.95 = 9500Bq、Ccs = 9500[Bq]/10[ml] イオン交換樹脂への吸着量:(A0cr-Acr)/1[g] = 500[Bq/g]
よって、分配係数Kd = 500[Bq/g]/950[Bq/ml] ≒ 0.5[ml/g] 強塩基性陰イオン交換樹脂にほとんど吸着しないあるいは全然吸着しないグループとして、アルカリ金属
アルカリ土類金属、Sc、Y、ランタノイド元素、Ac、Tl(Ⅰ)、Ni、Alなどがある。Csはアルカリ金属である。また、陰イオン交換樹脂は、陰イオンしか吸着しないので、CsはCs+
の陽イオンとして存在すると考えられる。

溶媒抽出法では、溶質の抽出特性を表す指標として分配比が用いられる。有機相中の溶質の全濃度をC0、水相中のそれをCAとすると、分配比は( C0/C )で表される。
通常は有機相中への抽出を増すために( HDEHP )等の抽出剤を有機相に加える。有機相を30%リン酸トリプチン/n-ドデカン、水相を硝酸溶液とした時の、いくつかの金属元素
についての金属元素について分配比を表に示す。

有機相:30%リン酸トリプチン/n-ドデカン 水相:3M 硝酸溶液 U(Ⅳ) Eu(Ⅲ) Tc(Ⅶ)
分配比  20  0.1  0.1

 

等容積の有機相と 3M 硝酸溶液を用いた1回の抽出では、U(Ⅵ)は 95 %が有機相に抽出され、Eu(Ⅲ)とTc(Ⅶ)は 90 %が水相に残ることがわかる。この水相に対して、
新たに等容積の有機相を用いて2回目の抽出を行うと、水相中に残るU(Ⅵ)量は、最初に存在した量の 0.25 %となる。

 

解説

有機相中の溶質の全濃度をC0、水相中の溶質の全濃度をCAとすると、分配比は次のようになる。 D = C0/CA 分配比Dは水相を基準として有機相に何倍も多く抽出 されるかを表し、Dが大きいほど有機相に多く抽出されることを意味する。また、放射性核種がどれだけ有機相に抽出されたかを表す抽出率Eは、分配比Dで次のように表される。
E = D/[D + (Vw/V0)]・・・② VwとV0は、それぞれ水相と有機相の容量(ml)を示す。水相と有機相を等容積で抽出を行う場合、Vw = V0 となり、②式は次のようになる。
E = D/(D + 1)・・・③ 1回目の抽出により有機相に抽出されたU(Ⅵ)の割合は式③より、E = 20/(20 + 1) ≒ 0.95 よって 95%
また、Eu(Ⅲ)とTc(Ⅲ)の割合は、E = 0.1/(0.1 + 1) ≒ 0.09 問題では水相に残った割合なので、(1 – 0.09) × 100 ≒ 90%
ここで、1回目の抽出により水相中に残ったU(Ⅵ)は、最初に存在した量の5%となる。2回目の抽出により有機相に抽出されるU(Ⅵ)の割合も0.95であるため、さらにその5%が 2回目の抽出により水相中に残る。したがって、(0.05 × 0.05) × 100 = 0.25% が水相中に残ると考えられる。
溶媒抽出法では、通常、有機相への抽出を増すために抽出剤を有機相に加える。例えば、90Sr – 90Yから 90Y を分離する際に、有機相にHDEHP(ビス2ーエチルヘキシルリン酸) を加えて抽出を行なっている。

III

約100年前、キュリー夫妻はウラン鉱石に含まれるラジウムを発見した。ウラン鉱石中に存在するラジウム(226Ra)は238Uと永続平衡にあるので、この鉱石中に含まれる 226Raと238Uの重量をW(Ra)とW(U)、それぞれの半減期をT(Ra)とT(U)(T(Ra)= 1.6×10^3年、T(U)= 4.5×10^9年とすると、次式の関係が成立する。

 

W(Ra)/226 = W(U)/228 × T(Ra)/T(U)

従って、その鉱石に含まれているW(U)が5.0×10^3gの場合には、約 1.7 mgの226Raが含まれていることになる。 ところで、キュリー夫妻は原子量を確定できるだけのラジウム量を得るために、ウラン回収後の残渣である鉱さい数トンを用いてラジウムの分離作業を行った。 原料である鉱さいを溶解し、その中に含まれるラジウムなどの微量金属を硫酸塩の沈殿として回収した。分離した硫酸塩の沈殿は、さらに様々な沈殿分離法を経て、 バリウム成分が精製された。最終段階では、同じアルカリ土類金属の塩であるBaCl2と 226RaCl3 とを分離するために、両者の水への溶解度の差を利用する分別結晶法を用いた。 試料を溶かした水溶液を蒸発濃縮して新たな結晶を得るごとに、結晶中の226Raの放射能濃度は増大した。この操作を何回も繰り返し、約100mgの 226RaCl3 結晶を得た。 なお、純粋な226Ra 100mg の放射能は 3.7×10^9 Bqである。

