第1種放射線取扱主任者試験 放射化学5

問1

ある核種の放射能が、5 時間後に 12000 dpm、6 時間後に 3000 dpm であった。はじめにあった放射能[Bq]として、最も近い値はいくらか。

1 1 × 10^5

2 2 × 10^5

3 1 × 10^7

4 2 × 10^8

5 7 × 10^8

解答 2

ある放射性同位元素の経過時間毎の放射能をそれぞれ A(0)、A(5h)、A(6h)、半減期を T とすると、A(5h) = A(0)・(1/2)^(5/T) = 12000・・・①、

A(6h) = A(5h)・(1/2)^(1/T) = 3000・・・② とおける。

①、②より 12000 × (1/2)^(1/T) = 3000

(1/2)^(1/T) = 1/4 = (1/2)^2 T = 0.5 時間

①に T = 0.5 時間 を 代入すると、もとの放射能は、

A(0) = 12000/(1/2)^(5/0.5) = 12000/(1/2)^10 [dpm] = [12000/(1/1024)]/60 [dps] = 2.0 × 10^5 [Bq]

問2

放射能が等しい 54Mn(半減期 312 日)と 60Co(半減期 5.27 年)があるとき、5 年後の放射能の比(54Mn/60Co)に最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.001

2 0.005

3 0.03

4 0.08

5 0.2

解答 3

A = A(0)・(1/2)^(t/T) に代入し、計算をすれば解答にたどり着く。

問3

1 g のトリチウムの放射壊変による発熱量[W]として最も近い値はいくらか。ただし、トリチウムの半減期は 3.9 × 10^8 秒、β線の平均エネルギーは 5.7 keV、1 eV は 1.6 × 10^(-19) J とする。

1 0.0003

2 0.003

3 0.03

4 0.3

5 3

解答 4

1 g のトリチウムなので原子数 N は、N = 1/3 × 6.0 × 10^23 となる。壊変の際の発熱量 f は、f = λ・N・E(β)’ = [0.693・N・E(β)’]/T = [0.693 × (1/3) × 6.0 × 10^23 × 5.7 × 10^3]/(3.9 × 10^8) = 2.0 × 10^18[eV/s] よって、2.0 × 10^18 × 1.6 × 10^(-19) = 3.2 × 10^(-1)[J/s] ≒ 0.3 [W]

問4

半減期 14 日の放射性核種の製品が、検定時に不純物として半減期 28 日の核種を 4% 含むとき(核種純度 96 %)、この製品の検定時から 56 日後の核種純度[%]として最も近い値は次のうちどれか。

1 82

2 86

3 90

4 94

5 98

解答 2

全放射能を A とすると、着目する核種の放射能は 0.96 A、不純物の放射能は 0.04 A となる。それぞれの半減期は 14 日と 28 日であるので、56 日後に着目する核種の放射能は、0.96A × (1/2)^(56/28) = 0.06A となる。 また、不純物の放射能は、0.04A × (1/2)^(56/28) = 0.01A となる。よって、56 日後の全放射能は、0.06A + 0.01A = 0.07A。求める核種純度は、(0.06A/0.07A) × 100 = 85.7% ≒ 86%

問5

1.0 MBq の 59Fe(半減期 3.8 × 10^6 秒)を含む水溶液 10 ml がある。この水溶液中の非放射性鉄のモル濃度が 0.1 mol/L のとき、59Fe の全鉄に対する原子数の比(59Fe/Fe)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 1 × 10^(-8)

2 4 × 10^(-8)

3 1 × 10^(-7)

4 4 × 10^(-7)

5 1 × 10^(-6)

解答 1

59Fe の放射能を A(59Fe)、原子数を N(59Fe) とすると、A(59Fe) = [ln2/T(59Fe)]・N(59Fe)、N(59Fe) = [A(59Fe) × T(59Fe)]/ln2。59Feの放射能は、1.0 MBq、半減期は 3.8 × 10^6 秒であるから、 N(59Fe) = (1.0 × 10^6 × 3.8 × 10^6)/0.693 ≒ 5.5 × 10^12。一方、非放射性鉄の原子数を N(Fe) とする。N(Fe) = 0.1 × 10 × 10^(-3) × 6.0 × 10^23 = 6.0 × 10^20。よって、全鉄に対する原子数の比は、 N(59Fe)/N(Fe) = (5.5 × 10^12)/(6.0 × 10^20) = 0.91 × 10^(-8) ≒ 1 × 10^(-8)

問6

1 TBq の 7Be (半減期 4.6 × 10^6秒)の質量[g]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 6.6 × 10^(-5)

2 7.7 × 10^(-5)

3 1.1 × 10^(-4)

4 3.7 × 10^(-3)

5 6.0 × 10^(-1)

解答 2

A = N・λ = (0.693/T) × (W/M) × 6.0 × 10^23 から求めることができる。W = 7.74 × 10^(-5) [g]

問7

14C で標識されたエタノールの 70% が酸化されて酢酸となった。エタノールの比放射能が 10 MBq/g であったとき、生成した酢酸の比放射能[MBq/g]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、エタノールと酢酸の分子量はそれぞれ、46 及び 60 とする。

1 2.5

2 3.8

3 5.4

4 7.7

5 9.5

解答 4

C2H5OH + O2 → CH3COOH + H2O 初めのエタノールの重さを w g とすると、酢酸は(0.7w/46) × 60 g 生成する。反応前のエタノールの放射能は 10w MBq で、70% が酢酸となったので、(0.7×10w)/(0.7w/46) × 60 = 7.66 [MBq/g]

問8

238U を 234 g 含む試料中の 222Rn の放射能[Bq]として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、この試料中のウラン系列核種は永続平衡にあり、238U 1 g の放射能は 1.2 × 10^4 Bq である。

1 1.2 × 10^4

2 2.8 × 10^5

3 1.2 × 10^6

4 2.8 × 10^6

5 1.2 × 10^7

解答 4

永続平衡(親核種1の半減期が娘核種2に対して非常に長い:λ1<<λ2)が成立する場合は、親核種1と娘核種2は次のような関係となる。N1・λ1 = N2・λ2。したがって、その放射能比は1となり、それぞれの放射能 A について、 A(238U) = A(222Rn) が成立する。ここでは、238U の比放射能は 1.2 × 10^4 Bq/g であるので、求める 222Rn の比放射能は次のようになる。A(222Rn) = A(238U) = 1.2 × 10^4 Bq/g × 234 = 2.8 × 10^6 Bq

 

問9

次の逐次壊変において放射平衡となりうるものの組み合わせはどれか。

A 42Ar(32.9年) → 42Kr(12.4時間)

B 51Mn(46.2分) → 51Cr(27.7日)

C 132Te(3.20日) → 132I(2.30時間)

D 140Ba(12.8日) → 140La(1.68日)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

放射平衡が成立するのは、親核種の半減期が娘核種の半減期より長いときである。この逆は放射平衡は成立しない。

A 放射平衡は成立する 42Ar(32.9年) → 42Kr(12.4時間)・・・42Arー42K ジェネレータとして使用。

B 放射平衡は成立しない 51Mn(46.2分) → 51Cr(27.7日)

C 放射平衡は成立する 132Te(3.20日) → 132I(2.30時間)・・・ミルキングできる。

D 放射平衡は成立する 140Ba(12.8日) → 140La(1.68日)

問10

次のうち、A の核種を定量するとき B の測定器が適切なのはどれか。

A      B

1 14C 液体シンチレーション計数装置

2 33P NaI(Tl)シンチレーション検出器

3 55Fe BGOシンチレーション検出器

4 60Co ZnS(Ag)シンチレーション検出器

5 90Y BF3比例計数管

解答 1

1 正 14C 液体シンチレーション計数装置・・・14Cは β- 線放出体でそのエネルギーは非常に低いので、正確に定量するには液体シンチレーションカウンタが用いられる。

2 誤 33P NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・33P は最大エネルギー 249 keV のβ線のみを放出する核種である。NaI(Tl)シンチレーション検出器は、γ線放出核種の測定に用いる。

3 誤 55Fe BGOシンチレーション検出器・・・55Feは、EC壊変での 5.9 keV の M(n)-K(α) 特性X線を放出する。BGO はγ線測定用シンチレータの一つであり、実効的な原子番号が高く、比重が大きいので、小型でも高い検出効率を持つ。

4 誤 60Co ZnS(Ag)シンチレーション検出器・・・60Co は低いエネルギーのβ-線及び 1.17 MeV と1.33 MeV の2本のγ線を放出する核種である。ZnS(Ag)は薄い膜に使用が限定され、飛程の長いβ線やγ線には不向きである。α線サーベイメータに利用される。

5 誤 90Y BF3比例計数管・・・90Y はβ-放出体であり、そのβ線のエネルギーは非常に高く最大エネルギーは 2.28 MeV である。BF3 ガスカウンターは熱中性子に対して大きな断面積を持つ核反応を利用する検出器であり、中性子の測定に用いられる。

問11

熱中性子による 235U の核分裂で生成する収率が大きい核種の組み合わせはどれか。

A 60Co

B 90Sr

C 99Mo

D 111Ag

E 133Xe

 

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACDのみ 4 BCEのみ 5 CDEのみ

解答 4

235U の熱中性子による核分裂では亜鉛の RI の 72Zn(原子番号 30)からテルビウムのRIの 161Tb(原子番号 63)まで、原子番号でいえば 30 から 65 までのいろいろな元素の RI が生成する。これらを核分裂生成物と呼び、質量数95、 138 付近に核分裂収率の極大(核分裂収率は約 6 %)があり、極小は質量数 118(核分裂収率は 0.009%)くらいである。

その他の核分裂収率 [235U(n,f)] 90Sr:5.78 %、99Mo:6.11%、111Ag:0.0174、135Xe:6.70%

問12

アクチノイド元素とランタノイド元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A すべてのアクチノイド元素は放射性である。

B すべてのランタノイド元素は安定同位体をもつ。

C すべてのアクチノイド元素は3価の状態が最も安定である。

D すべてのランタノイド元素は遷移元素である。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 原子番号 82 の Pb 以上の元素は、全て天然の放射性核種をもち、特に原子番号 83 の Bi 以上の元素は、安定核種が無く全て放射性である

B 誤 Pm は、安定同位体を持たない。

C 誤 Am より重いアクチノイド元素は、3価をとる場合がほとんどであるが、Am より軽い元素は3価値と異なる原子価をとる。

D 正 遷移元素には、周期表の 3 ~ 11 の各族の元素が該当する。ランタノイド元素は 3 族である。

問13

次の核種の組み合わせのうち、β+ 壊変核種を含むものの組み合わせはどれか。

A 11C 12C 13C

B 13N 14N 15N

C 16O 17O 18O

D 18F 19F 20F

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

下記に示す。その他の壊変や安定核種に関しては別途まとめたものを作っていますので下記のサイトまでお問い合わせください。

A 正 11C:β+壊変、EC 12C:安定核種 13C:安定核種

B 正 13N:β+壊変、EC 14N::安定核種 15N:安定核種

C 誤 16O:安定核種 17O:安定核種 18O:安定核種

D 正 18F:β+壊変 19F:安定核種 20F:β-壊変

問14

リンの同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 31P は リンで唯一の安定同位体である。

B 32P は β- 壊変して 32S になる。

C 32P は 33P より半減期が長い。

D 32P は 33P よりβ線の最大エネルギーが大きい。

1 ABDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

リンの安定核種は 31P のみである。そのほかの核種については別紙の放射化学にまとめて記載していますので下記のサイトまでお問い合わせください。

A 正:31P は唯一の安定同位体である。

B 正:32P(原子番号15) は β- 壊変して 32S(安定)(原子番号16)となる。

C 誤:32P の半減期は 14.26 日、33P の半減期は 25.34日である。

D 正:β線の最大エネルギー:32P(1.71 MeV) > 33P(0.249MeV)。

問15

ヨウ素の同位体に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 123I はシングルフォトン断層撮影法(SPECT)に用いられる。

2 125I はラジオイムノアッセイに用いられる。

3 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。

4 129I は陽電子放射断層撮影(PET)に用いられる。

5 131I は甲状腺疾患の内服療法に用いられる。

解答 4

1 正 インビボ検査であるSPECT では、123I や 99mTc 等のγ線放出核種が用いられる。

2 正 125I はラジオイムノアッセイに用いられる。

3 正 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。

4 誤 PET 製剤に使用される主な β+ 壊変核種は 11C、13N、15O、18F の4種類である。129I はβ- 壊変核種である。

5 正 131I は甲状腺疾患の内服療法に用いられる。

問16

安定同位体が存在しない元素の組み合わせは、次のうちどれか。

A Tc

B Cs

C La

D Pm

E U

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 3

安定同位体については別紙の放射化学にまとめて記載していますので下記のサイトまでお問い合わせください。

原子番号 82 の Pb 以上の元素はすべて天然の放射性核種を持ち、特に原子番号 83 の Bi 以上の元素は安定核種がなくすべて放射性である。

問17

放射性核種が元素の周期表で同族であるものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 15O と 35S

