第1種放射線取扱主任者実務 個人線量管理 

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個人線量計について

個人線量測定に用いる線量計には、受動型線量計と能動型線量計があり、いずれも体表面に密着させて測定できるように工夫されている。受動型線量計では、一定期間を経て検出素子に蓄積された線量情報を読み取り、積算線量を測定する。かつてはフィルムバッチが主流であったが近年は発光現象に基づいた線量計に代わっている。蛍光ガラス線量計ではγ線照射により形成された蛍光中心をパルス 紫外線で励起することで生じる発光を利用している。同様に発光現象に基づくが、光刺激による発光(輝尽発光)を利用するOSL線量計がある。その他に原理的に空気の電離量に基づくが低い線量まで使用できるDIS線量計がある。能動型線量計にはシリコン半導体検出器を用いた電子式線量計が多く、測定中においても積算線量や線量率を読み取ることができ 警報付線量計としても使用できる。

外部被ばく個人モニタリング

外部被ばくの個人モニタリンぎは、身体に着用した個人線量計を用いて行われ、その実用量である個人線量当量は、人体上の指定された点の適切な深さ d における線量当量である。ICRP 2007年勧告では実効線量の評価には深さ d = 10 mm、皮膚及び手足の等価線量の評価 には深さ d = 0.07 mmが勧告された。眼の水晶体の等価線量については、評価が必要な特別な場合には深さ d = 3 mmが適切と提案しながらも、測定機器が非常に少なく実際上ほとんど使用されておらず、他の実用量を用いてモニタリングの目的である線量限度の担保を達成できるとしていた。しかし、ICRP Pub1 118(2012)に掲載された組織反応に関する ICRP生命において、眼の水晶体の職業被ばくの等価線量限度を ICRP 2007年勧告で用いられていた1年間につき 150 mSv から5年間の年間平均で年 20 mSv(年最大50mSv)へ変更する勧告がなされ他の実用量で線質限度を担保することが難しくなった。そのため国際的に深さ d = 3 mmにおける線量当量の測定 手法や機器の検討が進められている。外部被ばくの治療としては、全身被ばく線量が概ね 3 Gy 以上では感染症対策として無菌室での治療、抗生剤・造血サイトカインの投与、成分輸血などが行われる。8 Gy 以上の線量では、造血幹細胞移植を考慮する。造血幹細胞移植には骨髄移植、抹消血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植の3種類がある。 骨髄移植はドナーから骨髄を採取し移植に用いるものである。末梢血幹細胞移植は G-CSF を 4 ~ 6日間連日投与した上で末梢血から造血幹細胞を採取し移植に用いるものである。臍帯血幹細胞移植は臍帯血幹細胞に含まれる幹細胞を移植に用いるものである。 臍帯血幹細胞移植は他の移植法に比べ移植片対宿主病(GVHD)が起こりにくい利点があり、6個のヒト白血球抗原(HLA)のうち2個が不適合であっても移植が可能であり、しかも移植までの時間が短くてすむことから、外部被ばくでも造血幹細胞移植には最も利用しやすい。

内部被ばくの線量評価

内部被ばくの線量評価は、体表面汚染の程度と部位、鼻スミアなどを参考として、ホールボディカウンタ(WBC)などの体外計測法や尿や便を採取して行うバイオアッセイ法によって行う。尿や便の採取は1日に排泄された全量を 3 ~ 7 日間程度採取し計測に用いる。外部被ばくの有無や被ばく線量を初期に判断するためには、臨床症状、抹消血中のリンパ球、好中球、 アミラーゼ、末梢血、リンパ球中の染色体異常(主に二動原体染色体)などから総合的に判断する。嘔吐は 1 Gy 以上の被ばくで2時間以内に生じ、線量が高くなるほど発現頻度は高くなり、被ばくから発症までの時間は短くなる。リンパ球数は24時間以内に線量依存的に減少し好中球数は24時間以内に 線量依存的に増加する。アミラーゼは唾液腺が被ばくした場合における唾液腺からの逸脱酵素で唾液腺被ばくにより24時間以内に線量依存的に増加する。内部汚染の治療では、一般に経口摂取の場合には胃洗浄、催吐剤、緩下材の投与を行い、吸収摂取の場合には去痰剤や喀痰への排出を促進するための薬剤の吸入を行う。セシウムによる内部汚染の治療ではプルシアンブルーが経口薬として用いられる。 プルシアンブルーは放射性タリウムによる内部汚染の治療にも用いる。プルトニウムやアメリシウムなどの除去にはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が用いられる。プルトニウムやアメリシウムの体内汚染が吸入によって起こった場合にはネブライザーを用いてジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を吸入投与することもある。



第1種放射線取扱主任者実務 放射線防護・管理について

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放射線防護について

ICRP 2007年 勧告では、放射線防護にあたって個人の被ばく状況を計画被ばく状況、緊急被ばく状況、現存被ばく状況の3つに区分し、全ての状況に正当化と最適化の2つの原則が適用される。また被ばくを職業被ばく、公衆被ばく、患者の医療被ばくに区分している。妊娠中の作業者の胚と胎児の被ばくについては公衆被ばくとして規制している。 放射線防護のための個人線量のレベルは、線量限度、線量拘束値、参考レベルによって制限されている。線量限度は、計画被ばくにおいて医療被ばくを除くすべてに適用される。線量拘束値は計画被ばくにおけるある線源からの被ばくに対して用いられ、選択可能な数値幅が示されており、その線源に対する防護の最適化における予測線量のの上限値である。例えば、職業被ばくに対する 線量拘束値は 1 ~ 20 mSv/年の範囲で、公衆被ばくに対しては 1 mSv/年以下が適用される。内部被ばくについては、吸入、経口摂取した場合にはすみやかに、吸入、又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入るものは3月を超えない期間ごとにさらに吸入、経口摂取するおそれのある場所に立ち入る場合で妊娠中の女性については1月を超えない期間ごとに測定する。放射線業務従事者の女子について線量限度は妊娠不能と 診断された者。および妊娠の意思のない女子については実行線量限度として 5 mSv/3月。妊娠の事実を知った時から出産までの間について、外部被ばくに関しては腹部の等価線量として 2 mSv と定められ、1 cm 線量当量で評価する。預託実効線量として 1 mSv と定めている。妊娠した、もしくは 妊娠した可能性のある従事者の胚や胎児を一般公衆として扱い、胚や胎児についてその線量限度である 1 mSv/年を超えないことを担保するためである。

放射線管理について

放射性同位体の管理は受け入れに始まる。放射性同位元素はその種類や数量に対応した形態で事業所外から搬入される。134Cs γ線源(点線源)を収納した(20cm × 20cm × 20cm)がL型輸送物として運び込まれた。線源は輸送物の中心に位置している。L型輸送物表面の 1 cm 線量当量率は 5 μSv/h 以下であった。この場合、輸送物表面から 1 m の位置での線量当量率は 0.04 μSv/h 以下である。 受け入れた放射性同位元素は事業所内でさらに運搬されて使用・貯蔵される。一般的には、事業所外から搬入された輸送物はそのまま事業所内を運搬することとなるが、事業所内では不物定の一般公衆や一般車両が存在しないため、事業所外を運搬する場合を比べ、その基準が緩和されている。事業所内の運搬の際の 1 cm 線量当量の基準を運搬物の表面から 1 m で 100 μSv/h 以下とする。例えば、貯蔵されている別の 134Cs γ線源(点線源)を容器に封入し、立体(20cm × 20cm × 20cm) の中心に収納した運搬物の表面から 1 m で 100 μSv/h とした場合、前述のL型輸送物として受け入れた線源のおよそ2400倍の数量までこの運搬物で 1 cm 線量当量率の基準を満たすことができる。遮蔽体を用いる場合、その遮蔽材料には、放射線と物質との相互作用を考慮して、線質・エネルギーに注意する。使用時にも遮蔽体の適切な使用は外部被ばく線量の低減に効果がある。例えば、 100 keV 以下の低エネルギーγ線源として使用される。 109Cd のγ線遮蔽では薄い鉛板が用いられる。しかし、エネルギーの高いβ線源の 32P の遮蔽に鉛板を用いると制動放射線が発生する。鉛板の代わりに、実効原子番号が小さくて加工も容易なアクリル板を用いると、大幅に制動放射線の発生を抑止できる。放射性同位元素の使用の際 には、その挙動に注意を払うことで作業リスクの低減を図ることがことができる。放射性核種の空気中への揮発は作業者の内部被ばくを招く可能性があるので特に注意する。揮発の可能性は放射性核種を含む化合物の化学的性質に依存する。 131I などのハロゲンや 3H(T) には揮発し易い化合物が数多く知られているので、これらの核種を取り扱う際にはその化学形に注意する。有機標識化合物の沸点 は揮発のリスク指標であり、分子構造からもある程度予測が可能である。例えば、同程度の分子量である。カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エーテルではカルボン酸の沸点が最も高い。揮発が避けられない場合には、発生する放射性気体を吸収して固定化する。気体状の CH3(131I)が発生する場合の吸収材としては有機アミン添着活性炭が有効である。 また 14CO2 が発生する場合には水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。この他に非密封の 210Po などのα放射体を使用する場合には内部被ばくの防止が特に重要である。密封線源の場合も、密封状態に影響するような変化が発生しないように注意する。241Am 密封線源は低エネルギーγ線源として蛍光X線分析に用いられているが、α放射体でもなる。 α線源としての利用では金が窓材によく用いられるが、非常に薄いので破損しないように注意する。放射性同位元素の使用の際には作業室の実験台や床面の汚染に注意する。汚染が発生した場合には、汚染核種の特定、汚染範囲の確認、汚染拡大の可能性の予測などが必要となる。サーベイメータを利用して汚染状況の把握が対策の第一歩である。スミア法による汚染検査を併用することで、汚染核種の特定や固着性 の状況についての基礎データを得る。汚染状況に基づいて除染計画が立案される。短半減期核種による汚染では、汚染が広がらないような措置等を講じて、除染せずに壊変による放射能の減少を待つ場合もある。例えば、3H、18F、57Co。131I、134Csを使用する場合、最も短い半減期を持つ 18F も使用し、汚染した場合には、このような対処法をとる。複数の核種を使用している施設での汚染では 汚染核種の特定が必要である。γ線放出核種の同定には、Ge検出器によるエネルギースペクトル測定が有効である。ただし、134Cs などの定量にの際にはサムピークの寄与の補正を要する場合もある。除染作業ではまず、吸湿紙で拭き取ることがよく行われる。水溶性の汚染に対しては水、中性洗剤の他、EDTA水溶液などのキレート性除染剤を脱脂綿に染み込ませて ふき取ることもよく行われる。

放射線防護体系について

ICRP 2007 勧告では、放射線防護体系の目的を、放射線被ばくの有害な影響から人の健康と環境を適切なレベルで防護することとし、人の健康に対しては、確定的影響を防止し、確率的影響のリスクを合理的に達成できる程度に減少させることとしている。確定的影響はしきい線量を下回るように被ばくを抑えることでその発生を防止できる。一方 確率的影響には発がんと遺伝的影響が含まれ、線量の増加とともにリスクが増加する直線しきい値なしモデルに従うと考えて確率的影響に対する防護体系が構築されている。ICRP 2007年勧告では確率的影響に対する放射線防護の目的においては、代表的集団における 性別および年齢で平均化された生涯リスク推定値を用いることが適切であると判断をしている。その計算方法は、まず疫学研究によるがんの罹患率及び生殖腺に対する遺伝的リスクデータから各臓器・組織の生涯リスク推定値を求めた。次いで骨髄以外の臓器・組織について線量・線量率効果係数を考慮して生涯リスク推定値を2分の1に調整した。 さらに各臓器・組織について集団間で疾患の自然発生率が異なっていても適用可能な生涯リスク推定値から症例数を計算する方法を定めた上で、アジアの4集団と欧米の3集団に対して適用し、これを平均して各臓器・組織の1万人当たり 1 Sv 当たりに増加する症例数を求めた。これを名目リスク係数と呼ぶ。さらに致死率、非致死疾患における苦痛等による生活の質の低下、寿命損失を考慮したものを過剰相対リスク として評価し、各臓器・組織の1万人当たりの1Sv当たりの過剰相対リスクを計算した。全臓器・組織の過剰相対リスクの合計値に基づき、がんについて全集団で 5.5 %/Sv、成人では 4.1 %/Svという。過剰相対リスクで調整された名目リスク係数が推定された。また過剰相対リスク に基づいて、以下のように組織加重係数が定められた。まず過剰相対リスクの合計値に対する各臓器・組織の過剰相対リスクの寄与割合を計算した。この値に基づいて各臓器・組織を大まかに4つにグループ分けし、全臓器。組織の合計が 1 となるように各グループに1つの丸めた値を割り振った。組織荷重係数の値は、 ICRP 2007勧告では、ICRP 1990年勧告に比べ、乳房では大きく、生殖腺では小さくデータが不十分で個々に放射線リスクの大きさを判断できない複数の臓器・組織をまとめてひとつのカテゴリとした「残りの組織」では大きくなっている。



第1種放射線取扱主任者実務 水の吸収線量評価法

水の吸収線量評価法

200 MeV の陽子線を水に照射したとき、水中のある深さにおける吸収線量は、そこでの陽子線のフルエンスと水の質量阻止能の積で与えられる。(吸収線量 D = (S/ρ)・φ = Sm・φ[Gy]。S:水の線衝突阻止能。φ:体積 V の受けるエネルギーが通過する陽子数のフルエンス。Sm:質量衝突阻止能)また、そこに空気の空洞を導入し、空洞のサイズが陽子線の場 を乱されないほど十分小さい場合、空洞理論によって水と空気の吸収線量の比はそれらの質量阻止能の比で与えられる。空気の吸収線量を 0.68 Gy としたとき、空気の質量阻止能が 4.82 MeV・cm2/g。水の質量阻止能が 5.44 MeV・cm2/g としたとき、水の吸収線量 Dm は Dm = Dg・(Sm/Sg) = 0.68 × (5.44/4.82) = 0.77 Gy Dg:空気の吸収線量。Sg:空気の質量阻止能。Sm:水の質量阻止能。光子を照射したときの水の吸収線量は空気の空洞電離箱により次のように評価される。

① 水中に空洞電離箱を挿入する場合

空洞のサイズが二次電子の飛程に比べ十分小さいときには、水中で発生した二次電子のフルエンスは空洞中で変化せず一様であり、また、空洞中での光子の相互作用は無視でき、光子束は変化しない。よってこうした条件では空洞電離に基づき、水の吸収線量は水の空気に対する二次電子の平均質量阻止能の比を空気の吸収線量に乗ずることにより得られる。

② 空気中に空洞電離箱を置き、その吸収線量から水の吸収線量に換算する場合。

空洞空気の吸収線量は光子が空気との相互作用により生じた二次電離により主としてもたらせるため、荷電粒子平衡の条件下において光子のエネルギーフルエンスとその光子に対する空気の質量エネルギー吸収係数の積で表すことができる。

補足

エネルギーが Eg の光子(フルエンスφ)に物質が照射されたとき、二次電子平衡が成り立っていれば、吸収線量はカーマに等しく D = K = (μen/ρ)・Eγ・φ = μen,m・φ[Gy] μen:線エネルギー吸収線量。ρ:密度。μen,m:質量エネルギー吸収係数。φ:エネルギーフルエンス

 

第1種放射線取扱主任者まとめ集

第1種放射線取扱主任者実務解説 自然放射線(直接電離放射線・間接電離放射線)

自然放射線

自然放射線による被ばくには、宇宙船によるものと天然放射性核種からのものの2つがある。さらに天然放射性核種は地球誕生時から存在していた原始放射性核種とその子孫核種及び、宇宙線が大気に当たって生成した宇宙線生成核種からなる。宇宙線は外部被ばくの原因となる。また、大地の 天然放射性核種からも外部被ばくを受ける。世界平均では、自然放射線による被ばくで最も寄与が大きいのはラドン及びその子孫核種の吸入による内部被ばくである。 40K は原始放射性核種であり、外部被ばくをもたらすとともに、食品から摂取され、体の構成要素として内部被ばくももたらす。宇宙線生成 核種からの被ばくの大部分は 14C による内部被ばくがあるが、ごくわずかである。宇宙線の源は、太陽から放出される粒子と、太陽系以外から飛沫する銀河宇宙線とに大別される。大気圏での被ばくの大部分は太陽粒子に比べエネルギーの高い銀河宇宙線のものによる。銀河宇宙線の組成は 98% が 原子核で残り 2% のほとんどが電子である。原子核のうち 87% が陽子(水素原子核)、12% がヘリウム原子核、残り 1% がさらに重いもので構成している。

 

直接電離放射線・間接電離放射線

電離放射線を大別すると自身が電荷を持つ直接性電離放射線と、自身は電荷を持たず、物質との相互作用の結果、二次的に発生した直接電離性放射線が電離を引き起こす間接電離性放射線の二種類に分けられる。直接電離性放射線のうちα線は物質中でクーロン力を受けながら連続的に減速しやがて停止する。一方間接電離性放射線の一つであるγ線は物質中で 吸収・散乱されることもあれば、全く相互作用を起こさず透過することもある。γ線が物質中で相互作用するかどうかは確率的な問題である。N0個の細い線束の単色γ線が、線束と垂直に置かれた厚さ dx の薄い板に入射し、これを透過するγ線の数が N であるとする。この時 dN 個のγ線が吸収・散乱によって失われたとすると、 dN/dx = -μN これを積分し、初期条件を考慮すると、N = N0 e^(-μx) と表される。この μ は線減弱係数と呼ばれ、吸収・散乱の原子断面積の総和と単位体積あたりの原子の積である。(吸収や散乱の原子断面積の和である全原子断面積σ(tot)は、線減弱係数μを単位体積中の原子数Nで割った値、σ(tot) = μ/Nとして得られる。すなわち μ = σ(tot) × N になる。)

 

