現在の胃がん検診の現状と選択

胃がん検診の重要性

検診などでよく検査項目の中に含まれている内視鏡検査・胃X線検査はなぜ必須なのかと言いますと現在胃がんの罹患率が高い傾向にあるからです。具体的には2014年の統計によると男性86656人で第一位、女性39493人で第三位の罹患者数になります。

胃がんは早期発見ができれば生存率は約95%以上となりますが、発見が遅くなれば生存率が約48%にまで減少していきます。

したがって、胃がん検診は早期発見、早期治療を目的とし、胃がんによる死亡率の減少をはかる目的として行われています。

では、どのような方々が胃がんになりやすく、検査を推奨されているかと言いますと、国のがん検診の指針によりますと、内視鏡検査であれば50歳以上なら2年に1回、胃X線検査であれば40歳以上なら年1回を推奨しています。

しかし、検査に携わっていますと、バリウムの検査が苦手な方や、便秘がひどい方、内視鏡も苦しくて苦手という方、30歳以下の若い方々も検査に来られたりして、よく相談されたりすることがあります。

そこで、ここでは胃がんになりやすい方、検査方法などを詳しく解説していきたいと思います。

まずはどんな方々が胃がんになりやすいかをご説明いたします。

これまでにわかっていることは胃がんに罹患している方々の約99%はヘリコバクターピロリ菌に感染していることが報告されています。残りの0.1%はヘリコバクターピロリ菌に感染していない方や原因不明の方々となります。

もし内視鏡検査や胃X線検査が苦手な方でご自身の胃の状態を把握してみたいという方々はまずヘリコバクターピロリ菌の感染の有無の確認をしてから内視鏡検査や胃X線検査に移っていただいてもいいのかと思います。

ここで知っておいていただきたいことは年代別ヘリコバクターピロリ菌の感染率です。20歳〜29歳では全体の約9%の方々しか感染していないことが分かります。この数値を見ていただくと検査を推奨する年齢が40歳以上ということが分かると思います。

20~29歳  9%

30~39歳  19%

40~49歳  28%

50~59歳  43%

60~69歳  54%

70~79歳  42%

ヘリコバクターピロリ菌感染の有無の検査方法には血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法という3つの方法があります。

血液検査はヘリコバクターピロリ菌自身を検査するものではなくヘリコバクターピロリ菌に感染したことによってできる血液の中に存在する抗原を検査することによって過去に感染してたり現在感染しているのかを判定するものであります。欠点としては、あくまで抗原の検査なので過去に感染していたか、現在感染しているのかまでの判定ができないという点であります。この血液検査による血清抗原陽性的中率を年代別に表すと次のようになります。

20~29歳 約27.8~65.0%

30~39歳 約47.8%~81.5%

40~49歳 約60.3%~88.0%

50~59歳 約74.7%~93.4%

60~69歳 約82.1%~95.7%

70~79歳 約73.9%~93.2%

このように年齢が若いと感染率も低くなり、陽性的中率も必然的に下がる傾向があることを注意していただきたいです。

尿素呼気検査は呼気の中に尿素が存在しているかどうかの検査になります。

この検査の原理は、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解して、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排出されます。この試験方は、この原理を利用して、検査薬(13C-尿素)を患者さんに服用していただきます。ピロリ菌に感染している場合では尿素が分解されるため呼気に 13CO2が多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していない場合では、尿素が分解されないため13CO2の呼気排出はほとんど起こりません。そしてこの尿素呼気検査による陽性的中率は次のような値となります。

20~29歳 約42.6~82.6%

30~39歳 約63.8%~91.8%

40~49歳 約74.5%~94.9%

50~59歳 約85.0%~97.3%

60~69歳 約89.8%~98.3%

70~79歳 約84.5%~97.2%

血液検査よりも精度がいいことがお分かりいただけますが、20歳〜29歳の精度はあまり良くないので注意を要します。

便中抗原法は胃の中にいるピロリ菌は便中に排出されるので、便中のヘリコバクターピロリ抗原を検出することによりピロリ菌の感染の有無を確認する検査となります。

この便中抗原検査による血清抗原陽性的中率は次のような値となる。

20~29歳 約37.8~約65.0%

30~39歳 約59.0%~約81.5%

40~49歳 約70.5%~約88.0%

50~59歳 約82.3%~約93.4%

60~69歳 約87.8%~約95.7%

70~79歳 約81.6%~約93.2%

こちらの検査も20歳〜29歳の精度はあまり良くないので注意を要します。

 

そしてピロリ菌の感染の有無でさらに精度が高い検査は内視鏡検査と胃X線検査である。内視鏡検査は胃の粘膜の状態を観察できる上に、胃の組織を採取することで迅速ウレアーゼ検査、鏡検法、培養法といった方法でピロリ菌の有無を確認することができ、さらには重要である胃がんの早期発見をも可能にする検査となります。

続いて胃X線検査は粘膜の状態を確認する検査になります。バリウムを胃全体に付着させることで、胃の状態を見ることでピロリ菌が過去に感染しているか、現在感染しているかを判断することができます。

そして一番おすすめな方法としては、まずは内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただく事で感染しているか総合的に判定することができます。

 

ヘリコバクターピロリ菌感染の有無による検査継続方法

ヘリコバクターピロリ菌感染していない方

 内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただいた結果全て陰性の場合、3年~5年間隔で内視鏡検査を受けることをお薦めします。

 

ヘリコバクターピロリ菌に現感染している方、もしくは過去に感染していた方

内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただいた結果1つでも陽性なら現感染、もしくは過去感染している可能性が高いため、年に1回内視鏡検査、もしくは胃X線検査を交互に行うことをお薦めします。

補足事項

2017年度佐賀県の中学生を対象にピロリ菌検査を行った結果7230人のうち234人にピロリ菌に感染していたという調査結果が出ていました。少数ではありますが若い方もピロリ菌に感染していることが分かります。今大切なことは自分自身の胃の中の状況を確認して、その状況に応じた検査を行う事が大切です。

ピロリ菌は、幼少期の時の母親からの感染や井戸水を長年使用していた方々に多く感染しているとの報告があります。近年は水道設備が整っているためピロリ菌に感染している方々が少なくなっています。

しかし最近はピロリ菌に感染していなくても胃がんに罹患する方々も増加してきているため、ピロリ菌だけの判定だけでなく、40歳以上の方々は、2〜3年に1回の内視鏡検査をすることをおすすめしたいと思います。
水道水もいいが、ピロリ菌感染を予防するなら、綺麗なお水を使用することが望ましい。





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第1種放射線生物学問題・解説1

過去問と解説を日々更新していきたいと思います。まずおすすめの勉強方法

① まず物理、化学、生物の基本的な単語の定義は覚えておく必要がある。

② 過去問を解きまくる。過去問こそ最大の教科書である。直近の過去5年分は解かずに置いておき、模擬試験形式できちんと解けるように残しておく。

③ 解いた問題は自分のノートに書いてまとめると良い。問題を解いてノートにそれをまとめることで、間違えたとき見直しがしやすく、より覚えがよくなります。

④ 物・化・生の問題は最初解かずに過去5年以上の問題を全て写し、それを自分の教科書として覚える方が良い。

⑤ 管理・計測(実務)も同じことが言える。最初写すのはものすごく大変だが、参考書にも載っていないようなことが書かれているため勉強の効率は逆にいいと考える。

⑥ 法令に関しては私がまとめた資料を覚えていただくと7割の問題は解けると思 う。残りの3割は問題を解いていきながら徐々に覚えていく方が望ましい。また法令を覚えるの は試験の3~4ヵ月前でいいかと思います。やってないと忘れるため。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

問1

次の標識化合物のうち、試験管内で合成されるタンパク質定量に最も適切なものの組み合わせはどれか。

A [3H]ウリジン

B [14C]チミジン

C [14C]グリシン

D [35S]メチオニン

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 標識化合物の種類を下図に示す。下の表より解答は 5 となる。

標的核 アミノ酸の種類 核種
DNA チミジン 3H
デオキシリボヌクレオチド 32P
ヨードデオキシウリジン 125I
RNA ウリジン 3H
タンパク質 グリシン 3H、14C
メチオニン 35S
ヒスチジン 3H
脳、がん細胞 グルコース 14C

問2

X線照射による酵素の不活化に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 水溶液中で間接作用に関するのは主にHラジカルである。

B 水溶液中で直接作用により不活化される酵素の数は濃度と無関係である。

C 水溶液中で直接作用により不活化される比率は濃度が増加すると上昇する。

D 乾燥系にすると間接作用は起こりにくい。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答

直接作用とはDNAを構成する原子に起きた電離・励起が直接DNA損傷を引き起こす。
直接作用により不活化される酵素の数は濃度に比例するが、不活化される比率は濃度には依存しない。
間接作用とは生体の水分子が電離・励起され、その結果生じたフリーラジカル(主にOHラジカル)が間接的にDNA損傷を引き起こす。
低LET放射線の場合、DNA損傷の多くは間接作用によって引き起こされる。
したがって解答は 4 となる。

問3

放射線の間接作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞膜に起こった損傷がDNAに損傷を与える現象を指す。

B 凍結細胞を照射した場合に生物作用が軽減されるのは、間接作用の抑制による。

C ラジカルスカベンジャーをあらかじめ添加しておくことにより生物作用が軽減されるのは、
間接作用の抑制による。

D 高LET放射線では、直接作用の割合の方が多くなる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

間接作用の修飾要因には、希釈効果、酸素効果、保護効果、温度効果がある。
① 希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶液の濃度が低いほうが高いときよりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなる。
② 酸素効果とは、組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることをいい、酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは、酸素分子が電子親和性が大きく、電子を取り込んでスーパーオキシドという反応に富むラジカルを産生するためである。同じ生物効果を得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。
酸素増感比 = 無酸素下である効果を得るのに必要な線量/酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量
OERは酸素分圧の上昇に連れて大きくなるが、酸素分圧が20mmHgを超えるとほぼ一定となる。低LET放射線では2.5~3程度であるが高LET放射線では酸素効果は小さい。
③ 保護効果とは、ラジカルと反応しやすい物質が照射時に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので、放射線の効果は減少する。このような働きをもつ物質を放射線防護剤といいSH化合物(システイン、システアミン、グルタチオン、シスタミン)やOH基(アルコールグリセリン、ポリエチレングリコール)なども保護効果を持つラジカルスカベンジャーである。
④ 温度効果とは温度が低下した状態では放射線効果が減少することをいう。このような効果がある。

前の問題の解説を踏まえて解答は 3 となる。

問4

放射線によるDNA損傷とその修復に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞のDNA損傷修復能は組織により異なる。

B 放射線による特異的なDNA損傷は存在しない。

C X線とγ線では、DNA損傷の種類が異なる。

D DNA損傷修復能に性別による違いは認められない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 細胞のDNA損傷修復能は組織により異なる・・・細胞の感受性が異なるため、修復能は異なる。
B 放射線による特異的なDNA損傷は存在しない・・・放射線だけが作るDNA損傷はない。
C X線とγ線では、DNA損傷の種類が異なる・・・どちらも光子であり、できるDNA損傷は同じである。
D DNA損傷修復能に性別による違いは認められない・・・性別による違いはない。

したがって解答は 2 となる。

問5

活性酵素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素分子はフリーラジカルである。

B 酸素分子が2個電子還元されると過酸化水素が生成される。

C 過酸化水素はSODにより水分子と酸素分子になる。

D OHラジカルのグアニンとの反応はアデニンとの反応性より小さい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

活性酸素とは大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称である。
O2*・・・①スーパーオキシドアニオンラジカルといい、酵素との反応で過酸化水素ができる。②水和電子と酸素との反応でできる。
③ 1電子還元でスーパーオキシドラジカルに、2電子還元で過酸化水素になる。
HO*・・・ヒドロキシラジカルといい、グアニンの C-H の部分を C-OH に変化させる。
他にも H2O2の過酸化水素、1O2の一重項酸素、HO2*のヒドロペルオキシラジカルがある。
この活性酸素の反応を防ぐ役割をするのが抗酸化酵素である・・・カタラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、ペルオキシターゼなどが無害化する酵素である。
カタラーゼ・・・H2O2による細胞障害を消失させる。この酵素は体内に存在する。
スーパーオキシドディスムターゼ・・・スーパーオキシドアニオンラジカルO2*による細胞障害を消失させる。
A 酸素分子はフリーラジカルである・・・正しい
B 酸素分子が2個電子還元されると過酸化水素が生成される・・・正しい
C 過酸化水素はSODにより水分子と酸素分子になる・・・SODはスーパーオキシドディスムターゼのことでO2*による細胞障害を消失させる。よって誤り。
D OHラジカルのグアニンとの反応はアデニンとの反応性より小さい・・・誤り

したがって解答は 1 となる。

問6

培養細胞の線量ー生存率曲線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α線よりγ線の方が傾きが急になる。

B 24度で照射すると、37度で照射した場合より傾きは急になる。

C 一般に、線量率を上げると傾きは急になる。

D 10MeVの中性子よりも500keVの中性子で照射した方が傾きは急になる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