B 32P と 76As

C 86Rb と 133Ba

D 24Na と 67Ga

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

これは周期表を覚えておかないと解けない。

問18

次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A ラドン Rn はラジウム Ra と同族元素である。

B テクネチウム Tc は モリブデン Mo と同族元素である。

C ネプツニウム Np はアクチノイド元素である。

D アメリシウム Am は超ウラン元素である。

 

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

これも周期表を覚えておかなければ解けない。

A 誤 ラドン Rn は 18族でラジウム Ra は 2族である。

B 誤 テクネチウム Tc は 7族で、モリブデン Mo は 6族である。

C 正 原子番号89 ~ 103 の 15元素をアクチノイド元素と呼ぶ。アクチノイド元素はすべて放射性である。Np の原子番号は 93 である。

D 正 超ウラン元素とは、ウランより大きい原子番号を持つ元素の総称である。Am の原子番号は 95 である。

問19

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 238U と 234U は同じ壊変系列の核種である。

B 222Rn は 220Rn に比べて半減期が長い。

C 210Po のα壊変により 206Pb が生成する。

D 238U と 235U の同位体存在度は地球誕生以来一定である

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

A 正 ウラン系列は 238U から始まり 234U を経て 206Pb(安定)で終わる系列である。

B 正 222Rn の半減期は 3.8235 日、 220Rn の半減期は 55.6 秒。

C 正 210Po のα壊変により 206Pb が生成する。

D 誤 地球ができた時には非常に多くの放射性核種が存在していたが、46 億年(4.6 × 10^9 年)を経た現在残っているのは長寿命の放射性核種である。地球上の元素の大部分は安定で壊変しないので、その存在量は変わらない。しかし放射性核種は、壊変するので変化し、存在量に比例した一定の 割合の放射性壊変によって、はじめと違った別の核種に変わる。ここで 238U の半減期は 4.468 × 10^9 年、235U の半減期は 7.038 × 10^8 年である。

問20

64Cu の壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線スペクトルに 511keV のピークがみられる。

B 64Zn を生成する部分半減期は、64Ni を生成する部分半減期より長い。

C EC 壊変に伴い、Cu の特性X線が放出される。

D β-壊変はγ線放出を伴わない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正 64Cu は β+ 壊変して 64Ni になる。その際に放出される陽電子は、通常の電子の反物質であるため、運動エネルギーを失って停止すると、物質中の電子と結合して消滅する。その際に消滅放射線と呼ばれる 511 keV のγ線 2 本を 180°反対方向に放出する。これがγ線スペクトルに現れる。

B 正 放射性核種の中には、2 種類以上の壊変を行うものもある。64Cu の壊変もその一つであり、このように枝分かれする壊変を分岐壊変と呼び、その割合を分岐比という。64Cuの壊変定数をλとすると、λ(64Cu) = λ(EC) + λ(β+) + λ(EC) + λ(β-) となる。
λ(64Ni) = λ(EC) + λ(β-) + λ(EC) = 0.005λ + 0.174λ + 0.431λ
λ(64Zn) = λ(β-) 0.39λ
よってそれぞれの部分半減期 T(64Ni) = 0.693/0.61λ T(64Zn) = 0.693/0/39λ となり、64Zn を生成する部分半減期は 64Ni より長くなる。

C 誤 β壊変では原子核内の陽子が中性子に壊変するとき。陽子が軌道電子を捕獲して中性子に壊変する場合がある。これを電子捕獲あるいは EC 壊変という。この時に特性X線あるいはオージエ電子が発生する。ここでの特性X線は Ni によるものである。

D 正 原子核の励起エネルギー、壊変モード、γ線の強度比などを表した図を壊変図という。β+ 壊変や α壊変は左へ進む斜めの矢印、β- 壊変は右へ進む斜めの矢印、γ線は垂直の矢印で示す。励起準位の半減期が励起状態および核異性体転移に示され、核異性体転移は IT で示す。

問21

次のうち、NaI(Tl)シンチレーション検出器で測定することができる放射性核種の組み合わせはどれか。

A 24Na

B 35S

C 60Co

D 63Ni

E 131I

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

解答 3

NaI(Tl)シンチレータはタリウムを少量添加したヨウ化カリウムの結晶をガラス窓がついた金属のケースに封入したものであり、γ線測定用として用いられる。

A 正 24Na・・・β- 壊変のエネルギーは 1.393 MeV で、γ線エネルギーは 1.369 MeV、2.754 MeV 他を放出する。

B 誤 35S・・・β- 壊変のエネルギーは低く 0.167 MeV、γ線は放出しない。

C 正 60Co・・・低いエネルギー(0.31 NeV)の β- 線および 1.17 MeV、1.33 MeV の 2 本のγ線を放出する。

D 誤 63Ni・・・β- 壊変エネルギーは、0.0669 MeV である。

E 正 131I・・・β- 壊変エネルギーは 0.812 MeV(0.6%)、0.608(90.4%)、0.33(6.9%)、0.250(1.6%)でγ線放射(主に0.364 MeV)を伴う。

問22

次の実験操作のうち、放射性の気体が発生するものの組み合わせはどれか。

A 64CuCl2 水溶液に亜鉛粉末を加える。

B Ba(14CO3) に硝酸を加える。

C Fe(35S) に塩酸を加える。

D トリチウム水を電気分解する。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 BDのみ 5 BCDのみ

解答 5

下に反応式を示す。

A 誤 亜鉛は銅よりイオン化傾向が高いため気体は発生しない。

B 正 Ba[14C]O3 + 2HNO3 → Ba(NO3)2 + [14C]O2 ↑ + H2O

C 正 Fe[35S] + H2SO4 → FeSO4 + H2[35S] ↑

D 正 2[3H]20 → 2[3H]2 ↑ + O2 ↑

問23

[35S]O4(2-)、[45Ca]2+、[55Fe]3+、[82Br]- のうち1種類とその同位体担体を含む水溶液がある。各水溶液に適切な操作を加えて放射性核種を沈殿させたい。放射性核種とその化学形Ⅰ〜Ⅳと、その化学操作A〜Dの組み合わせで正しいのはどれか。

<核種・化学形>  <化学操作>

Ⅰ [35S]O4(2-) A 硝酸銀水溶液を加える。

Ⅱ [45Ca]2+ B 塩化カルシウム水溶液を加える。

Ⅲ [55Fe]3+ C シュウ酸アンモニウム水溶液を加える。

Ⅳ [82Br]- D アンモニア水溶液を加えて弱アルカリ性にする。

1 ⅠーA、ⅡーB、ⅢーC、ⅣーD

2 ⅠーB、ⅡーC、ⅢーD、ⅣーA

3 ⅠーD、ⅡーB、ⅢーA、ⅣーC

4 ⅠーB、ⅡーD、ⅢーC、ⅣーA

5 ⅠーC、ⅡーA、ⅢーD、ⅣーB

解答 2

Ⅰ [35S]O4(2-)

B 塩化カルシウム水溶液を加える。・・・CaCl2 + [35S]O4(2-) → Ca[35S]O4 ↓ + 2Cl-

Ⅱ [45Ca]2+

C シュウ酸アンモニウム水溶液を加える。・・・[45Ca]2+ + (NH4)2(C2)O4 → [45Ca](C2)O4 ↓ + 2(NH4)+

Ⅲ [55Fe]3+

D アンモニア水溶液を加えて弱アルカリ性にする。・・・(Fe)3+ にアンモニア水を加えてアルカリ性にすると、水酸化鉄(Ⅲ)が沈殿する。

Ⅳ [82Br]-

A 硝酸銀水溶液を加える。・・・AgNO3 + [82Br]- → Ag[82Br] ↓ + (NO3)-

問24

水溶液中の化合物 X を、ある有機溶媒で抽出すると、X の分配比(有機相中濃度/水相中濃度)は 80 である。50 kBq の放射性同位体で標識した X の水溶液から、水相の 1/2 の体積の有機溶媒で X を抽出したとき、水相に残る X の放射能[kBq]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.61

2 0.94

3 1.2

4 1.8

5 2.4

解答 3

有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値を分配比 D という。

D = C(0)/C(W)

[C(0):有機相中の放射性核種全濃度、C(W):水相中の放射性核種全濃度]。

さらに、V(W)とV(0)をそれぞれ水相と有機相の容量とすると、有機相への抽出率 E は、

E = D/[D + (V(W)/V(0))]。D = 80 より、E = 80/[80 + (V(W)/V(0))]。

ここで有機溶液は水相の 1/2 の体積であるから、V(0) = 1/2・V(W) より、

E = 80/[80 + (V(W)/1/2V(W))] = 80/[80+2] = 0.9756。

水相に残る X の放射能は、50 × (1 – 0.976) = 1.2 [kBq]

問25

水溶液中の放射性同位体(RI)の分離法についての次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 キレート抽出では RI は正の電荷を帯びた分子イオンとして抽出される。

2 イオン会合体抽出では RI 原子同士が凝集して抽出される。

3 イオン交換クロマトグラフィーでは RI は中性分子として捕集される

4 沈殿法では RI は溶解度積が大きい塩を形成して沈殿する。

5 蒸留法では RI は蒸気圧が高い中性分子として蒸留される。

解答 5

1 誤 オキシン、ジチゾン、クペロンのようなキレート剤は金属とキレート化合物をつくる。これらの化合物の多くは有機溶媒に溶け、水に溶けないので分離できるため、キレート抽出される。

2 誤 イオン会合抽出系には3つの型がある。金属イオンが大きな有機の基をもつイオンとも結合するか、あるいは大きいイオンと会合するような過程を経るもの。ハロゲン、チオシアン酸、硝酸のイオンなどと、アルコール、エーテル、ケトン及びエステルのような酸素を含んでいる有機化合物とが、 金属イオンに配位している水分子を置換して抽出できる化学種を生ずる過程を経るもの。金属イオンが高分子の塩になって有機溶媒に溶けているもの。

3 誤 イオン交換樹脂を固定相に用いるクロマトグラフィー(混合成分を固定相に接して流れる移動相にのせることにより分離する方法)をイオン交換クロマトグラフィーと呼ぶ。

4 誤 溶解度積:難溶性の塩 MA は固体のまま水中に溶けるだけ溶かして飽和溶液をつくると余分の MA は固体のまま残る。このとき溶解しない MA と溶解した MA との間には平衡が成り立ち、溶解した M+ と A- とを生じる。この時のそれぞれの濃度の積を溶解度積といい、一定温度で一定である。 沈殿分離では、生成する塩の溶解度積が小さい反応を選ぶ。

5 正 揮発性の RI は蒸留により不揮発性物質から分離できる。蒸留法は揮発性化合物をつくる RI に対し、有力な無担体分離の手段となる。

問26

混合物資料に含まれるある成分 X を、同位体希釈法(直接法)で定量した。試料に放射性同位体で標識した X(比放射能は 500 dpm/mg)を 10 mg 加えて完全に混合したのち、一部を純粋に化学分離したところ、その比放射能が 100 dpm/mg となった。試料中に含まれた成分 X の量[mg] として 正しい値は次のうちどれか。

1 10

2 40

3 50

4 100

5 150

 

解答 2

この問いは直接希釈法なので、同位体希釈分析法の基本形で RI によって定量分析をする手法である。定量する資料の重量 X、添加する同じ化学形の RI の重量 a、比放射能 S0 とすると次式の関係が成り立つ。S(a+X) = S0a これにより 500 × 10 = 100(X + 10) 100X = 4000 a = 40 [mg] となる。

問27

次の放射性同位体とその性質を利用した分析・計測装置の関係のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 60Co ー メスバウアー分光装置

B 63Ni ー ECDガスクロマトグラフ

C 241Am ー 蛍光X線分析装置

D 252Cf ー 中性子水分計

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 メスバウアー分光装置としては 59Fe、57Co、125Te、119mSn 等の低エネルギー線源が用いられる。

B 正 まれに 3H が線源に使用される。

C 正 55Fe、109Cd、241Am が線源として用いられる。

D 正 241Am-Be も線源として使用されることがある。

問28

放射線化学に関連する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 気体の W 値はその気体のイオン化エネルギーに等しい。