放射線分解について

γ線ではその生物効果の 50 ~ 80 %が水の放射線分解の結果生じるラジカルによる間接作用の寄与によるものであるとされている。間接作用の大きさに影響する因子はいくつか存在し、酸素もその一つである。すなわち水の放射線分解では生体分子と反応する様々なラジカルが 生じるが、そのうちのスーパーオキシドラジカルは水の電離で生じた電子に水分子が配位した水和電子により酸素が1電子還元されて生じる。また、酸素には生体分子に生じた損傷が化学的修復をされる前に損傷として固定する働きがあるといわれる・したがって酸素の有無は放射線により引き起こされる生体反応の大きさに影響する。酸素が存在しない条件で、ある効果を起こす吸収線量と酸素が存在する 条件で同じ効果を起こす吸収線量の比を酸素効果比という。生体内での酸素効果比は最大 3 程度までの値となる。酸素効果比が 2 となる酸素分圧が 3 mmHg程度の時である。正常組織では酸素分圧はおよそ 20 ~ 100 mmHgである。LETの高い放射線による致死効果では酸素効果はγ線に比べて小さくなる。LETが 200keV/nmを越えると酸素効果比はほぼ 1 になることが知られている。またLETの高い放射線では間接作用の寄与がγ線より小さくなる。

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第1種放射線取扱主任者まとめ集

第1種放射線取扱主任者実務解説 被ばくの管理 

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被ばくの管理

実際に被ばく管理を行うためには、実効線量と等価線量を評価しなければならないが、日常的な放射線管理で全ての組織・臓器の線量を直接測定することは不可能である。そこで外部被ばく管理のための線量測定の方法として、一点のみで線量が決められ、なおかつ同一被ばく条件では実効線量や等価線量と比較して一般に下回らない値を示す実用量が国際放射線単位測定委員会によって定められている。 それらの実用量とは、モニタリングのための周辺線量当量、方向性線量当量および個人線量当量である。

周辺線量当量と方向性線量当量の基準となる線量はICRU球と呼ばれる線量計算用ファントムを用いて計算される。ICRU球は直径 30 cm の組織等価物質でできた球である。一方個人線量当量の基準となる線量の計算には、組織等価物質でできた 30cm × 30cm × 15cm の大きさの線量計算用スラブファントムが用いられる。 実効線量は、場のモニタリングによりファントムの表面から深さ 10 mmの周辺線量当量に相当する線量を測定するか、あるいは個人のモニタリングにより深さ 10 mmの個人線量当量に相当する線量を測定することによって評価する。これらの線量の法令等での名称は、ともに1センチメートル 線量当量である。皮膚や眼の水晶体に対する等価線量は、場のモニタリングにより深さ 0.07 mmの方向性線量当量、あるいは個人のモニタリングにより同じ深さの個人線量当量に相当する線量の測定により評価する。ただし眼の水晶体に対しては、放射線によっては深さ 10 mm線量が用いられることもある。また、 実効線量については、計算より評価することもできる。X、γ線の場合、自由空気中の空気カーマから実効線量への換算に用いる係数が法令等に規定されている。

 

内部被ばく管理

内部被ばくの管理においては摂取した放射能(Bq)に実効線量係数を乗ずることにより預託実効線量を求める。摂取した放射能を被検者の測定から求めるには、体外計測法やバイオアッセイ法などがある。体外計測法は取り込まれた核種から放出される放射線を直接測定する方法で、測定には主にホールボディカウンタを用いγ線 を放出する放射性核種が対象になる。測定時における体内放射能の評価制度はバイオアッセイ法に比べて高い。バイオアッセイ法は被検者の尿、便などの放射能を測定して、その値をもとにして摂取量を推定するものである。全ての核種が測定対象になるが、特に 90Sr のようなβ線だけを放出する核種の場合はバイオアッセイ法に適している。 ただし、尿、便のバイオアッセイ法では排泄率などのパラメータの個人差による誤差に注意する必要がある。空気中の放射性物質の吸入による摂取量の推定には、空気中放射能濃度から算定する方法もある。この場合も呼吸率などのパラメータが必ずしも個人の実際の値と一致しているわけではなく、摂取量の評価の評価制度は高くない。

摂取した放射性物質は、体内に留まっている限り被ばくの原因になるので、排泄などによってそれが体外に出るまでの体内動態を知ることが大切である。内部被ばく線量の評価には、放射性核種で決まっている物理学的半減期と、摂取された放射性物質が体外に排出されるまでの時間を反映する生物学的半減期から計算される有効半減期を用いる。131I の場合、物理学的半減期は 8 日であり、 生物学的半減期を 80 日 とすると、有効半減期は約 7 日となる。137Cs の場合、物理学的半減期は 30 年であり、生物学的半減期を 100 日とすると有効半減期は約 100 日となる。内部被ばくを低減するためには、放射性物質の摂取をなるべく少なくするとともに、万一摂取してしまった場合、体内から素早く排除するための手段を講じることが重要である。 放射性ヨウ素に対しては薬剤として安定ヨウ素剤を予防的あるいは摂取後速やかに投与すると効果がある。セシウムはカリウムと化学的性質が類似しており、経口摂取すると消化管から吸収されて全身に分布する。放射性セシウムを摂取した場合プルシアンブルー(イオン交換剤)を投与する。この薬剤はセシウムと結合してコロイドとして便に排泄されることにより、消化管からの吸収を阻害する。

内部被ばくの計測

内部被ばくは放射性核種が体内に取り込まれた場合に生じる。放射性核種が体内に取り込まれる経路としては、経口摂取、吸入摂取、皮膚からの吸収、創傷からの吸収がある。一般にこれら4つの経路の中では、皮膚からの吸収が最も体内に取り込まれにくい。内部被ばくの評価には、体内にある放射性核種の同定と放射能を測定・評価する必要がある。内部被ばくによる放射能の評価は体外計測法とバイオアッセイ 法によって行われる。体外計測法は、体内に存在する放射性核種の定性・定量を測定するもので、γ線やX線を体外から測定する。全身を測定する装置は一般にホールボディカウンタ(WBC)と呼ばれる。WBCはバックグラウンド放射線による計数を少なくするための遮蔽と検出器及び放射線計測部からなっており、検出器を遮蔽室内に設置する精密型WBCと検出器周囲を遮蔽した 簡易型WBCに分類することができる。

WBCに用いる遮蔽室は宇宙線や遮蔽室の外部にある放射性核種からの放射線を遮蔽するもので、基本遮蔽材料としては主に鉛またはてつが用いられる。遮蔽材料の厚さは、一般に鉛で 5 ~ 10 cm、鉄で 10 ~ 20 cm程度であり、これ以上厚さを増してもあまり効果がない。遮蔽室は主に外部にある放射性核種からの放射線を遮蔽するためのものであるが、測定時に人体に取り込まれた放射性核種から 放出されるγ線が遮蔽室の壁に入射し、γ線のエネルギーが大きい場合には主にコンプトン効果による散乱線が検出器に入射することがあるため、低エネルギー部の計数率が増加することがある。この影響は遮蔽材料の原子番号が大きいほど少ないので、主な遮蔽材料が鉄の場合には、その内面に 3mm 程度の鉛を内張りすると軽減する。遮蔽の最も内側の物質が 鉛のように原子番号が大きいものを使用した場合には内側の物質とγ線との相互作用によって放出される特性X線が検出器に入射するため低エネルギー部にピークが生じる。これを除去するには鉛の内面にさらに 0.5 ~ 3mm 程度の銅を内張りにする。

遮蔽室を有するWBCで体内の放射能を測定する場合であっても測定する前にバックグラウンドを測定し、その値を差し引く必要がある。バックグラウンドとして、宇宙線に由来する 0.51 MeVの特性X線がある。この他にはラドンの影響がある。大地を構成する土壌・岩石から空気中に放出されたラドンは、地表面から待機中に散逸するか、または建物の床を通して屋内大気に侵入する。遮蔽室を有する WBCは、重量が大きいため、1階や地下に設置位されることが多い。このため室内ラドン濃度は高くなる傾向がある。バックグラウンドに対する寄与としては、 214Pb とその娘核種である214Bi が重要である。これらの核種の多くは大気浮遊塵に付着して存在しているので、空気清浄機によりバックグラウンドの低下をさせることができる。この他に、光電子 増倍管のガラス窓に含まれる 40K もバックグラウンドの原因となるので注意が必要である。



第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説 2

第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説 第 2弾

問1

標識化合物の利用法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A [3H]ヒスチジンを用いて、タンパク質合成量を調べた。

B [11C]二酸化炭素を用いて、光合成を調べた。

C [14C]チミジンを用いて、RNA 合成量を調べた。

D [125I]ヨードウリジンを用いて、タンパク質合成を調べた。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

標識化合物の種類を下図に示す。下の表より解答は 1 となる。

標的核 アミノ酸の種類 核種
DNA チミジン 3H
デオキシリボヌクレオチド 32P
ヨードデオキシウリジン 125I
RNA ウリジン 3H
ヨードウリジン 125I
タンパク質 グリシン 3H、14C
メチオニン 35S
ヒスチジン 3H
脳、がん細胞 グルコース 14C

解説

A 正:ヒスチジンはアミノ酸の 1 つ

B 正:光合成の原理より、二酸化炭素から酸素が放出されるためこれを計測に用いる。

C 誤:チミジンは DNA の塩基であり、RNA 合成量の測定にはウリジンが用いられる。

D 誤:ヨードウリジンは核酸類似物質であり、RNA に取り込まれる。またヨードデオキシウリジンという物質もあるので注意が必要である。

問2

次のうち、陽電子放射断層撮影(PET)診断に用いられるものの正しい組み合わせはどれか。

A [3H]チミジン

B [11C]メチオニン

C [18]フルオロデオキシグルコース(FDG)

D [67Ga]クエン酸ガリウム

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:DNA 合成量の測定に用いられる。

B 正:11C は陽電子放出核種で半減期は 20.39 分。脳腫瘍の診断に用いられる。

C 正:18F は陽電子放出核種で半減期は 109.8 分。がん細胞が正常細胞よりもグルコースを多く取り込むことを利用。

D 誤:67Gaは電子軌道捕獲し、半減期は 3.26 日。93.3 keV(39.2%)、185 keV(21.2%)、300keV(16.8%)のγ線を出す。クエン酸ガリウムは腫瘍新地グラフィに用いられる。

問3

重粒子治療の特徴に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 重粒子線治療では、π中間子が用いられる。

B 重粒子線は、X線やγ線と比べて、身体の深部にあるがんの治療に適している。

C 重粒子線による治療効果は、X線やγ線と比べて、細胞周期による影響を受けやすい。

D 重粒子線による治療効果は、X線やγ線と比べて、酸素による影響が小さい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:炭素イオン線を用いる。

B 正:重粒子線(Heより重い原子番号を持つ原子の原子核をいう)はブラッグピークを作ることから、深部のがんに線量を集中できる。

C 誤:重粒子線は高LTE放射線であり、細胞周期に夜影響は小さい。

D 正:重粒子線は高LET放射線であり、間接作用による影響は小さい。

問4

水への放射線照射により生成する過酸化水素(H2O2)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A H2O2 はラジカルである。

B H2O2 は鉄(Ⅱ)イオンなど触媒効果により、体内でヒドロキシラジカルを生成する。。

C H2O2 はスーパーオキシドジスムターぜ(SOD)により分解される。

D H2O2 は細胞膜を透過する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:H2O2 は活性酵素である。

B 正:過酸化水素は細胞膜を容易に透過し、赤血球内に入り、ヘモグロビン中の Fe によりヒドロキシラジカルになる。ここで、触媒作用とは、鉄(Ⅱ)イオンが鉄(Ⅲ)イオンになり電子を供給することを言っている。

C 誤:過酸化水素はカタラーゼにより分解される。

D 正:過酸化水素は細胞膜を容易に透過する。

問5

次のうち、主として間接作用が関与する現象として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果

B 希釈効果

C ラジカルスカベンジャーによる防護効果

D 温度効果。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説 すべて間接作用を修飾する効果である。

問6

X線による DNA 損傷に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 低酸素条件下で照射すると DNA 鎖切断のあとは少なくなる。

B DNA 鎖間架橋はできない。

C 細胞には DNA 損傷を修復する機構が備わっている。

D DNA の2本鎖切断の収率は 1 本鎖切断の収率の約 2 倍である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 正:X線は低LET放射線であるため、酸素効果の影響を受けるため、低酸素条件下で照射すると DNA 鎖切断のあとは少なくなる。

B 誤:DNA 損傷には1本鎖切断、2本鎖切断、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成がある。

C 正:塩基除去修復、相同組換え修復など様々な修復機構がある。

D 誤:2本鎖切断は1本鎖切断よりも生じにくく、10 倍以上のエネルギーを必要とするため収率は約1/10となる。

問7

放射線によるアポトーシスに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 断片化が起こる。

B 被ばく後 24 時間以上経過してから起こる。

C 分裂死の主要な原因である。

D 有害細胞の除去機能の一つである。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

正:アポトーシスでは細胞の縮小・核濃縮・核の断片化・核内のクロマチンの凝縮・細胞の分断化・アポトーシス小体の形成、ミトコンドリアの形態的変化、数の減少・紡錘体の大きさの減少・中心体の増加、マクロファージによる貪食などがある。

誤:末梢血中のリンパ球では、照射後 1 時間以内でアポトーシスが見られるため誤りとなる。

誤:細胞死には分裂死と間期死があり、アポトーシス・ネクローシスともに間期死であるため誤りとなる。

正:一つの細胞の異常が個体全体に影響を及ぼさないための除去機能と考えられており、自爆死と呼ばれることもある。

問8

放射線による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射された後に分裂を経ないで起こる細胞死を増殖死という。

B 増殖死はコロニー形成法で調べることができる。

C 照射により分裂を停止した細胞でも代謝が継続する場合がある。

D リンパ球では照射により主に増殖死が起こる。

  

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:分裂を経ないで起こる細胞死は間期死である。

B 正:増殖死ではコロニー形成法で調べ、間期死では色素排出能が使われる。

C 正:代謝が継続することを表す例として、巨細胞の出現があげられる。

D 誤:リンパ球は間期死である。

問9

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 染色体異常は分裂期に照射された細胞だけに生じる。

B 転座及び逆位は安定型異常である。

C 姉妹染色分体交換は不安定型異常である。

D 末梢リンパ球の染色体異常の出現頻度から被ばく線量の推定が可能である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:いずれの時期の照射でも染色体異常の原因となる DNA 損傷は生じる。

B 正:転座・逆位・欠失が安定型で、環状染色体・二動原体染色体が不安定型である。

C 誤:姉妹染色分体とは、S 期に合成された同じ遺伝情報を持つ 2 本の染色分体である。したがって、この交換が起こっても異常とはならない。

D 正:検出限界が 0.2 Gy 程度なので可能となる。

問10

放射線宿酔に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 不穏状態、無気力などの精神状態が現れることがある。

B 頻脈、不整脈などの心血管症状が現れることがある。

C 症状の種類は被ばく線量によらない。

D 被ばく線量が大きいほど発症の時期は早い

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

骨髄死、腸死、中枢神経死につながる前駆症状として、放射線宿酔は見られる。疲労、無気力などの精神症状、頻脈、低血圧などの心血管症状の他、悪心、嘔吐などの胃腸障害がある。線量が低いと症状が遅く出現したり、あるいは症状が現れないことがあるので C は誤りとなる。

問11

X線による全身被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 半致死線量の被ばくでは骨髄死が起こる。

B 骨髄死は消化管死よりも潜伏期が長い。

C 消化管死は骨髄死よりも低線量で起こる。

D 中枢神経死は 10Gy 程度の被ばくで起こる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:半致死線量(LD 50/60)は骨髄死により 60 日以内に 50% 死亡する線量をいい、3 ~ 5 Gy とされている。

B 正:骨髄死の潜伏期は 30 ~ 60 日、消化管は 10 ~ 20 日なので骨髄死の方が潜伏期は長い。

C 誤:骨髄死は 3 ~ 5 Gy、消化管死は 5 ~ 15 Gy なので骨髄死の方が低線量で起こる。

D 誤:中枢神経死は 15 Gy 以上で起こる。

問12

30 Gy のX線を被ばくした組織と、その組織に生じているとされている障害に関する次の組み合わせのうち、正しいのはどれか。

A 肝臓 ー 脂肪肝

B 甲状腺 ー 機能亢進症

C 皮膚 ー 潰瘍

D 大腸 ー 穿孔

E 脊椎神経 ー 麻痺

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 5

解説

A 誤:脂肪肝は放射線被ばくとは無関係。

B 誤:甲状腺の機能低下が起こる。

C 正:皮膚潰瘍は 10 Gy 以上で起こる。

D 正:大腸に限らず、食道などの消化管でも穿孔することがある。

E 正:片麻痺がみられることがある。

問13

4 Gy のX線を全身に均等被ばくした場合の末梢血の変化に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 血小板は赤血球より早期に減少する。

B リンパ球の減少は被ばく後 4 週間以内に起こる。

C 好中球は一過性に増加する。

D 赤血球数は被ばく後 1 週間前後で最低値を示す。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:上図より血小板は赤血球より早期に減少していることがわかる。末梢の赤血球、血小板は被ばくにより細胞死を起こすことなく、その減少の程度は寿命の長さに従う。赤血球は 120 日。血小板は 10 日である。

B 正:リンパ球のアポトーシスは被ばく後 1 時間以内にみられはじめる。

C 正:好中球は上図より被ばく後 1 ~ 2 日間に一時的増加がみられる。

D 誤:上図より数 Gy 程度の被ばくでは、25 日程度で最低値となる。

問14

放射線被ばくによるリスクに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 絶対リスクモデルでは、リスクは年齢にかかわらず一定とする。

B 発がんリスクは、大人より小児の方が高い。

C 男性が胸部に線量計をつけるのは、肺がんのリスクが高いためである。

D 預託実効線量は、外部被ばくによるリスクの指標となる。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2

解説

A 正:絶対リスクは線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法で、絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定である。

B 正:代表的なものとして小児甲状腺がんが挙げられる。

C 誤:胸部は体幹部の代表として考えられている。

D 誤:預託実効線量は、体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝の実効線量をおよそ一生分について積算した値。

問15

放射線による発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 主として内部被ばくによって引き起こされる。

