半導体検出器・Ge検出器

半導体検出器について

半導体を用いた放射線検出器は、種々の放射線のエネルギー測定や放射能測定に広く使用されている極めて重要な検出器の一つである。この検出器に使用される半導体物質では、絶縁物に比べてそのエネルギーバンド構造における禁止帯の幅が狭く代表的な半導体物質のシリコンやゲルマニウムでは約 1 ev である。また、電子ー 正孔対の形成に必要な平均エネルギー(ε値)はゲルマニウムで約 3 eV である。この結果、同じ放射線が入射しても気体より電荷キャリアが多く生成されることから、気体検出器に比べてエネルギー分解能に優れた検出器となる。純度が極めて高い半導体物質に微量の不純物原子を添加して電荷キャリアに寄与する新たなエネルギー準位を与えることができる。 この添加した原子がホウ素、アルミニウムなどの場合、電子のアクセプトとして働き。p型半導体となる。またリン、ヒ素などの場合には電子のドナーとなり、n型半導体となる。このn型とp型の半導体を用いてダイオード構造を形成し、逆 方向に電圧を引火すると電荷キャリアが存在しない。空乏層が生じ、この部分に放射線が入射すると電荷が生成し、電離電流を取り出すことができる。

γ線スペクトロメトリに用いられる半導体検出器は、半導体物質の原子番号や密度が高いことに加え、その有感領域が十分に大きいことが必要である。このためp型のゲルマニウムにリチウムを拡散させ有感領域を大きくした検出器や高純度のゲルマニウムを用いた検出器が使用されてきた。しかし前者はリチウムが常温において拡散するため液体窒素 温度に常時冷却する必要があり、維持管理の観点からほとんど使用されなくなっている。Ge検出器のエネルギー分解能は一般的に全吸収ピークの半値幅で与えられる。一方全吸収ピークの形状をガウス分布とするとこのピークの半値幅は標準偏差の 2√2ln2 倍で与えられる。このためエネルギー E[eV] のγ線に対するエネルギー分解能[eV]は、電荷 キャリア数の統計的変動のみに起因するとゲルマニウムのε値をε[eV]、ファノ因子をFとして、2√2ln2 × √F・√ε・√E と表すことができる。(ここでGe検出器のエネルギー分解能σR = √F・√ε・√E)となる。

Ge検出器の特徴

ゲルマニウム結晶中で電子ー正孔対に必要なエネルギーは約 3 eV である。気体の場合で電子ー陽イオン対の生成に必要なエネルギーの約 30 eV に対して十分小さい。このためGe検出器では、通常 1 MeV のγ線を測定すると全吸収ピークで約 0.2 % 程度のよい分解能が得られる。測定に際しては、半導体中で生じる熱雑音を減らす ために冷却する必要がある。これに対して常温で使用できるHgI2 などの化合物半導体を用いた検出器があるが、エネルギー分解能は劣っている。

Ge検出器の遮蔽体について

通常Ge検出器は鉛遮蔽体の中に置く。遮蔽体の鉛には 210Pb(半減期22年)が含まれていることがある。この場合、その娘核種である 210Bi のβ線がバックグラウンドに影響を与えることがある。又、試料からγ線により生じる鉛の特性X線や後方散乱、γ線を吸収するために鉛の内側にカドミウム板とさらに内側に銅 板を又は銅板だけを内張りにする。(外側から内側に向かって原子番号の小さくなる順番になるようにする。)さらに内側には試料からのβ線による制動放射線の発生を抑えるためにアクリルなどの合成樹脂の板を加える。

Ge半導体検出器の動作原理

半導体検出器は X線、γ線 を電気的なパルス信号に変換して計測します。その過程は次のようになります。① X線、γ線が半導体結晶中にて光電吸収やコンプトン散乱を起こすことにより、二次電子や散乱X線を生成。② 生成された電子は、電離作用によって多数の電子正孔対を生成。③ 電子・正孔は、結晶にかけられた電場によって電極へ移動し、パルスシグナルを発生する。この電子正孔対が生成されることで電荷信号ができ、この電荷信号を波高分析することでエネルギーの測定が可能となる。

Ge検出器によるγ線エネルギースペクトル測定

γ線のエネルギースペクトルを測定する場合、制度の高い測定器としてGe検出器が用いられる。この検出器は半導体の結晶中で電離現象により生じた電子と正孔を直接収集してγ線を検出し、そのパルス波高からエネルギーを測定するので、一種の固体電離箱とみなすことができる。このため気体検出器である比例計数管と同様に検出器で失われた エネルギーの情報は得られるが比例計数管と異なり検出器自体による増幅作用は期待できない。