 

解説

ウラン鉱石中に存在するラジウム(226Ra)は238Uと永続平衡にある。永続平衡(親核種1の半減期が娘核種2に対して非常に長い:λ1<<λ2)が成立する場合は、親核種1と娘核種2は次の関係となる。
N1・λ1 = N2・λ2・・・④
ここで、ウラン鉱石中に含まれる226Raと238Uの重量をW(Ra)とW(U)、それぞれの半減期をT(Ra)とT(U)とすると、式④は次のように表される。
N(U)・λ(U) = N(Ra)・λ(Ra) より (ln2/T(U))・(W(U)/238) = (ln2/T(Ra))・(W(Ra)/226) (W(Ra)/226) = (W(U)/238)・(T(Ra)/T(U))
W(U) = 5.0 × 10^3の場合は、(W(Ra)/226) = (5.0 × 10^3[g]/238)・(1.6 × 10^3[年]/4.5 × 10^9[年]) W(Ra) ≒ 1.7 × 10^(-3)[g] = 1.7[mg]
ラジウムとバリウムは共にアルカリ土類金属の元素であり、化学的性質では同じ挙動をする。しかし、水等への塩化物の溶解度の差があるため、その差を利用して分別結晶法により 分離できる。アルカリ土類金属は周期表において第2族に属する元素。226Raの半減期は1.60 × 10^3年、ウラン鉱物に3.4 × 10^(-5)%程度含まれる。226Raの1gは約1Ci(キュリー) である。1Ci = 3.7 × 10^10Bq = 37GBq よって、純粋な226Ra 100mg の放射能は、3.7 × 10^9 Bq である。

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放射線防護

放射線防護に関する記述

放射線防護の目的は確定的影響の発生を防止し、確率的影響の発生を減らすことである。放射線防護に当たっては、①行為の正当化、②防護の最適化及び③個人の線量限度の3つを考慮しなければならない。行為の正当化とは、放射線被ばくを伴うどのような行為も、それによってもたらされる 損害よりも便益が大きくなければ採用してはならないという原則である。また、防護の最適化とは、個人線量の大きさ、人数及び被ばくする機会を、経済的、社会的要因を考慮して、合理的に達成できる限り低く抑えるという原則である。例えば、外部被ばくの場合には、作業をするに当たって時間を短くする、遮蔽する、 及び距離を長くするなどの処置をとり、被ばく線量をできるだけ低く抑えることが重要である。

 

個人が受ける全ての線源からの被ばくの総線量を制限するために線量限度が設けられている。線量限度以下の被ばくであれば便益に比べ、リスクは容認できると考えられる。仕事で放射線被ばくする可能性のある人の被ばくを職業被ばくと呼び、5年間で受ける放射線の線量限度は 100 mSv で、この範囲で1年間に 50 mSv を超えることがないよう制限されている。ただし、妊娠する可能性のある女性の場合は 5 mSv/3月、妊娠している女性の腹部表面では、本人の申し出等により許可届出使用者等が妊娠の事実を知った時から出産までの間につき 2 mSv である。また、ICRP の勧告では、一般公衆の被ばくについても1年間当たり 1 mSv という限度が設定されている。他方、線量限度は医療被ばくには 適用されない。これは、CT、PETなどによる診断、ガンマナイフなどによるがんの治療、あるいはIVR等に放射線を利用する便益を制限しないためである。

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放射線被ばくによる白血病と固形ガンの特徴

白血病と固形ガンの特徴

白血病

① 造血細胞由来の腫瘍

② 原爆被ばく後最小潜伏期間 2年、ピーク 6 ~ 7年

③ 白血病では潜伏期間は被ばく線量が大きい程短い

④ 被ばく時の年齢が若い程、潜伏期間が短い

⑤ LQ(直線-2次曲線)モデルがよく適合する・・・低LET放射線の場合、被ばく線量と不安定型染色体異常の頻度の関係はLQモデルに当てはまる。

⑥ 絶対リスク予測モデルが適合

固形ガン

① 最少潜伏期間は 10 年

② 潜伏期間は年齢によって複雑

③ 若年被ばくの方が潜伏期間が短い

④ 直線モデル(Lモデル)が適合・・・X線による線量の突然変異頻度と吸収線量との関係は直線的とされている。

⑤ 相対リスク予測モデルが適合

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自然放射線

自然放射線についての記述

天然に存在する放射性核種には、地球が形成された40数億年前から存在している一次放射性核種、これの壊変で生成した二次 放射性核種、及び主に宇宙線による核反応で生成した誘導放射性核種がある。一次放射性核種として現存するものは、数億年以上 の半減期を持っている。一次放射性核種のうち232Th、235U、238Uはそれぞれトリウム系列、アクチニウム系列、ウラン系列と呼ばれる 壊変系列を作り、多くの放射性核種をえて最後は鉛になる。