A α線よりγ線の方が傾きが急になる・・・α線の方が傾きは急である。
B 24度で照射すると、37度で照射した場合より傾きは急になる・・・低温の方が感受性が低いため傾きは緩やかである。
C 一般に、線量率を上げると傾きは急になる・・・正しい
D 10MeVの中性子よりも500keVの中性子で照射した方が傾きは急になる・・・正しい

したがって解答は 5 となる。

問7

放射線による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A リンパ球は1Gy以下の線量でアポトーシスを起こす。

B 心筋細胞は、主に分裂死を起こす。

C アポトーシスでは巨細胞となった後に細胞死を起こす。

D アポトーシスではDNAの断片化が認められる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A リンパ球は1Gy以下の線量でアポトーシスを起こす・・・リンパ球減少しきい値は0.25Gyで間期死を起こし、アポトーシスと考えられる。
B 心筋細胞は、主に分裂死を起こす・・・心筋細胞は細胞分裂しない。
C、Dに書かれているアポトーシスとは能動的・生理的な細胞死で細胞の縮小、核濃縮、核の断片化・核内クロマチンの凝縮・細胞の分断化、アポトーシス小体の形成
この他にミトコンドリアの形態的変化や数の減少、紡錘体の大きさの減少、中心体の増加がある。これよりDが正しいということになる。

したがって解答は 3 となる。

問8

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A G0期に照射された場合の異常は主に染色体型である。

B 不安定型異常は被ばく直後の線量推定に用いられる。

C 環状染色体を持つ細胞は正常な分裂ができない。

D 姉妹染色分体交換が起こっても、遺伝情報は変化しない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

細胞周期というものがありG1期 → S期 → G2期 → M期 といった周期になる。G0期というのはG1期に長く留まっている時期をいう。このG0期に照射された場合主に染色体型異常となり、1対の染色分体の同じ位置に異常が認められることをいう。また、G1期の被ばくにより2動原体染色体が出現する。G2期に照射されると染色分体異常が起こり、G2ブロックと呼ばれる分裂遅延もおこる。この分裂遅延はタンパク質の合成阻害が起こるため起きる現象である。
染色体異常で起こる姉妹染色分体は、DNA複製後にできる同じ遺伝情報を持つ2本の染色分体であるので交換が起こっても遺伝情報は変化しない。染色体異常には安定型と不安定型とがある。

安定型・・・欠失、逆位、転座。

不安定型・・・早期に消失する環状染色体、2動原体染色体がある。
この問題はすべて正しいので解答は 5 となる。

問9

酸素効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素の存在により生物作用が増強されることを指す。

B 低LET放射線に比べて高LET放射線による照射の場合の方が顕著である。

C 酸素効果の程度を表わす指標としてOERが用いられる。

D 酸素がDNA修復を阻害する結果として生ずる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

酸素効果とは、組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることをいい、酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは、酸素分子が電子親和性が大きく、電子を取り込んでスーパーオキシドという反応に富むラジカルを産生するためである。同じ生物効果を得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。
酸素増感比 = 無酸素下である効果を得るのに必要な線量/酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量
OERは酸素分圧の上昇に連れて大きくなるが、酸素分圧が20mmHgを超えるとほぼ一定となる。低LET放射線では2.5~3程度であるが高LET放射線では酸素効果は小さい。

したがって解答は 2 となる。

問10

哺乳動物の全身被ばく後の骨髄死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 被ばく後2,3日以内に死に至る。

B 速中性子被ばくの場合は、γ線被ばくよりも低い線量でみられる。

C マウスではヒトの場合よりも低い線量でみられる。

D 半致死線量程度の被ばくの場合に見られる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

骨髄死・・・1Gyの被ばくを受けると、10%程度の人に悪心、嘔吐などが現れる。同時に食欲不振、全身倦怠感、めまいなどの症状も現れることから、放射性宿酔と呼ばれる。1.5Gyが死亡のしきい線量であり、造血臓器の症状が主で死亡するため、骨髄死または造血死と呼ばれる。3~5Gyで被ばくした人の半数が死亡し、7~10Gyでは被ばくした人のほぼ全数が死亡する。およそ60日後に現れはじめる。
A 被ばく後2,3日以内に死に至る・・・60日後に出現しはじめるため誤り。
B 速中性子被ばくの場合は、γ線被ばくよりも低い線量でみられる・・・RBE(生物学的効果比)はγ線より速中性子の方が大きいためγ線より低い線量でなるため正しい
C マウスではヒトの場合よりも低い線量でみられる・・・ヒトの方が感受性が高いため誤り
D 半致死線量程度の被ばくの場合に見られる・・・半致死線量は3~5Gyで骨髄死は1.5Gyと少し幅はあるが、3~5Gy照射されると、骨髄死も起こるので正しいといえる
したがって解答は 4 となる。

問11

X線による急性被ばく後の障害と当該組織・臓器におけるしきい線量の関係として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 水晶体混濁 ー 10~15Gy(眼)

B 女性の永久不妊 ー 15~20Gy(卵巣)

C 男性の一時的不妊 ー 1.0~1.5Gy(精巣)

D 男性の永久不妊 ー 3.5~6.0Gy(精巣)

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答

水晶体での一回照射の場合のしきい線量は、水晶体混濁で2Gy、白内障で5Gy。慢性被ばくの場合では水晶体混濁が5Gy、白内障で8Gyとされている。
男性の一時的不妊は0.15Gy、永久不妊は3.5~6Gyとされている。
女性の一時的不妊は0.65~1.5Gy、永久不妊は2.5~6Gyとされている。

したがって解答は 4 となる。

問12

皮膚のX線被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線量限度は確定的影響に基づいてる。

B 幹細胞は障害の回復に関与しない。

C 皮膚の等価線量には1cm線量当量を用いる。

D 組織荷重係数(ICRP1990年勧告)は0.01である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 線量限度は確定的影響に基づいてる・・・500mSv/年の等価線量は確定的影響の防止を意図しているので正しい。
B 幹細胞は障害の回復に関与しない・・・基底細胞は幹細胞でありその回復が重要であるため誤り。
C 皮膚の等価線量には1cm線量当量を用いる・・・皮膚は70μm線量当量が用いられるので誤り。
D 組織荷重係数(ICRP1990年勧告)は0.01である・・・骨表面とともに0.01の組織荷重係数の値が与えられている。

したがって解答は 3 となる。

問13

組織荷重係数(ICRP1990年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 低線量被ばくによる確率的影響を評価するための係数である。

B 吸収線量に組織荷重係数を乗ずることにより、等価線量が求められる。

C 線量率に関わらず、臓器・組織ごとに値が定められている。

D 放射線の種類に関わらず、臓器・組織ごとに値が定められている。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答

A 低線量被ばくによる確率的影響を評価するための係数である・・・正しい
B 吸収線量に組織荷重係数を乗ずることにより、等価線量が求められる・・・等価線量は吸収線量に放射線荷重係数を乗じるため誤り。
C 線量率に関わらず、臓器・組織ごとに値が定められている・・・正しい
D 放射線の種類に関わらず、臓器・組織ごとに値が定められている・・・正しい

したがって解答は 1 となる。

問14

皮膚の急性X線被ばくによる影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 紅斑に対するしきい値は約3~5Gyである。

B 乾性落屑は被ばく後約3週間で発症する。

C 湿性落屑のしきい値は約20Gyである。

D 50Gy以上の被ばくで壊死が起こる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 皮膚の急性X線被ばくによる影響を下図に示す。下図より解答は 5 となる。

3Gy以上 脱毛 被ばく後2~3週間で現れ、10Gyの被ばくでは一過性の紅斑が現れて、数時間以内で認められる
3~6Gy 紅斑、色素沈着 被ばく後2~3週間で現れ、10Gyの被ばくでは一過性の紅斑が現れて、数時間以内で認められる
7~8Gy 水疱、びらん
10Gy以上 潰瘍形成 15~20Gyで湿性落屑が起きる
20Gy以上 難治性潰瘍 15~20Gyで湿性落屑が起きる
50Gy 壊死

また乾性落屑は基底細胞が減少し皮膚が角質化することにより、被ばく後3~6週間で起こる。

問15

放射線による細胞の適応応答に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 0.2Gy程度以下の線量域で認められる。

B 照射後1~2ヵ月で認められる。

C リンパ球の染色体異常に関して認められている。

D 事前照射により、その後の照射に対する抵抗性を獲得する現象をいう。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

適応応答とは事前照射により、その後の照射に対する抵抗性を獲得する現象をいう。
0.2Gy程度以下の線量域で認められるため、リンパ球の染色体異常に関して認められている。実験結果としてトリチウムを含む培養液でリンパ球を培養した後0.15GyのX線を照射したところ、染色体異常の発生頻度がコントロールの約1/3となった。
B 照射後1~2ヵ月で認められる・・・事前照射から大線量照射までの時間間隔は、6時間、12時間というオーダーであるので誤りとなる。
したがって解答は 3 となる。

問16

原爆被爆者における、がんの発生と死亡に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病の発病までの潜伏期は、被ばく線量が大きいほど長くなる。

B 胃がんの発生に関する過剰絶対リスクは、白血病と比較して高い。

C 胃がんの発生に関する過剰相対リスクは、白血病と比較して低い。

D 甲状腺がんによる死亡に関する過剰相対リスクは、白血病と比較して高い。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答

Aは一般に被ばく線量が大きいと潜伏期間が短くなるため誤りとなる。被爆集団の発生率からコントロール集団の発生率を差し引いたものを過剰絶対リスクといい、被爆集団の発生率をコントロール集団の発生率で割ったものを相対リスク、またそこから自然発生分である1を差し引いたものを過剰相対リスクという。単位線量あたりの発生数(絶対リスク)は胃がんの方が白血病より大きい。しかし、自然発生数は胃がんに比べて白血病は圧倒的に少ない。このため、胃がん以外の固形がんを含めて相対リスクは白血病が最も高くなる。

したがって解答は 3 となる。

問17

放射線による皮膚がんの発生に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 紫外線曝露によりリスクが高くなる。

B 人種により50倍程度の開きがある。

C 最も高頻度に発生するのは悪性黒色腫である。

D ICRP1990年勧告によると皮膚がんの致死割合は10%程度である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 紫外線曝露によりリスクが高くなる・・・紫外線は、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫
などを誘発するが、最も代表的なものは基底細胞がんである。皮膚がん自体のリスクは高まるためこれは正しい。
B 人種により50倍程度の開きがある・・・色素が防護効果をもつため、黒人の方が白人に比べてリスクが低いため正しい。
C 最も高頻度に発生するのは悪性黒色腫である・・・最も高頻度で出現するのは基底細胞がんである。
D ICRP1990年勧告によると皮膚がんの致死割合は10%程度である・・・おおよそ0.2%とされている。

したがって解答は 1 となる。

問18

放射線発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子線ではエネルギーによらずリスクは一定である。

B 甲状腺がんのリスクは男性の方が高い。

C 白血病では被ばく時年齢が低いほど潜伏期は短くなる。

D 線量率による影響を受ける。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 放射線荷重係数は中性子のエネルギーによって異なるため誤りとなる。
B 女性の方が自然発生の甲状腺がんが多く、放射線誘発がんも多いとされている。
C 白血病では被ばく時年齢が低いほど潜伏期は短くなる・・・これは正しい。ただし、固形がんはがんの好発年齢を迎えて発生するので若年被ばくの方が潜伏期は長くなる。
D 線量率による影響を受ける。・・・これは線量・線量率効果が考慮されている。線量・線量率効果とは高線量・高線量率データを
低線量・低線量率に外挿するための係数である。

したがって解答は 5 となる。

問19

確率的影響と確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 晩発障害に確定的影響はない。

B 早期障害には確率的影響はない。

C 遺伝的影響は確率的影響である。

D 不妊は確定的影響である。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 晩発障害に確定的影響はない・・・白内障は晩発障害である確定的影響であるため、この解答は誤り。
B 早期障害には確率的影響はない・・・確率的影響はがんと遺伝的影響があり、どちらも発生には時間を要するのでこの解答は正しい。
C 遺伝的影響は確率的影響である・・・正しい。
D 不妊は確定的影響である・・・正しい。

したがって解答は 4 となる。

問20

放射線障害のしきい値に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 同じ障害であれば、放射線の種類によらず一定の値をとる。

B 確定的影響で見られる。

C 線量率が異なっても変動しない。

D 発生・成長の時期によって大きく変動する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 同じ障害であれば、放射線の種類によらず一定の値をとる・・・線質にによる違いがあるため誤りとなる。
B 確定的影響で見られる・・確定的影響にはしきい値があり、しきい値はある割合以上の細胞が損傷を受けたときに症状が生じる。よってこの解答は正しい。
C 線量率が異なっても変動しない・・・低線量率では、しきい値は大きくなる。
D 発生・成長の時期によって大きく変動する・・・例えば、成長期にある子供の骨は放射線感受性が高いためこの解答も正しい。

したがって解答は 4 となる。

問21

自然放射線源による内部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 世界平均では、内部被ばく線量は外部被ばく線量よりも大きい。