B 遺伝的影響に分類される。

C 確率的影響に分類される。

D 晩発影響に分類される。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:外部被ばくによっても、内部被ばくによっても、引き起こされる。

B 誤:発がんは身体的影響である。

C 正:確率的影響には、発がんと遺伝的影響が分類される。

D 正:長い潜伏期を持つ。白血病では 2 年。固形がんでは 10 年。

問16

標識化合物を用いた生物実験に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 125I 標識化合物は、131I 標識化合物に比べて長期にわたって使用することができる。

B 131I 標識化合物は、125I 標識化合物に比べて体外からの計測がしやすい。

C オートラジオグラフィでは、3H 標識化合物よりも 14C 標識化合物を用いた方が高い解像度が得られる。

D [3H]チミジンのパルス標識により細胞周期の解析ができる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 2

解説

A 正:125I の半減期は 59.4 日。131I の半減期は 8.02 日。

B 正:131I では 364 keV のγ線を、125I では 27.5 keV の特性X線を測定する。

C 誤:オートラジオグラフィは低エネルギーβ線を用いることで、解像度がよくなるため、3H 核種を用いる。

D 正:細胞周期解析は、細胞増殖機構の解明のために欠かせない解析の一つです。、DNA検出試薬を用いて染色した個々の細胞の蛍光強度を測定することにより、DNA含量に応じた細胞周期の各期(G0/G1期:静止・細胞成長期[核相は2n]。S期:DNA合成期[核相が2nから4nへと増加]。G2/M期:分裂準備・分裂期核相は4n])の細胞割合を算出することが可能です。 DNA を解析するため [3H]チミジンが用いられる。

問17

次の放射性核種とその集積部位の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

A 226Ra ー 肺

B 14C ー 骨

C 32P ー 肝臓

D 90Sr ー 骨

1 ABCのみ 2 ADのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

解説

放射性核種の臓器親和性を下図に示す。

       

核種 臓器親和性
32P,45Ca,65Zn,90Sr,226Ra,232Th,238U,239Pu,241Am
3H,24Na 全身
40K,137Cs 筋肉
222Rn,232Th,238U,239Pu
53Fe,59Fe 骨髄
3H,14C,40K,137Cs 全身
60Co,65Zn,232Th,239Pu 肝臓
131I 甲状腺

A 誤:226Ra – 骨

B 誤:14C – 全身

C 誤:32P – 骨

D 正:90Sr – 骨

問18

確率的影響と確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 晩発障害には確定的影響はない。

B 早期障害には確率的影響はない。

C 組織荷重係数は確率的影響を考慮した係数である。

D 遺伝的影響は確率的影響である。

E 内部被ばくでは確定的影響は起こらない。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 4

解説

A 誤:白内障は確定的影響で晩発影響である。

B 正:確率的影響は発がんと遺伝的影響であり、いずれも発生までに時間を要する。

C 正:組織荷重係数は各組織・臓器の確率的影響のなりやすさを規格化した係数である。

D 正

E 誤:内部被ばくでもしきい線量を越える被ばくがあれば、確定的影響は起こる。

問19

器官形成期にある胎児がγ線に急性被ばくした場合、奇形の発生に関するしきい線量(Gy)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.005

2 0.02

3 0.1

4 0.5

5 2

解答 3

解説

胎児の奇形発生のしきい線量は 0.1 ~ 0.2 Gy。また、その他の胎児の影響を下の表に示す。

胎児期の放射線影響

   

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形  0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延  0.5 ~ 1.0
全期間     - 発がんと遺伝的影響    -

問20

γ線急性被ばくの場合にみられる次の障害のうち、しきい線量が 2 Gy よりも大きいものの組み合わせはどれか。

A 脱毛

B 放射線肺炎

C 男性の永久不妊

D 女性の永久不妊

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 5

解説

A 正:脱毛 – 3 Gy

B 正:放射線肺炎 – 6 ~ 8 Gy

C 正:男性の永久不妊 – 3.5 ~ 6 Gy

D 正:女性の永久不妊 – 2.5 ~ 6 Gy

問21

ある放射性核種の物理的半減期が 30 日、生物学的半減期が 20 日の場合、有効半減期(日)は次のうちどれか。

1 6

2 8

3 10

4 12

5 14

解答 4

解説

物理的半減期(Tp)、生物学的半減期(Tb)及び有効半減期(Teff)には、次の関係式が成り立つ。(1/Teff) = (1/Tp) + (1/Tb) Tp = 30 日、Tb = 20 日を代入すると、Teff = 12 日となる。

問22

放射性核種による内部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 体内に入る経路としては、経口、吸入及び経皮(創傷を含む)3経路がある。

B 主として遺伝的影響をもたらす。

C 外部被ばくと比べ、飛程の短い放射線を出す核種であってもその影響は大きい。

D 核種によらず全身にほぼ均等に影響を与える。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正

B 誤:核種により蓄積する臓器が異なるため必ずしも遺伝的影響が出るとは限らない。

C 正:飛程の短い放射線では限られた狭い範囲にすべての放射線エネルギーが与えられるので影響は大きい。

D 誤:核種により蓄積する臓器が異なる。

問23

胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 重度精神発達遅滞は受精後 26 週以降の被ばくで多い。

B 被ばく線量推定には母親の子宮線量が用いられる。

C 着床前に被ばくすると奇形の発生頻度が高い。

D 確定的影響も確率的影響も起こる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:精神発達遅滞は 8 ~ 25 週の被ばくで発生する。

B 正:簡便には、子宮線量で評価することができる。

C 誤:着床前期の被ばくでは胚死亡が起こる。

D 正:胚死亡、奇形、精神発達遅滞の確定的影響のほか、発がん、遺伝的影響の確率的影響のリスクも指摘されている。

問24

組織荷重係数(ICRP1990年勧告)の値を比較した次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 赤色骨髄 = 乳房 = 甲状腺

B 胃 = 結腸 > 食道

C 甲状腺 = 膀胱 > 骨表面

D 肺 > 肝臓 > 皮膚

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

解説

下の表に ICRP 1990 組織荷重係数 の値を示す。 

臓器 組織荷重係数
胃・肺・結腸・骨髄 0.12
生殖腺 0.20
膀胱・食道・乳房・肝臓・甲状腺・その他 0.05
骨表面・脳・唾液腺・皮膚 0.01

問25

放射線による白内障に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A しきい値が認められる。

B 進行した症例でも他の原因で誘発された白内障と区別できる。

C 線量による違いは認められない。

D 被ばく線量によらず潜伏期間は一定である。

E 水晶体上皮細胞の障害による。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 2

解説

A 正:白内障は確定的影響なのでしきい値は存在する。

B 誤:放射線による白内障と他の原因で誘発された白内障とでは区別できない。

C 誤:中性線の被ばくで引き起こされやすい。

D 誤:一般に高線量被ばくすると潜伏期間は短くなる。

E 正:白内障は水晶体上皮細胞の障害で起こる。

問26

遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 自然発生突然変異率をもとに影響を推定する。

B 倍加線量の逆数は単位線量当たりの相対突然変異リスクをあらわす。

C 潜在的回収能補正係数はメンデル型遺伝病にも多因子遺伝病にも用いる。

D 重篤度は線量に依存する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:遺伝的影響の発生確率の推定(間接法)を用い、自然発生の突然変異率を 2 倍にするのに必要な線量を倍加線量というが、ヒトの遺伝的疾患の自然発生率と動物実験による倍加線量を比較して推定する方法をいう。

B 正:倍加線量の被ばくによって自然発生と同じだけの突然変異が生じる。また、単位線量あたりの相対リスクは自然発生の何倍の発生率があるかを表す。したがって、倍加線量の逆数(Gy^(-1))は単位線量あたりの相対突然変異リスクを表す。

C 正:潜在的回収能補正係数(PRCF)は、遺伝的影響の評価にあたり、親が生殖腺に被ばくした結果、胎児に突然変異が誘導されても個体の生存ができないほど大きな障害であれば産まれてこないため、子の世代の突然変異としてカウントできないことを補正する係数である。メンデル型遺伝病にも多因子遺伝病にも適用可能である。

D 誤:遺伝的影響は確率的影響であり、重篤度は線量に依存しない。

問27

高LET放射線の特徴を低LET放射線の特徴と比較した次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジカルスカベンジャーの効果が小さい。

B 酸素効果が大きい。

C 線量率効果が小さい。

D 照射後の回復の程度が大きい。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正:高LET放射線では間接作用の修飾を受けにくくなるので、ラジカルスカベンジャーの効果は小さい。

B 誤:酸素効果は小さい。

C 正:高LET は高電離密度のため SLD(亜致死損傷)の蓄積が少なく、線量率効果は小さい。

D 誤:2 本鎖切断の割合が多くなるため、回復の程度は小さい。

問28

培養細胞の細胞致死効果を指標とした RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果の高低による効果の違いを表す指標である。

B 線量率を変化させても、その値は変わらない。

C 生存率 10% の場合と 50% の場合とでは値が異なる。

D 放射線防護剤の存在下で照射すると、その値は変化する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:RBE は線質による効果の違いを表す指標である。

B 誤:RBE は線量率、防護剤の存在などの照射条件が異なれば、値は変化する。

C 正:注目する指標が異なれば、値は変化する。

D 正

問29

放射線荷重係数(ICRP1990年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 電子線の場合、エネルギーによらず一定の値が与えられる。

B γ線の放射線荷重係数は、X 線と等しい。

C α 線の放射線荷重係数は、陽子線と等しい。

D 中性子の放射線荷重係数は、エネルギーが高くなるにつれ大きくなる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

解説

下の表に放射線荷重係数(ICRP1990年勧告)の値を示す。

光子(X線、γ線) 1
電子、β線、μ粒子 1
中性子(10 keV 未満) 5
中性子(10 keV ~ 100 keV まで) 10
中性子(100 keVを超え ~ 2 MeV まで) 20
中性子(2 MeV ~ 20 MeV まで) 10
中性子(20 MeV 未満) 5
陽子線(2 MeVを越える) 5
陽子線 2
α粒子、核分裂片、重原子 20

問30

LQ モデルに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 係数 α は細胞生存率曲線の 1 次項の係数を示す。

B α/β 比が小さい細胞生存率曲線は肩が大きい。

C 一般に晩期反応組織の α/β 比は早期反応組織の α/β 比に比べ小さい。

D 一般に腫瘍組織の α/β 比は早期反応組織よりも晩期反応組織の α/β 比に近い。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 1

解説

A 正:LQ モデルは、直線2次曲線モデルとも呼ばれ、生存率(S)は線量(D)の関数として S = exp(-αD-βD^2)の式で表される。

B 正:α/β比が大きいと直線に近づく。

C 正:α/β比は早期反応組織で約 10 Gy、晩期反応組織で 1 ~ 4 Gy とされる。

D 誤:腫瘍組織のα/β比は 10 Gy 程度で早期反応組織に近い。

造血幹細胞についての記述

造血は胎児期では主に肝臓で行われるが、出生後は主に骨髄で行われ、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞を生産している。白血球が減少すると免疫機能が低下する。赤血球の減少は、貧血をおこし、 血小板が減少すると血液が凝固しにくくなる。骨髄では造血幹細胞から種々の血液細胞が生産される。幼児期には造血が多く、骨髄は赤色を呈することから赤色骨髄と呼ばれ、 放射線による障害のリスクは大きい。しかし、高齢者では加齢によりその機能は低下し、脂肪細胞が増えていく。このような骨髄はその外観から黄色と呼ばれる。

 

造血細胞由来の腫瘍は広義では白血球と呼ばれ、原爆被爆者では発生の潜伏期は2〜3年、ピークは被爆後6〜7年である。被爆時年齢が若いほど初期の 死亡リスクは高く、リスク減少は急激である。一方、被爆時年齢の高い者は初期の死亡リスクは低く、その減少傾向は緩やかである。線量反応関係は2Gy以下では直線2次(LQ)モデル が最も良い適合を示す。病型別では慢性リンパ性白血球発生のリスクの増加は認められていない。

DNA分裂に関する記述

細胞は、DNAの複製と細胞分裂を繰り返しながら増殖する。これを細胞周期と呼び、DNA複製の時期をS期、細胞分裂の時期をM期と呼ぶ。 細胞分裂の時期には、DNAが染色体という特徴的な構造をとるので、形態的に区別することができる。S期の細胞は、形態的に区別することは困難であるが、 DNAの前駆体であるチミジンの取り込みによって知ることができる。また、S期の後、M期の前の時期をG2期、M期の後、 S期の前をG1期と呼ぶ。細胞周期の進行が停止し、増殖していない細胞はG1期の特定の時期にとどまっていると考えられており、これをG0期と呼ぶことがある。 細胞周期をそろえた培養細胞の各時期に放射線を照射し、その後の生存率を解析することにより、放射線感受性の細胞周期依存性を調べることができる。一般的に細胞はM期で照射した場合に最も高い感受性を示す。また、G1期の後半からS期への移行期も高い感受性を示す。 これに対し、S期後半の細胞が最も高い抵抗性を示す。

 

増殖している細胞に放射線照射をすると、細胞周期の進行が一時的に停滞する。この細胞周期の停滞には、DNA損傷を基点とする細胞内情報伝達系の関与が 知られており、がん抑制タンパク質としても知られるp53や、ヒトの放射線感受性遺伝病である毛細血管拡張性運動失調症のタンパク質として知られるATMなどが重要な役割を果たしている。 毛細血管拡張性運動失調症の細胞では放射線感受性と照射後の細胞周期の停滞の両方に異常が認められることから、放射線感受性と細胞周期の進行が深く関わっていることが示唆される。 照射後細胞を一時的に、増殖を抑制するような環境におくことによって致死効果が軽減されるPLD回復と呼ばれる現象もこのことを示している。

 

第1種放射線取扱主任者 放射化学問題・解説 2

第1種放射線取扱主任者 化学問題・解説  第2弾

問1

次のうち、β- 壊変する核種のみの組み合わせはどれか。

A 33P, 35S

B 45Ca, 60Co

C 90Sr, 125I

D 131I, 147Pm

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

解説

私が特別に作成した資料に載せてます。ここで掲載しようとすると、見にくくなるのでぜひご希望の方は下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

放射性同位元素特性表

問2

次のうち、半減期が 1 万年以上の核種の組み合わせはどれか。

A 40K

B 90Sr

C 129I

D 131I

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

私が特別に作成した資料に載せてます。ここで掲載しようとすると、見にくくなるのでぜひご希望の方は上記サイトまでお願いします。

問3

半減期が 24 時間と 6 時間の 2 つの放射性核種 X,Y の放射能が合わせて 70 MBq であった。この放射能が 24 時間後には 17.5 MBq となった。両核種の娘核種はいずれも非放射性である。初めにあったそれぞれの核種の放射能(MBq)として最も近い組み合わせはどれか。

核種A 核種B

1 30, 40

2 25, 45

3 20, 50

4 15, 55

5 10, 60

解答 1

解説

2つの放射性核種 X(T=24h)、Y(T=6)の放射能をそれぞれ、A(X0)、A(Y0)、24時間後の放射能をA(X24h)、A(Y24h)とすると、次の関係式が成り立つ。

A(X0) + A(Y0) = 70 MBq・・・①、

A(X24h) + A(Y24h) = 17.5 MBq・・・②
半減期 T の放射性核種の t 時間後の放射能は、At = A0・e^(-λt) = A0・(1/2)^(t/T) となる。

したがって、
A(X24h) = A(X0)・(1/2)^(24/24) = A(X0)/2
A(Y24h) = A(Y0)・(1/2)^(24/6) = A(Y0)/16
よって、A(X0) = 2・A(X24h)、A(Y0) = 16・A(Y24h)。①、②式より A(X24h) = 15 MBq。A(Y24h) = 2.5 MBq となる。これにより、A(X0) = 30 MBq。A(Y0) = 40 MBq。

問4

陽電子放射断層撮影法(PET)で利用される次の放射性核種のうち、2 時間以内に放射能が 1/100 に減衰する核種の組み合わせは次のうちどれか。

A 11C

B 13N

C 15O

D 18F

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

A 誤:11C の半減期は20分なため、2時間後には 1/64 にしかならない。

B 正:13N 半減期は10分であるため、2時間後には 1/4096 になる。

C 正:15O 半減期は2分であるため、2時間後には (1/2)^60 になる。

D 誤:18F 半減期は110分であるので、2時間後はほぼ半減する。

問5

1.0 MBq の 14C の原子数として最も近い値は次のうちどれか。ただし、14C の半減期は 5730 年(1.8 × 10^11秒)とする。

1 2.2×10^14

2 1.8×10^15

3 1.2×10^16

4 2.6×10^17

5 3.9×10^18

解答 4

解説

原子数 N の放射性核種の放射能 A[Bq] とその壊変定数 λ[s^(-1)]とその半減期 T[s]の関係式は次のようになる。
A = λN = (ln2/T)・N すなわち、N = (A・T)/ln2 から N = (1.0×10^6×1.8×10^11)/0.693 = 2.6×10^17

問6

9.0 MBq の 14C を含む 10 g の CaCO3 希塩酸で溶液したところ、放射性の気体が発生した。この気体の放射能濃度(MBq/l)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、CaCO3 の式量は 100、気体 1 モルの体積は 22.4 l とする。

1 2.0

2 4.0

3 6.0

4 9.0

5 20

解答 2

解説

次のような化学反応が起こる。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑
※ 炭酸塩の様な弱酸の塩に強酸を加えると、弱酸である CO2 が発生する。 10 g の CaCO3(式量100)は 0.1 mol である。回収率100%とすると、発生した 0.1 mol の CO2 が全て回収されている。
気体 1 mol の体積は 22.4 l であるため、0.1 × 22.4 = 2.24 l
9.0 MBq の 14C を含むので、9.0 MBq ÷ 2.24 l = 4.0 MBq/l となる。

問7

32P で標識したリン酸トリブチル(TBP)を合成したところ、10 MBq を含む 1.0 g の製品を得た。この製品の化学純度は 90 重量%、放射化学純度は 86 % であった。この[32P]TBP の比放射能(MBq/g)として最も近い値は次のうちどれか。