Ge検出器によるγ線エネルギースペクトル測定②

γ線放出核種を含む試料を測定するとき、試料自体から放出されたγ線が遮蔽体などでコンプトン散乱を起こしたのち再び検出器に入射すると、結果としてγ線エネルギースペクトル上で連続的に広がるバックグラウンドが増加する。この増加が顕著に現れるスペクトル部分のエネルギー[MeV]は試料から放出されたγ線のエネルギー Eγ を MeV 単位で与えると、Eγ/(4Eγ + 1)式を用いてほぼ推定できる。鉄製遮蔽体の場合、この増加を抑えるために 鉛の内張りが有効であるが、その一方で光電効果により鉛原子の軌道電子が原子の外に放出されることに伴い 75 keV 近傍に特性X線のピークが生じる。この特性X線の影響を効果的に低減するためには、遮蔽体内面から検出器に向けさらに カドミウム、銅の薄い板を順に重ね張りすると良い。γ線エネルギースペクトルの連続スペクトル部分は、これと重なる他の全吸収ピークの正味計数率を求める際にバックグラウンドとなる。この連続スペクトル部分を低減するためには、Ge検出器とその周りを取り囲む形に配置した検出器(ガード検出器)で構成される検出器システムの使用が有効である。この検出器において、Ge検出器またはガード検出器のいずれか一方でコンプトン散乱 を起こしたγ線が他方で検出された場合、両者の検出信号は同時事象であるため、それらの信号を反同時計数回路を用いて除去することができる。この方法により、Ge検出器の検出部においてコンプトン散乱で生じた反跳電子の信号を取り除き、γ線スペクトロメータの性能指標の一つであるピーク対コンプトン比を効果的に改善することができる。 一般にガード検出器には、検出部の実効原子番号が高い NaI(Tl)シンチレータ検出器、BGO検出器が適しているが、低い実効原子番号でも検出器の容積が大きい検出器の作成が可能なプラスチックシンチレーション検出器なども用いられる。

Ge検出器を用いたγ線スペクトロメトリー法

Ge検出器を用いたγ線スペクトロメトリー法は、試料中の放射性核種の決定とその放射能の定量が同時にできるため放射線管理において重要である。核種の決定にはパルス波高の測定に用いるマルチチャネルアナライザーのチャネル番号とγ線エネルギーとの関係を与えるエネルギー校正曲線を、また放射能定量にはγ線エネルギーに対する計数効率 は標準線源を用いて測定された全吸収ピークの計数率を、対応するγ線の放出率で除することで求められる。測定試料の放射能の算出において分岐比に基づいて、γ線の1壊変当たりの発生数を知る必要があり、 137Cs の例では、その発生数は 0.85 となる。またγ線がカスケードの放出される 24Na の ような核種の測定ではサム効果による全吸収ピークの計数率の減少にも注意する必要がある。

γ線スペクトロメトリー②

γ線スペクトロメトリにおいては、スペクトロメータのγ線検出部の物質とγ線がどのように相互作用するかによって色々なパルス波高スペクトルが得られる。γ線が検出部に入射すると、電子、陽電子、コンプトン散乱γ線、あるいは陽電子消滅に伴う光子などが放出される。γ線の全エネルギーが検出部に付与されると、パルス波高スペクトル上に全吸収ピークとして計数される。生成された高エネルギーの荷電粒子や、その 制動放射で生じた光子が検出部外に逃れた場合にはコンプトン効果の場合に限らず全吸収ピークから低いエネルギー側にずれて計数されることがある。光電効果が起きると原子の電子軌道に空席が生じるが、この空席が電子で埋められる際にオージエ電子又は特性X線が放出される。これらのうち、 前者は直接電離により検出部にエネルギーを付与する。一方後者は前者に比べて検出部の外に逃れやすいため、スペクトル上にエスケープピークが生じる場合がある。この現象は検出器の物質に原子番号が高く、検出部の厚みが薄い場合に生じやすい。コンプトン効果ではパルス波高スペクトルは連続分布となる。しかし、コンプトン散乱γ線が検出部内で再度コンプトン効果 を起こした後、光電効果により検出部にエネルギーを与えると全吸収ピークが形成される。電子対生成では、この相互作用が起きるために必要なしきいエネルギーを差し引いた後、残りのエネルギーを電子と陽電子が分け合う。この際陽電子消滅が要因となり、放出される光子の検出過程により2つのエスケープピークが生じる。以上の要因の他、核種の壊変において複数の γ線が短時間に引き続いて放出される場合には、それらのγ線の相互に組み合わせに対応したサムピークが形成されることがある。

放射性核種 46Sc の点線源(壊変率:n0)をGe検出器の近傍に置き、γ線のパルス波高スペクトルを測定した。この 46Sc は次のように壊変する。0.889 MeV のエネルギー準位の半減期は 4ps であり、十分短く放出される2つのγ線(γ1線とγ2線)の放出は同時事象とみなすことができる。このためγ1線とγ2線について