B ラドン及びその娘核種による肺がんの発生では喫煙との相乗効果が認められる。

C 呼吸による経路で被ばく線量への寄与が最も大きいのはラドン及びその娘核種である。

D 経口摂取物中に含まれる核種で被ばく線量への寄与が最も大きいのは 14C である。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 世界平均では、内部被ばく線量は外部被ばく線量よりも大きい・・・ラドンによる肺の内部被ばくが大きく世界平均では自然放射線被ばくの約半分を占める。よってこの解答は正しい。
B ラドン及びその娘核種による肺がんの発生では喫煙との相乗効果が認められる・・・ラドンと喫煙には相乗効果が確認されており、正しい。
C 呼吸による経路で被ばく線量への寄与が最も大きいのはラドン及びその娘核種である・・・ラドンによる肺の内部被ばくが大きいため正しい。
D 経口摂取物中に含まれる核種で被ばく線量への寄与が最も大きいのは 14C である・・・経口摂取では 40K からの寄与が最大である。よって誤りである。
したがって解答は 1 となる。

問22

血液中に入ったとき、放射性コロイドとなる核種がある。この場合、放射性コロイドが沈着する主な組織の組み合わせとして正しいものは、次のうちどれか。

1 脳と肝臓

2 生殖腺と脾臓

3 骨と膵臓

4 肺と甲状腺

5 肝臓と脾臓

解答

遷移元素は体内に取り込まれるとコロイドを形成し、細網内皮系(肝臓、脾臓、胸腺、骨髄など)
に蓄積する。したがって解答は 5 となる。

問23

環境中に放出されたとき、サブマージョンを考慮しなければならない放射性核種は次のうちどれか。

1 32P

2 59Fe

3 85Kr

4 90Sr

5 137Cs

解答 85Krは不活性気体であり、サブマージョンを形成する。したがって解答は 3 となる。

問24

組織荷重係数(ICRP1990年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 遺伝的影響も対象にしている。

B 男女で同じ係数が用いられる。

C 職業人と一般公衆では係数は異なる。

D 非致死がんも対象にしている。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 遺伝的影響も対象にしている・・・組織荷重係数は確率的影響に関与するためこれは正しい。
B 男女で同じ係数が用いられる・・・男女平均の値として示されている。
C 職業人と一般公衆では係数は異なる・・・同じ値を用いるため誤りとなる。
D 非致死がんも対象にしている・・・ 非致死がんや寿命の損失など様々な損害を考慮して決められている。

したがって解答は 2 となる。

問25

放射線白内障に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 同一吸収線量では、γ線に比べ速中性子線で発生しやすい。

B しきい値が存在する。

C 線量率効果は認められない。

D 潜伏期は認められない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 同一吸収線量では、γ線に比べ速中性子線で発生しやすい・・・中性子の方がRBEが大きいため正しい。
B しきい値が存在する・・・確定的影響なのでしきい値は存在する。よって正しい。
C 線量率効果は認められない・・・認められる。急性被ばくで 5Gy。慢性被ばくで 8Gyとされている。したがって誤り。
D 潜伏期は認められない・・・晩発性影響なので潜伏期は存在する。よって誤りである。

したがって解答は 1 となる。

問26

放射線にによる遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 遺伝的影響の重篤度は線量に依存しない。

B 原爆被爆者の調査から、多くの遺伝性疾患の増加が報告されている。

C 遺伝的影響リスク推定の直接法では「倍加線量」の概念を用いる。

D 遺伝的影響は倍加線量が大きいほど起こりにくい。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 A 下の図より正しいことがわかる。

種類 しきい値 線量増加により変化するもの
確率的影響 存在しない 発生頻度 がん、遺伝的影響 線量に対して発生頻度は変わるが、重篤度は変わらない
確定的影響 存在する 症状の重篤度 白内障、脱毛など 線量に対して発生頻度、重篤度ともに変化する

B 下の表より誤りとなる

原爆被爆者の疫学調査では

  • 発がんの増加は認められる臓器は胃、肺、白血病、肝、乳。認められていない臓器は膵、直腸、胆嚢、子宮、前立腺、腎、喉頭
  • ヒトでは遺伝的影響の増加は有意でない
  • 組織荷重係数の大きさはがんの感受性を表している
  • 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する
  • がんは確率的影響で晩発影響
  • 被ばくと悪性度は相関関係は認められない
  • 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神遅滞、低身長もあげられる

C 倍加線量を用いる方法は、間接法と呼ばれるので誤りとなる

D 倍加線量は一定量の影響を起こすために必要な線量であるから、それが大きいということは起こりにくいということを表わすため正しい

したがって解答は 3 となる。

問27

放射線に高い感受性を示す遺伝病に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 免疫異常を示す場合が多い。

B 発がんの頻度が高い。

C DNA修復に異常をもつ場合が多い。

D 日本人には、毛細血管拡張性運動失調症の患者はいない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 免疫異常を示す場合が多い・・・リンパ球が正常に機能しなくなるため、免疫不全が起こるため正しい
B 発がんの頻度が高い・・・細胞周期が止まらないため、DNA修復が機能せず、発がん頻度が高気なるため正しい
C DNA修復に異常をもつ場合が多い・・・これも正しい

D 日本人には、毛細血管拡張性運動失調症の患者はいない・・・日本人における発生例が報告されているため誤りとなる。したがって解答は 1 となる。る

問28

低LET放射線と比較した高LET放射線の特徴に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線量率効果が小さい。

B 細胞周期による影響が小さい。

C 放射線防護剤や増感剤による修復効果が大きい。

D DNA修復能に依存する致死感受性の違いが大きい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

A 線量率効果が小さい・・・正しい。高LET放射線では亜致死損傷回復が少ないためである。
B 細胞周期による影響が小さい・・・正しい。

C 放射線防護剤や増感剤による修復効果が大きい・・・防護剤、増感剤の効果は、高LET放射線で小さいので誤りとなる。
D DNA修復能に依存する致死感受性の違いが大きい・・・高LET放射線の影響は、様々な照射条件による影響の違いは小さいため誤りとなる。
したがって解答は 1 となる。

問29

RBEに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A LETの増加とともに増加する。

B 基準の放射線として中性子線が用いられる。

C 線量率によって異なる。

D 生物学的指標により異なる。

E 酸素濃度による影響を受けない。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答

A LETの増加とともに増加する・・・100keV/μm以上では減少するため誤りとなる。
B 基準の放射線として中性子線が用いられる・・・基準放射線はX線やγ線が用いられるため、誤りとなる。
C 線量率によって異なる・・・線量率や酸素濃度などの照射条件によってもRBEは変化し、注目する指標によってもRBE値は異なるため正しい。
D 生物学的指標により異なる・・・正しい
E 酸素濃度による影響を受けない・・・誤り

したがって解答は 4 となる。

問30

線量率効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線量・線量率効果係数は、低線量被ばくの影響評価に用いられる。

B ICRP1990年勧告では、線量・線量率効果係数を2としている。

C 線量率が同じなら、低線量率被ばくの影響は高線量率被ばくに比べて大きい。

D 線量率効果は亜致死損傷(SLD)回復による。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答

A 線量・線量率効果係数は、低線量被ばくの影響評価に用いられる・・・発がんの確率係数の算出の際に用いられる係数であり、正しい。
B ICRP1990年勧告では、線量・線量率効果係数を2としている・・・安全側の値として 2 を採用しているため正しい。
C 線量率が同じなら、低線量率被ばくの影響は高線量率被ばくに比べて大きい・・・低線量率被ばくの方が影響は小さいため誤りとなる。
D 線量率効果は亜致死損傷(SLD)回復による・・・線量率効果は、時間をおくことにより亜致死損傷からの回復があることから説明されるため正しい。
したがって解答は 2 となる。

 

アポトーシス細胞について

アポトーシス細胞では CAD(カスパーぜ活性化DNase)の阻害因子(ICAD)が分解され、活性化した CAD が DNA をヌクレアーゼ単位で切断する。そのため 200bP の倍数の断片化が観察される。細胞膜の脂質二重層のリン脂質は、細胞質側と細胞外側とでリン脂質の種類(組成)が異なっている。ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、アミノリン脂質 トランスロカーゼによって、ATPのエネルギーを使って細胞外側の PS、PE 分子を細胞質側に移動させている。これによって、細胞膜リン脂質の非対称性が維持されている。アポトーシスの進行に伴い、この反応が停止すると、PS が細胞表面に露出する。細胞表面の PS は、マクロファージ細胞の内容物を周囲に分散することなく処理される。

 

① アポトーシス細胞は核や細胞がちぎれてアポトーシス小体を形成する。

② アポトーシスで死んだ細胞はマクロファージによって処理される。

③ 腫瘍壊死因子(TNFα)はアポトーシスを誘導する作用がある。

④ アポトーシス細胞では細胞膜リン脂質のホスファチジルセリン(PS)が露出する。

⑤ アポトーシス細胞では、ミトコンドリアのミトクロムCが細胞膜に漏出ことで膜電位が低下する。

⑥ アポトーシスが起こる過程でカスパーゼと呼ばれる一群のタンパク質分解酵素が連鎖反応を引き起こす。

⑦ マクロファージはホスファチジルセリン(PS)を認識してアポトーシス細胞を貪食する。

造血細胞について

造血は胎児期では主に肝臓で行われるが、出生後は主に骨髄で行われ、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞を生産している。白血球が減少すると免疫機能が低下する。赤血球の減少は、貧血をおこし、 血小板が減少すると血液が凝固しにくくなる。骨髄では造血幹細胞から種々の血液細胞が生産される。幼児期には造血が多く、骨髄は赤色を呈することから赤色骨髄と呼ばれ、 放射線による障害のリスクは大きい。しかし、高齢者では加齢によりその機能は低下し、脂肪細胞が増えていく。このような骨髄はその外観から黄色と呼ばれる。

造血細胞由来の腫瘍は広義では白血球と呼ばれ、原爆被爆者では発生の潜伏期は2〜3年、ピークは被爆後6〜7年である。被爆時年齢が若いほど初期の 死亡リスクは高く、リスク減少は急激である。一方、被爆時年齢の高い者は初期の死亡リスクは低く、その減少傾向は緩やかである。線量反応関係は2Gy以下では直線2次(LQ)モデル が最も良い適合を示す。病型別では慢性リンパ性白血球発生のリスクの増加は認められていない。

細胞分裂の複製

細胞は、DNAの複製と細胞分裂を繰り返しながら増殖する。これを細胞周期と呼び、DNA複製の時期をS期、細胞分裂の時期をM期と呼ぶ。 細胞分裂の時期には、DNAが染色体という特徴的な構造をとるので、形態的に区別することができる。S期の細胞は、形態的に区別することは困難であるが、 DNAの前駆体であるチミジンの取り込みによって知ることができる。また、S期の後、M期の前の時期をG2期、M期の後、 S期の前をG1期と呼ぶ。細胞周期の進行が停止し、増殖していない細胞はG1期の特定の時期にとどまっていると考えられており、これをG0期と呼ぶことがある。 細胞周期をそろえた培養細胞の各時期に放射線を照射し、その後の生存率を解析することにより、放射線感受性の細胞周期依存性を調べることができる。一般的に細胞はM期で照射した場合に最も高い感受性を示す。また、G1期の後半からS期への移行期も高い感受性を示す。 これに対し、S期後半の細胞が最も高い抵抗性を示す。

増殖している細胞に放射線照射をすると、細胞周期の進行が一時的に停滞する。この細胞周期の停滞には、DNA損傷を基点とする細胞内情報伝達系の関与が知られており、がん抑制タンパク質としても知られるp53や、 ヒトの放射線感受性遺伝病である毛細血管拡張性運動失調症のタンパク質として知られるATMなどが重要な役割を果たしている。 毛細血管拡張性運動失調症の細胞では放射線感受性と照射後の細胞周期の停滞の両方に異常が認められることから、放射線感受性と細胞周期の進行が深く関わっていることが示唆される。 照射後細胞を一時的に、増殖を抑制するような環境におくことによって致死効果が軽減されるPLD回復と呼ばれる現象もこのことを示している。





第1種放射線物理学問題・解説1

過去問と解説を日々更新していきたいと思います。まずおすすめの勉強方法

① まず物理、化学、生物の基本的な単語の定義は覚えておく必要がある。

② 過去問を解きまくる。過去問こそ最大の教科書である。直近の過去5年分は解かずに置いておき、模擬試験形式できちんと解けるように残しておく。

③ 解いた問題は自分のノートに書いてまとめると良い。問題を解いてノートにそれをまとめることで、間違えたとき見直しがしやすく、より覚えがよくなります。

④ 物・化・生の問題は最初解かずに過去5年以上の問題を全て写し、それを自分の教科書として覚える方が良い。

⑤ 管理・計測(実務)も同じことが言える。最初写すのはものすごく大変だが、参考書にも載っていないようなことが書かれているため勉強の効率は逆にいいと考える。

⑥ 法令に関しては私がまとめた資料を覚えていただくと7割の問題は解けると思 う。残りの3割は問題を解いていきながら徐々に覚えていく方が望ましい。また法令を覚えるの は試験の3~4ヵ月前でいいかと思います。やってないと忘れるため。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