2 5 MeV の陽子の水中での LET は同じエネルギーのα粒子のそれに比べて大きい。

3 G 値は LET には依存しない。

4 化学線量計では G 値の線量依存性を利用する。

5 フリッケ線量計では酸素を水溶液中に飽和させることでより高線量の測定が可能となる。

解答 5

1 誤 1つの電子ーイオン対を生成するのに要する平均エネルギーを W 値という。気体の種類によって W 値は異なるが、電子、2次電子に対して大部分の気体では 25 eV から 40 eV 程度で、He では 41 eV、Ar では 26 eV、空域は 34 eV である。

2 誤 線阻止能が大きいほど LET が大きいと考えて良い。そこで LET を同じ粒子について比較すればエネルギーが小さいほど LET は 大、同じエネルギーの粒子については質量の大きい粒子ほど LET は大である。LET の大きさは、5 MeV の α粒子>5 MeV の陽子核となる。

3 誤 LET の大きい放射線では、スプール内に生じた活性種は再結合して消滅し、LET の小さいものより G 値 は低い。LET の大きいときには、小さいものよりラジカル・ラジカル反応による生成物の G 値は大きいが、重要なラジカル・中性分子の反応の G 値は減少する。また水和電子が関与する 反応の G 値も LET の大きいときは小さい。

4 誤 化学線量計は、放射線照射によって化学変化を起こしたときの原子数が放射線量に比例することを利用して線量を測定する線量計である。放射線照射によって起こる物質の化学変化の量を示すために用いる数値で、物質が放射線のエネルギーを 100 eV 吸収したときに変化を受ける分子または 原子の数を G 値という。

5 正 フリッケ線量計は硫酸酸性の硫化鉄(Ⅲ)水溶液に空気または酸素と飽和して用いる。空気飽和より酸素飽和の方が高線量の測定が可能。

問29

β- 壊変に続いて γ線を放出する核種の正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A 32P

B 60Co

C 90Sr

D 131I

E 192Ir

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

解答 4

A 誤 32P・・・β- 壊変し、32S(原子番号16)(安定) となる。γ線は放出しない。

B 正 60Co・・・低いエネルギー(0.31 MeV)の β- 線及び 1.17 MeV、1.33 MeV の 2本の γ線を放射して 60Ni(原子番号)(安定) となる。

C 誤 90Sr・・・β- 壊変して半減期 64.1 時間の β- 放出体の 90Y(原子番号39) となる。

D 正 131I・・・β- 壊変し、133Xe(原子番号54)(安定)となる。そのエネルギーは 0.812 MeV(0.6%)、0.608(90.4%)、0.33(6.9%)、0.250(1.6%)でγ線放射(主に 0.364 MeV)を伴う。

E 正 192Ir・・・分岐壊変。β- 壊変(95%)、γ線放射により 192Pt(原子番号78)になり、電子捕獲(5%)、γ線放射によって 192Os(原子番号76)(安定)となる。放射されるγ線は複雑であるが、0.3 MeV 付近が多い。

問30

放射性核種を生成する次の核反応で、無担体の核種が得られるのはどれか。

1 27Al(d,p)

2 31P(p,pn)

3 34S(n,γ)

4 48Ti(p,n)

5 65Cu(α,2p3n)

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

RI がその安定同位体を含まないで存在している状態のことを無担体であるという。(n,γ)、(d,p)、(n,2n)、(γ,n)反応などによって生ずる RI は常に非放射性のターゲットによって薄められる。したがって、無担体の RI をつくることができない。 例えば、(d,n)、(d,2n)、(d,α)、(n,p)、(n,f)などのような核反応は、ターゲットと違った原子番号の RI が製造でき、ターゲットから化学的に目的の RI を分離できるので、無担体の RI が製造できる。

1 誤 27Al(d,p)28Al

2 誤 31P(p,pn)30P

3 誤 34S(n,γ)35S

4 正 48Ti(p,n)48V

5 誤 65Cu(α,2p3n)64Cu

熱中性子による核分裂についての記述

235U は、熱中性子により核分裂すると、2 ~ 3 個の中性子と、二つの質量の異なる核分裂片を生成(非対称核分裂)するとともに、約 200 MeV のエネルギーを発生する。したがって、1 g の 235U がすべて核分裂すると、約 8×10^10 J のエネルギーを発生する。二つの核分裂片は、質量数が90 ~ 100 及び 133 ~ 144 で大きな生成収率を示す。これらの核分裂生成核種はいずれも中性子過剰であり、ほとんどが β- 壊変する。

原子力発電所の事故による環境の放射能汚染において、主要なγ線放出核種として 137Cs(半減期:30年;1cm線量当量率定数:0.093μSv・m^2・MBq^(-1)・h^(-1))と 134Cs(半減期:2年;1cm線量当量率定数:0.25μSv・m^2・MBq^(-1)・h^(-1))がある。137Cs は 235U の熱中性子核分裂で高い収率で生成する一方、134Cs の核分裂生成収率は極めて小さい。この 134Cs は、数種類の核分裂生成物から生じた安定核種 133Cs が原子炉の核燃料中に蓄積し、さらに (1) 式のように、その (n,γ) 反応で生成したものであり、長時間使用した核燃料中に多く含まれる。133Cs(n,γ)134Cs ・・・(1)。したがって、134Cs は、過去の 核爆発実験のフォールアウトでは、ほとんど検出されていない。137Cs と 134Cs が放射能[Bq] で等量(1:1) であるとき、137Cs と 134Cs の原子数比は 15:1 であり、また、 137Cs と 134Cs による 1cm 線量当量率の比は 0.37:1 である。これが 15年後においては、137Cs と 134Cs の放射能の比は 128:1 となり、1cm 線量当量率の比は 47:1 となる。

解説

半減期を T、原子数を N、放射能を A、とすると、A = 0.693N/T と表される。よって、原子数 N は N = AT/0.693 となり、放射能と半減期の積 AT に比例することがわかる。放射能が等量の時、137Cs の原子数:134Cs の原子数 = 137Cs の AT :134 の AT = 30:2 = 15:1 となる。

線量当量率は、放射能と線量当量率定数との積に比例する。放射能が等量の時、137Cs の線量当量率定数:134Cs の線量当量率定数 = 0.093:0.25 = 0.37:1 となる。

15 年後は、137Cs の 15/30 = 1/2 半減期であり、134Cs の 15/2 半減期である。 137Cs の放射能を A(Cs-134) とすると、137Cs と 134Cs との放射能の比は、A(Cs-137)/A(Cs-134) = [(1/2)^(1/2)]/[(1/2)^(15/2)] = (1/2)^(1/2) × (1/2)^(-15/2) = (1/2)^(-7) = 2^7 = 128 となる。

線量当量率は放射能と線量当量率定数との積に比例する。前述より、137Cs の放射能:134Cs の放射能 = 128:1、また 137Cs の線量当量率定数:134Cs の線量当量率定数 = 0.37:1 であるので、それぞれの積をとって、137Cs の線量当量率:134Cs の線量当量率定数 = 128 × 0.37:1 × 1 = 47:1 となる。

核分裂生成物に含まれている長寿命核種のうち、体内に摂取された場合、問題になるのが 90Sr(半減期:29年)である。90Sr はアルカリ土類金属であり、人体内に入ると骨に沈着し長時間にわたる内部被ばくが問題になる。90Sr は β- 壊変により 90Y 、90Zr へと逐次壊変する。単離した 90Sr は 18日間以上経過すると、生成する 90Y(半減期:2.7 日)の放射能がほぼ一定な値となり、90Sr の放射能と 1% 以内で等しくなる。このような放射平衡を永続平衡という。環境試料中の 90Sr の分析では、90Sr のβ-線の最大エネルギーが 0.54 MeV と低く、90Y が共存すると定量困難である。一方、娘核種 90Y のβ-線の最大エネルギー が 2.28 MeV と高いことから、90Sr の定量にはこれを利用する。試料からストロンチウムを分離回収して生成した後、2週間以上待つ。その塩酸溶液に 90Y の捕集材として Fe3+ を、90Sr の保持単体として Sr(2+) を、それぞれ塩化物の形で加えた後、加熱しながらアンモニア水を加えて水酸化鉄(Ⅲ)の沈殿をつくり、この沈殿中に娘核種 90Y を共沈させて親核種 90Sr から分離する。90Y の放射能測定から共沈させた時刻における 90Y の放射能を算出し、放射平衡にあった 90Sr の放射能を求めることができる。

補足

環境試料中の 90Sr は、娘核種の 90Y と永続平衡になっている。娘核種の 90Y から放出されるβ-線の最大エネルギーは 2.28 MeV で、90Sr から放出されるβ-線の 0.54 MeV よりも高いために、90Sr から放出されるβ-線を直接測定して定量することは困難である。そのため、一旦、90Sr のみを分離回収してその時点から娘核種の 90Y を生成させて永続平衡にさせる。その後、90Y だけを分離してそのβ-線を測定することにより、永続平衡にある 90Sr の放射能を求める手法が用いられる。

生成する 90Y の物質量は極めて小さいため、そのままでは沈殿を生成しない。化学的性質の似ている Fe(3+) を共沈剤として加えて、水酸化鉄(Ⅲ)の沈殿中に 90Y を集める。図で表すと下のようになる。

分離過程でのストロンチウムの回収率を測定するために、試料中に 90Sr に比べて十分多量の安定ストロンチウムが存在しない場合には、十分多い量の安定ストロングを加える必要がある。この安定ストロンチウムは、その後の操作で担体として働く。

核医学診断で最も多く用いられている 99mTc(半減期:6.0時間)の製造には、99Mo(半減期:66時間)による 99mTc ジェネレータが利用できる。それに使用する 99Mo は、235U の熱中性子核分裂反応で製造され、無担体に近いものが得られる。99Mo はβ-壊変し、その 88% は 99mTc に、残りの 12% は直接 99Tc(半減期:2.1×10^5年)になる。生成した 99mTc は核異性体転移して 99Tc になる。分離生成した 99Mo の中では、99mTc の放射能が増加し、約 23 時間後に最大となるとき、99mTc の放射能は、その時点での 99Mo の放射能の約 88% になる。その後、99mTc の放射能は次第に半減期 66 時間で減衰 するようになる。約 60 時間以上で 99Mo と 99mTc は放射平衡状態になり、これを過渡平衡という。この時、99mTc の放射能と 99Mo の放射能の比は、99mTc と 99Mo の壊変定数をそれぞれ λ(Tc) 及び λ(Mo) とすると、[0.88λ(Tc)]/[λ(Tc)-λ(Mo)] で表され、99mTc の放射能は、99Mo の放射能を上回ることはない。

補足

親核種の半減期が娘核種の半減期に対して長い場合、十分な時間が経過すると娘核種は親核種の半減期で減衰するようになる。これを過渡平衡と呼ぶ。親核種が壊変して全て娘核種になる場合、娘核種の放射能が最大となるときに親核種と同じ放射能になる。この時を境に、娘核種と親核種の放射能が逆転し、娘核種の放射能が親核種の放射能よりも多くなる。99Mo の壊変では、88% が 99mTc を生成して放射平衡が成り立つが、12% は直接 99mTc になる。99mTc は 99Mo よりも半減期が長いため、99Mo の 12% は放射平衡が成り立たないことになる。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験 放射線物理学5

問1

次の放射線のうち、真空中での速度が最も遅いものはどれか。

1 波長 1 nm の光子

2 運動エネルギー 10 MeV の中性子

3 運動エネルギー 10 MeV のα粒子

4 運動エネルギー 5 MeV の陽子

5 電圧 1 MV で加速した電子

解答 3

光子の速度は最も速い。光に比べて速度が小さい非相対論的領域では、運動エネルギーは T = (1/2)・mv^2 となる。v^2 = (2T)/m であるから、T/m の比較で、速度も比較することができる。

1 波長 1 nm の光子・・・光の速度なので一番速い。

2 運動エネルギー 10 MeV の中性子・・・10/1 = 10

3 運動エネルギー 10 MeV のα粒子・・・10/4 = 2.5

4 運動エネルギー 5 MeV の陽子・・・5/1 = 5

5 電圧 1 MV で加速した電子・・・1 MeV の電子では、相対論的に扱う必要がある。c を光の速度、m を電子の精子質量とすれば、T = [(mc^2)/[√1-(v/c)^2]] – mc^2 より、v = c√[1-[(mc^2)/(T+mc^2)]^2] = c√[1-[0.511/(1+0.511)]^2] = 0.94c となり、光の速度の 94% となる。

問2

次のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 原子の半径は原子番号に比例する。

B 水素のイオン化エネルギーは 1.36 eV である。

C 原子質量単位 u は 12C の質量を基準にして、その 12分の1 を 1u として定義される。

D 原子質量単位 1u はエネルギーに換算すると約931 MeV に相当する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 原子番号にあまり依存しない。