γ1線のピーク効率を ε1

γ2線のピーク効率を ε2

γ1線の全計数効率を εT1

γ2線の全計数効率を εT2

また、γ1線の正味のピーク計数率を n1

γ2線の正味のピーク計数率を n2

サムピークの全計数効率を n12 で表すと、

n1 = n0(1-εT2)ε1

n2 = n0(1-εT1)ε2

n12 = n0ε1ε2

さらにγ1線とγ2線を合わせた全スペクトルの正味の計数率(nT)は、nT = n0(εT1 + εT2 – εT1εT2)で与えられるので、この線源の壊変率(n0)は n0 = nT + (n1n2)/n12 で求めることができる。この方法はγ線のパルス波高スペクトルに着目した比較的簡便な放射能測定でありサムピーク法と呼ばれる。

 

Ge半導体検出器に関する記述

Ge半導体検出器によるγ線の測定によって放射性同位元素の種類・数量を求める場合、まず、既知数量の 152Eu などの標準線源を用いる検出器のエネルギーの校正及び計数効率のエネルギー依存性の測定が必要となる。ただし、サムピークの生成を最小限にとどめるために、距離を大きく取ることがある。 放射性同位元素を含む試料の放射能定量に、この計数効率を適用するには、標準線源と幾何学的配置を同一にする。

 

Ⅰ 解説

Ge半導体検出器はγ線用の検出器である。通常のGe半導体検出器で測定できるγ線のエネルギーの下限は 50keV 程度、広領域では数keV 程度の低エネルギーX線までである。核種の決定にはパルス波高の測定に用いるマルチチャネルアナライザーのチャネル番号とγ線のエネルギーとの関係を与えるエネルギー校正曲線を、また放射能の定量にはγ線エネルギーに対する計数効率曲線をあらかじめ作成しておく必要がある。 この場合の標準線源として、22Na , 54Mn , 57Co , 60Co , 88Y , 137Cs のように、半減期が長くかつγ線放出割合がよくわかった核種が選ばれる。

55Fe:半減期 2.73年、EC壊変・X線(低エネルギー)
99Tc:半減期 2.14×10^5年、β-線
152Eu:半減期 13.5年、γ線(多数)
210Po:半減期 138.4日、α線

※ 152Eu はγ線検出器の校正に用いられる。
また、測定において、線源の測定位置はGe検出器から距離を離し、カスケードγ線によるサム効果が無視できるようにするのが望ましい。一度ピーク計数効率曲線を作成しておけば、幾何学的配置(線源・検出器間距離や線源の形状)を変えない限り以後も活用可能である。

 

液体でも、沸点の低い物質や分解しやすい物質では、放射性の気体が発生する場合があるので、放射性同位元素の科学形や反応性についても注意する。放射性ヨウ素の化学形が I2 の場合には揮発性が高くなるので、こうした化学形になることを避ける。例えば、125I で標識されたヨウ化ナトリウム水溶液の使用に際しては、H2O2 等の酸化剤の混入の可能性等を事前に検討する必要がある。 混合による急激な化学反応の進行により、特に、発熱反応である場合、放射性同位元素の飛散を招く可能性があるので、実験計画の段階から注意する。溶媒にエーテル類を用いる場合などは、特有の揮発性・引火性に注意が必要である。

 

Ⅱ 解説

トレーサ実験には、半減期の長い 125I や 131I が用いられる。放射性ヨウ素には、 I2、I-、IO3(-)、IO4(-) などの化学種がある。I2 は揮発しやすく放射性汚染を起こしやすい。更に、酸性にすると揮発しやすいため、酸性溶液にしたり、酸化剤を加えたりしないようにする。

放射性物質取扱作業:取扱行為は、一般的操作、機械加工、化学反応などの操作、加熱操作、静置に分けてみると、加熱操作が最も飛散を起こす可能性がある。加熱及び発熱を伴う操作には注意が必要である。また、溶媒としてエーテル類を用いる場合には、その揮発性と引火性にも注意が必要である。

 

放射性の金属イオンの相互分離には、陽イオン交換樹脂による方法があるが、塩酸形でクロロ錯体を形成する場合には陰イオン交換樹脂による分離も可能である。陰イオン交換樹脂に吸着された放射性同位元素について、クロロ錯体の安定度定数が大きく異なると、溶離液の 酸濃度を順次変えることで、それらの元素を少量の溶離液で分離することができる。

 