問1

運動エネルギーが 2.0 MeVのα粒子を進行方向に電位差 3.0 MVで加速した後の速度(m/s2)として、
最も近い値は次のうちどれか。

ただし、原子質量単位を 1.7×10^(-27)kg、電子の電荷を 1.6×10^(-19)Cとする。

1 1.0×10^7

2 2.0×10^7

3 3.0×10^7

4 4.0×10^7

5 5.0×10^7

解答

α粒子はHeの原子核であるため、質量数4、電荷+2の粒子であることから、3 MVで加速されて増加するエネルギーは 3.0×2 = 6.0 MeV となり、もともと2.0 MeVのエネルギーを持っていたα粒子の運動エネルギーTは T=2.0+6.0=8.0 MeVとなる。
よって、T=1/2×mv^2から 8.0×10^6×1.6×10^(-19)=1/2×(1.7×10^(-27)×4)×v^2
v^2 = 3.8×10^14 v ≒ 1.9×10^7

よって解答は 2 となる。

問2

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 原子質量単位(u)では、1uは 0.93 GeVに等しい

B 原子質量単位(u)では、1uは水素原子の質量として定義されている。

C 電子の静止エネルギーの値は 0.51 MeV である。

D 陽子の質量は電子の質量の約210倍である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

1uは炭素12を基準とし、1/アボガドロ定数で定義しているので、1u = 1.66×10^(-27)kgである。質量エネルギーはE=mc^2であるから、エネルギーで換算すると uc^2 = 931.5×10^6 eVとなり0.93GeVとほぼ等しくなる。また、電子の静止エネルギーは 0.51 MeV 陽子の静止エネルギーは 938.2 MeV 中性子のエネルギーは 939.6 MeVであるため、これは覚えておく必要がある。
これにより、陽子の質量/電子の質量 = 938/0.51 ≒ 1800 倍となる。

よって解答は 2 となる。

問3

同一原子のK殻とL殻の電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 内部転換電子のエネルギーは、K殻よりもL殻から放出される場合の方が大きい。

B 軌道電子の結合エネルギーは、K殻よりL殻の方が大きい。

C K殻オージエ電子のエネルギーは、L殻オージエ電子のエネルギーより大きい

D 同じγ線で放出される電子のエネルギーは、K殻よりL殻からの方が大きい。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

 

解答

K殻、L殻の電子エネルギーの関係性を示す。
① 内部転換電子のエネルギー K殻<L殻

② オージエ電子のエネルギー K殻>L殻

③ γ線で放出されるエネルギー K殻<L殻

④ 軌道電子の結合エネルギー K殻>L殻
よって解答は 1 となる。

問4

 

核異性体の定義として次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 核子の総数が互いに等しい原子核

2 陽子の数が互いに等しい原子核

3 中性子の数が互いに等しい原子核

4 陽子と中性子のどちらの数も互いに等しくエネルギー準位の異なる原子核

5 中性子の数と陽子の数が互いに入れ替わった原子核

 

解答

1 核子の総数が互いに等しい原子核・・・同重体

2 陽子の数が互いに等しい原子核・・・同位体
3 中性子の数が互いに等しい原子核・・・同中性子体

4 陽子と中性子のどちらの数も互いに等しくエネルギー準位の異なる原子核・・・核異性体
5 中性子の数と陽子の数が互いに入れ替わった原子核・・・特に名称は無い

よって解答は 4 となる。

問5

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子数が等しく陽子数が異なる核種を互いに同位体であるという。

B 陽子の質量は中性子の質量より大きい。

C 原子核の質量は、構成核子の質量の総和より結合エネルギー分だけ小さい。

D 原子核の核子当たりの結合エネルギーは質量数が4の場合に極大となる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

同位体は陽子の数が等しく、中性子の数が異なる。陽子と中性子の質量エネルギーで考えると、陽子の質量エネルギーは938.2 MeV、中性子の質量エネルギーは939.6 MeVで若干中性子の方が大きい。
C 原子核の質量は、構成核子の質量の総和より結合エネルギー分だけ小さい・・・結合エネルギー=中間子であり、中間子 → 消滅 → 消滅するため軽くなる。
D 原子核の核子当たりの結合エネルギーは質量数が4の場合に極大となる・・・結合エネルギーの最大はFe(鉄)であるが、質量数4はHeであり、α粒子であり、特異的に結合エネルギーが大きいため極大値となる。

よって解答は 5 となる。

問6

水素原子のスペクトル系列を表わす式、ν = cR〔1/n^2-1/m^2〕(n及びmは整数でm>n)において、n = 1に対応するライマン系列と呼ばれる。
ここでRはリュードベリ定数、νは振動数(Hz)、cは光速度(m/s)を表わす。ライマン系列で最長の波長λ(m)として最も近い値は、次のうちどれか。
ただし、R = 1.1×10^7(/m)とする。

1 9.8×10^(-8)

2 1.0×10^(-7)

3 1.2×10^(-7)

4 1.4×10^(-7)

5 1.6×10^(-7)

  

解答

λ = c/ν から振動数νが最小の時、波長λが最大となる。今 n = 1であるから m = 2でνは最小になる。
よって、n = 1、 m = 2を代入して計算するとλ = 1.2×10^(-7)となる。

よって解答は 3 となる。

問7

Ge検出器の校正(50keVから1.5MeVの範囲)に用いられている核種について、放出されるγ線エネルギーの大きさの順に正しく並んでいるのは次のうちどれか。

1 241Am < 60Co < 137Cs < 57Co < 54Mn

2 54Mn < 137Cs < 60Co < 57Co < 241Am

3 241Am < 57Co < 137Cs < 54Mn < 60Co

4 57Co < 241Am < 54Mn < 137Cs < 60Co

5 57Co < 60Co < 137Cs < 241Am < 54Mn

解答

それぞれの放出されるγ線エネルギーを覚えておくしかない。241Am : 59.5 keV、60Co : 1.17 MeVと1.33 Mev、137Cs : 662 keV、57Co : 136 keV、54Mn : 835 keV

よって解答は 3 となる。

問8

次の加速器のうち、ほぼ一定の周回軌道を保って荷電粒子を加速するものはどれか。

1 コッククロフト・ワルトン型加速器

2 サイクロトロン

3 ファン・デ・グラーフ型加速器

4 シンクロトロン

5 マイクロトロン

解答

1 コッククロフト・ワルトン型加速器と 3 ファン・デ・グラーフ型加速器は静電型加速器のため加速経路は直線である。
2 サイクロトロンと 5 マイクロトロン は磁場を曲げて周回しながら加速する。

4 シンクロトロンは一定の周期軌道を保って加速する。

よって解答は 4 となる。

問9

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 核反応の前後で電荷の総量は変化しない。

B バーンは核反応断面積の単位に用いられる。

C 核反応のQ値は、常に負の値をとる。

D 核反応の全断面積は弾性散乱と非弾性散乱の断面積の和である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

C 核反応のQ値は、常に負の値をとる・・・正の場合もあり、発熱反応といい、負の場合は吸熱反応という。
D 核反応の全断面積は弾性散乱と非弾性散乱の断面積の和である・・・全断面積には吸熱反応や核分裂反応など様々な反応も含まれる。

よって解答は 1 となる。

問10

電子の静止質量の約10^4倍大きい質量を持つ原子核から1MeVの光子が放出されるときに原子核が受ける反跳エネルギーとして最も近い値は次のうちどれか。

1 1 MeV

2 5 MeV

3 10 MeV

4 100 MeV

5 1 keV

解答

この問題は運動量保存則を用いる。放出される光子のエネルギーをEg、光の速度をc、とおくと、運動量PgはPg =Eg/c である。
反跳原子核の質量をm(=10^4me meは電子の静止質量)、速度をvとおくと運動量Pn = mv となる。運動量保存則よりPg = Pn が成り立つためEg/c = mvとなり、v = Eg/mc となる。
よって、反跳核の運動エネルギーEn = 1/2(mv^2) = Eg^2/(2mc^2) = 1/(1.022×10^4) = 100 eV

よって解答は 4 となる。

問11

連続なエネルギースペクトルを有する放射線として正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A 109Cdから放出される電子。

B 光電効果により放出される電子。

C コンプトン散乱により放出される光子。

D 電子の制動により放出される光子。

E 252Cfから放出される中性子。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答

109Cdは100%EC(軌道電子捕獲)であるため、連続スペクトルは示さない。光電効果で放出される電子はオージエ電子なので、線スペクトルを示す。コンプトン散乱では反跳電子が放出されるため連続スペクトルを示す。同様に制動放射と中性子も連続スペクトルを示す。

よって解答は 5 となる。

問12

陽電子に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A γ線と物質との相互作用において生成される場合がある。

B 電子と結合して光子を放出して消滅する。

C 核壊変に伴って放出される場合、連続エネルギースペクトルとなる。

D 静止質量は電子に比べて重い。

E EC壊変において放出される。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 陽電子、陰電子共に静止エネルギーは 0.51 MeVである。EC(軌道電子捕獲)では P + e- → n + ν という反応が起こり、中性子とニュートリノが放出される。

よって解答は 1 となる。

問13

荷電粒子が速度vで物質中を通過するとき、粒子の進行方向とチェレンコフ光の放出方向とが成す角度θの関係は、次のうちどれか。ただし、物質の屈折率をn、真空中での光速をcとする。

1 sinθ = n・v/c

2 cosθ = n・c/v

3 sinθ = c/(n・v)

4 cosθ = c/(n・v)

5 sinθ = v/(c・n)

解答

チェレンコフ光は荷電粒子が透明な誘導体内に入射した時、その物質中の光速度 c がより粒子速度 v が大きい時に可視光線が発生する。cosθ = c/(n・v) この条件を満たせば良い。
水中でチェレンコフ光が発生するためには、二次電子の速度が c/1.33 以上(c : 真空中の光速、1.33 : 水の屈折率)、運動エネルギーにして 0.26 MeV以上であることが必要である。

したがって解答は 4 となる。

問14

α粒子に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A 質量衝突阻止能は、物資の原子番号の2乗に比例する。

B 大角度で散乱される場合がある。

C 原子核との弾性衝突の前後において、運動エネルギーの和が変わらない。

D 比電離は速度の減少とともに急激に増大する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

質量衝突阻止能S ~ z^2/v^2 = (Mz^2)/E z:荷電粒子の電荷 v:粒子の速度 M:電荷の質量 E:電荷のエネルギーとなり原子番号には依存しないことがわかる。
B 大角度で散乱される場合がある。・・・これをラザフォード散乱という。

C 原子核との弾性衝突の前後において、運動エネルギーの和が変わらない。・・・弾性散乱なのでエネルギー保存則が成り立つ。

D 比電離は速度の減少とともに急激に増大する。・・・α粒子はブラッグピークを形成し、飛程の終わりで電離能が急激に増加する。

よって解答は 4 となる。

問15

β+線に関する次の記述のうち正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A β+線の最大飛程は、同じエネルギーのβ-線の最大飛程とほとんど同じである。

B β+線により、制動放射線が放出される。

C β+線の遮蔽は同じエネルギーのβ-線の場合と同じとして取り扱う。

D 消滅放射線はβ+線が放出された場所から放出される。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答

核内のエネルギー準位が不安定状態にある核種がエネルギーを放出して壊変し、別な核種に遷移するため、核内よりβ粒子と中性微子とγ線を放出することをβ崩壊という。

β+の場合 p → n + ν + e+

β-の場合 n → p + ν- + e-と表わすことができる。
またβ線が物質と相互作用を行えば、散乱、励起、電離、制動放射によりエネルギーが失われる。 β+線の場合エネルギーが0付近になると、その付近の陰電子と結合して、消滅放射線を放出するため、別の遮蔽が必要となる。

A β+線の最大飛程は、同じエネルギーのβ-線の最大飛程とほとんど同じである。・・・これは覚えておくほかない

よって解答は 2 となる。

問16

空気、アルゴン、ヘリウム中で210Poから放出されたα粒子が完全に静止するとき、発生する電荷量が小さい順に並んでいるものは、次のうちどれか。

1 空気 < アルゴン < ヘリウム

2 空気 < ヘリウム < アルゴン

3 アルゴン < 空気 < ヘリウム

4 ヘリウム < アルゴン < 空気

5 ヘリウム < 空気 < アルゴン

解答

発生する電荷量はW値が大きい気体で小さくなる。水素を除き、原子番号が小さい方がW値は大きい傾向がある。α線に対するW値は、ヘリウム(He) : 42.7eV、 空気 : 35.1eV、 アルゴン(Ar) : 26.4eV

よって解答は 5 となる。

問17

コンプトン効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A コンプトン電子のエネルギーは散乱光子のエネルギーより常に大きい。

B コンプトン効果は光子の波動性を示す現象である。

C 散乱光子の波長は入射光子の波長より長い。

D コンプトン効果の原子当たりの断面積は、原子の原子番号に比例する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