B 誤 イオン化エネルギーとは、原子の基底状態から 1個の電子を無遠に引き離すのに要する最小のエネルギーであり、水素では 13.6 eV である。。

C 正 原子質量単位 u は 12C の質量を基準にして、その 12分の1 を 1u として定義される。

D 正 原子質量単位 1u はエネルギーに換算すると約931 MeV に相当する。これは覚えておいたほうが良い。

問3

水素原子のスペクトル系列 1/λ = R[(1/n^2) – (1/m^2)](n及びmは整数で m > n)で、n = 1、m = 2,3,4・・・に対応する系列は次のうちどれか。ただし、λは波長[m]を、Rはリュードベリ定数を表す。

1 バルマー系列

2 パッシェン系列

3 プント系列

4 ライマン系列

5 ブラケット系列

 

解答 4

K殻に転移する際に放出されるX線をK系列といい、n = 1 に相当する。水素の場合の K系列をライマン系列という。

問4

 

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 内部転換電子の放出はオージエ電子の放出要因となる。

B 光電効果はオージエ電子の放出要因となる。

C オージエ電子の放出は低原子番号の核種で起きやすい。

D オージエ電子のエネルギーは放出軌道電子の結合エネルギーと等しい。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

 

解答 1

A:正 光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線の エネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子という。

B:正 上の解答と同じ。

C:正 特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。逆に原子番号の小さい原子ほど蛍光収率は小さくなり、オージエ電子は放出されやすい。

D:誤 特性X線のエネルギーから放出された軌道電子の結合エネルギーを引いた値である。

問5

陽電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 固体中において、α線により電子と対の形で生成される。

B 電子と結合して消滅し、その際光子が放出される。

C 金属中において 100 ms 程度の平均寿命を持つ。

D 電子対生成で放出される場合は、連続スペクトルを示す。

E 電子に比べて静止質量が大きい。

1 AとC 2 BとD 3 BとE 4 CとD 5 AとE

解答 2

A 誤 エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。

B 正 エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。

C 誤

D 正

E 誤 陽電子と陰電子の質量は等しい。

問6

次の核種のうち、1壊変当たりのオージエ電子の放出確率が一番大きいものはどれか。

1 51Cr

2 54Mn

3 55Fe

4 64Cu

5 65Zn

 

解答 1

それぞれの核種の性質は表の通りである。

核種 51Cr 54Mn  55Fe  64Cu  65Zn
原子番号 24 25 26  29  30
EC による壊変確率(%) 100 100  100  43.6  98.6

結合エネルギーの大きいK殻等に空席を生じるのは、ECおよび内部転換である。ただし、いずれの核種も内部転換電子の放出は無視できる。原子番号の小さい元素ほど蛍光収率は小さく、オージエ電子が放出されやすいので、EC 100% DE原子番号が最も小さい 51Cr からの放出確率が最も大きい。

問7

次の放射線のうち、連続したエネルギー分布をもつものの組み合わせはどれか。

A オージエ電子

B 内部転換電子

C 熱中性子

D 制動放射線

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

線スペクトル・・・原子が放射または吸収する光などの電磁波を通して見たときに線状にに見えるスペクトル。線スペクトルにはα線、γ線、オージエ電子、特性X線、内部転換電子、光電子がある。

連続スペクトル・・・ある波長範囲にわたって連続的に分布したスペクトル。分光装置の性能をいくら高めても線スペクトルに分解できないもので、連続スペクトルにはβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックス ウェル・ボルツマン分布(0.025 eV のエネルギーを有する熱中性子)に従う連続分布がある。

問8

核壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 核異性体転移が起こると質量数が1つ減少する。

B 内部転換により電子が放出されて原子番号が1つ増加する。

C β- 壊変と EC 壊変の両者が起きる核種も存在する。

D EC 壊変する核種のうちγ線を放出する核種も存在する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 核異性体転移は原子番号・質量数とも変化しない。

B 誤 内部転換で放出されるのは軌道電子であり、原子番号は変化しない。

C 正 例えば 192Ir は 95% がβ-壊変、5% が EC 壊変する。

D 正 例えば 54Mn は 100% EC 壊変し、835 keV γ線を 100% 放出する。。

問9

次の加速器のうち、交流電磁石を用いるものはどれか。

1 サイクロトロン

2 電子直線加速器

3 ファン・デ・グラーフ型加速器

4 ベータトロン

5 シンクロトロン

解答 4

1 誤 サイクロトロン・・・D電極の上下に磁石を設置し、D電極に+、ーの高周波を掛けると、荷電粒子は回転運動を始め、ギャップで加速され、回転半径は大きくなり、ビームとして取り出される。D電極上下の磁界は直流磁界(直流電磁石)で 高周波は一定周波数を用いギャップ間で加速する。高周波静磁場を用いてイオンのみを加速させる。現在は粒子線治療とPET薬剤生成加速器に用いられる。

2 誤 電子直線加速器・・・線形加速器は直線状に並べられた多数の電極に粒子の速度に合わせた高周波の高電圧を印加することによって加速するため磁石を用いない。

3 誤 ファン・デ・グラーフ型加速器・・・超高圧タンク内に絶縁ベルトを回転させ、電荷を帯電球に貯めて、超高電圧を抵抗によって分圧し、加速管に電圧を加えて加速する。帯電球に電荷が貯まると、ベルト上の電荷と 斥力が作用し、ベルトの回転数が低下したり放電を発生する。超高圧ガスはは放電防止用窒素ガスである。直流高電圧、静電場を使っているため磁石は用いない。

4 正 ベータトロン・・・ベータトロンは交流励磁によって作られる磁界(電磁石によって作られる磁界)により、電子に一定の円運動させ、その磁場により生じる電場で電子を加速する。交流電場で行い、電子だけを加速させる。 また磁場の変化で誘起される電場で加速される。

5 誤 シンクロトロン・・・シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化するが極性は変わらないため交流ではない。

問10

α粒子と原子核原子核との衝突において、反跳エネルギーが大きくなる原子核は次のうちどれか。

1 1H

2 4He

3 12C

4 28Si

5 56Fe

解答 2

中性子と水素の弾性散乱と同様、同じ質量の原子核同士の正面衝突では、衝突粒子の全ての運動エネルギーが標的核の反跳エネルギーとして移り、最も大きくなる。

問11

5.5 MeV α線のシリコン(A=28)における飛程を R1 [mg/cm2]、金[A=197] における飛程をR2[mg/cm2] とした時、R2/R1 の値として最も近いものはどれか。

1 0.8

2 1.0

3 1.5

4 2.0

5 3.0

解答 5

重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、質量数の平方根に比例する(ブラッグ・グレーマンの法則)というものにより、物質M(原子量A、密度ρ)中の飛程Rと、物質M0(原子量A0、密度ρ0)中の飛程との比は次のように表される。 R/R0 = (√A/A0)/(ρ/ρ0) = (√A/A0) × (ρ0/ρ) これにより R2/R1 = (√197/28) × (2.3/19.3) = √7.03 × 0.12 = 0.31 g/cm2 単位が mg/cm2 なので、約 3.0 mg/cm2

問12

1.0 MeV の陽子の空気中における飛程[cm]に最も近い値は、次のうちどれか。ただし、エネルギーE [MeV] のα線の空気中における飛程 R[cm] は R = 0.32・E^(3/2) で与えられるとする。

1 0.8

2 1.0

3 1.5

4 2.0

5 3.0

解答 3

質量阻止能の観点から飛程 R は 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 に比例する。陽子 1 MeV の飛程は α線のエネルギー 4 MeV と等しいことがわかる。したがってα線の空気中における飛程 R[cm] は R = 0.32・E^(3/2) から R = 0.32 × 4^(3/2) = 2.56 [cm] となる。

問13

次の3種類の荷電粒子、A 1MeV陽子、B 2MeV重陽子、C 3MeV α線 について、空気中の飛程の大きい順に並んでいるものはどれか。

1 A > B > C

2 A > C > B

3 B > A > C

4 B > C > A

5 C > A > B

解答 3

質量阻止能の観点から飛程 R は 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 に比例するため、R(A) = 1、R(B) = 2、R(C) = 0.565 となり、B > A > C となる

問14

ある物質中に核子当たり 2.5 MeV のエネルギーを持つ 4He(2+) と 1H(+) が入射するとき、その物質の 4He(2+) に対する阻止能 S1 と 1H(+) に対する阻止能 S2 の比(S1/S2) として最も近い値はどれか。

1 0.5

2 1

3 2

4 4

5 16

解答 4

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] と近似でき、核子あたりのエネルギーが同じ、すなわち速度が同じとき、電荷 z の2乗に比例するため、S1/S2 = 2^2/1^2 = 4 となる。

問15

次の物質と放射線の組み合わせのうち、発生するイオン対又は電子・正孔対の数が最も多いものはどれか。ただし、放射線のエネルギーは物質中で全て吸収されるものとする。

1 ヘリウムガス3気圧中の 5 MeV α線

2 空気4気圧中の 4MeV β-線

3 シリコン中の 200 keV γ線

4 キセノンガス1気圧中の 5 MeV 電子線

5 ダイヤモンド中の 2 MeV 陽子線

解答 4

イオン対または正孔対を1個生成するのに必要なエネルギーを W 値といい、生成する対数は放射線のエネルギーを E[eV] として E/W で表される。。それぞれの W 値は、He:43 eV 空気:34 eV Ar:26eV C:18 eV Xe:22 eV Si:3.6 eV である。

1 ヘリウムガス3気圧中の 5 MeV α線・・・(5 × 10^6)/43 = 1.16 × 10^5

2 空気4気圧中の 4MeV β-線・・・(4 × 10^6)/34 = 1.18 × 10^5

3 シリコン中の 200 keV γ線・・・(200 × 10^3)/3.6 = 5.56 × 10^4

4 キセノンガス1気圧中の 5 MeV 電子線・・・(5 × 10^6)/22 = 2.27 × 10^5

5 ダイヤモンド中の 2 MeV 陽子線・・・(2 × 10^6)/18 = 1.11 × 10^5

問16

2 MeV の光子がコンプトン散乱を起こした場合、散乱角 90° の光子エネルギー E1 と散乱角 180° の光子のエネルギー E2 の比(E1/E2)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 1.2

2 1.4

3 1.6

4 1.8

5 2.0

解答 4

散乱光子のエネルギー E(γ)’は、E(γ)’ = E(γ)/[1 + (E(γ)/(m0c^2)) × (1 – cosθ)]。90°では E(γ)’ = 2/[1+2/0.511] = 0.41、180°では E(γ)’ = 2/[1+4/0.511] = 0.23。したがって E1/E2 = 0.41/0.23 = 1.8 となる。

問17

0.1 MeV の光子がタングステンと光電効果を起こし、K軌道電子が放出された。またこれに伴い、K(α)-X線が発生した。それぞれのエネルギー[keV]として正しい組み合わせはどれか。ただしK軌道とL軌道における結合エネルギーはそれぞれ 69.5 keV 及び 10.9 keV とする。

A 10.9

B 30.5

C 58.6

D 69.5

E 89.1

1 AとD 2 AとE 3 BとC 4 BとE 5 CとD

解答 3

光電子のエネルギーは 100 – 69.5 = 30.5 keV、K(α)-X線 のエネルギーは 69.5 – 10.9 = 58.6 keV である。

問18

次の記述で正しいものの組み合わせはどれか。

A 0.1 MeV の光子と水の相互作用は主にコンプトン効果である。

B 1 MeV の光子と鉛の相互作用は主に光電効果である。

C 2 MeV の光子と水の相互作用は主に電子対生成である。

D 10 MeV の光子と鉛の相互作用は主に電子対生成である。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性を示す。

アルミニウム(Z=13)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 50KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 50KeV ~ 20MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 20MeV]

水と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 30KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 30KeV ~ 30MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 30MeV]

鉄と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 100KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 100KeV ~ 10MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 10MeV]

鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

問19

中性子と 4He 原子核との弾性衝突において、衝突後の中性子がとる最小エネルギーは衝突前のエネルギーの何倍となるか。最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.12

2 0.24

3 0.36

4 0.50

5 0.74

解答 3

散乱後の中性子のエネルギーが最小、すなわち反跳核が受け取るエネルギーが最大となる正面衝突の時である。中性子の弾性散乱において原子核の反跳エネルギーEmax = [(2Mm)/(M + m)^2] × (1 – cos180°)En = 16/25・E(n) = 0.36・E(n) となる。したがって衝突後の中性子エネルギーは E(n) – 0.64E(n) = 0.36E(n) である。

問20

6Li(n , α)3H の反応において、この反応の Q 値 を 4.8 MeV とすると、生成核 3H に与えられるエネルギー[MeV]として最も近いものは次から選べ。