Ⅲ 解説

(強塩基性)陰イオン交換樹脂の吸着能
Fe3+、Co2+、Zn2+は、塩化物イオンが存在すると、FeCl-、CoCl4(2-)、ZnCl4(2-)などのクロロ錯体を形成するので、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着するようになる。陽イオンと塩化物イオンのクロロ錯体の形成が強いものほど、塩酸溶液の濃度は、薄いものを使用しなければならない。この時に、Zn2+ が最も強い クロロ錯体を形成している。この性質を用いて溶離液の HCl 濃度を変えることで、以下のように重金属イオンを分別分離することが可能である。
塩酸濃度と陰イオン交換樹脂からの重金属の溶出順:Ni3+(12M) > Mn2+(6M) > Co2+(4M) > Cu2+(2.5M) > Fe3+(0.5M) > Zn2+(0.05M)
ここで Co2+、Fe3+、Zn2+ はクロロ錯体である。

 

実験室の床面が 14C によりスポット状に汚染された場合、サーベイ法による汚染位置の特定にはGM管式サーベイメータが用いられる。汚染の固着性の程度により、汚染の拡大の可能性や除染の方針などが変わるため、スミア法による放射能測定も行われる。この場合には、液体シンチレーション計数装置を用いて測定するのが最も検出効率が高い。汚染核種が 32P の場合には 液体シンチレーション計数装置によるチェレンコフ光計測も利用できる。いずれの核種にも、固着性の汚染の場合には、スミア法で検出できない。遊離性の汚染の除去には、一般に、水、中性洗剤、酸、可溶性錯塩形成剤などが用いられる。可溶性錯塩形成剤としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが用いられる。ただし、14C が炭酸イオン として存在している場合には、酸を用いると 14CO2 の発生により汚染が拡大する可能性がある。

 

Ⅳ 解説

14C 及び 32P を使用する実験室において使用中に生じる表面汚染に対して測定のために適当な機器は以下の通りである。
14C:直接測定では薄窓のGM管式サーベイメータ、間接測定(スミア法)では薄窓のGM計数管または液体シンチレーション計数装置を使用する。特に液体シンチレーション計数装置は 14C のような低エネルギーβ線放出体測定のときは自己吸収がほとんどない優れた方法である。
32P:直接測定ではGMサーベイメータを使用する。間接測定(スミア法)ではGM計数管または液体シンチレーション計数装置を使用する。特に 32P エネルギーが高いため、液体シンチレータを用いず液体シンチレーション計数装置によるチェレンコフ光計測が可能である。

汚染の種類

固着性:表面に固着し、遊離しない汚染で体外被ばくだけを問題にすれば良い。
遊離性汚染:舞い上がり、室内の空気を汚染し、体内被ばくをもたらす。遊離性汚染の方が、危険性が高い。
直接法はサーベイメータにより表面を直接測定する方法で、固着性汚染と遊離性汚染の両方に適用できる。一方、間接法(スミア法)は、汚染表面をろ紙で拭き取り、そのろ紙を測定する方法となる。

遊離性の汚染の除去

RIによる汚染は、種々の状況が考えられるが、汚染の状況に応じて最も適切な除去法をとらなければならない。除染剤は、初めはなるべく温和なものを用い、除染できなければ順次化学的活性度の大きいものに移るようにする。化学的活性度の大きい除染剤の除染効果は大きいが、表面が侵食され再汚染のとき、除染が非常に困難になるからである。また除染剤の中には、、気体のRIを発生するものがあるので、(例として 14C の炭酸塩の場合、塩酸などの酸を加えると、分離して、14CO2 が発生する) 除染剤の選択には注意が必要である。一般に除染剤としては水、中性洗剤、酸、キレート形成剤などが用いられる。キレート形成剤としては Na-EDTA等がある。

Ge検出器を用いたγ線スペクトロメータに関する記述

Ⅰ 測定する線源と同じ核種、形状の放射能標準線源があれば、次の手順により比較的簡単に被測定線源の放射能を決定することができる。まず、標準線源を Ge 検出器の入社窓前方一定位置におき、その出力パルスの波高分布スペクトルをマルチチャネルアナライザで記録する。得られたスペクトルの全九州ピークに着目し、このピークが存在するチャネル領域の計数の総和 N(gs) を求める。この N(gs) からピークの下側に横たわる連続部分を直線分布で近似して差し引き、ピーク計数 N(gs) を求める。j チャネルの計数を n(j) と記述し、ピーク下限チャネルを H とすれば、ピーク計数 N(ns) は 次式で計算できる。

連続部分の計算誤差を小さくするため、例えば両側の3点の平均をそれぞれとり、次式で計算することもある。

この N(ns) を測定時間 T で割ればピーク計数率 m(s) = N(ns)/T が得られる。この場合マルチチャネルアナライザの時間設定を ライブタイムモードにしておけば、デッドタイムを除外した時間がタイマーに記録されるため、デッドタイムに起因した数え落としの補正を行う必要がない。次に、被測定線源を同一位置に置き、同様の測定を行い、そのピーク計数率 m(X) = N(nX)/T を求める。被測定線源の放射能 A(x)(Bq) は、A(x)(Bq) は、A(x) = m(x)/m(s)・A(s) として決定する。ここに A(s) は標準線源の放射能(Bq)である。