コンプトン散乱の特徴は

① 入射光の波長より散乱波長は長い。

② 入射光は一部のエネルギーを電子に与える。
③ 線減弱係数は原子番号Zに比例する。

④ 原子当たりの断面積は原子の原子番号Zに比例する。

⑤ 非干渉性散乱であり、粒子性を示す。

A コンプトン電子のエネルギーは散乱光子のエネルギーより常に大きい。・・・光子の散乱角度が小さいとき、散乱による光子のエネルギー低下は少なく、
コンプトン電子のエネルギーは小さい。

よって解答は 5 となる。

問18

光電効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光子のエネルギーが軌道電子の結合エネルギーより少し大きいときに光電効果が急激に起きやすくなる。

B 光電効果に伴って特性X線が放出されることはない。

C 光電子の放出される角度分布は均一である。

D 原子核に近い軌道電子の方が光電効果をおこしやすい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

光電効果の特徴は

① 1 MeV以下の光子で特によく起こる。

② 同じエネルギーの光子では原子番号が大きいほどよく起こり、K軌道で最もよく起こる。

③原子当たりの断面積は原子の原子番号Z^5に比例する。

④ 軌道電子とのエネルギーの差が特性X線として放出される。
⑤ 特性X線がさらに軌道電子と衝突して軌道電子を放出する。これをオージエ効果と呼ぶ。

⑥ 特性X線が放出することを蛍光収率(ω)といい、オージエ電子が放出される割合はオージエ収率といい 1-ω となる。
A 光子のエネルギーが軌道電子の結合エネルギーより少し大きいときに光電効果が急激に起きやすくなる。・・・これは覚えておくと良い
C 光電子の放出される角度分布は均一である。・・・光子エネルギーが小さい場合、入射光子に対して90度の方向に光電子が放出される確率が高い。
よって解答は 3 となる。

問19

次のうち、光子の遮蔽計算に用いられるビルドアップ(再生)係数の値に直接関係ないものはどれか。

1 入射光子の線量率

2 コンプトン効果

3 入射光子のエネルギー

4 物質の原子番号

5 物質の厚さ

解答

ビルドアップ係数 = ある点に到達する全光子による線量/散乱を受けていない一次光子による線量 で表わす。 線量率は個々の光子の相互作用に影響しないため、ビルドアップ計数に影響しない。

よって解答は 1 となる。

問20

5 MeV の光子に対する物質の線減弱係数をμt、線エネルギー転移係数μe、線エネルギー吸収係数をμa、と記したとき、これらの係数が小さい順に並んでいるものは次のうちどれか。

1 μa < μt < μe

2 μt < μe < μa

3 μa < μe < μt

4 μe < μt < μa

5 μe < μa < μt

     

解答

① 線減弱係数・・・光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱される。その減弱の割合である。この減弱係数を密度で割ったものを質量減弱係数という。

② エネルギー転移係数・・・光電効果、コンプトン効果、電子対生成などにより、荷電粒子に与えられるエネルギーの割合
③ エネルギー吸収係数・・・エネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値 となる。
大小関係では 線エネルギー吸収係数 < 線エネルギー転移係数 < 線減弱係数 となり、解答は 3 となる。

問21

次の中性子と原子核の反応のうち、熱中性子の検出に使用できないものはどれか。

1 3He(n,p)

2 6Li(n,α)

3 1H(n,n’)

4 10B(n,α)

5 235U(n,f)

   

解答

熱中性子の検出に用いられる反応として、3He(n,p)3H、6Li(n,α)3H、10B(n,α)7Li がある。
また235U(n,f) の反応は核分裂反応であり、中性子放出反応であるため検出可能である。

よって解答は 3 となる。

問22

1.0 MeVのエネルギーに相当するものはどれか。

1 4.2 aJ

2 1.6 fJ

3 0.16 pJ

4 16 nJ

5 0.42 μJ

解答 1.0 [MeV] = 1.0 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) = 0.16 [pJ] となる。よって解答は 3 となる。

問23

次の単位記号のうち、物理的意味を持つものの組み合わせはどれか。

A C/kg

B Gy/kg

C Sv/kg

D Bq/kg

E J/kg

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答

A C/kg・・・照射線量の単位である。

B Gy/kg・・・=J/kg2 となり定義されたものがない。

C Sv/kg・・・=J/kg2 となり定義されたものがない。

D Bq/kg・・・比放射能の単位である。 E J/kg・・・吸収線量、カーマの単位である。

よって解答は 3 となる。

問24

液体シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A NaI(Tl)シンチレータに比べて発光の減衰時間が短い。

B 低エネルギーβ線放出核種の放射能測定に適している。

C 放射線のエネルギー情報が得られない。

D シンチレータ内での増幅作用が大きい。

E 速中性子の検出に用いられる。

  

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

  

解答

液体シンチレータは有機シンチレータなので、発光減衰時間はおよそ10(-8)s と非常に短い。液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定できるため、検出効率が非常に良い。また、放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定には極めて有効である。さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことから、その原子核の反跳により生じる陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)
C 放射線のエネルギー情報が得られない。・・・液体シンチレータはエネルギー吸収量に応じて発光するため、エネルギー情報を得られる。
D シンチレータ内での増幅作用が大きい。・・・増幅作用は光電子増倍管であり、液体シンチレータには装備されていない。

よって解答は 2 となる。

問25

放射線測定器に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 端窓型GM計数管はγ線、β線の検出に適している。

B 表面障壁型Si半導体検出器はβ線の検出に適している。

C NaI(Tl)シンチレータは中性子の検出に適している。

D BF3計数管はγ線の検出に適している。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答

表面障壁型Si半導体検出器は表面の不感層が極めて薄く、また原子番号が比較的小さく後方散乱が少ないため、β線の検出に利用できる。またα線スペクトル測定によく使われる。他にも似たような検出器があるため追加で覚えておくとよい。
Si(Li)検出器は低エネルギーX線を高分解能で測定できる。Li(Eu)検出器、BF3計数管は、熱中性子の測定に用いられる。
NaI(Tl)シンチレータはX線、γ線の検出に適している。

よって解答は 1 となる。

問26

NaI(Tl)検出器で1000Bqの 137Cs 線源(0.662 MeV のγ線放出比は0.85)を200秒測定したところ7000カウントであった。線源を取り除き100秒間測定したところ100カウントであった。この測定系の検出効率(%)として、正しいのは次のうちどれか。

1 3.7

2 4.0

3 4.2

4 4.5

5 5.0

解答

正味の計数率は(7000/200) – (100/100) = 34(/s)、毎秒放出されるγ線数は1000 × 0.85 = 850(/s) したがって検出効率は 34/850 = 0.04

4%となる。

よって解答は 2 となる。

問27

放射線防護のための量には、人体影響の評価に主眼をおいた防護量と測定主眼においた実用量とあるが、次の量のうち、実用量の組み合わせはどれか。

A 等価線量

B 実効線量

C 周辺線量当量

D 個人線量当量

E 方向性線量当量

   

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答

防護量・・・等価線量、実効線量

実用量・・・周辺線量当量、個人線量当量、方向性線量当量となる。
よって解答は 5 となる。

問28

次のうち、α線のエネルギー測定に適している検出器として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 表面障壁型Si半導体検出器

B Ge検出器

C BGO検出器

D ZnS(Ag)検出器

E グリッド付電離箱

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答

B Ge検出器・・・γ線(X線)の高分解能エネルギー測定に用いられる。

C BGO検出器・・・γ線(X線)の高検出効率測定に用いられる。
D ZnS(Ag)検出器・・・α線の検出に用いられるが、光の透過率が小さくエネルギー測定には普通用いられない。

よって解答は 2 となる。

問29

光子に対する個人被ばく線量測定に用いられる測定器として、正しいものの組み合わせはどれか。

A OSL線量計

B 蛍光ガラス線量計

C TLD

D 放射化箔検出器

E 固体飛跡検出器

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 1

A 正 OSL線量計

B 正 蛍光ガラス線量計

C 正 TLD

D 誤 放射化箔検出器・・・感度が低く、大線量の中性子測定に用いられる。

E 誤 固体飛跡検出器・・・中性子の個人被ばく線量測定に用いられる。

問30

次のうち、シンチレーション検出器に関係のあるものの組み合わせはどれか。

A POPOP

B 光電陰極

C スチルベン

D アクチベータ(活性炭)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCDのみ 4 ACDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 POPOP・・・POPOPは、PPO、ブチルPBD、DMPOPOPなどと同様、液体シンチレータの溶質として用いられる。

B 正 光電陰極・・・光電子増倍管の光を受ける電極である。

C 正 スチルベン・・・固体有機シンチレータの一種である。

D 正 アクチベータ(活性炭)・・・NaI(Tl)シンチレータに微量に添加されている Tl はアクチベータとして作用する。

 

年代測定

上空の大気中で宇宙船から生じた中性子が空気中窒素の 14N と反応して 14C が生成する。したがって宇宙船強度が変わらなければ地球大気中の 14C の量は一定となり、炭素 1g 当たり約 0.23 Bq となる。 その炭素同位体の 14C/(12C+13C) 原子数比の値は 1.2 × 10^(-12) である。

求め方 14C の原子数は 0.23 = (0.693/1.8 × 10^11) × N N = 6.0 × 10^10
12C + 13C の原子数は N = 1/12 × 6.0 × 10^23 = 5.0 × 10^22 よって14C/(12C + 13C) = (6.0 × 10^10)/(5.0 × 10^22) = 1.2 × 10^(-12) となる。

例えば 1 mg の炭素を含む試料を測定して 13C/(12C+13C)原子数比の値が 0.0107、14C/13C原子数比の値が 7.0 × 10^(-12) であったとすると、この試料の年代を求めよ。

求め方 14C/13C = 7.0 × 10^(-12) より 13C = 1/7 × 10^12 × 14C となる。よって13C/(12C+13C) = 1/7 × 10^12 × 14C × 1/(12C+13C) = 0.0107
14C/(12C+13C) = 0.0107 × 7.0 × 10^(-12) = 7.5 × 10^(-14) 現在の14C/(12C+13C) を前問から 1.2 × 10^(-12) ということが分かっている。現在の存在度に対する放射能比は [7.5 × 10^(-14)]/[1.2 × 10^(-12)] = 6.25 × 10^(-2) = 1/16 となる。4半減期経過していることとなるため、14C の半減期が 5700 年であるので、5700 × 4 = 22800 年前となる。

原子核壊変について

励起状態にある原子核がγ線を放出してエネルギーのより低い状態に変わることをγ遷移という。励起状態の原子核はα壊変やβ壊変などによって生成するものが多く、励起状態の寿命は一般に短い。例えば 60Co は 5.27 年の半減期でβ±壊変し、 99.93% が 60Ni の 2.506 MeV の励起準位をとるが、その励起準位の寿命は 10^(-12) 秒のオーダーで直ちにγ線を放出して次の 1.333 MeV の励起準位になる。この準位の寿命も同程度でγ線を放出して 60Ni の安定状態になる。一方励起状態の原子核がγ線を放出せずエネルギーを軌道電子に直接与えて、その軌道電子を放出する現象がある。この現象は内部転換と呼ばれ、放出された電子エネルギー分布は 線スペクトルである。内部転換の起こる確率は、原子番号のほぼ 3 乗に比例し、原子核から放出されるエネルギーが小さい ほど大きい。内部転換にあずかる電子はK軌道電子が約 80% である。遷移の際に電子が放出される確率 Ie とγ線が放出される確率 Iγ の比 α(=Ie/Iγ)を 内部転換係数といい、軌道電子の種類に応じてαk、αL・・・・のように表す。全内部転換係数をαT、並びに遷移の確率をP(=Ie+Iγ)とすると、γ線放出の確率Iγは、 Iγ = P/(1+αT)となる。静止している質量 M の原子核がγ遷移により E だけ低いエネルギーに遷移するとき、原子核自体は反映される。遷移のエネルギーEは一部は反跳に費やされてその分だけ放出γ線エネルギーは 低下するのでこのγ線を同じ原子核に当てても共鳴吸収は起こらない。遷移において放出されるγ線のエネルギーが Eγ であるとき光の速さを c とすれば、γ線の運動量は Eγ/c となる。一方、反跳原子核の運動エネルギーERは、 (Eγ)^2/(2 × M × c^2)となる。(反跳原子核の速度を v、質量を M、運動量を PR、とすれば、ER = 1/2 × M × v^2、PR = M × v。運動量保存則によりPγ = PR より、Eγ/c = M × v これより v = Eγ/(M × c)、 したがって ER = 1/2 × M × (Eγ/(M × c))^2 = (Eγ)^2/(2 × M × c^2)

運動エネルギー保存則より ER は E と Er の差であるから ER に (Eγ)^2/(2 × M × c^2) を代入して Eγ を E を用いて表すと E – [E^2/(2 × M × c^2)]となる。これより質量数 57 の原子核の 励起準位のエネルギーの差が E = 14.4 keV のとき、この差で起こるγ遷移に対する ER は 2.0 × 10^(-3) eV となる。