1 0.86

2 0.90

3 0.96

4 9.6

5 10

解答 4

解説

放射化学的純度とは、特定の化学形の放射能が、全放射能に対して占める割合である。ここでは、着目する核種は 32P であり、目的物質は 32P で標識したリン酸トリプチル([32P]TBP)である。
化学純度が90重量%であるため、純粋なTBPは、1.0 g × 0.9 = 0.9 g
また化学純度的純度が 86% であるので、10 MBq × 0.86 = 8.6 MBq
よって比放射能は 8.6 MBq ÷ 0.9 g = 9.6 MBq/g となる。

問8

比放射能が 7.0 MBq/μg の 11CO2 から 20 分かけて、11CH2I を合成した。得られた 11CH3I の比放射能(MBq/μg)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、11C の半減期を 20 分、CO2 と CH3I の分子量はそれぞれ 44 と 142 とする。

1 0.4

2 0.7

3 1.1

4 2.2

5 3.5

解答 3

解説

11CH3Iの式量142、11CO2の式量44より、11CO2を x μgとすると、11CO2の放射能は、7.0x MBq となる。11Cの半減期 20 分より、20 分後には 3.5x MBq となる。全ての11Cが反応して 11CH3I が合成されたとすると、得られた 11CH3I は(x/44) × 142 μg である。よって、11CH3I の比放射能は 3.5x ÷ [(x/44)×142] = 1.1 MBq/μg となる。

 

問9

親核種 X から生成する娘核種 Y は、さらに放射壊変して安定核種に至る。初めに親核種 X のみであった。その後の X の放射能と Y の放射能を合わせた値(Bq)の経時変化を下図に示す。次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A X の半減期は 2 時間を超えない。

B Y の半減期は、10 時間以上経過した後の放射能の変化から求めることができる。

C 10 時間経過した時点では、X よりも Y の放射能(Bq)の方が大きい。

D 10 時間以上経過すると X と Y は放射平衡になる。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

解説

A 正:最初は 8×10^3 Bq、半減する4×10^3 Bq になるのに大体1時間のところを指しているので、Xの半減期は 2 時間を超えない。

B 正:全体の放射能は 1 時間経過で半分になっているため、親核種 X の10時間経過後は、親核種は減衰してほぼ 0 になるため娘核種の半減期を求めることができる。

C 正:10時間後はほぼ娘核種のみとなる。

D 誤:図より親核種Xと娘核種Yの放射能を合わせた値は経時的に減少しているため放射平衡は成立しない。

問10

1.0 MBq の 140Ba と過度平衡にある 140La の放射能(MBq)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、140Ba の半減期は 12.7 日、140La の半減期は 1.68 日とする。

1 0.8

2 1.0

3 1.2

4 1.5

5 1.8

解答 3

解説

この場合、親核種の半減期が娘核種の半減期より十分長いため過渡平衡が成り立つため、N(La)/N(Ba) = λ(Ba)/[λ(La)-λ(Ba)] = T(La)/[T(Ba)-T(La)] が成り立ち、

N(La) = [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × N(Ba)
A(Ba) = [0.693/T(Ba)] × N(Ba) より、N(Ba) = [A(BA)・T(Ba)]/0.693
したがって A(La) = [0.693/T(La)] × N(La) = [0.693/T(La)] × [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × N(Ba) = [0.693/T(La)] × [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × [A(BA)・T(Ba)]/0.693 = [A(BA)・T(Ba)]/[T(Ba)-T(La)] = (1×10^6×12.7)/(12.7-1.68) = 1.2 MBq

問11

ハロゲン元素の同位体を生成する核反応として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 16O(3He,p)

B 40Ar(d,α)

C 75As(α,pn)

D 20Ne(p,pn)

 

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

ここは計算をしてハロゲン元素を覚えておけば解ける問題である。

問12

24Na を生成する核種として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 23Na(n,γ)

B 24Mg(n,p)

C 27Al(n,α)

D 35Si(n,αn)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

ここも計算を間違えなければ解ける問題である。

問13

サイクロトロンを用いて半減期 20 分の放射性核種を製造する時、ターゲットを荷電粒子で 20 分間照射する場合に比較して、照射電流を 2 倍、照射時間を 40 分間とすると、何倍の放射性核種が製造されるか。次の値のうち最も近いものはどれか。

A 2.3

B 2.5

C 3.0

D 3.5

E 4.0

解答 3

解説

試料とする元素を t 分間照射して、得られる半減期 T 分の生成核の放射能 A(Bq) は次の式から導出できる。
A = fσN(1-e^(λt)) = fσN(1-e^((-ln2t)/T))
照射電流は照射粒子束密度に比例するので
A(20分) = 1・f × σ × N × [1 – (1/2)^(20/20)] = fσN/2
A(40分) = 2・f × σ × N × [1 – (1/2)^(40/20)] = (2fσN×3)/4
よって A(40分)/A(20分) = 3 となる。

問14

リンの同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 30P は β+ 壊変して安定な 30Si になる。

B 31P はリンで唯一の安定同位体である。

C 32P は β- 壊変して安定な 32P になる。

D 32P の半減期は 33P の半減期より長い。

E 33P は β- 壊変して放射性の 33S になる。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 1

解説

リンの安定核種は 31P のみである。そのほかの核種については別紙の放射化学にまとめて記載している。

A 正:30P は β+ 壊変及び EC 壊変で 30Si となる。

B 正:31P は安定同位体である。

C 正:32P は β- 壊変して 32S(安定)となる。

D 誤:32P の半減期は 14.26 日、33P の半減期は 25.34日である。

E 誤:33P は β- 壊変して 33S(安定)となる。

問15

環境中の放射能に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 14C は、大気中の 14N と宇宙線の(p,n)反応で生成する。

B 大気中の 3H は、主として 1H3HO として存在している。

C 大理石の方が花崗岩より表面線量率が高い。

D 海岸での大気中ラドン濃度は、海風より陸風の時に高くなる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:14N(n,p)という反応で 14C が生成する。

B 正:3H は天然には大気上層の核反応で作られ、大気中の水素や雨水に混じる。大気中では 3H ガスや水蒸気(1H3HO)として存在している。

C 誤:大理石は石灰岩が変成してできた変成岩の一種である。石灰岩(石灰岩に含まれている放射性核種は 238U 系列と 232Th 系列であり平均して 20Bq/kg 放出される。)は他の岩石に比べて放射性物質が少ない。花崗岩(花崗岩に含まれている放射性核種は 238U 系列と 232Th 系列であり平均して 100Bq/kg 放出される。)が多く分布している地域は線量が高くなる。

D 正:ラドンは岩石・鉱物中のラジウムのα壊変によって生成し、大気中に放出されるため、海より放出は少ない。よって、陸風時に高くなる。

問16

希ガスに関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 3He がトリチウムの β- 壊変で生成する。

B 40Ar が 40K の β- 壊変で生成する。

C 85Kr が 235U の熱中性子による核分裂で生成する。

D 220Rn が 224Rn の α 壊変で生成する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

解説

A 正:3H は β- 放出体であり、β- 壊変により、3He を生成する。

B 誤:40K は β-、EC の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と 40Ar(安定)にそれぞれ変換する。

C 正:235U の熱中性子による核分裂では 80 種類以上の核分裂片が生じ、その質量数はおよそ 72 ~ 160 である。85Kr も核分裂生成物の1つである。

D 正:220Rn(トロン)は天然に存在するトリウム系列に属し、224Ra の娘核種であり、α壊変により生成する。

問17

ウラン系列は 238U(原子番号92) で始まり 206Pb(原子番号82) で終わる。この間の α壊変と β-壊変の回数として正しい組み合わせは次のうちどれか。

α壊変 β壊変

1 6回 8回

2 6回 10回

3 8回 6回

4 8回 8回

5 8回 10回

解答 3

解説

α壊変が x 回、β- 壊変が y 回起こったとすると、質量が 32 減少しているので、-4x = -32。原子番号が 10 減っているので -2x + y= -10 となり、x = 8、y = 6 となる。

問18

同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。ただし原子番号を Z、中性子数を N とする。

A Z と N の和が 5 である安定同位体は存在しない。

B 水素、リチウム、ホウ素、窒素では、Z と N がともに奇数の安定同位体が存在する。

C 安定同位体では Z と N がともに偶数のものが最も多い。

D Z が偶数で N が奇数の同位体が β- 壊変すると、Z も N もともに偶数の同位体になる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

安定同位体を別紙の表に示す。

A 正:N+Z=5 は質量数なので、質量数5の安定同位体はない。

B 正:H(Z=1),(安定同位体の質量数 A=1,2)、Li(Z=3),(安定同位体の質量数 A=6,7)、B(Z=5),(安定同位体の質量数 A=10,11)、N(Z=7),(安定同位体の質量数 A=14,15)。これによりZ と N がともに奇数の安定同位体が存在することがわかる。

C 正:安定同位体は陽子と中性子の数がほぼ等しく、中でも、陽子と中性子の数が共に偶数であるものが最も多い。これはこのように覚えておいた方が良い。

D 誤:β- は原子番号が1増加するので、z が偶数の場合は +1 になると奇数になるため誤りとなる。

問19

放射性同位元素の測定に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 51Cr はGe検出器で測定できる。

B 3H は液体シンチレーション検出器で測定できる。

C 14C は BF3ガスカウンタで測定できる。

D 18F はBGO検出器で測定できる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正:Ge検出器はγ線用の検出器である。通常のGe検出器が測定できるγ線エネルギーの下限は約 50 keV であるが、広領域では数keV程度の低エネルギーX線まで測定可能である。ここで、 51Cr は軌道電子捕獲と低いエネルギー(0.32MeV)のγ線放射(9.92%)によって 51V(安定) となるため、放出するγ線を測定できる。

B 正:液体シンチレーションは低エネルギーβ線、α線を検出するため、3H は高感度で測定可能である。

C 誤:BF3カウンタは熱中性子に対して大きな断面積を持つ核反応を利用する検出器であり、中性子測定に用いられる。14C の β-線のエネルギーは非常に低いのでBF3カウンタでの測定はできない。

D 正:BGO はγ線測定用シンチレータの一つであり、実効的な原子番号が高く、比重が大きいので、小型でも高い検出検出効率を持つ。18F は陽電子放出核種であり、陽電子消滅反応による消滅光子をBGO検出器で測定できる。PET装置の検出器によく用いられる。

問20

次の操作により、放射性核種が沈殿する反応の組み合わせはどれか。

A [14C]炭酸ナトリウム溶液に塩化カルシウム溶液を加える。

B [35S]硫酸ナトリウム溶液に塩化バリウム溶液を加える。

C [90Sr]塩化ストロンチウム溶液に炭酸ナトリウム溶液を加える。

D [131I]ヨウ化ナトリウム溶液に硝酸銀溶液を加える。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説 下に反応式を示す。

A 正:Na2[14C]O3 + CaCl2 → Ca[14C]O3 ↓ + 2NaCl

B 正:Na2[35S]O4 + BaCl3 → Ba[35S]O4 ↓ + 2NaCl2

C 正:[90Sr]Cl2 + Na2CO3 → [90Sr]CO3 ↓ + 2NaCl

D 正:Na[131I] + AgNO3 → Ag[131I] ↓ + NaNO3

問21

64Cu、65Zn、110mAg を含む金属イオンの硝酸酸性溶液に HCl を加え、生成した沈殿 A をろ過する。残った溶液に硫化水素ガスを通し、生成した沈殿 B をろ過し、ろ液 C とする。A、B、C それぞれに主として含まれる核種の組み合わせとして正しいのは次のうちどれか

沈殿A 沈殿B ろ液C

1 65Zn 64Cu 110mAg

2 64Cu 110mAg 65Zn

3 64Cu 65Zn 110mAg

4 110mAg 64Cu 65Zn

5 110mAg 65Zn 64Cu

解答 4

解説 下の表に沈殿表を示す。

問22

次の操作のうち、放射性の気体が発生するものの組み合わせはどれか。

A [14C]NaHCO3 に硫酸を加える。

B [32P]Ca3(PO4)2 に硫酸を加える。

C [35S]FeS に硫酸を加える。

D [36Cl]NaCl に濃硫酸を加える。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

解説

下に反応式を示す。

A 正:NaH[14C]O3 + H2SO4 → NaHSO4 + H2O + [14C]O2 ↑

B 誤:Ca([32P]O4)2 + 2H2SO4 → Ca(H2[32P]O4)2 + 2CaSO4 これはリン鉱石と硫酸を反応させて過リン酸石灰を製造する方法である。

C 正:Fe[35S] + H2SO4 → FeSO4 + H2[35S] ↑ 硫化物のような弱酸塩に強酸を加えると弱酸の硫化水素が発生する。

D 正:Na[36Cl] + H2SO4 → NaHSO4 + H[36Cl] ↑

問23

半減期 14 日の放射性核種のある製品について、検定時の核種純度が 98.5% であり、不純物として半減期 25 日の核種だけを含むとき、この製品の検定時から 63 日後の核種純度(%)として最も近い値は次のうちどれか。

1 82

2 86

3 90

4 94

5 98

解答 4

解説

放射性核種純度:化学形とは関係なく着目する放射性核種の放射能がその物質の全放射能に占める割合。
全放射能を A とすると、着目する核種の放射能は 0.985A、不純物の放射能は 0.015A となる。それぞれの半減期は 14日と25日であるので、63日後に着目する核種の放射能は、

0.985A × (1/2)^(63/14) となる。また、不純物の放射能は、

0.015A × (1/2)^(63/25) となる。

よって、63日後の放射能は、0.985A × (1/2)^(63/14) + 0.015A × (1/2)^(63/25) となる。

よって求める核種純度は、

[0.985A × (1/2)^(63/14)]/[0.985A × (1/2)^(63/14) + 0.015A × (1/2)^(63/25)] = 0.943

したがって約 94%

問24

有機標識化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 有機化合物にリチウム化合物を混合して熱中性子照射することにより、トリチウム標識化合物を合成することができる。

B トリチウム化合物の水溶液は、冷凍して保存する。

C 非放射性の不純物の混入は、放射性核種純度を低下させる。

D 化学純度を上げていくと、比放射能は一定の値に近づく。

E 放射化学純度は、逆希釈法で求めることができる。。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 3

解説

RIの貯蔵・保管に際して、非密封RIに対して第一に守るべきことは汚染に関する安全確保である。使用後貯蔵施設に保管する際には貯蔵容器表面に汚染がないことをスミア検査で確認する。放射性物質を直接入れる内容器のほかに万一も 場合に備えて気密性のよい外容器を用意する。外容器とは緩衝材や吸収剤を入れて内容器の転倒破損を防ぎ、万一破損しても溶液が外に漏れないようにする。放射線の遮蔽のためにX線、γ線に対しては鉛容器、β線に対してはプラスチック容器に入れて保管する。

また、RIの種類によっては貯蔵温度を調整する必要がある。3H、14C、35Sなどの低エネルギーのβ放出体の標識有機化合物はそれ自身の化学的安定性のほか自己放射線により分解が促進されやすいので低温で貯蔵する。

水溶液:2℃

ベンゼン溶液:5~10℃

溶液を凍結すると分解を促進するが液体窒素温度での凍結は分解を抑制する。

A 正:Li をターゲットとする場合、熱中性子のような低エネルギー中性子でも核反応を起こす。6Li(n,α)3H:6Li + n → 3H + 4He となる。

B 誤:3H 化合物は凍結すると分解が早いので、2℃ くらいで保管する。

C 誤:放射性核種純度は、化学形とは関係なく着目する放射性核種の放射能がその物質の全放射能に占める割合である。したがって、非放射能の不純物の混入は、放射性核種純度に関与しない。

D 正:化学純度を上げることで不純物が減少する。したがって、比放射能は一定の値に近づいていく。

E 正:放射化学的純度は、指定の化学形で存在する着目する放射性核種が、その物質全放射能に占める割合である。微量物質である標識化合物の放射化学的純度の検定には、各種のクロマトグラフィと逆希釈法の利用が適切である。

問25

試料中の成分 A を定量するため、放射性同位元素で標識した同じ化学形の化合物 A (比放射能100kBq/mg)を 10 mg を加え均一した。その後、A を分離して生成したところ、比放射能は 25 kBq/mg になった。試料中の成分 A の量(mg)は次のうちどれか。

1 20

2 30

3 40

4 60

5 80

解答 2

解説

同位体希釈分析法の基本形で RI によって定量分析をする手法である。定量する資料の重量 X、添加する同じ化学形の RI の重量 a、比放射能 S0 とすると次式の関係が成り立つ。S(a+X) = S0a この式より 100 × 10 = 25( 10 + X ) X = 30。

問26

熱中性子放射化分析で照射試料を入れる容器の材料として適しているものの組み合わせは、次のうちどれか。ただし、照射終了 2 時間後に容器ごと Ge検出器で測定するものとする。

A アルミニウム

B ポリエチレン

C ホウケイ酸ガラス

D ポリ塩化ビニル

E 石英ガラス

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2

解説

放射化分析:試料に中性子を照射して核反応を起こさせ、生成する放射性核種からの放射能特性及び放射能を計測・解析することで試料元素の定量を行う分析法。中性子照射する際に用いる容器は、不純物の量が少ないことが原則である。

A 正:アルミニウムは 27Al(100%)からなる。27Al(n,γ)28Al が生成する。しかし 28Al の半減期は 2.241 分と短いので、2時間後には検出されない。

B 正:ポリエチレンはエチレンの重合体で原子番号の小さい水素、炭素の化合物であり、放射化されない。ポリエチレンは機器中性子放射化分析(INAA)用試料用器材としてよく用いられるが、長時間照射による融解、ポリエチレンに含まれる不純物量に注意が必要である。

C 誤:ホウケイ酸ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)とホウ酸(B2O3)を混合したガラスである。照射容器に B や Li など中性子吸収に伴う核反応の発熱で試料が熔けたり容器が変形したりする。したがってホウケイ酸ガラスを用いることはできない。