解説

被測定線源と異なる核種の標準線源を用いる場合には、通常、次のような方式により被測定線源の放射能を決定する。まず、ピーク計数効率 ε をγ線エネルギーの関数として決定する。ここでいうピーク計数効率とは、標準線源のピーク計数率 m(s) をγ線放出率で除したものである。この場合の標準線源として、22Na、54Mn、57Co、60Co、88Y、137Cs のように、半減期が長く、かつγ線放出割合がよくわかった核種が選ばれる。ここで、γ線放出割合とは着目するγ線放出率と壊変率(放射能)との比である。標準線源の放射能は別の方法により正確に決定されているものとする。これらの標準線源のスペクトル をそれぞれ記録し、前述 Ⅰ で示した手順によりピーク計数率 n(si) をそれぞれ求める。1つの核種がエネルギーの異なる複数本のγ線を放出する場合にはそれぞれのピークについて同様の計算を行う。それぞれのピーク計数効率 ε は ε = m(s)/γ線放出率 = m(s)/(放射能×γ線放出割合) となる。放射能の単位は Bq である。このようにして求めたいくつかのピーク計数効率をγ線エネルギーの関数としてグラフ用紙にプロットし、各プロットを滑らかな曲線で結ぶ。これをピーク計数効率構成曲線と呼ぶ。この場合、両対数グラフを用いると、150 keV 以上のエネルギー領域でおおよそ直線となるので便利である。 なお、これらの測定は個別の標準線源によって行ってもよいが、混合核種標準線源により一度に行うことも可能である。次に、被測定線源について同様の測定、計算を行い、ピーク計数率 m(x) を求める。当該ピークのγ線エネルギーにおけるピーク計数効率 ε(x) はピーク計数効率校正曲線から読み取る。そうすると、被測定線源の放射能 A(x) は、A(x) = m(x)/(ε(x)×γ線放出割合) として決定できる。なお、これらの測定において、線源の設定位置は Ge 検出器から離し、カスケードγ線によるサム効果が無視できるようにするのが望ましい。線源・検出器間距離が短い場合は、サム効果の影響が無視できなく なる場合があるが、その影響の補正は簡単ではない。これら一連の操作は最初に手間がかかるが、一度ピーク計数効率校正曲線を作成しておけば、線源・検出器間距離や線源の形状を変えない限り、この曲線は以後も活用可能であり、日常的には特定の核種、例えば 137Cs 標準線源でその一定性を確認するだけでよい。

補足

例えば 60Co では、1.17 MeV と 1.33 MeV の2本のγ線が、検出器が区別できない非常に短い時間内に放出される。このように複数のγ線が実質的に同時に放出される場合をカスケードγ線という。γ線がカスケード放出されると、1つのγ線が全吸収されても、他のγ線が何らかの相互作用を起こすと、パルス波高は全吸収ピークからずれてしまう。これをサム効果という。60Co のγ線を測定すると、2.5 MeV の位置にピークが生じるのはこのためである。サム効果を防ぐには、個々のγ線の検出効率を小さくすればよく、線源と検出器間の距離を大きくするとよい。 ただし、検出効率が低下するため、線源強度が小さかったり、測定時間が十分に取れない場合は計数が少なくなり、統計誤差が大きくなる。

 

試料中の放射性核種を調べる場合に用いられるGe検出器に関する記述

試料中の放射性核種を調べる場合、Ge 検出器を用いたγ線スペクトロメトリ法により行うことが一般的である。この理由の一つとしては、ゲルマニウム結晶中で電子と正孔の対が生成されるのに必要なエネルギーが約 3 eV と小さく、エネルギー 1MeV の光子に対し 2 keV 程度の良好なエネルギー分解能が得られることがあげられる。核種の決定において着目すべきピークは、通常 全吸収ピークであるが、これ以外にも種々のピークが形成されるため、個々のピークの成因を十分理解する必要がある。1壊変当たり複数のγ線がカスケードに放出される場合にはサムピークが形成される。また、γ線エネルギーが高い場合には、電子対生成により生じた陽電子が電子と結合して 消滅光子が放出されるため、この光子が相互作用を起こさず Ge 検出器の有効体積外に出ると、エスケープピークが形成される。

 

解説

例えば 60Co のように壊変に伴い複数の励起レベルをたどり、複数のγ線が放出される様子をカスケード(階段状に連続した滝のこと)という。

 