計算式 質量数 57 の原子核の質量は近似的に M ≒ 57u ≒ 5.3 × 10^4 MeV (1u を 930 MeV と近似) したかって ER = E^2/(2 × M × c^2) = (1.44 × 10^(-2))MeV/(2 × 5.3 × 10^4)MeV = 1.96 × 10^(-3) eV

先にも述べたように共鳴吸収が起こらない理由はγ線の放出時と同様に吸収時にも原子核の反跳にエネルギーが消費されるためであるが、原子核が強く束縛されている固体中では共鳴吸収が起こる例が見出されている。原子核が強く束縛されているために 実効的に原子核の質量が大きくなり、ER がほとんど 0 となる場合である。これをメスバウワー効果という。原子核の共鳴エネルギーは、原子の化学状態や磁場の有無などによってごくわずかに変化する。 メスバウワー分光法では、線源となる原子核を運動させドップラー効果を利用してγ線エネルギーを増感させ、共鳴エネルギーを測定できる。

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第1種放射線化学問題・解説集1

過去問と解説を日々更新していきたいと思います。まずおすすめの勉強方法

① まず物理、化学、生物の基本的な単語の定義は覚えておく必要がある。

② 過去問を解きまくる。過去問こそ最大の教科書である。直近の過去5年分は解かずに置いておき、模擬試験形式できちんと解けるように残しておく。

③ 解いた問題は自分のノートに書いてまとめると良い。問題を解いてノートにそれをまとめることで、間違えたとき見直しがしやすく、より覚えがよくなります。

④ 物・化・生の問題は最初解かずに過去5年以上の問題を全て写し、それを自分の教科書として覚える方が良い。

⑤ 管理・計測(実務)も同じことが言える。最初写すのはものすごく大変だが、参考書にも載っていないようなことが書かれているため勉強の効率は逆にいいと考える。

⑥ 法令に関しては私がまとめた資料を覚えていただくと7割の問題は解けると思 う。残りの3割は問題を解いていきながら徐々に覚えていく方が望ましい。また法令を覚えるの は試験の3~4ヵ月前でいいかと思います。やってないと忘れるため。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

問1

次のうち、単核種元素(安定同位体が1つの元素)のみの組み合わせはどれか。

A He, F, Na

B Al, P, Cl

C As, Y, Sn

D Sc, Mn, Co

E I, Cs, Au

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答

A He, F, Na・・・3He, 4He, 19F, 23Na Heの安定同位体が2つ存在する。
B Al, P, Cl・・・27Al, 31P, 35Cl, 37Cl Clの安定同位体が2つ存在する。

C As, Y, Sn・・・75As, 89Y, 112Sn, 114Sn, 115Sn,・・・とSnには安定同位体が多数存在する。
D Sc, Mn, Co・・・45Sc, 55Mn, 59Co それそれ安定同位体が1つである。

E I, Cs, Au・・・127I, 133Cs, 197Au それそれ安定同位体が1つである。

したがって解答は 4 となる。

詳しくは私が作ったまとめ表に載せていますので是非上記まで。

問2

次のうち、β-壊変する核種のみの組み合わせはどれか。

A 18F, 32P, 33P

B 45Ca, 51Cr, 60Co

C 57Co, 63Ni, 82Br

D 85Kr, 99Mo, 131I

E 137Cs, 147Pm, 192Ir

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答

私がまとめた表をしっかり覚えていただけたらと思います。
A 18F・・・β+壊変, 32P・・・β-壊変, 33P・・・β-壊変。

B 45Ca・・・β-壊変, 51Cr・・・EC壊変, 60Co・・・β-壊変。
C 57Co・・・EC壊変, 63Ni・・・β-壊変, 82Br・・・β-壊変。

D 85Kr・・・β-壊変, 99Mo・・・β-壊変, 131I・・・β-壊変
E 137Cs・・・β-壊変, 147Pm・・・β-壊変, 192Ir・・・β-壊変、EC壊変

したがって解答は 4 となる。

問3

次のうち、γ線を放出しない核種の組み合わせはどれか。

1 3H, 36Cl, 59Fe

2 14C, 35S, 38Cl

3 32P, 33P, 45Ca

4 7Be, 33P, 35S

5 38Cl, 59Fe, 63Ni

解答

私がまとめた表をしっかり覚えていただけたらと思います。
1 3H・・・β-壊変, 36Cl・・・β-壊変, 59Fe・・・β-壊変、γ線。

2 14C・・・β-壊変, 35S・・・β-壊変, 38Cl・・・β-壊変、γ線
3 32P・・・β-壊変, 33P・・・β-壊変, 45Ca・・・β-壊変。

4 7Be・・・EC、γ線, 33P・・・β-壊変, 35S・・・β-壊変
5 38Cl・・・β-壊変、γ線, 59Fe・・・β-壊変、γ線, 63Ni・・・β-壊変

したがって解答は 3 となる。

問4

アクチノイド元素とランタノイド元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A アクチノイド元素は、全てが放射性である。

B ランタノイド元素は全てが安定同位体である。

C ランタノイド元素、原子番号が増すと原子半径が小さくなる。

D アクチノイド元素は、3価の状態が最も安定である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

原子番号82の鉛Pb以上の元素は、総べて天然の放射性核種をもち、特に原子番号84のポロニウム以上の元素は安定核種がなく総べて放射性である。またランタノイド元素では、原子番号が増すと、原子半径、イオン半径が小さくなる。アクチノイド元素の中のアメリシウムAmより重い元素は、3価をとる場合がほとんどであるが、アメリシウムAmより軽い元素は3価と異なる原子価をとる。
したがって、解答は 2 となる。

問5

放射性元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A テクネチウムはTc、レニウムReの同族元素である。

B プロメチウムPmは、アクチノイド元素である。

C ラドンRn、ヘリウムHeの同族元素である。

D ラジウムRaは、ナトリウムの同族元素である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 これも周期表を覚えておかないと解けない問題である。周期表より解答は 2 となる。

問6

11Cが1TBq、14Cが1MBqある。100分後の11C/14C原子数の比として最も近い値は、次のうちどれか。
ただし、11Cと14Cn半減期は、それぞれ20分、3.0 × 10^9 分とする。

1 2 × 10^(-13)

2 2 × 10^(-8)

3 2 × 10^(-4)

4 2 × 10^(3)

5 2 × 10^(12)

解答

原子数 N の放射性核種の放射能 A とその壊変定数 λ と半減期 T の関係式は A= λN = (0.693/T)・N
ここから N = AT/0.693 となる。
ここで、11C、14Cの100分後の放射能を求めると、A(11C)100分後 = 1TBq × (1/2)^5 ≒ 3 × 10^10
14Cの半減期は3.0 × 10^9 分 と半減期が非常に長いので、放射能はほぼ変わらない。
したがって、11C/14C = (3 × 10^10 × 20分)/(1 × 10^6 × 3 × 10^9分 ) = 2 × 10^(-4)

したがって、解答は 3 となる。

問7

238U を40g 含む岩石中の222n の放射能(Bq)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、岩石中のウラン系列核種は永続平衡であり、U238の比放射能は1.2 × 10^4 (Bq/g)とする。

1 1.2 × 10^4

2 4.8 × 10^4

3 1.2 × 10^5

4 4.8 × 10^5

5 1.2 × 10^6

解答

永続平衡が成り立っているので N1λ1 = N2λ2 A1 = A2 の関係となる。
よって、A(222Rn) = A(238U) =1.2 × 10^4 × 40 = 4.8 × 10^5 Bq となる。

したがって、解答は 4 となる。

問8

半減期 T1 の親核種の壊変により半減期 T2 の娘核種が生成する。時間が十分に長く経過した後、(>10T2)、両核種の関係に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A T1>>T2 では、親核種と娘核種の壊変率が等しくなる。

B T1>T2 では、親核種と娘核種の壊変率の比がほぼ一定となる。

C T1>T2 では、親核種の壊変率は娘核種の壊変率より常に大きくなる。

D T1<T2 では、親核種と娘核種の原子数の比がほぼ一定となる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

過度平衡の場合 λ1 < λ2、すなわち、T1 > T2 → N2/N1 = λ1/(λ2-λ1)・・・①
①より、N2(λ2-λ1) = N1λ1 より N2λ2 = N1λ1 + N2λ1・・・②
ここで、A2/A1 = N2λ2/N1λ1に②を代入するとA2/A1 = (N1λ1 + N2λ1)/N1λ1 = 1 + N2λ1/N1λ1 > 1 となることがわかる。
永続平衡の場合 λ1<<λ2、すなわち、T1>>T2 → N1λ1 = 1 よってA2 = A1
A T1>>T2 では、親核種と娘核種の壊変率が等しくなる。・・・永続平衡が成り立つので壊変率は等しくなる。

B T1>T2 では、親核種と娘核種の壊変率の比がほぼ一定となる。・・・過度平衡が成り立ちA2/A1 = 1 + N2λ1/N1λ1 と一定となる。

C T1>T2 では、親核種の壊変率は娘核種の壊変率より常に大きくなる。・・・A2 = 1 + (N2λ1/N1λ1) × A1となり
親核種の壊変率は娘核種の壊変率より常に小さくなる。

D T1<T2 では、親核種と娘核種の原子数の比がほぼ一定となる。・・・T1<T2 では放射平衡は成り立たない。

したがって、解答は 1 となる。

問9

次の核反応のうち、18Fを生じるものの組み合わせはどれか。

A 16O(3He,n)

B 18O(p,n)

C 14N(α,n)

D 20Ne(d,α)

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 これは原子番号と放出核種を覚えて、計算すれば解ける問題である。

したがって、解答は 4 となる。

問10

コバルト1 mg (原子数は1.0 × 10^19個)を原子炉で24時間照射した。照射終了直後の60Coの放射能は3.7 MBq であった。
熱中性子フルエンス率(/cm・s)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし60Coの半減期は5.3年、熱中性子放射化断面積は37バーンとする。

1 5.4 × 10^9

2 1.0 × 10^10

3 3.7 × 10^11

4 1.0 × 10^13

5 2.7 × 10^13

解答

t時間照射して照射終了後得られる半減期T、壊変定数λの生成核の放射能Aは、熱中性子フルエンス率fと放射化断面積σを用いて表わすと、次のような式となる。A = Nfσ[1 – (e^(-ln2・t/T) )] ここでt/T = 1日/19000日 << 1となるため、e^(-ln2・t/T) ≒ 1 – 0.693t/T となり、f = (A/σN) × T/0.693t ≒ 2.7 × 10^13(/cm・s) となる。

したがって解答は 5 となる。

問11

地球上の14Cは、主として宇宙線起源の中性子による14N(n,p)14C反応により生成する。地球全体での生成量を年8kg(1.3 × 10^15 Bq/年)とすると、地球上に存在する宇宙線起源の14Cの質量(kg)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし14Cの半減期は5730年とする。

1 1.1 × 10^4

2 3.2 × 10^4

3 4.6 × 10^4

4 6.6 × 10^4

5 1.1 × 10^5

解答

使う公式としてはAn = A × [1 – (1/2)^(n/T)/(0.693/T)] を用いる。
ここで、14Cの半減期が5730年、nは地球の形成年代程度で非常に大きいので(1/2)^(n/5730) = 0 と考えられるので、
An = 1.3 × 10^15Bq × [1 – 0]/(0.693/5730) =1.07 × 10^19 Bq である。地球上に存在する宇宙線起源の14Cの質量をMとすると、1.3 × 10^15/8 = 1.07 × 10^19/M M = 6.6 × 10^4kg

したがって、解答は 4 となる。

問12

原子炉での中性子照射により、無担体の放射性同位体として製造されるものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 3H

B 11C

C 32P

D 35S

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

RIがその安定同位体を含まないで存在している状態のことを無担体であるという。
生成核の原子番号が核反応によって変わらない場合、生成した核種は常に非放射性のターゲットによってうすめられるため、無担体のRIを製造できない。原子炉は主に(n,γ)反応しか利用できないので、本質的には、無担体RIを作ることは無理である。しかし、ターゲットと異なる原子番号のRIが生成する核反応であれば、化学的に目的のRIを分離できるので、無担体のRIが製造できる。
A 3H・・・3He(n,p)3H 軽元素のターゲットである3Heに対しては、熱中性子(0.025eV)のような低エネルギー中性子でも核反応は起こる。
B 11C・・・11B(p,n)11C、14N(p,α)11C という陽子によって起こるため、中性子照射によらない。
C 32P・・・33S(n,p)32P、D 35S・・・35Cl(n,p)35S とともに(n,p)型の核反応であり、広い範囲の原子番号のターゲットに対し、0.1MeVから数MeV程度のエネルギーの中性子によって起こる。

したがって、解答は 3 となる。

 

問13

次のうち、中性子源として用いられる組み合わせはどれか。

A 60Co - 9Be

B 90Sr ー 9Be

C 137Cs ー 9Be

D 226Ra ー 9Be

E 241Am ー 9Be

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答

中性子源は核反応により中性子を放出する核種または自発核分裂により中性子を放出する核種が用いられる。9Be(α,n)12C 反応を用い、α線源として241Am,226Ra を用いるのが代表的である。