1 1.6

2 2.1

3 2.7

4 3.2

5 3.8

 

解答 3

熱中性子による発熱反応では、運動量 = 0 が保存されるため、運動エネルギーは生成核の質量に反比例して配分される。したがって 3H に与えられるエネルギー E(H) = 4/(4+3) × 4.8 = 2.7 MeV となる。

問21

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射線量は中性子及び光子について定義される。

B 空気カーマは照射線量より二次電子の放射損失の分だけ小さい。

C 照射線量の単位は C/kg で与えられる。

D 照射線量は空気に対して定義される。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 照射線量は光子について定義される。

B 誤 カーマ(K)は、ある物質の体積要素内で間接電離によって自由になった全荷電粒子の最初の運動エネルギーの和dEをその体積の物質の質量dmで除した商である。E = dE/dm。単位は1Gy = 1J/kg。 また、カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

C 正 照射線量の単位は C/kg で与えられる。

D 正 照射線量は空気に対して定義される。

問22

次の放射線のうち、カーマの適用できるものの組み合わせはどれか。

A 中性子線

B γ線

C α線

D β線

 

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 2

カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

問23

次のエネルギーに等価な量のうち、最も大きなものはどれか。

1 1 cal

2 1 J

3 1 GeV

4 2 W・s

5 0.5 N・m

解答 1

それぞれを J 換算する。

1 1 cal・・・4.2 J

2 1 J・・・1 J

3 1 GeV・・・1.6 × 10^(-19) × 10^9 = 1.6 × 10^(-10)

4 2 W・s・・・2 J

5 0.5 N・m・・・0.5 J

問24

次のシンチレータのうち、発光の減衰時間の一番短いものはどれか。

1 NaI(Tl)

2 CsI(Tl)

3 ZnS(Ag)

4 BGO

5 プラスチックシンチレータ

 

解答 5

無機シンチレータ特性表

シンチレータ 光収率(対NaI) 減衰時間(ns) 発光波長(nm)
 NaI(Tl)  100  250  415
 CsI(Tl)  45  1000  540
 CsI(Na)  85  630  420
 BGO  20  300  480
 BaF2  3  620  310
 CdWO4  30  14000  500
 LaBr3  165  16  380
 LSO  75  41  420
 ZnS(Ag)  130  110  450
 GSO  130  110  440

有機シンチレータにはプラスチックシンチレータ、液体シンチレータなどが挙げられる。これらの発光の減衰時間は通常数ナノ秒程度であり、NaI(Tl)シンチレータと比べると一桁以上短い。具体的にはプラスチックシンチレータは 2.4 ns

問25

Ge 検出器の Ge 結晶中で 1.33 MeV γ線のエネルギーがすべて吸収された場合、発生する電荷を電気容量 10pF のコンデンサーに送り込んで得られる電圧[mV] として最も近いものは、次のうちどれか。ただし ε値を 3.0 eV とする。

1 15

2 20

3 25

4 30

5 50

解答 4

εは電子ー正孔対を1個生成するのに必要な平均エネルギーであり、気体の場合の W 値に相当する。発生する電子ー正孔対数は (1.33 × 10^6)/3 = 4.43 × 10^5 個である。電子の電荷は 1.6 × 10^(-19) C、10 pF は 10 × 10^(-12) F であるから、得られる電圧は、[1.6 × 10^(-19) × 4.43 × 10^5]/(10 × 10^(-12)) = 7.1 × 10^(-3) V = 7.1 mV となる。

問26

気体検出ガス増幅に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 印加電圧が高くなるとガス増幅度は大きくなる。

B 計数ガスに少量の酸素を加えるとガス増幅度は大きくなる。

C 同じ印加電圧で陽極心線を細くするとガス増幅度は大きくなる。

D 計数ガスの圧力が増加するとガス増幅度は大きくなる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 2

ガス増幅について、

① 印加電圧が高くなると増幅度は大きくなる。

② 計数ガスに酸素を加えると酸素と電子が吸着し、増幅度は小さくなる。

③ 陽極心線を細くすると心線周辺の電場が強くなり、増幅度は大きくなる。

④ 計数ガスの圧力を強めると圧が高くなり増幅度は小さくなる。という特徴がある。

問27

β線に引き続き直ちにγ線を放出するβ線変核種の線源を βーγ 同時計数法により測定した結果、β線測定器の計数率が 800 s^(-1)、γ線測定器の計数率が 250 s^(-1) であり、同時計数率は 10 s^(-1) であった。この線源の放射能[MBq] に最も近い値は次のうちどれか。ただし、これらの測定器のバックグラウンド計数率は差し引いてあるものとする。

1 0.02

2 0.05

3 0.20

4 0.50

5 2.0

解答 1

β線測定器の計数率Nb(s^(-1))、γ線測定器の計数率Ng(s^(-1))、同時計数率Nc(s^(-1))とすると、A(Bq) = (Nb・Ng)/Nc の式から、A = (800 × 250)/10 = 2.0 × 10^4 = 0.02 MBq

問28

ビーム電流が 100 μA の 1.0 MeV 電子線が 1.0 kg の水に全エネルギーを吸収されるとき、この水での平均吸収線量率[Gy/s]に最も近いのはどれか。

1 1.0 × 10^2

2 1.6 × 10^2

3 1.0 × 10^3

4 1.6 × 10^3

5 1.0 × 10^4

解答 1

素電荷の値を q [C] とすれば、毎秒入射する電子数は (100×10^(-6))/q = 1.0 × 10^(-4)/q [個/s] である。1 eV は q [J]、1 MeV = 1 × 10^6 q[J] であるから、吸収線量率は 1.0 × 10^6 q [J] × 1.0 × 10^(-4)/q [個/s]/1.0[kg] = 1.0 × 10^2 [Gy/s] となる。

問29

無機シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

 

A NaI(Tl)は BGO に比べ単位エネルギー当たりの発光量が大きい。

B CsI(Tl) の密度は BGO よりも大きい。

C ZnS(Ag) は潮解性がある。

D CsI(Tl) のピーク発光波長は NaI(Tl) よりも長い。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

無機シンチレータについての表を下にまとめた。

無機シンチレータ特性表

シンチレータ 光収率(対NaI) 減衰時間(ns) 発光波長(nm)
 NaI(Tl)  100  250  415
 CsI(Tl)  45  1000  540
 CsI(Na)  85  630  420
 BGO  20  300  480
 BaF2  3  620  310
 CdWO4  30  14000  500
 LaBr3  165  16  380
 LSO  75  41  420
 ZnS(Ag)  130  110  450
 GSO  130  110  440

また無機シンチレータ・有機シンチレータに関するまとめを下記に記載する。

 

無機シンチレータの多くは、シンチレータの原子番号が比較的高く密度も高いことから、γ線の線量測定やエネルギー測定に使用する検出器に適している。無機シンチレータに分類される ZnS(Ag)シンチレータは通常α線の検出に用いられるが、多結晶のためエネルギースペクトルの測定に適さない。(ZnS(Ag)は多結晶 のため透明度が低く薄い膜状の検出器が用いられるため、飛程よりも厚い検出器が必要なエネルギー測定には適さない。)有機シンチレータのうちプラスチックシンチレータは主としてβ線、中性子線などの測定に用いられる。また原子番号が低く光電ピークの検出には適さないが、大容量のシンチレータが作成可能なためγ線ゲートモニタなどにも用いられる。液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定 できるためその放射性物質からの放射線について検出効率が高い。また放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定に極めて有効である。さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる 陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)

 

問30

イメージングプレート(IP)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子に対しては使用できない。

B 4 ~ 5 桁のX線強度変化に対する測定範囲を有する。

C 可視光を照射することにより再度使用できる。

D フェーディングはほとんど問題とならない。

E 溶解した有機シンチレータ結晶をプラスチックフィルムに塗布したものである。

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答 2

A 誤 荷電粒子は直接エネルギーを与えるのため高感度で測定できる。

B 正 4 ~ 5 桁のX線強度変化に対する測定範囲を有する。

C 正 可視光を照射することにより再度使用できる。

D 誤 室温では蛍光は 24 時間で約 60 % に低下する。

E 誤 IP には煇尽性蛍光体を塗布している。

α壊変・β壊変についての記述

α壊変は、原子核がα粒子すなわちヘリウム原子核を放出してより小さい原子核に壊変する現象であり、若干の例外を除いて質量数が 200 以上の重い原子核で起こる。アルファ壊変に伴い放出されるエネルギー、すなわち壊変エネルギーは Q値 と呼ばれ、親核、生成核並びにα粒子の質量欠損から求められる。このエネルギーが生成核及びα粒子に運動量を保存するように分配されるために、α粒子のエネルギーは線スペクトルを示す。226Ra が α粒子 を放出して 222Rn に壊変する 例を考えると、この壊変の Q値 は 4.9 MeV となる。また、α粒子のエネルギーは 4.8 MeV となる。ただし、226Ra、α粒子並びに 222Rn の結合エネルギーを、それぞれ 1731.6 MeV、28.3 MeV 並びに 1708.2 MeV とする。

 

解説

Q = ΔM(222Rn) + ΔM(4He) – ΔM(226Ra) = 1708.2 + 28.3 – 1731.6 = 4.9 MeV
続いて、運動エネルギーは質量に反比例して分配されので、E(α) = 4.9 × [222/(222+4)] = 4.8 MeV となる。

 

β壊変には、β-壊変、β+壊変及び電子捕獲があり、いずれも弱い相互作用によって起こる。β-壊変では原子核内の中性子が陽子に変わり、電子と反ニュートリノが放出される。壊変エネルギーは、生成核、電子(β-壊変)及び反ニュートリノの運動エネルギーに分配され、β-線のエネルギーは連続分布となる。一般に、β線のエネルギーは、電子が持ち出す最大のエネルギーで表されることが多く、これは壊変エネルギーに対応する。β+壊変では陽電子とニュートリノが放出される。その結果、 生成核の原子番号は1 つ減少する。また、質量数は変わらない。陽電子のエネルギー分布も連続分布で、その分布の形状は β-線のエネルギー分布と異なる。β+壊変における親核の質量を X、生成核の質量を Y とすると、壊変エネルギーは、 (X-Y-2m(0))c^2 と表すことができる。ただし、c を光速度、m(0) を電子の静止質量とする。電子捕獲は、原子核の 陽子が軌道電子と結合して中性子になり、ニュートリノを放出する現象である。これにより、電子軌道に空孔が生じ、そこへ外側の軌道の電子が遷移した場合には、特性X線又はオージエ電子が放出される。電子捕獲は最も内殻、すなわち K 殻にある電子で起こりやすく、これが起こった場合、K 軌道及び L 軌道における電子の結合エネルギーを E(K) 及び E(L) とすると、特性X線と競合して放出される電子のエネルギーは E(K) – 2E(L) となる。

 

補足

この場合の特性X線のエネルギーは E(K)-E(L) であり、オージエ電子のエネルギーは放出される電子の結合エネルギーだけ下がるので、仮に L 殻の電子が放出されるときは、[E(K)-E(L)] – E(L) = E(K) – 2E(L) となる。

 

α壊変やβ壊変後の生成核は励起状態にある場合が多い。γ放射は、このような励起状態の核種がより安定になるためγ線を放出してエネルギーのより低い状態へ変化する現象をいう。γ放射において、核子の構成に変化はない。又、励起状態からの移行は一般に瞬時に起こるが、その励起状態の寿命が測定できるほど長い場合を核異性体転移という。γ線を放出する代わりに、軌道電子を放出する過程を内部転換といい、放出される電子のエネルギーは線スペクトルをします。

荷電粒子の磁場中の運動についての記述

荷電粒子が磁場の中を運動するとき、軌道が曲がることはよく知られている。質量 M 、電荷 ze の荷電粒子が速度 v で磁束密度 B の磁場中で磁場に直角に運動するとき、粒子にはローレンツ力と呼ばれる力 F が働き、F = ze・v・B である。このとき、この力 F と粒子に働く遠心力が釣り合って円運動をすることから、その円運動の軌道半径を r とすると、F = M・v^2/r が成り立つ。粒子が円軌道を一周するのに要する時間 Tr は、Tr = 2・π・r/v = (2・π・M)/(ze・B) となる。非相対論的速度の範囲では、Tr は粒子のエネルギーによらずほぼ一定であると見なすことができる。このように、集会の周波数 1/Tr が粒子のエネルギーによらないという性質を利用している加速器がサイクロトロンである。この加速器では、磁場に直角にディーと呼ばれる2個の半円形電極を向かい合わせに起き、これに高周波電圧を印加する。粒子は2つの電極間ギャップを通過するときに印加された電圧に対応するエネルギーを得る。加速により粒子の軌道半径は大きくなるが、周期は変わらない。粒子が半回転して、もう一方の電極に達したときに電圧が逆転するようにすると、粒子はまた加速され、加速と共にその軌道半径は大きくなる。粒子の円軌道の最大半径を R とすれば、最終的に得られる粒子エネルギー E は、E = (B・ze・R)^2/(2・M) となる。最大軌道半径 0.5[m]、磁束密度を 2[T] とし (4He)2+ を加速すると、この粒子に与えられるエネルギーは 48 [MeV] となる。ただし、1[T] = 1[V・s・m^(-2)]、1[u] = 1.66 × 10^(-27) [kg] とする。