純β線放出核種の場合では、プラスチックシンチレーション検出器や Si(Li) 半導体検出器などを用いてエネルギースペクトルを測定する。この場合、β線の最大飛程が有効検出領域を超えないことに注意するとともに、β線が有効検出領域へ入射する前に生じる吸収などにも注意する必要がある。エネルギーの指標としては、0.5 MeV 以上では 137Cs 線源などから放出される内部転換電子のピークが利用される。β線のエネルギーは連続分布のため、測定されたエネルギースペクトルの形状や最大エネルギーに基づいて核種を決定する。この方法の他、アルミニウムの吸収板と端窓型GM計数管などを用いて吸収曲線を作成し、フェザー法と呼ばれる方法でβ線最大飛程を決定して核種を推定することもできる。32P のβ線に対し、アルミニウム 中の最大飛程 R[g・cm^(-2)] とβ線最大エネルギー E[MeV] との関係は、R = 0.542E – 0.133 の実験式で表される。これにより、32P の最大飛程は約 0.8 g・cm^(-2) となる。

 

解説

吸収板には後方散乱などが起こりにくい低原子番号を有し、均一な厚さの板が得やすいアルミニウムがよく用いられる。吸収板を次第に厚くして最大飛程を求めようとすると、最大飛程に近くにつれて計数率が低下するため困難である。そこで吸収曲線を求め、標準試料のそれと比較することによって最大飛程を求める方法がよく利用され、フェザー法と呼ぶ。0.542E – 0.122 の式をフェザーの式という。

Ge検出器に関する記述はたくさん出ているので、いろんな記述を覚えておくのに越したことはないと思います。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

DNA損傷と修復

DNA損傷と修復

DNAの構造

塩基、糖(デオキシリボース)およびリン酸が1分子ずつ結合したものをヌクレオチドという。このヌクレオチドが数多く繋がった鎖がらせん状に2本並んだ巨大な分子がDNAである。これはDNAの2重らせん構造と呼ばれる。 DNAを作る塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類であり、向かい合う塩基が水素結合をして2本の鎖をつないでいる。塩基の組み合わせは決まっておりAとT、GとC間のみで行われる。DNAの 2重らせん構造と塩基の水素結合の様子を図に示す。

① 1本鎖切断 ② 2本鎖切断 ③ 塩基損傷・欠失 ④ 水素結合の破壊 ⑤ 糖の破壊

DNA損傷

電離放射線により引き起こされる DNA 損傷は、1本鎖切断、2本鎖切断、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成などに分けられる。これらは細胞死や突然変異の原因となる。2本鎖切断は1本鎖切断 よりも生じにくく、10 倍以上のエネルギーを必要とする。また高LET放射線では電離密度が密なため2本鎖切断の割合が増える。紫外線は非電離放射線であり、電離は起こさず 励起のみが起こる。DNA を構成する 4 種の塩基はいずれも紫外線をよく吸収し、塩基分子の励起が起こる。この際ピリミジンダイマー(ピリミジン2量体)が形成される。DNA ではチミンとシトシンがピリミジン塩基でありダイマーとは隣接する塩基間に共有結合ができた状態をいう。

光回復

光回復は、紫外線による損傷であるピリミジンダイマーが光回復酵素の存在下で可視光に当たることによりモノマーに戻り回復するものである。除去修復では、まず損傷部の塩基やヌクレオチドが切り出され、その後塩基や ヌクレオチドが相補的に合成される。塩基やヌクレオチドを除去する過程に関係する酵素(エンドヌクレアーゼ)を欠いた先天性遺伝疾患にまた色素性乾皮症(紫外線に弱い)がある。 色素性乾皮症ではピリミジンダイマーを修復できないことから紫外線に高感受性を示し、皮膚がんが効率に発生する。

細胞周期による放射線感受性の変化

細胞は細胞分裂を繰り返して増殖する。分裂から次の分裂までの 1 サイクルを細胞周期といい、図6に示すように M 期 → G1 期 → S 期 → G2 期 → M 期 と繰り返される。M 期は分裂期、S 期は DNA 合成期である。 この 2 つの時期を埋めるものとして G1 期および G2 期がある。細胞分裂は行わず、 G1 期に長く留まっている場合、特別に G0 期(静止期)と呼ぶことがある。また、分裂期以外の時期をまとめて間期と呼ぶ。 細胞の放射線感受性は、細胞周期のの時期によって異なる。図7に示すように、M 期の放射線感受性が高く、S 期後期と G1 期初期の放射線感受性が低い。G1 後期から S 期前期に かけても放射線感受性は高くなる。

DNA にできた傷は様々な機構で修復される。紫外線によるピリミジン2量体は光回復酵素により認識され、320 ~ 410 nm の光の存在下でシクロブタン環が直接開裂されて 元のピリミジンに戻る。ラジカルなどによりできた塩基損傷は、その損傷部位の前後で DNA の一部が切り出され、向かい側の DNA 鎖を鋳型として埋め戻される。損傷のある部位だけが切り出される場合を 塩基除去修復、損傷部位を含めて広い範囲が切り出される場合をヌクレオチド除去修復という。この修復過程に関与する遺伝子に 異常がある遺伝性疾患が色素性乾皮症である。放射線による致死的で重要な傷は DNA の2 本鎖切断で相同組換え修復または非相同末端結合 で修復される。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