したがって、解答は 5 となる。

問14

210Poに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 210Po は S の同族元素である。

B ウラン系列の核種である。

C 210Bi の娘核種である。

D α壊変して 206Pb となる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

これは全て正しい。この問題も周期表を覚えておかないと解けない問題である。

解答は 5 となる。

問15

232Th 900gの放射能(MBq)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし232Th の半減期は1.4 × 10^10 年(4.4 × 10^17 秒)
アボガドロ定数6.0 × 10^23 /molとする。

1 0.037

2 0.53

3 3.7

4 53

5 370

解答

質量Wグラム、原子量Nと質量数Mの放射性核種の放射能Aとその壊変定数λと半減期Tの関係式は
A = Nλ = (ln2/T) × (W/M×6.0 × 10^23) となり、代入して計算するとA(232Th) ≒ 3.7 MBq

解答は 3 となる。

問16

次の放射線試料と検出器の組み合わせのうち、試料の測定に適したものはどれか。

A 32Pが付着したろ紙 ー GM計数管

B 3H標識化合物を含む水溶液 ー 液体シンチレーション検出器

C 99mTcで標識された化合物を含む溶液 ー 井戸型NaI(Tl)シンチレーション検出器

D 60Coを含むステンレス板 ー Ge検出器

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

32Pは高エネルギーのβ線放出核種である。端窓型GM計数管では低エネルギーは通過できないが、高エネルギーβ線は通過可能なので測定できる。3Hや14Cは低エネルギーβ線を放出し、液体シンチレーションはこうした低エネルギーβ線を高感度で測定可能である。
99mTcは0.141MeVのγ線を放出し、MaI(Tl)シンチレーション検出器はγ線の測定に用いられる代表的な検出器である。また、60Coの放出核種はβ-線及び1.173MeVと1.333MeVの2本のγ線を放出する。Ge検出器は主にγ線の検出に用いられるため、.173MeVと1.333MeVの2本のγ線が
検出可能である。

したがって、解答は 5 となる。

問17

放射性気体に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A ウラン鉱石を酸に溶解すると放射性気体が発生する。

B 14Cで標識された炭酸カルシウム粉末に水酸化カルシウム水溶液を滴下すると、放射性気体が発生する。

C 熱中性子に照射された空気には、放射化されたアルゴンが含まれる。

D 125I-のアルカリ性水溶液に酸を加えていくと、放射性気体が発生する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

A ウラン鉱石に酸を溶解すると、220Rnが散逸する。
B CaCO3 + 2HCl → CaCO3 + H2O + CO2↑ このように塩酸を加えると[14C]O2を含む二酸化炭素が発生する。
C 熱中性の照射により、空気中に主として空気を構成している窒素、酸素、アルゴンが放射化されて12N,16N,14C,41Arが放射化生成物となる。
D 125I-のアルカリ性水溶液に酸を加えることで、揮発しやすい放射性の125I2が発生する。

したがって、解答は 3 となる。

問18

溶媒抽出法に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 125I-をI2と同位体交換させて有機溶媒に抽出する。

B 65Zn2+をジチゾン錯体として有機溶媒に抽出する。

C 59Fe3+をクロロ錯体としてイソプロピルエーテルに抽出する。

D 137Cs+をクエン酸錯体として有機溶媒に抽出する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

A ヨウ化物イオン125I-を含む溶液を、ヨウ素単体I2を含む四塩化炭素溶液と振り混ぜると、125I-とI2が同位体交換して、四塩化炭素溶液に移るため、抽出可能である。
B ジチゾンは多数の金属と安定な錯体を生成する。その錯体の有機溶媒への抽出率はpH依存性がある。また、マスキング剤を用いることで目的金属を抽出することが可能となり、Bも正しい。
C Fe3+を含む7.7Mから8M塩酸溶液を分液漏斗に入れ、同容量のジイソプロピルエーテルを加えて溶媒抽出すると、Fe3+は塩酸溶液中でクロロ錯体HFecL4を作り、イオン会合して100%近くジイソプロピルエーテルに抽出されるため、Cも正しい
D Csはアルカリ金属に属しており、クエン酸等のオキソカルボン酸と錯体を形成する。しかし、アルカリ金属のクエン酸錯体は水に可溶性であり、有機溶媒には抽出されない。

したがって、解答は 1 となる。

問19

蒸留による分離法に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 35SをH2Sとして蒸留することができる。

B 36ClをHClとして蒸留することができる。

C 74AsをAsH3として蒸留することができる。

D 83BrをBr2として蒸留することができる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

蒸留法とは色々な成分が混じっている溶液を加熱するとき、出てくる蒸気の組成は、元の溶液の組成とは異なり揮発成分が多く含まれる。この現象を利用して液体混合物から各成分を分離する操作をいう。

表の一覧を示す。表より解答は 5 となる。

元素 蒸留する化合物 操作条件
As AsH3,AsCl3,AsBr3 発生期のH2で還元(AsH3),HCl+H2SO4,HBr+H2SO4
B B(OCH3) H2SO4+CH3OHで加熱
Br Br2 K2CrO4+H2SO4で加熱
Cr CrO2Cl4 HCl+HClO4で加熱
F H2SiF4 SiO2+H2SO4で加熱
Ge GeCl4 HCl+HNO3+HClO4で加熱
HG Hg,HgCl2 還元加熱でHg,HCl+H2SO4で加熱
S H2S,SO2 硫化物+HClで加熱(H2S),燃焼でSO2
Sb SbCl3,SbBr3 HCl+H3PO4,HBr+H2SO4で加熱
Si SiF4 HF+H2SO4で加熱
Se SeBr4,SeO2 HBr+H2SO4で加熱,HNO3+H2SO4で加熱
Sn SnCl4,SnBr4 HCl+HClO4で加熱,HBr+HClO4で加熱

 

問20

トレーサーの沈殿分離に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 110mAgを塩化物として分離できる。

B 203Hgを硫化物として分離できる。

C 133Baを硫酸塩として分離できる。

D 60Coを炭酸塩として分離できる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

下に示す表を覚えると解きやすくなる。したがって、解答は 1 となる。

a NO3-を含む金属イオンに少量のHClを加える・・・塩化物(Ag+,Pb+,Hg+)と①ろ液に分離される。

b ①ろ液に0.3mol/lのHCl溶液H2Sを通す・・・硫化物(Cu+,Cd+,Bi+,As3+,As5+,Sb3+,Sb5+,Sn2+,Sn4+,Hg2+)と②ろ液に分離される。

c ②ろ液を沸騰させ、H2Sを追い出し、NH4ClとBr2水を加えNH3水を加える・・・水酸化(Al3+,Cl3+,Fe3+)と③ろ液に分離される。

d ③ろ液に(NH4)2SまたはNH3アルカリ水溶液にH2Sを通す・・・硫化物(Ni2+,Co2+,Mn2+,Zn2+)と④ろ液に分離される。

e ④ろ液に(NH4)CO3溶液を加える(NH4Cl存在下で)・・・炭酸塩(Ra2+,Ba2+[クロム塩酸で沈殿],Sr2+[炭酸塩で沈殿],Cu2+)と
ろ液(Na+,K+,Rb+,Cs+)に分離される。

問21

放射化学分離に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 64Cu2+と65Zn2+を含む酸性水溶液に鉄片を入れると65Znが析出する。

B ヨウ化エチルを中性子照射して生成する128Iの一部は水相に抽出分離される。

C 沈殿分離では、生成する塩の溶解度積が小さい反応が選ばれる。

D ラジオコロイドは、イオン交換樹脂で分離する。

E 水溶液中のリン酸イオン及び硫酸イオンは、水酸化鉄(III)に共沈する。

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答

A イオン化傾向を覚えておく必要がある。イオン化傾向が大きいと水溶液中に留まるということになる。K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au となり、Feを入れた時に析出するのはCuである。
B ヨウ化エチルを中性子照射して還元剤を含む水と振とうさせると、生成した128Iが水相に抽出される。よって正しい
C 沈殿分離では、生成する塩の溶解度積が小さい反応を選ぶ・・これは覚えた方が良い。よって正しい
D ラジオコロイドはコロイドなのでイオンとしての挙動は示さず、イオン交換樹脂には吸着しない。しかし、カラム法の時には、ラジオコロイドがカラム先端に沈着することがある。よって今回は誤りとなる。
E リン酸イオンはほとんど完全に共沈するが、硫酸イオンはほとんど共沈しない。よって誤りとなる。

したがって、解答は 2 となる。

問22

33Pで標識されたある化合物の試料を検定した。この化合物として標識されている33Pは772kBqであり、その他に32Pで標識された同じ化合物が16kBq、他の化学形の33Pが12kBq含まれていた。この試料の検定時の核種純度(%)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 96.5

2 97.0

3 97.5

4 98.0

5 98.5

解答

放射性核種純度とは、化学系とは関係なく着目する放射性核種が、全物質に占める割合をいう。
ここでは、着目する核種は33Pであることから(核種純度) = (全ての化学形の33P放射能)/試料の全放射能 × 100 = (772+12)/(772+16+12) × 100 = 98%
したがって、解答は 4 となる。

問23

比放射能80Bq/mgの[14C]ベンゼンをニトロ化して得られる[14C]ニトロベンゼンの比放射能(Bq/mg)として最も近い値は、次のうちどれか。
ただし、ベンゼン及びニトロベンゼンの分子量をそれぞれ78及び123とする。

1 39

2 51

3 67

4 80

5 126

解答 比放射能とは放射性核種の属する元素の単位質量当たりの放射能である。ここで[14C]ベンゼンとニトロ化して得られた[14C]ニトロベンゼンの放射能は等しくなるはずである。[14C]ベンゼン質量を m ミリグラムとすると[14C]ニトロベンゼンの求める比放射能Aは次のように計算される。 80 × m = A・m × (123/78) = 80 × (78/123) = 50.7

したがって、解答は 2 となる。

問24

放射性同位元素の化学的挙動に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 90Srを含む水溶液が弱アルカリ性となった場合に、ろ紙でろ過するとろ紙には娘核種の90Yが吸着する。

B 140Baを含む水溶液が弱アルカリ性となった場合に、ろ紙でろ過するとろ紙には娘核種の140Laが吸着する。

C 無担体の58Co(II)を含む水溶液に塩化鉄(III)の水溶液を加えて、アルカリ性にすると、ほとんどの58Co(II)が水酸化鉄(III)と共沈する。

D 無担体の24Naを含む水溶液に塩化鉄(III)の水溶液を加えて、アルカリ性にすると、ほとんどの24Naが水酸化鉄(III)と共沈する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

A,B共に共沈法による分離であり、覚えておく必要がある。
90Srは1ヵ月以上放置すると、その娘核種の90Yと永続平衡が成立し、90Srと90Yが共存する。この90Yは無担体なので、目に見えず秤量もできない。
そこでアンモニア水を加えて弱アルカリ性にすると90Yはろ紙上に残る。140Baも同様である。
D のNaは、水酸化鉄(III)と共沈はしない。

したがって、解答は 1 となる。

問25

ラジオイムノアッセイ法に関する次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 同位体希釈法の一種である。

B 抗原抗体反応を利用する定量法である。

C 標識核種として123Iが用いられる。

D 簡単な分離操作と放射能測定によって定量できる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

ラジオイムノアッセイ法とは、放射免疫測定法のことであり、放射性同位体をトレーサーとして利用し、in vitro(試験管内の)検査により生体中の特定物質の量または動態を求める方法である。
A 同位体希釈分析法とは放射性同位体を用いた化学分析法の一つである。化学的性質がよく似ていて完全に分離できないもの、例えば希土類元素、アミノ酸、抗生物質、ステロイド等が定量できる。したがって正しい。
B 抗原抗体反応とは、放射性同位体で標識した抗原と測定しようとする抗体とが、抗体と競合して結合することを利用し、結合した物質の放射能を測定すて微量物質の量を求める。したがって正しい。
C 標識核種として用いられる核種は125Iである。
D ラジオイムノアッセイ法は簡単な分離操作と放射能測定によって定量できるので正しい。

したがって、解答は 2 となる。

問26

化合物 x gを定量するために同一の化学形の標識化合物 y g(比放射能S1)を加えた。これから、同化合物 z gを分離して比放射能を測定
するとS2であった。xを与える式として正しいものは次のうちどれか。

1 [(S1/S2)-1]・y

2 [(S2/S1)-1]・y

3 [(S1/S2)-1]・z

4 [(S2/S1)-1]・z

5 [(S1/S2)-1]・(y-z)

解答

混合前のラベル付き化合物の全放射能と混合後の全放射能は混合前後で等しいので
S1・y = S2・(x + y) x =[(S1 – S2)・y]/S2 よって x = [(S1/S2)-1]・y

したがって、解答は 1 となる。

問27

医療分野で利用される放射性核種に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 99mTcの製造には、加速器が必要である。