D 誤:ポリ塩化ビニルは塩化ビニル(CH2=CHCl)の重合体である。塩素の同位体存在度は 35Cl が 75.77%、37Cl が 24.23% である。35Cl(n,γ)36Cl で 36Cl(半減期3.01×10^5 年)が生成し、35Cl(n,α)32P で 32P(半減期 14.26日)が生成し、 26Cl(n,p)35S で 35S(半減期 87.51日)が生成する。また、37Cl(n,γ)38Cl で、38Cl(半減期37.24分)が生成する。したがって、2時間後の測定では影響を及ぼす。

E 正:長時間照射の場合は、石英管が試料容器として最もよく利用されている。石英ガラスの成分は、二酸化ケイ素(SiO2)である。30Si の同位体存在度は 3% 。熱中性子に対する断面積は 0.1 barn である。30Si(n,γ)31Si によって得られる 31Si の半減期は 2.622時間である。

問27

アクチバブルトレーサーに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A トレーサーの検出に放射化分析が用いられる。

B 放射化断面積の大きい元素が適している。

C 自然界における存在量の少ない元素が適している。

D 魚類の回遊調査に利用された例がある。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

一般に放射性核種は、トレーサーとして各方面に用いられるが、その放射能が対象物に影響を与えるおそれのある場合、アクチバブルトレーサーの利用が着目される。アクチバブルトレーサーの検出には、放射化分析が利用される。これには 放射化分析の感度が高く、対象物中に存在する元素により誤差を生じることがなく、かつ、化学的に挙動が類似してトレーサーの役割が果たせるという条件を備えた安定同位体が用いられる。アクチバブルトレーサーは魚の放流場の回遊状態の調査や地下水の活動調査などに利用されている。

A 正

B 正

C 正

D 正

問28

放射性同位元素の利用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ(ECD)で 63Ni の EC 壊変が利用される。

B 透過型厚さ計で、137Cs からのγ線が利用される。

C フィルムの厚さ計で、147Pm からのγ線が利用される。

D 蛍光 X 線分析装置で、241Am からのγ線が利用される。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

解説

別紙の放射化学の特性表に示す。

A 誤:63Ni ガスクロマトグラト用ECDは、放射性物質(63Ni)から出るによるガスの電離を利用している。

B 正:137Cs は元来 β- 放出体でありながら、γ線源として取り扱われる。137Cs 透過型厚さ計は 137Cs からのγ線を利用している。

C 正:147Pm 厚さ計は β-線の透過あるいは散乱作用を利用している。

D 正:低エネルギーγ線源は電子捕獲壊変に伴うX線を利用するものが多い。241Am は低エネルギーγ線源として蛍光X線分析装置などに用いられる。

問29

液体シンチレーションカウンタによる測定に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 液体シンチレータでは、蛍光物質を有機溶媒に溶かしてある。

B 水溶液の測定には、乳化シンチレータが用いられる。

C α壊変核種の測定には適さない。

D 4π測定では計数効率が大きい。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

解説

液体シンチレーションカウンタは、バイアルと呼ばれるガラスやプラスチック製の小ビンに測定試料を溶かし込んだシンチレータを入れて測定する。バイアル中のシンチレータから放出される光を光電子増倍管で受けて増幅、電気信号に変えて 測定する。

A 正:トルエン、混合キシレン、プソイドクメン、ジオキサンなどの溶媒に、PPOブチルPBD などの蛍光物質の溶質を溶かし込んだものが有機シンチレータである。

B 正:水溶性試料には界面活性剤を配合した乳化シンチレータが広く用いられる。

C 誤:液体シンチレータはα線、β線等の荷電粒子を測定できる。

D 正:内部線源測定であるから、幾何学的検出効率は 100% であり、β線測定の際に問題になる線源による自己吸収、後方散乱、検出器の窓による吸収などの問題が全て解決できる。

問30

放射線化学に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A LET が大きいほど、単位長さ当たりのスプール数は少なくなる。

B スプール内のラジカルは、不対電子を持つ。

C ラジカル捕捉剤としてメタノールが用いられる。

D 水溶液中では、水和電子が生成する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:1個のスプールを作るに要する平均エネルギーでLETを割れば、単位距離内にできるスプールの数になる。したがって、LETが大きいことは単位距離あたりに多くのスプールができることである。

B 正:放射線照射によってスプールが形成され、イオン、ラジカル、励起分子などの活性化学種の集団が形成される。ラジカルは、不対電子を持つ原子、原子団分子である。

C 誤:ラジカル捕捉剤は、遊離基を捕捉して反応機構に変化を与え、この変化によって反応機構を解明する。NO、DPPH、O2、I2、H2S、オレフィン類などがある。

D 正:イオン化により生じた電子は、さらに高次のイオン化を起こしたり、親イオンを再結合したりして消滅する。水中では、水分子数個にゆるく束縛され水和電子を形成する。

中性子や荷電粒子の照射により起こる核反応についての記述

図は陽子数が 24 ~ 28、中性子数が 26 ~ 36 の核種を表している。太枠で囲まれているものは安定同位体で同位体存在度(%)が併記されている。そのほかのものは放射性同位体(RI)である。RI は安定同位体から核反応によって作られることが多い。

この核図表では同位体が横に並び、縦には同中性子体が並んでいる。放射壊変において、60Co は β- 壊変して、 60Ni となり、57Co は EC 壊変して 57Fe になる。中性子捕獲反応によって生成する RI の種類は、照射する元素における安定同位体の分布に依存する。例えば単核種元素の Mn をターゲットとする(n,γ)反応では RI として 56Mn のみが生成するが、Cr をターゲットとすると複数の RI が同時に生成することがわかる。(n,γ) 反応では原子番号が 変わらないため、生成する RI には大量の担体が含まれる。そこで比放射能の大きな RI の製造には原子番号が変わる核反応を選択する。57Co は、(α,p) 反応で 54Fe から製造することもできるし、60Ni (p,α) 57Co 反応や 55Mn (α,2n) 57Co 反応を用いることもできる。これらの反応では、反応核に Co をターゲットから化学分離すると無担体の 57Co を製造することができる。

 

補足

Mn の同位体には 54Mn、55Mn、56Mn、57Mn が存在するが、安定同位体は 55Mn のみである。他には別紙の表に記載している。

 

中性子や荷電粒子の照射によって生成する RI の放射能は nfσ(1-e^(-λt)) と表される。ここで、 n はターゲット核の数、f は照射粒子フルエンス率、σ は反応断面積(b)、λ は生成核の壊変定数、t は照射時間である。この(1-e^(-λt)) を飽和係数といい、例えば照射時間 t が半減期と等しいときには 0.5 となる。Fe を熱中性子照射すると、(n,γ)反応により 55Fe と 59Fe が同時に生成する。半減期に対して照射時間が短い場合には飽和係数が λt と近似できることから、熱中性子をフルエンス率 1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1) で 1 日照射した直後の Fe 中の 55Fe と 59Fe の放射能(A) の比 [A(55Fe)/A(59Fe)] を見積もると、約 1.5 となる。なお (n,γ) 反応断面積と生成核の半減期を表に示す。

 ターゲット核  反応断面積 σ(b)  生成核  半減期(日)
 54Fe  2.2  55Fe  1000
 58Fe  1.3  59Fe  45

 

解説

生成放射能の計算 A = f・N(0)・(1-e^(-λt)) = f・N(0)・(1-e^(-ln2・t/T))
ここで、t << T のとき、以下の近似ができる。
e^(-lnλt) ≒ 1 – λt
この 2 式より
A = f・N(0)・(1-(1-λt)) = f・N(0)・λt = f・N(0)・ln2(t/T) ・・・・① という式が成り立つ。
照射した直後の 55Fe 及び 59Fe の放射能は、それぞれ 1/1000 << 1、1/45 << 1 として ① の式より、ターゲット核の数を N(Fe) とすると(54Fe:5.4%、58Fe:0.3%)なので、 A(55Fe) = 1.0 × 10^12 × 2.2 × 10^(-24) × 0.058 × N(Fe) × ln2 × (1/1000)
A(59Fe) = 1.0 × 10^12 × 1.3 × 10^(-24) × 0.003 × N(Fe) × ln2 × (1/45)
よって、[A(55Fe)/A(59Fe)] = (2.2 × 0.0058/1000)/(1.3 × 0.003/45) = 1.47 ≒ 1.5 となる。

 

速中性子照射では (n,p) 反応が利用できるため高比放射能の RI トレーサーを製造することができる。例えば Co からは 59Fe が得られる。速中性子照射後の Co ターゲットから 59Fe を化学的に分離する方法がいくつかある。まず照射後の Co ターゲットを希硝酸に溶解すると Co は +2 価、59Fe は +3 価となる。陽イオン交換樹脂充填カラムを使う方法では、0.5 mol/l 塩酸溶液中で Fe(3+) の方が Co(2+) より樹脂に吸着しやすいことを利用して、カラムに 59Fe(3+) を吸着させ Co と分離する。陰イオン交換樹脂を用いて分離する 方法では、0.5 mol/l 塩酸溶液中で Fe(3+) のみがクロロ錯体を形成する性質を利用して分離を行う。また 8 mol/l の塩酸溶液からの溶媒抽出では、 Fe だけを選択的にジイソプロピルエーテルに抽出することができる。

 

解説

陽イオン交換樹脂・・・陽イオンを吸着、自身の陽イオンを放出。特性として周期表の同一族では原子番号の増加するとともに、多価陽イオンほどに吸着能が高くなる。アルカリ金属イオンの吸着能はイオン半径が大きいほど小さくなる。
陰イオン交換樹脂・・・陰イオンを吸着、自身の陰イオンを放出。特性としてほとんど吸着・全く吸着しない元素として、Sc、Y、Ac、Tl(I)、Ni、Al がある。
吸着するものとして Fe(3+)、Co(2+)、Zn(2+) は塩化物イオンが存在すると FeCl(4-)、CoCl4(2-)、ZnCl4(2-) のクロロ錯体を形成する → 陰イオン交換樹脂に強く吸着する
クロロ錯体の形成の強さとして → Ni(2+) < Mn(2+) < Co(2+) < Cu(2+) < Fe(3+) < Zn(2+)
続いて Fe(3+) を含む 7.7 M から 8 M 塩酸溶液を分液漏斗に入れ、同容量のジイソプロピルエーテルを加えて振り混ぜて溶媒抽出すると、Fe(3+) は塩酸溶液中でクロロ錯体 HFeCl4 を作り、イオン会合して 100% 近くジイソプロピルエーテルに抽出される。

 

59Fe の比放射能が 1.0 MBq/mg Fe の希塩酸溶液がある。これから 10 kBq を Fe 濃度が未知の水溶液 1.0 l に加えてよく撹拌して混合した。アンモニア水を加えて水酸化鉄を沈殿させ、その沈殿から酸化鉄を得た。この酸化鉄中の 59Fe の比放射能は 100 Bq/mg Fe であった。この実験から濃度未知の水溶液中の鉄の濃度は 0.1 g/l と見積もられる。

 

解説

これは直接希釈法なので計算式は 10 × 10^3 = 100(x+0.01) x = 99.99[mg Fe] ≒ 0.1[g Fe] 溶液は 1.0 l なので、0.1/1.0 = 0.1[g/l] となる。


第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説 2

第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説 第2弾

 

問1

次のうち、1(又は100%)を超える可能性のあるものの組み合わせはどれか

A 内部転換係数

B 蛍光収率

C ファノ因子

D 同位体存在度

E 線量ビルドアップ係数

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答 5

解説

A 正:内部転換係数 = [内部転換電子放出数]/[γ線放出数] であり、0 から無限大までの値をとりうる。

B 誤:蛍光収率 = 電子軌道の空席あたりに放出される特性X線の割合 <= 1 である。

C 誤:ファノ因子は検出器のエネルギー分解能に関する因子。放射線が検出器に入射した際に生成されるチャージキャリアなど(電子-イオン対、電子-正孔対など)の個数を N とすると、ファノ因子 F は、F = [観測された N の分散]/[ポアソン統計から予測される N の分散]で定義される。シンチレーション検出器では F = 1 であるが、Ge検出器では F = 0.13 程度であり、電子-正孔対の生成が独立した現象出ないことを示している。F <= 1

D 誤:同位体存在度 = 天然に存在する元素中の各同位体の原子数割合(百分率) <= 100

E 正:線量ビルドアップ係数 = [ある点に到達する全光子による線量]/[散乱を受けていない一次光子による線量] >= 1 となる。

問2

次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 光子の真空中での速度は、光子のエネルギーにより異なる。

2 光子のエネルギーは、振動数に比例する。

3 光子の運動量は、エネルギーに比例する。

4 光子は粒子性とともに波動性を示す。

5 X線とγ線はいずれも光子である。

解答 1

解説

1 誤:真空中の光の速度は一定で、c = 3.0 × 10^8(m/s)。物質中と真空中では異なる。光の速度 = c/[物質の屈折率]

2 正:E = h・ν より、光子のエネルギーは振動数に比例する。

3 正:運動量P = E/c = (h・ν)/c となり、光子の運動量はエネルギーに比例する。

4 正:

5 正

問3

原子の軌道電子の結合エネルギーが関係するものとして正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 内部転換電子のエネルギー

B 吸収端のエネルギー

C 特性X線のエネルギー

D 消滅放射線のエネルギー

E 弾性散乱中性子エネルギー

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 1

解説

A 正:核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換というため関係がある。

B 正:吸収端とは軌道電子の結合エネルギーが切れて、外側の電子軌道に移れるエネルギーを指します。

C 正:特性X線は軌道電子の結合エネルギーが切れて、原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される。

D 誤:電子対生成で発生した陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅放射線が発生する。

E 誤:原子核の質量と散乱角度に依存する。

問4

次のうち、特性X線を放出しないものはどれか。

1 高速電子の電離・励起作用

2 光電効果

3 軌道電子捕獲(EC)

4 α線のラザフォード散乱

5 内部転換

解答 4

解説

1 誤:電離によって深い軌道に空席が生じた場合、あるいは励起にともなって特性X線が放出されることがある。

2 誤:光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。

3 誤:軌道電子捕獲が起こると空席の軌道を外側の電子が埋めるので、特性X線の発生あるいは、オージエ電子の放出がある。

4 正:ラザフォード散乱は、α線等の荷電粒子が原子核のつくる電場によって散乱される現象であり、正の電荷をもつ原子核が、原子の中心に、ほぼ点状に存在することが見出された。したがって特性X線は放出されない。

5 誤:核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換といい、この放出される電子が K殻、L殻等の電子にエネルギーを与えることで特性X線が放出される。

問5

β壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 最大エネルギーが同じでも、β+壊変とβ-壊変では、エネルギースペクトルの形状は異なる。

B β+壊変は、壊変前後の中性原子の質量差が電子の質量以上で起きる。

C β-壊変における壊変の最大エネルギーは、壊変前後の中性原子の質量差で決まる。

D β壊変の壊変エネルギーは、常に娘核種とβ粒子に分配される。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正:β-壊変とβ+壊変では下図のようにスペクトルの形状は異なる。

B 誤:電子の質量の 2 倍以上の質量差が必要。

C 正

D 誤:β+壊変 p → n + ν + e+ という壊変をする。一方 β-壊変は n → p + ν- + e- となり、ニュートリノも放出される。

問6

ヘリウム原子核4Heの結合エネルギー(MeV)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.3

2 1

3 3

4 10

5 30

解答 5

解説 核子あたりの結合エネルギーは約 7 eV であり、7 × 4 = 28 eV となる。

問7

10GBqの241Amの質量(g)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし241Amの半減期を1.4×10^10s、アボガドロ定数を6.0×10^23mol^(-1)とする。

1 4×10^(-5)

2 2×10^(-4)

3 6×10^(-3)

4 8×10^(-2)

5 1×10^(-1)

解答 5

解説

R = Nλ、λ = 0.693/T、N = (m/M) × 6.0 × 10^(23) という計算式が成り立つので質量 m = (241/6.0×10^(23)) × (1.4×10^(10)/0.693) × 1.0 × 10^(9) = 8.1 × 10^(-2) g となる。

問8

次の放射性核種のうち、β線スペクトロメータのエネルギー校正に最も適したものはどれか。

1 14C

2 22Na

3 60Co

4 137Cs

5 241Am

解答 4

解説

β線スペクトロメトリーにおいて線スペクトルを測定するため、内部転換電子を放出する核種 109Cd, 137Cs が用いられる。この137Cs は娘核種の 137mBa が線スペクトルを有する内部転換電子を放出する。

問9

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 内部転換は、β壊変に属する。

B 軌道電子捕獲(EC)は、β壊変に属する。

C 内部転換では、ニュートリノは放出されない。

D 軌道電子捕獲(EC)では、ニュートリノは放出されない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:内部転換は核異性体転移や、壊変後の娘核種が励起状態のときに生じるものである。EC、α壊変に伴うこともある。

B 正:軌道電子捕獲は不安定な原子核が軌道電子を核内に取り込むことにより、陽子が中性子に変わることを軌道電子捕獲という。核内ではp + e- → n + ν となり、原子番号が1つ減少し、質量数は変わらない反応をする。

C 正:内部転換は原子番号も中性子数も同じで、核内エネルギー準位の異なる核種を互いに核異性体というが、エネルギーが不安定状態にある核異性体より安定なエネルギー準位の核異性体となるためにγ線を放出する。よってニュートリノは放出されない。

D 誤:軌道電子捕獲の反応は、核内ではp + e- → n + ν となりニュートリノは放出される。

問10

次の記述のうち、シンクロトロンに関する説明として誤っているものはどれか。

1 粒子を周回させるために磁場を用いる。

2 粒子を加速するために高周波電場を用いる。

3 加速するにしたがって粒子の軌道半径は大きくなる。

4 電子や陽子の高エネルギー加速器として用いられる。

5 あらかじめ、粒子を加速する前段の加速器が必要である。

解答 3

解説

シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事でX線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。

問11

核反応で原子核XがYに変わるとき、起こり得るものの組み合わせは次のうちどれか。ただし、M、Nは質量数、原子番号を、また、( )内のn、p、d、αは中性子、陽子、重陽子、α粒子を、それぞれ表す。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2