解説 素電荷は e = 1.60 × 10^(-19) [C] であり、(4He)2+ の質量は 4u と近似できるので、E = (2×2×1.6×10^(-19)×0.5)^2/(2×4×1.66×10^(-27)) = 7.71 × 10^(-12) [J] = (7.71×10^(-12))/(1.6×10^(-19)) [eV] = 4.81 × 10^7 [eV] = 48.1 [MeV]

質量数 a、運動エネルギー E の入射粒子と質量数 A の静止した標的核が衝突を起こし、一体となって複合核を形成した後、何らかの粒子を放出してある原子核に壊変する場合を考える。衝突の前後の粒子や原子核の質量差をエネルギーに換算したものは、反応エネルギーあるいは Q値と呼ばれる。Q値が正の場合を発熱反応といい、負の場合を吸熱反応という。吸熱反応の場合には、入射粒子のエネルギーが Q値の絶対値を超えないと反応は起こらない。核反応が起こるための入射粒子の最小エネルギー E(max)をしきいエネルギーという。ここで、複合核の概念を用いて最小エネルギー E(min)を求めてみる。複合核の運動エネルギー Ec は、運動量 保存則を用いて、Ec = a/(a+A)・E となる。E(min)は、反応の Q値の絶対値と複合核の運動エネルギーの和に等しくなる入射粒子のエネルギーに相当するから、E(min) = (a+A)/A・|Q| となる。ここで、27Al(n,α)24NA の核反応を考える。標的核は静止しているとすると、反応の Q 値は -3.13 MeV となり吸熱反応である。このとき、反応を起こすために必要な入射粒子である中性子の最小エネルギーは、 3.25 MeV である。ただし、27Al、4He、24Na、の結合エネルギーを、それぞれ 224.9520 MeV、28.2957 MeV、193.5235 MeV とし、陽子及び中性子の静止エネルギーをそれぞれ 938.2796 MeV 及び 939.5731 MeV とする。 放出粒子が荷電粒子の場合には、標的核が大きくなると、複合核からの粒子放出がその間のクーロン障壁によって妨げられることがある。

解説

質量をそれぞれ、27Al:M(Al)、中性子:M(n)、α粒子:M(α)、24Na:M(Na)、陽子:M(p)、結合エネルギーをそれぞれ、27Al:B(Al)、α粒子:B(α)、24Na:B(Na)、また光の速度を c とする。
Q = [M(Al) + M(n) – [M(α) + M(Na)]]・c^2
= [13M(p)c^2 + 14M(n)c^2 + – B(Al)] + [M(n)c^2] – [[2M(p)c^2 + 2M(n)c^2 – B(α)] + 11M(p)c^2 + 13M(n)c^2 – B(Na)] = -B(Al) + B(α) + B(Na) = -224.9520 + 28.2957 + 193.5235 = -3.1328 [MeV]

反応を起こすために必要な最小エネルギー「しきいエネルギー」は (1+27)/27 × 3.1328 = 3.249[MeV]

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

放射性同位元素使用時の被ばく・汚染防止

放射性同位元素使用時の被ばく・汚染防止に関する記述

密封されていない放射性同位元素を用いた実験の際には、対象核種や化合物の物理的・化学的性質に応じた被ばく・汚染防止対策をあらかじめ立てておくことが必要である。液体を扱う実験操作では、放射性の気体発生や液体の飛散に注意する。例えば、 NaH(14CO3) 水溶液に希硫酸を加えると化学反応によって放射性の気体が発生する。また、 Na(3H)SO4 を蒸留水に溶解すると、水との同位体交換により放射性同位元素が揮散する可能性がある。有機溶剤は 可燃性であったり、揮発性であったりすることから、それぞれの性質に応じて温度、火気、換気等に十分注意する。有機溶剤と水溶液を混合する際に発熱することもあるため、溶媒抽出のような操作は、容器内の圧力に注意する。無機廃液は、酸性、アルカリ性をチェックし、中和を行う。汚染発生時に速やかにかつ効率的に除染できるような対処法を事前に検討しておくことも必要である。例えば、液体の放射性同位元素による 床の汚染が発生した場合には、汚染の範囲と量を調べ、拭き取ることによって汚染の拡大を防ぐ。更に、水や中性洗剤、必要に応じて EDTA(エチレンジアミン四酢酸 )のようなキレート剤成剤を用いて除染を行う。密封されていない放射性同位元素を扱う実験は、二人以上で行うことを原則とし、実験操作に伴う危険性をあらかじめチェックし、操作に習熟して作業時間を短縮するためにコールドランを行うことが有用である。

 

解説

放射性気体の発生 → NaH(14CO3) + H2SO4 → NaHSO4 + H2O + 14CO2 ↑
同位体交換反応とは同じ元素の同位体の間に起こる交換反応をいう。ここでは、水の同位体交換反応なので Na(3H)SO4 が考えられる。飛散率は、取り扱う放射性物質の化学的性質、物理的形態および作業形態で異なってくる。化学的性質では扱う物質の揮発性について知っておく必要がある。取扱行為は一般的操作、機械加工、化学反応などの操作、加熱操作、静置にわけると加熱操作が最も飛散を起こす可能性がある。また、有機溶媒を用いる場合は、その揮発性と引火性により加熱及び発熱を伴う操作には注意が必要である。
溶媒抽出:いくつかの放射性核種(溶質)を含む水溶液(塩酸、硝酸、硫酸、緩衝液等)を分液漏斗に移し、これらの水溶液と混じり合わない有機溶媒(ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、ジイソプロピルエーテル等)を加えて振り混ぜたのち、静止して二層に分離させ、放射性核種を水相と有機相に分配する操作である。

汚染に対して取るべき措置
(1) 汚染発見を告げ、立ち入りを制限するとともに除染を行う。除染は次のように行う。①吸湿紙で拭き取る。②吸湿紙に水、中性洗剤、亜硫酸ナトリウム溶液の順に染み込ませて拭き取る。③乾いた吸湿紙で拭き取る。④酸性にすると揮発の恐れがあるので、酸性にならないようにする。
(2) 除染の結果を調べ、なお除染できない部分があるときは、ビニールシートで覆い、固定して減衰を待つ。
キレート剤:Na-EDTA、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどがある。
酸化チタンペースト:酸化チタン 100g を0.1N HCl 60 ml で練ったもの。
密封されていない放射性同位元素を扱う実験の注意
(1) 作業は原則として2人以上で行い、RI の操作をする人と非汚染の操作をする人にわける。
(2) コールドランを行い、所用時間をチェックして被ばく線量の推定を行う。線量限度に照らして作業内容を検討し、薬品、器具などを正しく揃える。

 

管理区域の汚染検査にしばしば用いられる液体シンチレーション計数装置の特徴として、放射線源がシンチレータ溶液中に溶解していることから、検出の幾何効率が高く、自己吸収の補正が不要であり、 3H などの低エネルギーβ線放出核種や 210Po のようなα線放出核種の測定に適していることがあげられる。この特徴を生かすためには、シンチレータからの蛍光を吸収する色クエンチング を起こすような物質の溶液への混入を避ける必要がある。また、シンチレータ溶液へのクロロホルムの混入は、化学クエンチングを起こしてシンチレータの発光効率を低下させる。色クエンチングや化学クエンチングの影響は 137Cs のような外部線源を用いて補正することができる。液体シンチレーション計数装置では、蛍光の検出に一対の 光電子増倍管と同時計数回路を用いてノイズを低減し、低エネルギーβ線によるシンチレータの微弱な発光を測定することが可能である。

 

補足

液体シンチレーション計数装置の主な測定対象は、3H、14C、35S、32P、38Cl、45Ca、59Fe、63Ni、89Sr、90Sr、90Y、99Tc、144Ce、147Pm、210Pb、210Bi、210Po、22Rn、232Th、234Th、241Pu、241Am などである。トルエン、混合キシレン、ジオキサンは溶媒として用いられる。ここでは、クロロホルムが非常に強いクエンチャーとなる。

 

10 MBq の 59Fe を使用してトレーサー実験を行い、45 日後に実験を終了した。この時点で、貯留槽中の水量は 5 m3 であり、59Fe 濃度は 2 × 10^(-1) Bq/cm3 であった。同施設では他に 59Fe は使用されていないので、実験に使用したトレーサーの 20 % もが貯留槽に流入したと推定されたため、実験者に実験手順の改善を指示した。また同貯留槽にはこの時点で 0.9 MBq の 32P も流入していたため、貯留槽中の排液は、排水中濃度限度との比の和が 1.1 であり、希釈槽に移送して希釈し、放射能濃度限度以下であることを確認した後に放流した。ただし、同施設では 59Fe と 32P 以外の放射性同位元素は使用されておらず、59Fe の半減期は 45 日、32P の半減期は 14 日とし、告示別表第六欄に定められた排水中の濃度限度は 59Fe が 4 × 10^(-1) Bq/cm3、32P が 3 × 10^(-1) Bq/cm3 である。

 

解説

45 日後の 59Fe 放射能を半減期により算出すると、
A = 10 × (1/2^(45/45)) = 5 MBq
同施設では他に 59Fe は使用されていないので、全て貯留槽に流入した場合、
5 m3 = 5 × 10^6 cm3 より、59Fe 濃度は 1 Bq/cm3 となる。
実際の貯留槽の 59Fe の濃度は 2 × 10^(-1) Bq/cm3 であり、(2 × 10^(-1))/1 × 100 = 20 % が流入したと推定される。
また、同時に流入した 32P の濃度は 0.9 MBq/(5 × 10^6 cm3) = 0.18 Bq cm3 となる。
したがって、2核種の濃度と濃度限度の比を足し合わせると、
(2 × 10^(-1))/(4 × 10^(-1)) + (1.8 × 10^(-1))/(2 × 10^(-1)) = 1.1 > 1
よって 1 より大きくなる。

 

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DNAの構造と機能

DNAの構造と機能

DNA はデオキシリボース、リン酸、塩基から構成される。塩基にはアデニン( A )、シトシン( C )、グアニン( G )、チミン( T )の 4 種類があり、向かいあった鎖のA と T、G と Cが対をなす。これを塩基の相補性という。 細胞が増殖する際、S 期において、DNAの2本鎖がほどけて1本鎖となり、塩基の相補性に基づいてそれぞれの1本鎖と対をなすもう1本の鎖が合成される。結果として、元々存在していたDNAと同じ塩基配列を持つDNAが2分子合成される。この過程をDNAの複製 という。(細胞分裂のためにDNA合成を行うことを複製という。)細胞骨格や酵素などとして働くタンパク質はグリシン、アラニンなど20種類のアミノ酸から構成される。タンパク質を合成する際、まずDNAをもとに 塩基の相補性に基づいて、RNAが合成される。この過程を転写といい、(DNAからRNAに合成することを転写という。)合成されたRNAをメッセンジャーRNA(mRNA)という。なお、mRNAの塩基には T が含まれず、代わりに ウラシル(U)が含まれる。mRNAの塩基3個を 1 組として、1 個のアミノ酸を対応させることにより、タンパク質の合成が行われる。この過程を翻訳といい(RNAの情報からタンパク質を合成すること) mRNAの塩基3個の組をコドンという。

DNA損傷により、遺伝情報が変化することを変異という。変異には染色体の構造変化を伴わないものと、染色体の構造変化を伴うものがある。染色体の構造の変化を伴わないものとして、1個又は複数の塩基が別のものに置換される変異、欠失する変異、挿入される変異がある。塩基の置換があっても、タンパク質のアミノ酸 配列が変わらない場合がある。一方、別のアミノ酸を指定するコドンに変化し、それによってタンパク質の機能に影響が出る場合がある。このような変異をミスセンス変異という。塩基の欠失又は挿入が起こる場合、欠失する又は挿入される塩基の数が3の倍数でなければ、 コドンの組み合わせが変わり、変異が起こった位置以降でのタンパク質アミノ酸配列が大きく変化する。このような変異をフレームシフト変異という。