 

II

壊変系列を作らない一次放射性核種の代表的なものとして40Kがあり、カリウムに同位体存在度で0.0117%含まれている。半減期は1.28×10^9年(4.04×10^16秒)で、500gのヨウ化カリウム(KI)の中の40Kの放射能は 3600Bqとなる。ただし、ヨウ化カリウムの式量は166、アボガドロ定数は6.02×10^23/molとする。40Kの10.7%は EC 壊変して40Arになり、89.3%は β- 壊変して40Caになる。ある鉱物の生成時にアルゴンが含まれておらず、その後40Kの壊変で生成した40Arがすべて鉱物中に保持されているとすると、40Kの半減期のX倍経過後の40Kの原子数は鉱物生成時の (1/2)^x 倍、40Arの原子数は鉱物生成時の40Kの 0.107×(1-(1/2)^x) 倍となる。

解説

40Kは壊変系列を作らない天然放射線核種の1つである。その半減期は T1/2(40K) = 1.28 × 10^9年(4.04 × 10^16秒)で、普通のカリウムに0.0117%の割合で含まれる。 ここで、ヨウ化カリウム(KI)中の40Kの放射能をA(40K)とすると40Kの原子数 N(40K)、壊変定数λ、ヨウ化カリウムの質量w = 500gと分子量M = 166より、次のように示される。
A(40K) = λ・N(40K) ここでN(40K) = (w/M) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = (500[g]/166[mol/g]) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = 21.9 × 10^19 個 したがって、A(40K) = λ・N(40K) = (ln2/T(1/2)(40K)) × 21.9 × 10^19 = (0.693/4.04×10^16[s]) × 21.9 × 10^19 = 3600Bq
40Kは、β-(89.3%)、EC(10.7%)の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と40Ar(安定)にそれぞれ変換する。40Kが壊変すると40Arが生成するが、この40Arと40Kの存在量から年代を 知ることができるため、40Kは岩石などの年代測定に利用できる。ここでは、40Kの半減期TのX倍経過後の40Kと生成した40Arの原子数(それぞれNx(40K)とNx(40Ar))について 鉱物生成時の40K(初期原子数N0)に対する割合を考える。
ここで、半減期のX倍経過後の時間はX・Tとなる。Nx(40K) = N0・e^(-λt) = N0・(1/2)^(t/T) = N0・(1/2)^(XT/T)
よって、Nx(40K)/N0 = (1/2)^X
次に、40Kの壊変で生成した40Arがすべて保持されるので、分岐比10.7%より Nx(40Ar) = [N0 – N0(1/2)^X] × (10.7/100) = N0 × 0.107 × [1 – (1/2)^X]
よって、Nx(40Ar)/N0 = 0.107 × [1 – (1/2)^X]

 

III

14Cは大気中14Nと二次宇宙線の中性子との(n,p)反応で生成する誘導放射性核種で、半減期は 5730 である。この14Cは考古学者資料などの年代決定に利用されており、例えば、14Cの半減期の1/2を経過したコメ試料中の14Cは、イネ枯死時の 0.71 倍になっている。 年代決定のための14Cの測定には比例計数管や液体シンチレーションなどの放射能測定器が用いられてきたが、最近は加速器質量分析器の利用により、数万年前までの年代測定が可能になっている。宇宙線による誘導放射性核種としては、14Cのほかに、窒素、酸素及びアルゴンの核破砕反応で生成する3H、7Be、36Clなどの多数の核種がある。

解説

天然誘導放射性核種:宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する核種である。14Nと二次宇宙線の中性子は次の核反応により14Cを生成する。 14N(n,p)14C 放射性炭素14Cは14CO2として、植物や動物の組織内に吸収されて生体の一部となる。樹木や骨、貝殻のような個体に取り込まれ、その中に留まるようになった 炭素は、その個体の中で14C固有の壊変定数で放射能を失う。この測定には、14Cの非常に低いβ-線のエネルギーより液体シンチレーションカウンタが用いられる。近年は 加速器質量分析装置の利用も可能になっている。また、宇宙線が大気中の酸素、窒素、アルゴンなどにあたって起こる破砕反応で生成する誘導放射性核種には、3H、7Be、10Be、 14C、22Na、32Si、32P、33P、35Sなどがある。
イネ枯死直後のコメ試料中の14Cの放射能をA0、14Cの半減期をTとすると、経過時間t後の放射能は次のようになる。A = A0・(1/2)^(t/T)
ここで、半減期の1/2経過した後なので、t = T/2 A = A0・(1/2)^(T/2)/T = A0・(1/2)^(1/2) = A0/√2 よってA/A0 = 1/√2 ≒ 0.71

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