 

第1種放射線取扱主任者まとめ集

放射化・放射化分析・放射化学分析

放射化

安定同位体を核反応によって放射性同位元素とすることをいう。一般には原子炉による (n , γ)反応によるもの。サイクロトロンによって陽子、重陽子、α粒子により核反応を起こす方法等がある。血液中のナトリウム の放射化でできる反応は 23Na(n,γ)24Na、毛髪に含まれる 32S(n,p)32P も対象となる。

放射分析

非放射性試料と定量的に結合して沈殿を作る放射性化合物を加え、生成した沈殿を分離し、放射能を測定することによって定量分析する方法をいう。

放射化学分析

試料であるRIを分析する方法で空気中の 137Cs の放射能を分析したりフォールアウト中の 90Sr の放射能を分析したりする定量方法。目的とする分析試料は全てRIである。

ウエルツバッハ法

3H の標識化合物を合成する方法である。合成する化合物と過剰の 3H2 ガスを数ヶ月放置して接触交換させ合成する 3H2 と H2 の同位体交換による。この方法では特定位置を標識できない。又比放射能が低い欠点を有する。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集



吸収線量・照射線量・放射線量

解答
まずはこのβ線のフルエンス率を求める。
フルエンス率Φ = (314 × 10^6)/(4π × 10^2) = 2.5 × 10^5 cm^(-2)・s^(-1)
平均質量阻止能2.0 MeV・cm^2/g であるから40秒間の吸収線量は

D = 2.5 × 10^5 × 2.0 × 40 = 2.0 × 10^7 MeV/g

求めるのは吸収線量(mGy)なので 2.0 × 10^7 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) = 3.2 × 10^(-3) Gy したがって 3.2 mGy となる。

カーマ

カーマ(K)は、ある物質の体積要素内で間接電離によって自由になった全荷電粒子の最初の運動エネルギーの和dEをその体積の物質の質量dmで除した商である。E = dE/dm。単位は1Gy = 1J/kg。 また、カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

吸収線量(D)

質量dmの物質に電離放射線によって付与された平均エネルギーdεとすると、D = dε/dmを吸収線量という。単位はGy = J/kg。吸収線量はすべての放射線に対して用いることができる。

照射線量(X)

dmという質量の空気の容積要素内で光子(X線、γ線)によって発生する全ての電子が空気中で完全に静止するとき、空気中に発生した一方符号のイオンの全電荷の絶対値をdQとするとX = dQ/dmと表せる。また、照射線量は光子が空気と相互作用するときにだけ用いることができる。

制動放射線

速い電子又は荷電粒子が原子核の近傍を通るとき、核の陽電荷によるクーロン力を受けて強く制動されるとき、余るエネルギーが光子の形で放射される。これが制動放射で放射される。この制動放射線は連続 スペクトルのエネルギーをもつ。制動放射線の発生確率は物質の原子番号の2乗に比例し、入射する粒子の質量の2乗に反比例する。

光核反応

10MeV程度の光子が物質の原子核にあたると中性子が放出される場合があり(γ,n)反応ともいう。このような光子による原子核反応を光核反応という。

トムソン散乱

自由電子との干渉性散乱

レイリー散乱

軌道電子との干渉性散乱。光子エネルギーが小さく、原子番号が大きい物質において生じる散乱線は前方に多く散乱される。

線スペクトル

原子が放射または吸収する光などの電磁波を通して見たときに線状にに見えるスペクトル。線スペクトルにはα線、γ線、オージエ電子、特性X線、内部転換電子、光電子がある。

連続スペクトル

ある波長範囲にわたって連続的に分布したスペクトル。分光装置の性能をいくら高めても線スペクトルに分解できないもので、連続スペクトルにはβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックス ウェル・ボルツマン分布(0.025 eV のエネルギーを有する熱中性子)に従う連続分布がある。

放射線量と単位

記号 SI単位 その他
量子数 N I  ー
フルエンス Φ m^(-2)  ー
エネルギーフルエンス φ J × m^(-2)  ー
断面積 δ m^2  ー
線減弱係数 μ m^(-1) = 線エネルギー吸収係数
質量エネルギー転移係数 μtr/ρ m^2 × kg^(-1) 光子との相互作用
質量エネルギー吸収係数 μen/ρ m^2 × kg^(-1)  ー
質量阻止能 S/ρ J × m^2 × kg^(-1) 荷電粒子との相互作用
線エネルギー付与 J × m^(-1)  ー
質量減弱係数 μ/ρ m^2 × kg^(-1) 物質には依存しない
カーマ K J × kg^(-1)  ー
照射線量 X C × kg^(-1)  ー
エネルギー付与 εi J 荷電粒子に対して用いる
吸収線量 D J × kg^(-1)  ー
放射能 A Bq  ー