サイレンス変異

例えば、CTAの塩基配列があるところで C → T の置換が起こっても、CTA 及び TTA はともにロイシンを配列するため、アミノ酸配列には影響がない。

ミスセンス変異

例えば、TTA の塩基配列のあるところに A → T の置換が起こると、TTA がロイシンを配列するところ、TTT はフェニルアラニンを配列するため、アミノ酸配列が異なる。

ナンセンス変異

例えば、TTA において TGA の置換が起こると、TGA は停止コドンを表すので、それ以降の合成を行わなくなる、このため影響が大きい。

フレームシフト変異

3 の倍数で塩基が欠失又は挿入が起これば、その分だけずれて当該箇所のアミノ酸配列に変化が起こるのみであるが、3 の倍数でなければその後の全てのアミノ酸配列に変化が生じることとなる。このため影響が大きい。

3 の倍数以外の複数個の塩基対の挿入又は欠失であり、結果として 3 塩基からなる DNA 配列の読み取り枠に乱れを生じさせる。

 

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放射性壊変に伴って生成されるヘリウム、アルゴン、ラドン

放射性壊変に伴って生成されるヘリウム、アルゴン、ラドンに関する記述

水素の放射性同位体であるトリチウム(3H) は、6Li(n,α)3H 反応で製造され、半減期 12.3 年で β- 壊変して 3He になる。したがって、精製した 3H(2) ガス 1.0 g を密閉容器に入れて 24.6 年間保管すると、その中に 3He が 0.75 g 生成する。一方、大気中のヘリウムは大部分が 4He であり、これは地殻中にあるウランやトリウム及びそれらの娘核種が放射壊変するときに放出される α線が起源である。

 

地殻中のカリウムの中には同位体存在度 0.0117 % で放射性核種 40K が存在する。40K は分岐壊変し、部分半減期 1.43 × 10^9 年で β- 壊変して 40Ca になり、あるいは部分半減期 1.22 × 10^10 年で EC 壊変して 40Ar になる。したがって、これらを合わせて 40K の半減期は 1.28 × 10^9 年となり、また β- 壊変と EC 壊変の分岐比はおよそ 9 : 1 となる。大気中に 1 % 存在するアルゴンのほとんどは、40K から EC 壊変して生成した 40Ar である。塩化カリウム(KCl:式量 74.6)の 746 g を容器内に密封し 12.2 年間放置した場合、この容器中でカリウムから新たに生成するアルゴンは 8.1 × 10^(-13) mol である。

 

40K:半減期は 1.277 × 10^9 年、カリウムの中に 0.00117 % 存在する。β-(89%)、EC(10.7%)の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と40Ar(安定)にそれぞれ壊変する。40K は岩石などの年代測定に利用している。40K が壊変すると 40Ar が生成するため、この 40Ar と 40K の存在量から年代を知ることができるからである(カリウムーアルゴン法という)。
枝分かれする壊変を分岐壊変と呼び、その割合を分岐比という。分岐した壊変については、それぞれ壊変式が成り立つので、i 番目の壊変に着目すると次のように表せる。
dN/dt = -λ(i)N、T(1/2)i = ln2/λi
このように定義した半減期を部分半減期という。ここで、この親核種に注目すると、その壊変定数 λ は次のように表される。
λ = λ1 + λ2 + ・・・・・ + λi + ・・・・ + λn
この間では、40K の壊変定数を λ とすると、λ = λ(β-) + λ(EC) となる。したがって、40K の半減期を T、β- 壊変と EC 壊変の半減期をそれぞれ T(β-)、T(EC)とすると、
ln2/T = ln2/T(β-) + ln2/T(EC)
1/T = 1/T(β-) + 1/T(EC) = 1/(1.43×10^9) + 1/(1.22×10^10)
よって、 T = 1.28 × 10^9 年
β- 壊変と EC 壊変の分岐比は、
λ(β-) : λ(EC) = ln2/T(β-) : ln2/T(EC) = T(EC):T(β-) = 1.22×10^10:1.43×10^9 = 8.5:1 となる。
N(40Ar) = 0.00117 × 6.0 × 10^23 × 0.693 × (12.2/1.22×10^10)
アルゴンのモル数 M は、M = N(40Ar)/(6.0×10^23) = 8.1×10^(-13) [mol] となる。

 

大気中に存在するラドンには、ウラン系列に属し半減期 3.8 日(3.3×10^5秒)でα壊変する 222Rn と、トリウム系列に属し半減期 56 秒でα壊変する 220Rn がある。これらのラドン及びラドン娘核種からの放射線の寄与が、人が自然から受ける放射線被ばく量の中で最も大きい。222Rn は 226Ra(半減期 1.6 × 10^3年:5.0 × 10^10秒)のα壊変で生成するので、密封容器に封入した 226Ra の 226 mg と永続平衡にある 226Rn の量の 量は 6.6 × 10^(-9) mol である。この容器内のラドンをいったん除去すると、それから 3.8 日後における 222Rn の量は 3.3 × 10^(-9) mol となり、その放射能は 4.2 × 10^9 Bq である。

 

補足

大気中に存在する天然起源の放射性同位体として、ウランおよびトリウム系列の壊変生成物である Rn や Pb、Bi、Po の同位体が存在する。地殻中に存在する 226Rn と 224Rn はそれぞれ壊変する際に、娘核種である 222Rn “Rn(ラドン)” および 220Rn “Tn(トロン)” として大気中に一部放出される。岩石、建材、化石燃料などに含まれるウラン系列の 226Ra からの 222Rn の放出量が問題となる場合もある。

解説

222Rn は永続平衡が成立していることで、226Ra と共によく知られている。

永続平衡(親核種 1 の半減期が娘核種 2 に対して非常に長い:λ1 << λ2)が成立する場合は親核種 1 と娘核種 2 は次の関係となる。 N1λ1 = N2λ2。したがって、N1/T1 = N2/T2、求める 222Rn の量を M [mol] とすると、
(226×10^(-3))/226 × (6.0×10^23)/(5.0×10^10) = M × 6.0 × 10^23/(3.3×10^5)
M = 1.0 × 10^(-3) × 3.3 × 10^5/(5.0×10^10) = 6.6 × 10^(-9) [mol] となる。
また、容器内のラドンをいったん除去すると、再び蓄積する 222Rn の量は
M = M(0)・{1-(1/2)^(t/T)} より、
M = 6.6 × 10^(-9) × {1-(1/2)^(3.8/3.8)} = 3.3 × 10^(-9)
求める放射能を A とすると、
A = λN = (0.693/3.3×10^5) × 3.3 × 10^(-9) × 6.0 × 10^23 = 4.2 × 10^9 となる。

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適応応答

適応応答

事前照射により、その後の照射に対する抵抗性を獲得する現象をいう。0.01 ~ 0.2 Gy 程度の線量域で認められるため、リンパ球の染色体異常に関して認められている。実験結果としてトリチウムを含む培養液([3H]チミジン)でリンパ球を培養した後、0.15 Gy のX線を照射したところ、染色体異常の発生頻度がコントロールの約 1/3 となった。という報告がある。 他にも大腸菌によるアルキル化剤を用いた実験がある。

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非密封放射線源を用いた時の汚染状況の確認作業

非密封放射線源を用いた時の汚染状況の確認作業の記述

密封されていない 32P、51Cr、及び 241Am を使用する実験施設がある。これらの放射性同位元素を取り扱う上で、汚染検査に適切な方法を知っておく必要がある。直接法により汚染の検査を行うこととした。32P を検出するには端窓型GM管式サーベイメータが適している。51Cr は EC 壊変核種であり、 320 keV のγ線を放出する。51Cr を検出するには端窓型GM管式 サーベイメータでも検出できるが、NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータの方が適している。241Am は α 壊変核種であり、 59.5 keV のγ線も放出するが、241Am を選択的に検出するにはZnS(Ag)シンチレーションサーベイメータが適している。
間接法による表面汚染密度の測定では、一定面積を拭き取った試料を測定する。一方、汚染箇所の放射能分布を測定するためにイメージングプレート(IP)が用いられる。IPはプラスチックフィルムにBaFBr:Eu2+ を塗布したもので、汚染箇所にIPを重ねて曝露させる。そのIPを読取機にセットし、He-Ne レーザーで照射すると、汚染箇所に対応するIPの位置から、汚染核種の放射能に比例した煇尽性発光が検出され、汚染の分布を知ることができる。

 

補足

密封されていない 32P、51Cr、及び 241Am を使用する実験施設において、汚染検査に適切な方法は以下の通りである。

直接法

32P:半減期は 14.26 日でβ線の最大エネルギーは 1.711 MeV と高い。β線を放出する核種では広窓型の GM 管が付いたサーベイメータが便利である。

51Cr:半減期は 27.7 日、軌道電子捕獲(100%)と低いエネルギー(0.32MeV)のγ線放射(9.92%)によって 51V(安定)となる。直接測定では、GMサーベイメータまたはNaI(Tl)シンチレーションサーベイメータを利用する。NaI(Tl)シンチレータは、電離箱、GM計数管に比較して、非常に高い検出効率を持つγ線用サーベイメータを作ることが可能であり、γ線放出核種の検出に適している。

241Am:半減期は 432.2 年、アルファ壊変して 237Np となる。α線のエネルギーは 5.388 MeV、γ線のエネルギーは非常に低くわずか 59.5 keV である。α線を放出する核種は ZnS シンチレーション式または半導体サーベイメータが良い。

間接法

拭き取ったろ紙は核種に合わせて GM 管式、ガスフロー薄窓型比例計数管式、Znsシンチレーション式、半導体式のサーベイメータで測定できる。
イメージングプレート(IP):IP は最大数十cm 四方の大きさが販売されており、広い面積の2次元放射能分布を直接コンピュータに取り込むことが可能である。使用方法は、IP への暴露後にレーザーで IP 面上をスキャンし、光電子増倍管の信号強度をデジタル化することによって、2次元放射線強度分布が直接コンピュータに取り込まれる。
BaFBr:Eu2+:輝尽性蛍光体をプラスチックフィルムに塗布したイメージングプレートは、医療用のX線フィルムにかわるX線検出・記憶媒体として実用化された。IP はX線に感度があるだけでなく、3H、14C、32P などのβ線源、125I、99mTc などのγ線源やα線源に対して高い感度を有する。

 

トレーサー実験に 51Cr を使用するため、K2CrO4 の熱中性子照射を計画した。0.01 モルの K2CrO4 を熱中性子フルエンス率 1 × 10^13 cm^(-3)・s^(-1) で1時間照射すると 40 MBq の 51Cr が生成すると見積もられる。ただし、標的核 50Cr の同位体存在度は 4.3%、中性子捕獲断面積は 16 バーン、51Cr の半減期は 28 日とする。ここで、照射時間 t が半減期 T に比べ非常に短い場合には、飽和係数は ln2/T × t で近似でき、 10^(-3) となる。また、この照射によって、試料からは同時に 42K が生成するが、この核種の半減期は 12 時間であるため、10日後には生成時の 10^(-6) になる。

 

解説

試料とする元素を t 時間照射して照射終了後得られる生成核の放射能(の強さ)A[Bq]は次の式より算出できる。
A = Nfσ[1 – e^(-λt)] = Nfσ[1 – (1/2)^(t/T)]・・・①
(f:照射粒子束密度[n/cm2 s]、σ:放射化断面積[barn]、N:試料元素の原子数、λ:生成核の壊変定数、T:生成核の半減期)
ここで式中の[1 – (1/2^(t/T))]を飽和係数 S という。
試料元素の質量を W グラム、その原子量を M 、その同位体存在度を θ とした時、原子数 N は次の式から算出できる。
N = [(θ W)/M] × 6.02 × 10^(23)・・・・②
K2Cr04 の熱中性子照射により以下の核反応が考えられる。
50Cr (n,γ) 51Cr、40K (n,γ) 41K
ホットアトム効果による K2CrO2 をターゲットにして高比放射能の 51Cr が (n,γ) 反応で作られる。K2CrO2 を原子炉で中性子照射すると、41K (n,γ) 42K、50Cr (n,γ) 51Cr によって 42K、51Cr が生成する。生成した 51Cr は反跳して結晶から外れ、K2CrO4 では Cr(Ⅵ) として存在していたが、Cr(Ⅲ)となり、陽イオンであるので、陰イオン交換樹脂に通すと陽イオンであるため吸着されず、流出液に 42K と 51Cr が認められる。42K は半減期 12.36 時間であり、中性子放射化分析法では 1525 keV のγ線が用いられる。
(1) K2CrO4 → 51Cr の放射線の計算
式②より 0.01 mol のK2CrO4 中の Cr の原子数 N は、
N = 0.01 × 6.02 × 10^(23) = 6.02 × 10^(21)
また、σ = 16 × 10^(-24) × 0.043 cm2 (同位体断面積を原子断面積に換算、1 バーン = 10^(-24)cm2)
f = 1 × 10^13 cm^(-2)s^(-1)
T = 28 日 = 672 時間
t = 1 時間
ここで、式①は、照射時間 t が半減期 T に比べ非常に短い場合には、飽和係数 S は (ln2/T)t で近似でき、
A = Nfσ × (ln2t/T)・・・③
S = (ln2/672) × 1 = 1.03 × 10^(-3) ≒ 10^(-3)
51Cr の放射能 A[Bq] は、式③より、
A = 1 × 10^(13) × 6.02 × 10^(21) × 16 × 10^(-24) × 0.043 × 10^(-3) = 4.3 × 10^7 Bq = 43 MBq
(2) 照射終了後 10 日後の 42K の放射能
A を終了直後の放射能、T を半減期とすると、照射終了 d 時間後の放射能 Ad は、
Ad = A × (1/2)^(d/T) = A × (1/2)^(240/12) = A × (1/2)^(20) = 1.05 × 10^(-6)A ≒ 10^(-6)