解説

n:中性子、p:陽子、d:重陽子、α:He原子核 と覚えておけば質量数、原子番号の変化がわかる。

問12

質量数204の原子核が7.0MeVのα粒子を放出した。その生成核の反跳エネルギー(MeV)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.062

2 0.14

3 0.62

4 1.4

5 6.2

解答 2

解説

α粒子を放出した後の娘核種の質量数は 200 である。壊変のエネルギーを E とすると、α線のエネルギーEα = 200/(200+4) × E、反跳エネルギーED = 4/(200+4) × E、したがってED = (4/200) × Eα = 0.14 MeV となる。

問13

次の放射線のうち、水中に入射すると0.5MeV以上のエネルギーの光子が発生するものの組み合わせはどれか。

A 1MeVのX線

B 1MeVの電子

C 0.1MeVの陽電子

D 熱中性子

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正:コンプトン効果が起こり、散乱光子が放出される。散乱光子エネルギー hν を求める式は hν = (hν0)/[1 + ((hν0)/m0c^2) × (1 – cosθ)]となり、散乱角度が 0° ~ 60° のときに 0.5 MeV の光子が放出される。

B 正:電子が水中に入射するとチェレンコフ光が発生する。1 MeV × [(1/(√1-(v/c)^2))-1] = 1 Mev × [(1/(√1-(1/n)^2))-1] = 1 Mev × [1-(1/(√1-(1/1.33)^2))-1] ≒ 515 kev のエネルギーを持つ光子が発生する。

C 正:陽電子はエネルギーによらず、0.51MeV の消滅放射線を放出する。

D 正:熱中性子はエネルギーの低い中性子であるが、エネルギーの高い励起状態の核が形成される。この励起状態からγ線が放出される。水素による捕獲で約 2 MeV のγ線が放出される。

問14

制動放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 入射した電子が原子核に吸収されて発生する。

B 吸収物質の原子番号が大きくなるにつれて発生しやすくなる。

C エネルギー分布は連続スペクトルである。

D 最大エネルギーは入射電子エネルギーの1/2乗に比例する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:制動放射は原子核の電場によって進行方向が曲げられたり、減速することにより発生する。

B 正:制動放射は原子番号が大きくなるにつれて発生しやすくなる。発生強度 I = K × i × V^2 × Z と表せる。K:定数。i:電流。V:電圧。Z:原子番号

C 正:制動放射線は連続スペクトルを示す。連続スペクトルを示す光子・粒子はβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックスウェル・ボルツマン分布に従う連続分布がある。

D 誤:制動放射線の最大エネルギーは入射エネルギーと変わらない。

問15

等速のα粒子の阻止能(A)と重陽子の阻止能(B)との比(A/B)として正しいものは、次のうちどれか。

1 0.2

2 0.5

3 1

4 2

5 4

解答 5

解説

衝突阻止能 S ≈ Z^2/v^2 と表されるので、速度が等しいことから、A/B = 2^2/1^2 = 4 となる。

問16

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。ただし、空気の密度を1.3mg/cm3とする。

A 5.3MeVのα線が空気中で停止するまでに生成されるイオン対の数は約1.5×10^5である。

B 5MeVのα線の空気中の飛程は5cm以下である。

C 空気中での飛程が3cmのα線の水中での飛程は50μm以上である。

D α線の空気中の飛程については、そのエネルギーE(MeV)の2乗に比例する実験式が成立する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:W値は約 34 eV なので、イオン対数 = 5.3×10^6/34 ≒ 1.56×10^5

B 正:α線の空気中の飛程は R = 0.318E^(3/2) (E は MeV 単位のα線エネルギー)の近似式があり、代入すると約 3.6 cm である。飛程が 5 cm を超えるα線のエネルギーは 6.3 MeV である。

C 誤:重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、質量数の平方根に比例する。R = √A/ρ という式となる。ここで空気と水では実効的な質量数はあまり変わらないので、密度依存だけを考えれば良い。空気の密度は約 1.3×10^(-3) (g/cm^3)、水の密度は 1.0 (g/cm^3) であるから、水中での飛程 = 3 × 1.3×10^(-3)/1.0 = 3.9×10^(-3)(cm) = 39(μm)

D 誤:α線の空気中の飛程は R = 0.318E^(3/2) (E は MeV 単位のα線エネルギー)の近似式がある。

問17

γ線のビルドアップに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 吸収体中のコンプトン散乱が主として寄与する。

B 吸収体の線減弱係数が大きいほど小さい。

C 吸収体が厚いほど大きい。

D γ線のフルエンス率が高いほど大きい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

A 正:ビルドアップは散乱による補正で用いるため、散乱を起こすコンプトン散乱が主として寄与する。

B 誤:線減弱係数は光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱されるためビルドアップは線減弱係数が大きいほど大きくなる。

C 正:吸収体が厚いほど物質との相互作用により減弱されるためビルドアップは線減弱係数が大きいほど大きくなる。

D 誤:フルエンス率は単位時間当たりの単位面積を通過する粒子数をあらわす。ビルドアップはエネルギーに依存するため粒子数には依存しない。

問18

角度60度でコンプトン散乱した結果生じた散乱光子のエネルギーとコンプトン電子のエネルギーとが等しかった。この場合、入射光子のエネルギー(MeV)として最も近い値は次のうちどれか。

1 0.3

2 0.5

3 0.7

4 1.0

5 1.2

解答 4

解説 コンプトン効果によるエネルギーと運動量の関係式は次の通りとなる。hν0 = hν + E。hν = (hν0)/[1 + ((hν0)/m0c^2) × (1 – cosθ)]。ここで hν0:入射光子のエネルギー、hν:コンプトン散乱した結果生じた散乱光子のエネルギー、E:コンプトン電子のエネルギー、cosθ:コンプトン散乱角度。ここに代入し計算すると、hν0 ≒ 1.0 MeV

問19

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光電子のエネルギーは、入射光子のエネルギーに比例しない

B 照射線量は、光子が空気と相互作用する場合のみ定義される。

C 光電効果の断面積は、入射光子エネルギーとともに常に増大する。

D コンプトン電子のエネルギーは、入射光子のエネルギーと同じになる場合がある。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2

解説

A 正:Ee(光電子エネルギー) = Eγ(入射光子エネルギー) – Eb(軌道電子の束縛エネルギー) という関係式が成り立つため比例はしない。

B 正:照射線量の定義はdmという質量の空気の容積要素内で光子(X線、γ線)によって発生する全ての電子が空気中で完全に静止するとき、空気中に発生した一方符号のイオンの全電荷の絶対値をdQとするとX = dQ/dmと表せる。

C 誤:吸収端以上では減少する。

D 誤:コンプトン効果ではコンプトン電子と散乱光子が放出されるため必ず入射光子のエネルギーより小さくなる。

問20

光電効果に対する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光電効果に対する質量エネルギー吸収係数は、同じ入射光子エネルギーの質量減弱係数よりも小さい。

B 光子と軌道電子との弾性衝突である。

C 原子当たりの断面積は、物質の原子番号のほぼ5乗に比例する。

D 光子エネルギーがK吸収端より高い場合にしか起きない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正:エネルギー吸収係数はエネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値であるため、エネルギー転移係数 > エネルギー吸収係数という関係式が成り立つ。

B 誤:光電効果は非弾性散乱である。

C 正:原子当たりの断面積は、物質の原子番号の 4 ~ 5乗に比例する

D 誤:低い場合にはL殻、M殻等の電子と相互作用する。

問21

コンプトン散乱に対する線減弱係数μを表わす式として正しいものは、次のうちどれか。ただし、物質の原子番号をZ、原子量をA、密度をρ、電子当たりの散乱断面積をμe、アボガドロ定数をNAとする。

1 μ = (μe・A)/(ρ・Z・NA)

2 μ = (μe・Z・NA)/(ρ・A)

3 μ = (μe・ρ・A)/(Z・NA)

4 μ = (ρ・Z・NA)/(μe・A)

5 μ = (μe・ρ・Z・NA)/A

解答 5

解説 単位体積あたりの原子数を N とすると、μ = μe × Z × N と表せる。N = (ρNA)/A であるから、μ = (μe・ρ・Z・NA)/A となる。

問22

10 MeVの中性子が2Hに弾性衝突する場合、中性子のエネルギーが0.1MeV以下となるための最小の衝突回数として正しいものは、次のうちどれか。

1 2回

2 3回

3 4回

4 5回

5 6回

解答 2

解説 エネルギー E0 の中性子(質量m)が 質量 M の物質に弾性衝突してエネルギー En になった時のエネルギーも求め方は En = [(M-m)/(M+m)]^2 × E0 と表せる。ここの問いにおいて、m=1、M=2 であるので、En=(1/9)E0 となる。10MeV から 0.1MeV へは、0.1/10 = 1/100 のエネルギー減少である。2H との散乱では1回に最大 1/9 に減少するので、最低3回の衝突が必要となる。

問23

物理量と基本単位に関する次の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。

1 エネルギー ・・・ kg・m^2・s^(-2)

2 運動量 ・・・ kg・m・s^(-1)

3 吸収線量 ・・・ m^2・s^(-2)

4 吸収断面積 ・・・ m^2

5 粒子フルエンス ・・・ m^(-1)

解答 5

解説

1 正

2 正

3 正:[J/kg] = [(kg・m^2)/(s^2・kg)] = [m^2/s^2]

4 正

5 誤:[m^(-2)]が正しい

問24

次の2つの量の積あるいは商のうち、無次元となるものの組み合わせはどれか。

A [質量エネルギー吸収係数]×[質量面密度]

B [核反応断面積]×[粒子フルエンス]

C [放射能]×[測定時間]

D [飛程]×[密度]

     

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

解説

A 正:[kg^(-1)・m^2] × [kg・m^(-2)] = [無次元]

B 正:[m^2] × [m^(-2)] = [無次元]

C 正:[Bq(=s^(-1))] × [s] = [無次元]

D 誤:[m] ÷ [kg・m^(-3)] = [kg^(-1)・m^4]

問25

金属板(直径 1 cm、厚さ 0.1 mm)に付着している 210Po からのα線を検出できる検出器として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。

A 4π比例計数管

B ZnS(Ag)シンチレーション検出器

C 液体シンチレーション検出器

D 固体飛跡検出器

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正:比例計数管は主にα線とβ線を測定するのに用いられる。

B 正:ZnS(Ag)シンチレータは通常α線の検出に用いられるが、多結晶のためエネルギースペクトルの測定に適さない。

C 正:液体シンチレータは低エネルギーβ線とα線の検出に用いられる。α線は0.1mmの厚さの金属板を通過できないので、付着している面が上になるようにシンチレータ中に沈める必要がある。また余談として、液体シンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる 陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。)

D 正:プラスチックなどの絶縁性の固体中を陽子以上の重荷電粒子が通過すると、通路に沿って固体の原子配列に歪みが生じ、放射線損傷が生じる。α線も同様でその傷をエッチングして観測する。

問26

気体または半導体における電子、陽イオンまたは正孔の移動に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 気体中では、陽イオンの移動度は自由電子の移動度とほぼ同じである。

B 直流電離箱においては、電子移動による電気信号のみを利用している。

C 高純度Ge検出器においては、電子移動及び正孔移動による電気信号の両方を利用している。

D GM計数管においては、信号の大部分は陽イオンの移動によるものである。

     

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:電子やイオンなどの電荷担体(キャリア)が物質内を移動する速度を v、電場を E とすれば、v = μE の関係がある。この時の比例定数 μ を移動度という。陽イオンは衝突の密度が大きく加速されにくいため、移動度は電子に比べて低い。

B 誤:イオンも同様に寄与する。詳しくは管理・計測学の電離箱についての記述に記載している。

C 正:半導体検出器は X線、γ線 を電気的なパルス信号に変換して計測します。その過程は次のようになります。

① X線、γ線が半導体結晶中にて光電吸収やコンプトン散乱を起こすことにより、二次電子や散乱X線を生成。

② 生成された電子は、電離作用によって多数の電子正孔対を生成。

③ 電子・正孔は、結晶にかけられた電場によって電極へ移動し、パルスシグナルを発生する。

この電子正孔対が生成されることで電荷信号ができ、 この電荷信号を波高分析することでエネルギーの測定が可能となる。

D 正:M計数管の動作過程では、計数ガス中に生成された電子が陽極心線へと移動しながら運動エネルギーを増し、新たに電離を起こすとともに、計数ガスの励起に起因した紫外線の介在による電離も加わり電子なだれが陽極心線全体に広がる。この結果、陽極心線周辺に生じた陽イオン の鞘ににより電界が弱まり、GM放電が停止する。これを不感時間という(およそ200μs程度)。GM放電の停止後、陽イオンは次第に移動して陰極へ到達するが、この際に陰極から電子が放出されると再放電を招く。このため、計数ガス中に内部消滅ガスとして働く少量の有機ガス(Qガスといい、ヘリウム+イソブタンの混合)を混ぜ、 このガスの分解により電子の再放出を防止する。これがGM計数管の原理である。

問27

0.6 MeV のγ線による空気吸収線量が 1 Gy のとき、照射線量(C/kg)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、電子に対する空気の W 値は 34 eV である。

1 0.03

2 0.08

3 0.3

4 0.8

5 3

解答 1

解説

着目している空気では2次電子平衡が成り立っていると仮定する。1kg の空気中に生じる電子イオン対数 N は、e を素電荷として、N = 1/(34e)[34e は J 単位で表した W 値]である。したがって 1kg の空気中に発生する電子またはイオンの電気量 C は、C = e × N = 1/34 = 0.029 (C)となる。

問28

次の検出器のうち、β線のエネルギースペクトルの測定に適しているものの組み合わせはどれか。

A NaI(Tl)シンチレーション検出器

B GM計数管

C Ge検出器

D Si半導体検出器

E プラスチックシンチレーション検出器

1 AとB 2 BとC 3 CとD 4 DとE 5 AとE

解答 4

解説

A 誤:NaI(Tl)シンチレーション検出器はγ線の線量測定やエネルギー測定に使用する検出器に適している

B 誤:GM計数管は放射能を決定するための検出器であるためエネルギースペクトルは測定できない。

C 誤:γ線のエネルギースペクトルを測定する場合、制度の高い測定器としてGe検出器が用いられる。

D 正:Si半導体検出器はα線のエネルギースペクトルを高分解能で測定。β線のエネルギースペクトルも測定可能。

E 正:プラスチックシンチレータは主としてβ線、中性子線などのエネルギー測定に用いられる。

問29

分解時間 0.12 ms のGM計数管を用いて係数したとき、1秒間に平均 500 カウントを得た。この場合の数え落としによる誤差(%)として最も近い値は次のうちどれか。

1 0.3

2 0.6

3 1

4 3

5 6

解答 5

解説 数え落としの誤差は、0.12 × 10^(-3) × 500 = 0.06 よって 6.0 % となる。

問30

NaI(Tl) と CsI(Tl) の2つのシンチレータの比較において、正しいものの組み合わせはどれか。

A 密度はNaI(Tl)シンチレータの方が大きい。

B ピーク発光波長はCsI(Tl)シンチレータの方が長い。

C 発光の減衰時間はNaI(Tl)シンチレータの方が短い。

D 潮解性の影響はCsI(Tl)シンチレータの方が少ない。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

解説 下の表に示す。

 シンチレータ  光収率(対NaI)  減衰時間(10^(-3) μsec)  発光波長(nm)  密度(g/cm^3)
 NaI(Tl)  100  250  310  3.67  潮解性有り
 CsI(Tl)  45  1000  550  4.51  潮解性無し

荷電粒子に対する質量阻止能に関する記述

ある物質の荷電粒子に対する質量阻止能は、入射粒子の速度の 2 乗に逆比例し、その有効電荷の 2 乗に比例するが、入射粒子の質量には依存しない。また、その物質の原子番号に比例し、質量数に逆比例する。この比は元素によらずほぼ一定であるので、質量衝突阻止能はあまり物質によらない値となる。

 

熱中性子が原子番号 5 の 10B 原子核に吸収されると、α線が放出される場合がある。この現象は荷電粒子生成反応と呼ばれ、発熱反応であり、α線と 7Li 原子核が生成される。この反応の断面積は約 3800 b(バーン)と大きい。ここで、1b = 10^(-24) cm^2 である。反応後の生成核は 93 % の確率で励起状態をとり、Q 値の絶対値は 2.3 MeV である。放出される α線のエネルギーは 1.5 MeV である。この反応は中性子の検出によく利用され、中・高速中性子に対して感度を高くするために中性子モデレータ(減速材)が用いられる。モデレータとしては水素を多く含む材料が適切である。

 

補足

熱中性子検出には 10B(n,α)7Li 反応がよく用いられる。天然ホウ素の熱中性子吸収断面積は 764 b(バーン)と大きいが、これはホウ素に 19.9 % の存在度で含まれる 10B の断面積が 3830 b のためである。
熱中性子エネルギー、運動量ともに 0 とみなすことができるので、運動量保存則から、発熱反応のエネルギーは質量に反比例して分配される。したがって α粒子のエネルギーは 2.3 × (7/(4+7)) = 1.46 MeV となる。

 

図に 137Cs の壊変図を示す。図における核種 X は 137Ba である。核種(m)X は X の準安定状態であり、核異性転移により X となる。このとき、(m)X から光子が放出される代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与え電子を放出する場合があり、この現象を内部転換という。光子放出と電子放出は競合過程であり、光子の放出に対する軌道電子の放出割合 α を内部転換係数という。137Cs の放射能を 10 GBq とするとき、この線源 から放出される 662 keV の光子の数は、すべての軌道電子に対する α を 0.11 とすると、 8.5 × 10^9 s^(-1) となる。このとき、線源から 1 m 離れた位置の P における光子のフルエンス率は 6.7 × 10^4 cm^(-2)・s^(-1) であり、空気の密度を 0.0013 g/cm^3、線エネルギー吸収係数を 3.8 × 10^(-5) cm^(-1) とすると、位置 P における空気の吸収線量率は 7.5 × 10^(-4) Gy/h である。ただし、線源から位置 P までの光子の減弱は無視するものとする。