B 125Iは、ミルキングで製造される。

C 123Iは、シングルフォトン放射断層撮影(SPECT)で用いられる。

D 18Fは、陽電子放射断層撮影法(PET)で用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答

A 99mTcは99mMoの娘核種で核異性体転移(IT)によって生じる。99MoはMoO4(2-)の形でアルミナカラムに吸着させ1日位放置すると娘核種の99mTcと過度平衡が成立し、生理食塩水で溶出すると99mTc4-が得られるため誤りとなる。
B ミルキングのジェネレータとしては、90Sr-90Y, 99Mo-99mTc, 113Sn-113mIn なのでこれも誤りとなる。
C SPECT撮影では123Iは脳血流、甲状腺機能、心機能・血流の検査に用いられるためこれは正しい。
D PET検査では18Fは心臓や脳といった機能をみる検査に用いられるためこれも正しい。
したがって、解答は 5 となる。

問28

次の記述のうち、正しい組み合わせはどれか。

A 物質に吸収された放射線のエネルギー100eV当たりに変化する原子、分子またはイオンの数をG値という。

B 気体が放射線により電離される時、1組のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値という。

C 水の放射線分解で生成する水和電子は酸化力を示す。

D 高分子に放射線を照射すると、架橋反応や分解反応が起きる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答

A、Bは定義なので覚えておく必要がある。
C の水和電子とは水中に生成した自由電子が、水分子の双極子の作用によって一時的に水分子に束縛されたもの。電荷は-1、多くの物質と
反応して強力な還元性を示す。表に水の放射線分解で生成する化学種の水溶液中での性質を示す。

水和電子 還元性
Hラジカル 還元性
H2 還元性
OHラジカル 酸化性
H2O2 酸化性

高分子に対する放射線の作用は大別して架橋反応と分解反応がある。

したがって、解答は 2 となる。

問29

硫酸セリウム(Ⅳ)の硫酸酸性溶液10gに60Coからのγ線を1時間照射したところ、1.0 × 10^(-5)のセリウム(Ⅲ)が生成した。
この反応のG値を2.5とした時の吸収線量(Gy)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、セリウムの原子量は140とする。

1 1

2 3

3 14

4 27

5 55

解答

生成したCe(Ⅲ)の原子数Nは、溶液1 gあたり N = (1.0 × 10^(-5)/10・140)× 6×10^23 となる。
G値が2.5とは100eVのエネルギー吸収によって2.5個のCe(Ⅲ)を生成するので、N個のCe(Ⅲ)が吸収する線量Dは D = (N/2.5)×100 = 0.0274(J/g)
Gyにすると27.4Gyとなる。

したがって、解答は 4 となる。

問30

64Cuの壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線スペクトルに511keVのピークがみられる。

B 64Znを生成する部分半減期は、64Niを生成する部分半減期より長い。

C EC壊変に伴い、Cuの特性X線が放出される。

D 発生する陽電子の運動エネルギーhが単一である。

E 1346keVのγ線はEC壊変に続いて発生する。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答

A 正 64Cuはβ+壊変して64Niになる。その際に放出される陽電子は、通常の電子の反物質であるため、運動エネルギーを失って停止すると、物質中の電子と結合して消滅する。その際に消滅放射線と呼ばれる511keVのγ線2本を180°反対方向に放出する。これがγ線スペクトルに現れる。
B 正 放射性核種の中には、2種類以上の壊変を行うものがある。64Cuの壊変もその一つであり、このように枝分かれする壊変を分岐壊変とよび、その割合を分岐比という。分岐した壊変について、それぞれの壊変式が成り立つので、i番目の壊変に着目すると次のように表せる。
dN/dt = -λiN、(T1/2)i = ln2/λi このように定義した半減期を部分半減期という。ここで、この親核種に注目すると、その壊変定数λは次のように表される。
λ = λ1 + λ2 + ・・・λi + ・・・λn この間では、64Cuの壊変定数をλとすると、λ = λ(EC) + λ(β+) + λ(EC) + λ(β-) となり、λ(64Ni) = λ(EC) + λ(β+) + λ(EC) = 0.005λ + 0.174λ + 0.431λ = 0.61λ λ(64Zn) = λ(β-) 0.39λ
それぞれの半減期はT(64Ni) = ln2/0.61λとT(64Zn) = ln/0.39λとなる。したがって、64Znを生成する部分半減期は64Niより長くなる。
C 誤 β壊変では原子核内の陽子が中性子に壊変するとき、陽子が軌道電子を捕獲して中性子に壊変する場合がある。これを電子捕獲あるいはEC壊変という。このときに特性X線あるいはオージエ電子が発生する。ここでの特性X線はNiによるものである。
D 誤 β壊変では壊変のエネルギーが娘原子とβ線とニュートリノの3本に分配されるので、放出されるβ線とニュートリノの角度によりそのエネルギーは異なり、連続分布を示す。
E 正 EC壊変により励起状態になって娘核がγ線を放出し、基底状態に転移する。エネルギーの高い準位と」低い準位のエネルギーをそれぞれEi,Ejとするとγ線のエネルギーEγ = Ei – Ejで与えられる。

したがって解答は 2

 

イオン交換樹脂

イオン交換樹脂はイオン交換基をもつ高分子であり、水溶液中のイオンと樹脂自身に吸着しているイオンを交換する。イオン交換樹脂が水溶液中のイオンを吸着する強さがイオンによって異なり、この性質を利用してイオンを分離することができる。例えばスチレンー ジビニルベンゼン共重合体を高分子骨格とし、 -S03H 基をイオン交換部位として持つ強酸性陽イオン交換樹脂では +1 価イオンの樹脂への吸着強度は Li+ < Na+ < K+ < Rb+ であり 水和イオン半径が小さいものほど強い。(水和イオン半径は原子番号が大きいほど小さくなる)。また価数が異なるイオンに対しては一般に +1価 < +2価 < +3価 という傾向がある。 イオン交換樹脂に吸着しているイオンと水溶液中のイオンは吸着平衡になる。陽イオン交換樹脂に吸着している A+ イオンの濃度を [A]r 、水溶液中の A+ イオンの濃度を [A]a 、B+ イオンについても同様に行うと、Kr = ([B]r/[B]a)/([A]r/[A]a) という 平衡定数となる。Kr > 1 の時には B+ イオンの方が A+ イオンより強く吸着する。イオン交換樹脂の吸着平衡は、溶液と樹脂吸着のイオンの濃度比を決定し、濃度には依存しないので、無担体の放射性同位体の分離に適している。 一方、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて塩化物イオンとの錯形成能の違いを利用して分離することができる。強塩基性陰イオン交換樹脂カラムに Fe3+,Co2+,Ni2+ を含む 9 mol/l 塩酸溶液を 1ml ,その後 9 mol/l , 4 mol/l , 0.5 mol/l の濃度の塩酸を 順次 12 ml ずつ流して各イオンを分離すると上図のようになった。塩化物イオンとの錯体形成能の強さは Fe3+ > Co2+ > Ni2+ の順であり、a , b , c のピークは左から Ni2+ , Co2+ , Fe3+ である。

放射化学分離について

短半減期の放射性核種の分離では操作時間の短縮が求められる場合がある。例えば、半減期 25 分の 128I の分離について考える。分離法1 では化学収率が 80% で 50 分を要する。これに対して分離法2 の化学収率が 40% とする。分離法2 の所要時間が 25 分だとすると化学分離後の放射能は分離法1 と等しくなる。(半減期 25 分の 128I では、50 分の経過で放射能は 1/4 となる。分離法1 では収率が 80% であるので、化学分離後の 放射能は当初の放射能の 0.25 × 0.8 = 0.2 となる。分離法2 の所要時間を半減期の x 倍とおくと分離法2 では収率が 40% であるから (1/2)^x × 0.4 = 0.2 x = 1 となり、半減期 25 分であるので 25 となる。)放射化学分離では、放射性核種の 化学的状態を変化させて別の相とし、相分離で目的成分を得ることがしばしば行われる。沈殿分離法がその典型である。この場合、目的核種と沈殿を形成する試薬を添加することで水に難容な個体沈殿を形成し、これにろ過や遠心分離 などで固体と液体に分離して放射性核種を回収する。沈殿分離法と類似した方法に共沈分離法がある。沈殿生成に伴って溶液中の放射性核種を沈殿に取り込み、水溶液から分離する。鉛、スズ及びアンチモンの放射性核種を塩酸酸性溶液から同時に共沈する CuS がある。また (32PO4)3- と (35SO4)2- の共存する水溶液から (32PO4)2- のみが共沈する Fe(OH)3 も知られている。




体内・体外計測

過去問と解説を日々更新していきたいと思います。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

体外・体内計測法

放射性核種による人の汚染は、身体内部に取り込まれた汚染と体表面汚染に分類される。身体内部に取り込まれた放射性核種を測定・評価する方法として① 体外計測法② 排泄物等に含まれている放射性核種から評価するバイオアッセイ法、③ 空気中や水中の放射性物質の濃度と呼吸・摂取量から評価する方法がある。 一般にγ線放出核種の測定には体外計測法が用いられ、α線放出核種ではバイオアッセイ法が用いられる。

体外計測法

体外計測法としては、ホールボディカウンタや肺モニタなどがある。ホールボディカウンタには極微量の放射能を精度よく測ることを目的とした精密型ホールボディカウンタと、体内汚染の簡単な検出を主な目的とした簡易型ホールボディカウンタとがある。精密型ホールボディカウンタは一般に遮蔽室と検出器からなり、検出器としては近年はGe検出器が利用されるようになっている。Ge検出器 は優れたエネルギー分解能により放射性核種の同定が容易であるという利点がある反面、冷却が必要である。簡易型ホールボディカウンタは簡易な遮蔽を施した椅子あるいは寝台と、検出器として一般に鉛遮蔽付NaI(Tl)シンチレーション検出器を使用した装置で、原子力発電所などで使われている。肺モニタは主に 体内に残留した239Puから放出されるX線や241Amから放出されるγ線を体外から測定するための装置である。なお、肺モニタで主に測定される放射線のエネルギーの比較としては、239Puから放出されるX線のエネルギーは241Amから放出される γ線のエネルギーに比べて低い。

体外計測法やバイオアッセイにより、体内に残留している放射能量や排泄物等の放射能量を測定すれば内部汚染に伴う被ばく線量を評価することができる。評価にあたっては、測定された放射能量から放射性核種を摂取した時点での体内量を推定する必要がある。体外計測法の場合は測定値を放射線検出器の計数効率で除して、測定時における体内放射能量を推定する。摂取量は摂取量 = 体内放射能量 ÷ 残留率 により推定する。バイオアッセイ法では、主に尿や便などに含まれる放射能量から1日当たりの排泄量を評価し、摂取量は、摂取量 = 1日当たりの排泄量 ÷ 排泄率により推定する。通常内部被ばくによる預託実効線量は、摂取量に線量係数(mSV/Bq)を乗じて評価される。

空気中の放射能測定のための試料採取では、放射性物質の化学形、性状、濃度に応じて、様々な捕集方法が適用されている。例えば、133Xeのような放射性希ガスの直接補修ではガス捕集用電離箱がしばしば用いられる。水蒸気として存在する 3H の捕集では、直接捕集の他に、シリカゲルによる固体捕集、水バブラーによる 液体捕集、コールドトラップによる冷却凝縮捕集も利用される。また、同様に気体として存在する 131I の固体捕集では活性炭カートリッジがより有効である。これに対して 60Co などのラジオアイソトープ(RI)が浮遊粒子として存在する場合にはダストサンプルを用いて試料を採取することができる。 このように捕集されたRIを定量した上で、一般に捕集されたRIを定量した上で、一般に捕集装置への吸引平均流量、捕集効率及び捕集時間の値からRIの空気中濃度を算出する。空気中に放射性物質が存在する場合には、吸入による内部被ばくが問題となる。内部被ばくの影響を考える場合には壊変様式や線質などの物理的性質を知っておく必要がある。133Xe、131I、 3H、60Coは全てβ-壊変するが、 3H 以外はγ線も放出する。また、化学的性質も重要である。特に 131I は実験環境中で多様な化学形をとりえるので、取り扱いに注意を要する。I2 は特に揮発しやすい化学形である。飛散を防ぐために、水溶液系では酸性となることを避けるなどの工夫が行われる。なお、壊変によって 1% の 131I は放射性の 131mXe となるので、これの挙動にも注意を要する。空気中に存在する放射性物質を吸入してそれらによる被ばくが問題となる場合には、吸入した放射性物質を除去するための処置を速やかに行うことを考慮する。133Xe の体内からの除去には清浄な空気での呼吸が有効である。131I を吸入した場合の体内汚染の除去には吸入後速やかに ヨウ化カリウムを投与することである。水蒸気として存在する 3H を吸入した場合の体内汚染の除去には飲水を行い、利尿剤を投与することが有効である。粒子として浮遊している 60Co を吸入した場合の体内汚染の除去にはD – ペニシラミンを投与することが有効である。物理的性状により臓器親和性が決まるものとして コロイドがあげられる。コロイド状の鉄や金が細網内皮系細胞に取り込まれることが知られている。

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