 

原子炉で熱中性子照射した K2CrO4 が1辺 20 cm の立方体の運搬容器に入れて送られてきた。放射性核種は 51Cr のみであり、受取時の放射能は 400 MBq であった。K2CrO4 はガラス容器に封入され、厚さ 1 cm の鉛で囲まれ、運搬容器の中心に置かれていた。運搬容器の表面線量は最大で 3.4 μSv/h と見積もららえる。ただし、51Cr の 1 cm 線量当量率定数は 0,00547 μSv・m2・MBq^(-1)・h^(-1)、鉛の半価層は 0.165 cm とし、ガラスや運搬容器による吸収は考慮しない。 K2CrO4 の入ったガラス容器を取り出して、フード内に置いたとき、50 cm 離れた場所では、被ばく線量が 7.3 μSv/h となることから、作業時間も顧慮して取り扱うことにした。ただし、51Cr の実効線量率定数は 0.00458 μSv・m2・MBq^(-1)・h^(-1) とする。
この K2CrO4 を水に溶解し、陰イオン交換樹脂のカラムに通したところ、流出液にも放射能が検出された。流出した放射能は、照射中にホットアトム反応で生成した Cr3+ によるものであると考えられ、その比放射能はカラムに吸着した CrO4(2-) に比べ高い。

 

解説

容器によるγ線の遮蔽 → I = I0 × e^(-μx) = 400 × (1/2)^(1/0.165) ≒ 400 × (1/2)^6 = 6.25 MBq
運搬容器の表面線量 → D = ς・Q/r^2 = 0.00547 × 6.25/(10×10^(-2))^2 ≒ 3.4 μSv/h
使用の際の線量計算 → D = ς・Q/r^2 = 0.00458 × 400/(50×10^(-2))^2 ≒ 7.3 μSv/h

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中性子線源である 238Pu

中性子線源である 238Pu についての記述

238Pu は α 壊変核種であり、高い発熱量を示し、半減期は 88 年 なので、長寿命のアイソトープ電池として宇宙線開発等に利用されている。238Pu の製造に利用される核反応の一つには次のものがある。
237Np (n,γ) 238Np →(β-壊変、半減期 2.1 日) 238Pu
237 グラムの 237Np ターゲットを熱中性子フルエンス率 1.0 × 10^15 cm^(-2)・s^(-1) で 50 時間照射した。上記(n,γ)反応の断面積を 180 バーンとすると、238Np に変化した。237Np の総数は約 1.9 × 10^(22) 個となる。このターゲットを 30 日間冷却した後、ターゲットから全ての Pu を化学分離により回収した。なお、生成した 238Np が全て 238Pu に変化したとすると、回収できる 238Pu の重量は約 8 グラムである。照射時間を更に長くすると、238Pu が中性子を捕獲して生成する 239Pu や 240Pu が増加し、238Pu の核種純度が低下する。

 

解説

放射化分析における生成放射能の計算
t 時間の照射によって、核反応にともなって変化する原子数 N は、f:照射粒子束密度[n/cm2s]、σ:放射化断面積[barn]、N0:試料元素の原子数、λ:生成核の壊変定数、とすると
N = N0・f・σ・t = [1.0 × 10^15 × 180 × 10^(-24) × 237] / [237 × 6.0 × 10^23 × 50 × 60 × 60] = 1.94 × 10^22 個
照射終了後 d 時間後の 238Np の原子数を Nd とすると、 238Pu の原子数は、
N – Nd = N – N・(1/2)^(d/T) = N(1 – (1/2)^(d/T))
ここで d/T = 30/2.1 ≒ 15 なので、(1/2)^15 ≒ 0 となり、N – Nd = N となる。したがって生成した 238Np が全て 238Pu に変化したと考えられる。
N(238Pu) = (W/M) × 6.0 × 10^23
1.94 × 10^22 = (W/238) × 6.0 × 10^23
W = 7.6 g

 

有用な中性子源である 252Cf (半減期 2.6年)の製造に利用される主な核反応プロセスの概略を下図に示す。原子番号、質量数ともに非常に大きい 252Cf の製造には、ⅰ) 連続した中性子捕獲による質量数の増加と、ⅱ) β- 壊変による原子番号の増加が利用される。Pu ターゲットを原子炉で照射した時に中性子捕獲で生成する 243Pu は、半減期が約 5 時間と短く、その多くは β- 壊変して243Am になる。一定期間の照射後、生成した Am を残存の Pu と核分裂生成物から分離回収する。回収した Am で、調整した Am ターゲットを高い中性子フルエンス率で照射すると、より重い Am 核種が生成するが、半減期の短い 241Am の多くは、 (n,γ) 反応で 245Am になる前に β- 壊変して 244Cm になる。同様のプロセスが繰り返される。 最終的に 252Cf を含む重い核種群が得られる。239Pu を最初の核種として 252Cf に到達するには、 13 個の中性子捕獲と 4 回の β- 壊変を経る。252Cf の製造過程では、多種類の化学分離法が利用されている。例えば、処理量が多い Pu ターゲットの化学分離処理を行うときには溶媒抽出法が、Am、Cm、Bk、Cf の相互分離を行うときには主に イオン交換クロマトグラフィ法が利用されている。

 

252Cf は主にα壊変するが、分岐比 3.1% で自発核分裂し、それに伴って中性子を放出する。自発核分裂の部分半減期は 84 年となる。1.0 グラムの 252Cf の原子数は 2.4 × 10^21 個、その核分裂速度は 6.3 × 10^11 s^(-1) である。1回の自発核分裂で放出する中性子数は平均 3.8 個であるので、1.0 グラムの 252Cf が放出する中性子数は毎秒 2.4 × 10^12 個となる。252Cf 中性子源は、即発γ線分析、中性子ラジオグラフィ、水分計等に用いられている。

 

解説

252Cf:半減期は 2.645 年、自発核分裂(SF)(3%)し、α壊変(97%、平均 6.112 MeV)とγ線、低エネルギーX線の放射を伴う。1 g 中の原子数は、
N = (1/252) × 6.0 × 10^23 = 2.38 × 10^21 個
核分裂速度は 6.3 × 10^11[s^(-1)] で1回の自発核分裂で放出する中性子数は平均 3.8 個であるので、求める 252Cf が放出する中性子数は
6.3 × 10^11 × 3.8 = 2.39 × 10^12 個
部分半減期:枝分かれする壊変を分岐壊変と呼び、その割合を分岐比という。分岐した改変についてされぞれの壊変式が成り立つので、i 番目の壊変に着目すると次のように表せる。
dN/dt = -λiN、T(1/2)i = ln2/λi
このように定義した半減期を部分半減期という。ここで、この親核種に注目すると、その壊変定数 λ は次のように表せる。
λ = λ1 + λ2 + λ3 + ・・・・・ + λi +・・・λn
この間では、252Cf の壊変定数を λ、α壊変による壊変定数を λ(248Cm) とすると、λ = λ(248Cm) + λ(SF) となり、
λ(248Cm) = 0.969λ、λ(SF) = 0.031λ
自発核分裂の半減期は、T(SF) = ln2/0.031λ = T/0.031
252Cf の半減期は 2.6 年なので、
T(SF) = 2.6/0.031 = 83.8 年

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水中や組織等価物質中の吸収線量の測定

水中や組織等価物質中の吸収線量の測定に関する記述

水中や組織等価物質中の吸収線量の測定は、放射線治療や放射線防護にとって基本となる事柄の一つといえる。吸収線量の測定法として熱量計法は定義に沿ったものであるが、測定感度は低い。通常はブラッグ・グレイの空洞原理をよりどころとした空洞電離箱法が用いられることが多い。この方法においては、物質中の小さい空洞の存在が二次電子の粒子束に大きく影響しない条件が必要であり、そのためには、空洞の体積は 小さい方がよい。では、X、γ線による水中や組織等価物質中の吸収線量を空洞電離箱法により測定する場合を考えてみよう。まず、水中や組織等価物質中に小さい空洞電離箱を挿入する。この場合、空洞電離箱の空洞気体として空気が用いられることが多い。壁物質としてグラファイトやアルミニウムなど、原子番号の低い物質が用いられるが、内壁面にカーボンなどを薄く塗布して表面に導電性を付与したプラスチックなどが用い られることもある。空洞の中心にはステムと呼ばれる細い電極を設け、この電極と壁との間に電圧をかけ、電離電荷もしくは電離電流を読み出す。X、γ線を照射して電離電荷 Q[C] を得たとすれば、空洞気体に生じたイオン対の数は N = Q/e である。ここで、e は電荷素量で、 1.6 × 10^(-19) [C] である。この N に1イオン対を生成するのに必要なエネルギー、すなわち W 値 w[eV] を乗ずれば、空洞気体中での吸収エネルギーが eV 単位で求められる。二次電子の吸収エネルギーを J 単位に換算するためには、これに換算係数 1.6 × 10^(-19) [J/eV] を乗ずる。結局、空洞電離箱の内容積が V[m^3]、空洞気体の密度が ρ [kg/m^3]の場合、空洞気体における吸収線量 Dg[Gy] は次式で与えられることとなる。
Dg = 1.6 × 10^(-19) [(Q・W)/(e・V・ρ)]
なお、電子線に対する空気の W 値は約 34 [eV] である。壁物質の吸収線量 Dw[Gy]は、
Dw = Dg・(a/b)
として求める。ここで a は二次電子に対する、壁物質の平均質量阻止能であり、b は空洞気体の平均質量阻止能である。
例えば 60Co γ線照射による吸収線量を空洞気体が空気、壁物質がグラファイトの空洞電離箱を用いて即テウする場合、a/b の値は約 1.01、壁物質がアルミニウムの場合は約 0.88 である。壁物質の厚さは二次電子の飛程よりも厚く、電子平衡が成り立つことが必要である。空洞の大きさは充分に小さいことが望まれるが、壁物質と空洞気体の原子組成が類似であれば、空洞の大きさに対する制限が軽減される。次に空洞電離の周辺の物質(水や組織等価物質など)の 吸収線量について考えよう。X。γ線の照射野が十分広く、空洞電離箱周辺のエネルギーフルエンスが均一と見做すことができる場合には、この壁物質の吸収線量 Dw [Gy] の値を用いて、空洞電離箱の周辺の物質の吸収線量 Dw[Gy] を
Dm = Dw・(c/d)
として間接的に求めることができる。ここで、c はX、γ線に対する周辺の物質の質量エネルギー吸収係数であり、d は壁物質の質量エネルギー吸収係数である。ただし、電離箱壁の材質の平均原子番号と周辺の物質の平均原子番号が大きく異なるときは、周辺物質と電離箱壁物質の境界近傍において、 電子平衡が成立しないので、注意が必要である。

補足

放射線から与えられるエネルギーを直接熱量として測定する方法を熱量計(カロリーメータ)という。例えばアルミニウムが 1Gy の線量を受けても、温度上昇は約 0.001 度であり、非常に感度が低い。

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皮膚の急性X線被ばくによる影響

皮膚の急性X線被ばくによる影響

 

線量 症状
3 Gy 以上 脱毛
3 ~ 6 Gy 以上 紅斑・色素沈着
7 ~ 8 Gy 水泡・びらん
10 Gy 以上 潰瘍形成
15 ~ 20 Gy 以上 湿性落屑
20 Gy 以上 難治性潰瘍
50 Gy 以上 壊死

脱毛、紅斑・色素沈着は被ばく後2 ~ 3 週間であらわれる。10Gy の被ばくでは、一過性の紅斑が生じて、数時間内で認められる。

乾性落屑は基底細胞が減少が減少し皮膚が角質化することにより、被ばく後 3 ~ 6 週間で起こる。

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