解説

γ線放出数を n(γ)、内部転換電子放出数を n(e) とすれば、α = n(e)/n(γ) で定義される。核異性体転移にともなうγ線放出割合は、
n(γ)/[n(γ)+n(e)] = 1/[1+(n(e)/n(γ))] = 1/(1+α) = 0.90 となる。
したがって線源からのγ線放出数は、10 × 10^9 × 0.94 × 0.90 = 8.46 × 10^9 s^(-1)
続いて光子のフルエンス率は (8.46×10^9)/(4π×100^2) = 6.73 × 10^4 s^(-1)・cm^(-2) となる。
続いてγ線のエネルギーを J 単位に換算すると、662 × 10^3 × 1.60 × 10^(-19) = 1.06 × 10^(-13) J である。したがって吸収線量率は、
1.06 × 10^(-13) × 6.73 × 10^4 × (3.8×10^(-5)/0.0013) × 10^3 × 3600 = 7.51 × 10^(-4) [J・kg^(-1)・h^(-1)] となる。

胃X線検査の撮影方法・画像の見方

私は診療放射線技師として働いて14年、胃X線検査に携わって12年です。その間もCT、MRI、アンギオ、一般撮影などなど多岐に渡り業務を行ってきましたが、胃X線検査は一番難しく、教えてもらわないとなかなか撮影できないものだと実感しました。

病院や健診施設によってはあまり教えられないところや、一人で業務を行い、どのように撮影し、どのような写真がいいものなのかわからないことが多々出てくると思います。

そこでこのブログでは、私が学んだ胃X線撮影・画像について洗いざらい書いていきたいと思います。

  • はじめに

胃がんは悪性腫瘍でも死亡率の高いがんである。しかし早期で発見できれば5年生存率は95%を超えるものとなっています。胃X線検査、内視鏡検査は胃がんによる死亡率減少効果が認められる唯一の検診法である。(厚生労働省「がん検診の有効性評価に関する研究班」)しかし、その撮影法は全国均一とは言えず、画質とともに施設間でのばらつきがあるのが実情である。

胃X線検査による一次検診の定着とさらなる普及には撮影法の標準化により質の高い画像を提供することが望まれる。

標準化の流れとしては既に2005年に日本消化器がん検診学会より「新・胃X線撮影法ガイドライン」が刊行され手技が普及していったが、それは最低限の写真であることは肝に命じて頂きたいと思います。

放射線技師が扱う画像には一般撮影、CT、MRI、超音波、RI、PET、胃X線などたくさんありますが、特に胃X線画像は撮影者の技術に依存する撮影の一つであると感じています。私自身胃X線写真は4つの分類に分けられると感じています。

画像が綺麗で、病変もきっちり描出できている画像。

これはいうまでもなく一番理想とされる形であります。

バリウムが腸の方に流れて見栄えは悪いが、きちんと病変部が描出されている画像。

バリウムが流れてダメだという方も中にはいらっしゃいますが、きちんと病変部を発見、撮影をしているため、良い画像である。

画像は綺麗だが、病変部が描出できていない画像。

これは胃X線撮影に慣れだしたぐらいに勘違いしがちな画像になります。実際私もそうでした。本来の目的は病変を見つけ出すことにあるのに、綺麗に写真を撮ろうとするあまり、本来の目的から外れた写真になり、勘違いな写真となりますので注意しなければなりません。

④  バリウムが流出し胃にバリウムが付着していない汚い画像かつ、病変を描出できていない画像。

これは一番最悪な画像です。健診施設、特にバス健診なんかで一番ありがちな画像です。早く撮影し、回すことを一番に考えた結果、何もわからない画像となり、結果的に異常なしで挙げられてしまいます。こんな画像を出すぐらいなら、血液検査や呼気検査などでピロリ菌の有無を調べた方がよっぽど有益なものが得られるため、このような画像は絶対に出さないように努力をするべきだと思っています。

 

胃X線検査に携わるからには①を目指してやっていかなければならないのですが、すぐにこのレベルにはなりません。順序立てて、かつ情熱を持ってやっていけば必ず報われると思っています。ここでは撮影方法、画像の見方、症例を通して私の全てをお教えできればなと思います。

そこでまず第一歩として撮影方法を覚えなければなりません。最初に教科書的な基準撮影について触れたいと思います。

      背臥位正面(鈎状胃)

標的部位は前庭部~胃体部後壁

 

背臥位第一斜位(鈎状胃)

 

標的部位は胃体部大彎よりの後壁~幽門部小彎よりの後壁

 

背臥位第二斜位(鈎状胃)

標的部位は胃体中部~下部小彎後壁と前庭部大彎後壁

 

腹臥位正面二重造影像

標的部位は前庭部~胃体中部前壁

 

腹臥位第二斜位二重造影像

標的部位は前庭部~胃体中部前壁小彎、大彎

 

右側臥位二重造影像

標的部位は穹隆部小彎~噴門部、線状分離線

Ò噴門部~胃体上部小彎へバリウムを流しながら撮影を行います。これにより線状分離線を描出し不整の有無を観察します。
   背臥位第二斜位振り分け撮影
   

  標的部位は胃体中部~上部小彎後壁

 

腹臥位立位正面二重造影像

標的部位は穹隆部前壁

 

背臥位立位正面二重造影像

標的部位は穹隆部後壁

これが一般的に撮影されている撮影になります。おそらく健診バスではこれよりも少ない枚数でこなしている施設もあるかと思います。これはあくまでも最低限の写真になります。胃がん検診の最終的な目的は、胃がん死亡率の減少ないし胃がんによる死亡リスクの低減を図ることであるため、胃の粘膜を全て観察、撮影することが本来の撮影だと言えます。

基本撮影だけで胃の粘膜全体を撮影できればいいのですが、それはなかなか難しいと考えています。そこで付着不良や描出が難しい部位はきちんとバリウムを付着させた上で追加撮影をすることが望ましいと考えます。

その部位とはまず幽門・前庭部後壁撮影です。幽門・前庭部後壁は背臥位正面で撮影出来るが、バリウムが溜まったり、付着不良だったりで観察されずに終わっていくことが多々あります

     ① 背臥位正面

①  幽門・前庭部後壁追加撮影

②   背臥位正面

②  幽門・前庭部後壁追加撮影

③   背臥位正面

③  幽門・前庭部後壁追加撮影

このように追加撮影するだけで幽門・前庭部後壁の見逃しを減らせることができます。では、なぜこのような撮影を追加した方がいいのかというと、このような症例もあるからです。

  ① 背臥位正面

この撮影ではバリウムの付着不良とハレーションが重なって幽門部〜前庭部がきちんと読影ができる写真にはなっていないかと思います。そこで幽門・前庭部後壁を意識して追加撮影を行うとこのような撮影ができます。

①  幽門・前庭部後壁追加撮影

このような所見が隠されているということです。こちらの病変・読み方に関しては随時追加して行きますので、まずは、撮影の重要性を発信して行きたいと思います。

続いて基準撮影では描出ができない胃体上部小彎後壁の追加撮影です。

撮影方法は寝台を水平の状態から右側臥位にして少し背臥位に戻すと描出されます。

胃体上部小彎後壁撮影

胃体上部小彎後壁に存在した症例

基準撮影だけでは見つけられない症例であります。

ここまでは鈎状胃の撮影法を示してきました。しかし、撮影を続けていくとこのような鈎状胃だけではないのが現状です。横胃や瀑状胃といった胃の向き・形をしているものもあります。

そこで続いては横胃の症例に対しての撮影法を示していきます。最大の違いは背臥位正面画像です。鈎状胃の背臥位正面画像は胃角がきちんと正面視しているが、

背臥位正面(鈎状胃)

横胃の場合の背臥位正面画像は次のような画像になります。

胃角が描出されず、鈎状胃での撮影でいう背臥位第二斜位画像となってしまうことがわかります。ここで横胃に対して、胃角を正面視するためには、背臥位ないし少し第一斜位の状態で上半身を持ち上げた状態で撮影を行うと次のような画像が描出されます。

教科書的には体の向きで表現されているものが多いが、あくまで観察しているのは胃の粘膜であるので、胃の向きを把握した上で撮影することが望ましいと考えます。あとは通常通り次のように撮影していければ問題ないと思います。

背臥位第一斜位

背臥位第二斜位(横胃では背臥位正面で撮影できる。)

腹臥位正面二重造影像

腹臥位正面第二斜位二重造影像

右側臥位二重造影像

胃体上部小彎後壁撮影

背臥位第二斜位振り分け像

腹臥位立位正面二重造影像

背臥位立位正面二重造影像

 

続いて横胃で問題になるのは幽門・前庭部後壁撮影です。横胃の場合幽門・前庭部後壁が撮影できていない場合が多々あります。その場合、前にもお話ししたように幽門・前庭部後壁に焦点を当てた撮影を行わなければなりません。

腹臥位正面第二斜位二重造影像まで普通に撮影を行い、右側臥位二重造影像を撮影する前に撮影することをおすすめします。撮影方法は腹臥位正面第二斜位二重造影像を撮影した後、そのまま腹臥位のまま寝台を立位の状態にしていきます。寝台を立位にした後に背臥位にし、少し第一斜位に胃角が見える状態をキープしたまま寝台を倒していきます。そして、幽門・前庭部に空気が入ったタイミングで撮影を行うと、幽門・前庭部後壁撮影が上手いことできるかと思います。

 

撮影ができるようになったら続いて行うことは透視下でバリウムの流れの変化を捉えることです。

被ばくの問題でよく撮影以外で透視は出さないようにと指導されたりすると思いますが、透視下でバリウムの流れの変化を捉えることが早期発見につながることが多々あります。撮影すると病変部として捉えられるものでも、透視下で見ると食物残渣だったりすることもあるので、教えられる先輩にもよりますが、自分に少し余裕が出てきたら、透視下で病変部を確認して頂けたらなと思います。

撮影をきちんとでき、透視下で確認できるようになったならば、次は存在診断ができるような画像を医師に提供できるがどうかです。

撮影中何かがあって写真を撮影してもその所見に再現性が取れなければ残渣なのか病変なのか説明できません。所見があったときにその所見がどこの部位にあって、どの体位で撮影すれば再現性がとれるのかを考えながら撮影しなければいい画像は撮影できません。

ここではどこに所見があって、どの体位で撮影すればいいのか症例を用いていきたいと思います。

症例1

 

病変部は胃体下部〜胃角部後壁に存在します。

 

再現性を描出するために薄層法で撮影を行います。

まずは存在診断を行うため、この病変がなんなのかは後ほどゆっくり解説していきます。

 

症例2

病変は胃体下部〜胃角部小彎にあります。

撮影体位は背臥位第二斜位もしくは右側臥位から背臥位に戻したタイミングで撮影を行うと良い。

 

このようにスクリーニング検査の中できちんと撮影でき、透視下で発見し、存在診断ができるような再現性のある画像を提供できるようになったならば、次に進むべき道は、質的診断ができる画像を提供できるかになります。健診のバリウム検査ではそこまでは求められないと思いますが、実際の現場では医師に胃カメラでの精密検査を進める際に、根拠のある助言を医師に伝えることができれば、精密検査の実施が上昇し、結果的に胃がんによる死亡率を下げ、QOLもよくなると思います。そこで次に質的診断にはどのような画像と、どのような読み方が必要かを提示していきたいと思います。

質的診断に必要なものは、組織型・病変部の範囲・病変の深達度の3つです。

はじめに、ž胃癌とは粘膜の上皮にできる悪性腫瘍のことをいいます。我々が行う胃X線検査は胃の形態はもちろんのこと粘膜上皮の変化を画像としてとらえていくことなので、胃の粘膜構造とその変化について知ることが大事だと考え胃の基本である粘膜構造とその変化ついてお話したいと思います。
ž胃の粘膜構造は上から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という構造を呈しています。

病理組織画像で表すと次のようになります。

胃粘膜の変化

ž胃粘膜上皮は物理的、化学的な刺激を常に受けているため、細胞更新機構が発達しています。何らかの傷害があっても元通りに再生する能力をもっていますが、粘膜への傷害が再生能を上回ると、胃粘膜は萎縮をし始めます。
 炎症・再生・剥離を繰り返す
    胃固有粘膜  →  萎縮(粘膜を構成する腺管密度が低下し、粘膜の丈が低くなる)
ž
ž萎縮が始まると量的な変化に加えて質的な変化も認められます。それが腸上皮化生と幽門腺化生です。

腸上皮化生 →胃粘膜には本来存在しないはずの腸型の細胞が出現することをいう。

幽門腺化生 →胃底腺粘膜が傷害されると本来の胃底腺細胞が消失し粘液細胞に置き換わることをいう。

この萎縮、腸上皮化生の大きな原因はヘリコバクター・ピロリ感染によるものだといわれています。50歳以上の日本人の70%以上が感染していると報告されています。Hpが胃炎の主たる原因であることが判明した当初、Hp感染と分化型癌発生との関連が強調されてきたが、現在では未分化型癌もほとんどがHp胃炎のある粘膜に発生することが分かってきています。ž従ってヘリコバクター・ピロリに感染した胃は注意深く観察、撮影をしていかなければなりません。ヘリコバクター・ピロリに感染しているかどうかの検査法には血液検査、ペプシノーゲン法、尿素呼気テスト、内視鏡検査、胃X線検査があります。我々が扱う胃X線ではどのような画像所見があればヘリコバクター・ピロリ感染が疑われるのでしょうか?

žヘリコバクター・ピロリ陽性の胃X線画像の特徴的所見をあげていきます。

まずは大彎ヒダ形、走行で判断していきます。

正常型(Hp-)・・・背が低い、立ち上がりがなだらか、表面・辺縁が平滑、やわらかい・伸展して細くなる、まっすぐである。非萎縮画像を下に示す。

 

異常型(Hp+)・・・太い(発砲酸5gで4mm以上)、背が高い、立ち上がりが急峻、表面・辺縁が粗い、硬い・伸展不良、蛇行・屈曲ある。

 

胃粘膜表面像

ž次に胃の粘膜表面像の観察です。

Hp陰性の胃粘膜模様は平滑で無構造や、微細で均一な表面模様がみえる画像です。

Hp陽性の胃粘膜模様は敷石様、顆粒様の粗い画像としてみえます。

実際の画像を提示します。

萎縮画像

 

非萎縮画像

žこのように胃X線検査でHp感染胃をみつける方法は

1 胃粘膜の表面像 2 ひだの形状 3 ひだの分布 の3つを組み合わせて判定していきます。

胃粘膜表面像が平滑、無構造型、ひだの形が正常型のものをHp陰性胃と判断します。

胃粘膜表面が敷石状、顆粒様構造型、ひだの形が異常型のものをHp陽性と判断します。

 

胃粘膜は生来噴門腺粘膜、胃底腺粘膜および幽門腺粘膜の三種類の固有粘膜から成り立っているが、時間とともにピロリ菌の感染、物理的、化学的刺激、加齢などの影響により幽門腺粘膜領域から胃底腺粘膜領域に向かって腸上皮化生を伴う粘膜の萎縮性変化が広がっていくことが知られている。粘膜の萎縮はほとんど常に腸上皮化生を伴う。

中村によれば胃固有粘膜から発生する癌は腺管構造の形成に乏しい未分化型癌になり、腸上皮化生粘膜から発生する癌は腺管構造を伴う分化型癌に発育するという。

胃固有粘膜      →      腸上皮化生

↓                   ↓

 

未分化型癌      →       分化型癌

腸上皮化生

腺管構造が乏しいか形成しない   腺管構造を形成

 

このように背景粘膜を知ることで組織型を予測していくことができる。ここで胃癌の組織型分類を下に示す。

胃癌の組織型分類(悪性上皮性腫瘍組織型)

分化型

乳頭腺癌 papillary adenocarcinoma (pap)

管状腺癌 tubular adenocarcinoma (tub)

高分化型(tub1)

中分化型(tub2)

未分化型

低分化腺癌 poorly differentiated adenocarcinoma

充実型(por1)

非充実型(por2)

印環細胞癌 signet-ring cell carcinoma  (sig)

粘液癌 mucinous  adenocarcinoma  (muc)

 

分化型癌と未分化型癌の発生様式

 

参考

1.組織型
分化型(tub1,2,pap) 未分化型(por1,2,sig,muc)
・胃の腸上皮化生粘膜 ・胃固有粘膜(幽門線、胃底線)
・早期癌の陥凹型と隆起型 ・早期癌の大部分が陥凹型
 (隆起型であれば分化型) ・陥凹辺縁は明瞭、なめらか
・陥凹辺縁は不明瞭、鋸歯状 ・陥凹面は粗大結節状
・陥凹面は平滑 ・陥凹境界が明瞭で断崖状、

蚕食像

・陥凹面が比較的平滑 ・大きく外に凸
・陥凹境界が微細で棘状、星芒状 ・辺縁隆起はない
・小さく内に凸(ギザギザ) ・カメラでは褐色調、白色調
・辺縁に顆粒状隆起
・カメラでの色調は発赤調
2.深達度 「SM」以深を示す所見
1) 壁肥厚所見
 ・陥凹内のSMT様隆起
 ・陥凹辺縁の隆起
 ・粘膜ひだ先端の肥大・融合
 ・陥凹周囲の周堤形成
2) 壁伸展不良、壁硬化所見
 ・側面像における胃辺縁の変形
 ・集中する粘膜ひだの走行変形やひだ間の

狭小化

マクロ所見による陥凹型癌の深達度診断

分化型 未分化型
M癌〜SM微小浸潤 壁変形 なし なし
陥凹表面 胃小区模様が保たれる インゼルが保たれる
陥凹辺縁 蚕食像が保たれる 同左
集中ヒダの所見 蚕食像を伴うひだ先端の途絶、段差形成 同左
ひだ先端のやせ、先細り 同左
ひだが陥凹内部まで流入 同左
SM深部浸潤癌 壁変形 あり あり
陥凹表面 胃小区模様の癒合、粗大化 インゼル(再生粘膜)の消失
胃小区模様の消失、びらん、潰瘍形成 陥凹表面の無構造化
陥凹辺縁 蚕食像の消失、粘膜下腫瘍様辺縁 同左
集中ヒダの所見 隆起の形成 同左
ひだ先端の棍棒状腫大 同左
ひだの融合 同左

蚕食像とは癌の辺縁の細かい不整を表す用語で癌組織が粘膜内を非常に不規則に浸潤した結果生じるマクロ所見。

 

これを踏まえた上で、健診で病変部を発見したり、異変を感じた時にどのような画像を提出したら医師に対して根拠を示せるのかを症例を用いて提示していきたいと思います。

初心者だったり、どのように所見を書けば分からない方に参考までに貼っておきますのでぜひ臨床の現場でご活用ください。

初めは存在診断からの精密検査をしていただきたい方への画像のアプローチの仕方を行なって頂いた後は、バリウムでの質的診断の行い方を続いて解説していきたいと思いますので、まず始めの方の症例は、見つけ方から精密検査への移行についての解説を行なっていきます。

症例1

 

健診でこの様な画像が出てきた時にどこに病変があるかを薄層法などで再現性を確認します。

 

場所は胃体上部前壁に周囲の粘膜とは違う陰影が見られます。まず病変部を見つけたら

①病変部は隆起なのか陥凹なのか。

②陥凹底・表面性状。

③陥凹境界はどうなのか。

④空気量を調整して硬さがどのようになっているのか。(健診の撮影では空気量の調整は難しい)

⑤陥凹周囲の粘膜異常・粘膜ヒダの性状。

こちらの撮影は、まず、胃体上部前壁に病変があるので、再現性を出すために寝台を水平にしローリングを行います。その後寝台を立てていくことでバリウムが徐々に流れていきます。タイミングを見計らって撮影を行います。胃体上部なので少量のバリウムを追加で飲んでもらうとなお綺麗に描出されます。

①陥凹を呈し、大きさは10 ~ 20 mm。

②陥凹面は粗大結節状

③陥凹辺縁は追っていける。

⑤陥凹周囲はアレア像を示しているが、ヒダ内部に病変は存在しているがヒダ先端は中断している。

このことから悪性の可能性が高いということになり、精密検査にまわしたほうが良いという見解が得られます。実際のカメラ画像を下記に示します。

生検の結果 未分化型 sig が検出されました。健診ではまず、悪性なのか良性なのかを診断できるような画像を提供することが重要である。続いて範囲診断と深達度診断を行っていきます。これは精密バリウム検査と精密内視鏡両方で診断していきます。とても重要で外科的治療になるか内視鏡的治療になるかの重要な判断材料になるからです。

症例2

 

病変部位は胃体中部小彎後壁にあります。

撮影方法は背臥位第二斜位振り分けと右側臥位撮影です。

隆起性病変を見つけたらまず

①隆起の辺縁はどうなっているのか。

②隆起の面はどうなっているのか。

③隆起の高さはどのくらいか。

④空気量を調整して硬さがどのようになっているのか。(健診の撮影では空気量の調整は難しい)

⑤隆起周囲の粘膜はどのようになっているか。

振り分け画像から隆起性病変だと分かる。隆起の辺縁は明瞭なので、上皮性の病変だということが分かる。隆起の表面は大小不同の結節影を示している。この時点で悪性の可能性が高いことになる。高さは病変部の側面像を撮影しなければならない。

隆起性病変での深達度診断で重要なのは高さであります。一般的に2cm以上で無茎性、広基性の場合や腫瘍表面に陥凹面やくずれ像がある場合にはSM浸潤を疑う。カメラの画像も示す。

また隆起性病変の深達度の所見の捉え方でSM浸潤を疑うべき所見とは

①粘膜化腫瘍状に立ち上がる無茎性

②周囲ひだの引き込みがある

③隆起の中に陥凹が存在する場合やその陥凹内にくずれがある場合

④隆起表面の胃小区様構造が消失し、平滑化している

今回は病理結果で 分化型  tub であることが分かった。健診ではまず、悪性なのか良性なのかを診断できるような画像を提供することが重要である。続いて範囲診断と深達度診断を行っていきます。これは精密バリウム検査と精密内視鏡両方で診断していきます。とても重要で外科的治療になるか内視鏡的治療になるかの重要な判断材料になるからです。

症例3

この画像から病変を見つけてみよう。

 

 

病変は胃体下部小彎前壁〜後壁に存在する。撮影方法は少し頭低位の状態での背臥位第二斜位振り分けと腹臥位第二斜位で撮影を行いました。

①隆起の境界は追っていけ、芋虫状を呈している。

②隆起の面は顆粒状、結節状を呈している。

③隆起周囲は萎縮性粘膜を呈しており悪性の可能性が高いことがわかります。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検の結果分化型 tub が検出されました。

症例4

この一枚から異変を感じよう。

病変部は胃体上部小彎後壁にあります。

胃体上部小彎後壁に大小不同の顆粒状陰影が存在します。大きさは15mm前後。陥凹や隆起の境界は不明だが、粘膜の変化から上皮性の変化だということは分かる。このような所見を捉えられる画像を提供できれば健診では十分だと思います。なるべき短時間で異常を発見し、的確に病変部を描出できるようになるまではかなりの時間がかかると思いますが、目標を持ってやっていけばできるかと思います。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 分化型 tubが検出された。

症例 5

病変部を指摘してみよう。

 

病変部は前庭部前壁に存在します。

 

病変部の粘膜上皮は大小不同の顆粒状陰影があり、明らかに周りの粘膜とは違うことがわかります。しかし、陥凹面や隆起は指摘できず、境界も不明瞭であります。未分化型癌を疑った場合、陥凹面があり、境界は明瞭に描出される傾向がありますが、どちらも見受けられません。バリウム検査上で異常を指摘できたならば、まず内視鏡をやることをお勧めします。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検結果 マルトリンパ腫であることが分かった。

症例 6

病変部を指摘してみよう。

 

横胃なので病変部位が分かりにくいが、立位圧迫撮影により前庭部後壁にあることがわかる。このような横胃では振り分けが難しい場合、形態がわかるような撮影を試みなければならない。

圧迫撮影から陥凹を呈していることがわかる。陥凹の形状は不整形、陥凹の境界は棘状を示している。ヒダは正常に見える。これにより悪性の可能性が高いことが分かり、精密検査にまわすことが望ましい。

次に内視鏡画像を提示する。

生検の結果 分化型 pap が検出された。

症例7

このような画像は健診ではよく見られるのでよく見ておいたほうが良い症例です。

 

病変部位は胃角部小彎後壁にあります。

 

これだけバリウムも付着しているが、明確な陥凹も隆起も指摘できません。では、どこで異変に気づかなければならないのかというと、胃角部小彎の辺縁が若干直線化しているのが分かるかと思います。胃X線画像ではこのような変化であるが、内視鏡画像を見てみると上皮の変化がはっきりと見ることができます。

 

生検結果は 未分化型 sig が検出された。

最近はピロリ菌の除菌も保険適用されたことにより、ピロリ菌の除菌をされる方が多くなっています。除菌後の胃の粘膜上皮は変化しにくく、逆に粘膜下にがん細胞が潜り込んでいく傾向があります。バリウムの検査は胃の上皮の変化を捉える検査ですが、このような除菌後の胃を検査する際は、粘膜上皮だけでなく、胃の辺縁をしっかり確認しなければなりません。

症例8

病変部位を探してみよう。

病変部位は穹窿部前壁にあります。

バリウムが溜まっているので、陥凹性病変であることが分かります。陥凹内部は円形だが一部棘状化しており、陥凹内部は平坦に見える。陥凹周囲の粘膜には異常は見られない。

このことにより、陥凹内部のみ悪性を疑うので、精密検査にまわす必要があると考えます。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検結果 分化型(tub) が検出されました。

症例9

病変部位はどこか見つけよう。

 

病変部は胃角部後壁大彎にあります。

胃角部後壁大彎に大きさ 20mm 程度の陥凹性病変が存在します。陥凹内部は無構造、陥凹の形状は不整形を示している。悪性である可能性があるので精密検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 未分化型(por)が検出されました。

 

症例10

病変部を探してみよう

病変部は胃体下部小彎に存在します。

胃体下部小彎前壁に周囲の粘膜上皮とは違う大小不同の顆粒状陰影が存在します。はっきりした陥凹や隆起は見当たらない。ヒダの集中なども見当たらないが、明らかに粘膜不整があるので、バリウム検査だけでなく内視鏡検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検の結果 アデノーマ(腺腫) が検出された。

ここまでは存在診断からの精密検査への移行の仕方を行なってきました。

続いて、精密を行なった後の胃X線画像・内視鏡画像・インジゴカルミン散布画像・病理画像のマクロ像・ミクロ像を提示したいと思います。

これは実際に症例発表した時のものです。

*背景は萎縮性粘膜

*胃体中部小彎後壁側の陥凹性病変

*内部は平滑、辺縁は棘状を呈す

*陥凹周囲には顆粒を認め、明らかな側面変形を認めない

*空気量を増やした画像で病変部は大きく広がりを呈す。

上記の読影より0-Ⅱc病変、分化型癌 進達度はmと読影しました。

しかし、実際の病理結果は tub2>tub1 > Por1, sm2(粘膜筋板下1000μm) 分化型主体の中に未分化型も混合している癌でありました。深達度もsm2 まで浸潤していました。

このように精密検査を行い、病理標本であるマクロ像、ミクロ像を見て検証することで、バリウムによる発見も進歩していくんではないかと考えています。

症例10

ここから症例に戻りたいと思います。

こちらの画像で病変部を探してみよう。

病変部位は胃角部前壁に微小な陥凹性病変が存在します。

陥凹形状は不整形を示し、陥凹境界は棘状を示している。陥凹内部は微小な顆粒を呈しているように見える。このことから悪性の可能性が高いため精密検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 分化型(tub)と未分化型(sig) の混在型の成分が検出された。

 

おすすめの本「胃と腸」



 



診療放射線技師国家試験画像に関する問題・解説

コロナの蔓延により本来病院実習で学ぶべき臨床画像に触れる機会が減っています。そこで国家試験の過去問を通して画像に関する解説をこの場で提示していきたいと思います。

日々更新できる時はしていきたいと思います。

第71回 午前 問89

胃噴門部に異常が疑われた場合の上部消化管X線二重造影で、適切な撮影はどれか。2つ選べ。
1.右側臥位像
2.背臥位正面像
3.背臥位第1斜位像
4.背臥位第2斜位像
5.半立位第2斜位像

上部消化管撮影や読影は学生のうちで学ぶことはなかなか難しいと思います。実際私もそうでした。詳しく知っている人から解説を聞く機会がなく、教科書を読んでもよくわからないのが現状ですが、試験にも結構な頻度で出てきます。ここではなるべくわかりやすく解説をのせていけたらなと思います。

解答 1 , 5

まず体位と標的部位について画像をつけて解説していきます。

1.右側臥位像

主な標的部位は黒丸で示した部位で、噴門部から胃体上部小彎である。

2.背臥位正面像

主な標的部位は胃体上部後壁〜幽門部後壁なので噴門部は撮影できない。こちらはバリウムを飲ませた後、グルグル回転させた後、一番最初に撮影する代表的な写真である。

3.背臥位第1斜位像

背臥位第1斜位は背臥位から右腰を少しあげた状態での撮影になります。標的部位は黒丸で示した胃体部大彎後壁〜前庭部小彎後壁なので噴門部は撮影できない。

4.背臥位第2斜位像

背臥位第2斜は背臥位の状態から少し寝台を少し頭低位にして、左の腰を少し持ち上げた状態での撮影になります。標的部位は胃体部小彎〜幽門部大彎なので噴門部は撮影できない。

5.半立位第2斜位像

半立位第2斜位の主な標的部位は噴門部から胃体上部小彎である。

第70回 午前 問94

ある癌診断の画像検査で、真陽性率が 98%、偽陽性率が5%であった。この癌の一般的な罹患率は1%である。 ある人がこの画像検査を受けて陽性と判断されたとき、実際に癌に罹患している確率に最も近いのはどれか。
1.10%
2.17%
3.25%
4.67%
5.95%

こちらの問題は医学物理士の試験にも出てるので、最近のトレンドなので下の表の計算式を覚えておくと良い。

実際に癌に罹患している確率は表の事後確率の式で表される。代入すると約16.5%となる。

陽性的中率と陰性的中率も出題される可能性もあるので覚えておくと良いかも。

第70回 午後 問89

胃部 X 線造影検査で正しいのはどれか。
1.窒素で胃を膨らませる。
2.二重造影では胃小区を描出する。
3.硫酸バリウムの使用量は 500 mL 程度である。
4.半立位第2斜位撮影では幽門部を描出できる。
5.Brown‡(ブラウン法)による前処置を実施する。

解答 2

1. 窒素で胃を膨らませる。・・・健診で行うバリウム検査は主に炭酸で膨らませる。よって誤りである。

2.二重造影では胃小区を描出する。・・・下の図の赤丸のように胃小区(アレア)を描出する撮影法である。よって正しい。

3.硫酸バリウムの使用量は 500 mL 程度である。・・・以前は 500 ml 使用していたが、近年は 150 ml 前後で撮影を行なっている。よって誤りである。

4.半立位第2斜位撮影では幽門部を描出できる。・・・下の図に示すように主な標的部位は噴門部から胃体上部小彎である。

5.Brown‡(ブラウン法)による前処置を実施する。・・・大腸のバリウム検査を行う時の前処置であり、胃部撮影では行わない。よって誤りである。

第72回 午前 問85

順行性と逆行性の両方の造影検査があるのはどれか。
1.食 道
2.膵 管
3.卵 管
4.耳下腺
5.総胆管

解答 5

1.食 道・・・主に口からバリウムなどの造影剤を用いて造影を行うので、順行性のみとなる。

2.膵 管・・・内視鏡を用いて逆行性に造影を行うことしかできない。

3.卵 管・・・こちらも逆行性にしか造影を行わない。

4.耳下腺・・・侵襲的に逆行性で造影を行う。しかし臨床上では現在あまりやられていない。

5.総胆管・・・内視鏡を用いたERCP(逆行性)での造影と侵襲的に順行性で造影を行うPTCDという造影、治療方法がある。

第64回 午後 問85

上部消化管 X 線造影写真を上記に示す。考えられるのはどれか。
1.潰 瘍
2.進行癌
3.ポリープ
4.慢性胃炎
5.粘膜下腫瘍

解答 2

1.潰 瘍・・・X線画像は下記のような画像所見となる。この画像は典型的な画像である。

2.進行癌・・・進行癌にはBorrmann分類の1型〜5型がある。今回問題になっているのはおそらく4型進行胃がんであると思われる。一番の特徴は大彎部の進展不良。しかしこの画像は空気量の不足、バリウムの付着不良など診断できる画像ではないのでこの画像でいいのだと勘違いをしてはいけない。

4型進行癌の一例

2型進行癌の一例

1型進行癌の一例

 

第72回 午後 問20

右上腹部の超音波像上図に示す。正しいのはどれか。
1.脂肪肝である。
2.腎臓に腫瘤を認める。
3.腹水は認められない。
4.肝臓の腫瘤は無エコーである。
5.肝臓の腫瘤には音響陰影が認められる。

解答 3

1.脂肪肝である。・・・脂肪肝の場合エコーではfatty change という画像所見が出現してくる。

2.腎臓に腫瘤を認める。・・・腎臓には腫瘤陰影は認めない。

3.腹水は認められない。・・・腹水が溜まれば下の画像のように黒く写ってくる。

4.肝臓の腫瘤は無エコーである。・・・問題の画像は無エコーではない。無エコーは下の画像に示す。

5.肝臓の腫瘤には音響陰影が認められる。・・・音響陰影(acoustic shadow)とは結石やある種の腫瘤などの後方に出現する無エコー域のことをいう。具体的な画像を下記に示す。

第72回 午後 問22

脳卒中の急性期に撮影された頭部 MRI の拡散強調像を上図に示す。矢印の高信号が反映している病態として正しいのはどれか。
1.血液の貯留
2.血管原性浮腫
3.細胞障害性(細胞毒性)浮腫
4.脳室の拡大
5.脳の萎縮

解答 3

血管の閉塞もしくは流れが停滞していることにより細胞障害性(細胞毒性)浮腫が起こってdiffusion画像で高信号として現れる。下図に閉塞血管とそれに対応する領域を示しておく。

第67回 午前 問86

子宮卵管造影検査で正しいのはどれか。
1.経時的に撮影する。
2.40 kV 程度の管電圧で撮影する。
3.骨盤計測を目的とした検査である。
4.造影剤投与前に KUB 撮影を実施する。
5.油性ヨード造影剤の使用は禁忌である。

解答 1

子宮卵管造影検査は透視室でおこないます。仰向けになっていただき膣内の洗浄をおこないます。
1 .子宮口から細い管(バルーンカテーテル)を入れて固定します。
2 .造影剤を注入し、子宮内腔から卵管、腹腔内へ造影剤がながれていく状態を透視下(画像をリアルタイムで見ながら)に観察しレントゲン撮影します。
透視下で行う事により患者様の疼痛の程度を画像所見とあわせて判断し注入量や速度も調整していきます。

(1)子宮内腔が造影されていきます。

(2)次に卵管がうつってきます。この患者様では左側の卵管が先に造影されてきています。(レントゲン写真は左右逆にうつっています。)
左右どちらの卵管が先に造影されるかは卵管の通りやすさだけに影響されるわけではなく、その際のカテーテルの向きや造影剤の注入速度などにも影響します。

(3)両方の卵管がうつってきます。両方の卵管が腫れていない事、また卵管の先(卵管采)から腹腔内に造影剤がでていることを確認します。患者様の痛み具合ではここまで行く前に中断することもあります。
3 .バルーンカテーテルを抜いて腟内を洗浄します。
4 .最後に拡散の状態を確認してレントゲン撮影し終わりになります。

このように時間を追って卵管から子宮への流れの撮影を行なっていきます。

第64回 午後 問87

頭部 CT 像を上図に示す。考えられるのはどれか。
1.脳 炎
2.髄膜炎
3.硬膜下血腫
4.硬膜外血腫
5.くも膜下出血

解答 5

臨床上で多く見られる症例である。主な原因は脳動脈瘤の破裂で、単純CTでも脳動脈瘤の位置もある程度把握することができることもある。