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集



放射線による影響 確率的影響と確定的影響 身体的影響と遺伝的影響

確定的影響

確定的影響にはしきい値がある。しきい値は影響が現れる最低の線量をいうが、放射線防護上は被ばくを受けた人の 1 ~ 5 % に影響が現れるとしている。しきい線量を超えて被ばくした場合には影響の重篤度が 増大する。確定的影響は、臓器・組織を構成する細胞が細胞死を起こすことに基づく影響であり、臓器・組織のある割合の細胞に細胞死が起きたところで影響が現れ、、さらに大きな線量を被ばくすると、細胞死を起こす 細胞数が増加して症状は重くなる。発がんと遺伝的影響の確率的影響を除いた全ての影響が分類される。

しきい線量とは、この線量を被ばくすると約 1 % の人に障害が発生する線量をいう。

確率的影響

確率的影響にはしきい線量はないと仮定されている。線量の増加に伴って変化するものは、影響の発生頻度である。確率的影響は突然変異に基づく影響であり、線量が増加すると突然変異が起こる確率が増加し、 確率的影響の発生頻度が増加する。一方、影響の重篤度は線量の大きさによらず一定である。確率的影響に分類される影響は、発がんと遺伝的影響である。

確率的影響と確定的影響の違い

種類 しきい値 線量増加により変化するもの
確率的影響 存在しない 発生頻度  がん、遺伝的影響
確定的影響 存在する 症状の重篤度 白内障、脱毛、不妊など確率的影響以外の全ての影響

身体的影響と遺伝的影響

放射線影響が誰に現れるかという観点から、放射線影響は身体的影響と遺伝的影響に分類される。

[身体的影響] 被ばくした本人に現れるものが身体的影響である。これには被ばくしてから影響が現れるまでの期間(潜伏期)により、早期影響と晩発影響に分類される。被ばくの形式にもよるが、 被ばく後数週間以内に現れるものを早期影響といい、被ばく後何ヶ月あるいは何年も経過したのちにはじめて現れるものを晩発影響という。

[遺伝的影響] 被ばくした本人ではなく子孫に及ぶものが遺伝的影響である。これは遺伝子に起こった変化が子孫に伝えられて引き起こされるものである。したがって、将来子供を産む可能性のある人が生殖腺に被ばくを 受けた場合にのみ遺伝的影響が発生する可能性が生じる。妊娠中に被ばくを受けた胎児に、その被ばくが原因で放射線影響が認められた場合は、遺伝的影響ではなく胎児自身の身体的影響 ということになる。また、変化が起こった遺伝子を受け継いでも、子の代で影響が現れず、孫の代に遺伝的影響が現れることもある。

分子レベルの影響(直接作用と間接作用)

放射線の生物作用の標的は DNA であり、分子レベルの影響としては DNA 損傷を考えれば良い。DNA 損傷の起こり方には次の二通りがある。

直接作用:DNA を構成する原子に起きた電離、励起が直接 DNA 損傷を引き起こす。・・・生体高分子のエネルギー吸収である。

① 直接作用により不活化される酵素の数は濃度に比例する。② 直接作用により不活化される比率は濃度には依存しない。

間接作用:生体の水分子が電離・励起され、その結果生じたフリーラジカル(遊離期)が間接的に DNA 損傷を引き起こす。低LET放射線の場合、DNA 損傷の多くは間接作用によって引き起こされる。・・・ 水分子のエネルギー吸収である。① 乾燥系では水の放射線分解による間接効果の寄与は小さい。

フリーラジカルの生成

励起・・H2O → H*(還元性) + OH*(酸化性)

電離・・H2O → H2O+  +  e- 、H2O+  →  H+  +  OH* もしくは  H2O+  +  H2O  →  H3O+  +  OH*

H3O+  +  e-  →  H*  +  H2O

電子の周りには水分子が集まり水和電子が生成される。e-  +  nH2O  →  e(aq)-  [還元性]

e(aq)- + H2O → OH- + H* もしくは、e(aq)- + H+ → H*、e(aq)- + O2 → O2*-(スーパーオキシドラジカル)

H* + OH* → H2O となり、H*は生体分子の水素を引き抜いて反応を起こし、10^(-10)秒の寿命をもつ。

還元性を示す分子・・・H*、e(aq)-、H2

酸化性を示す分子・・・OH*、H2O2

ラジカルの再結合

生成されたH*やOH*といったラジカルは拡散し広がっていくが、その過程でラジカル同士再結合するのもある。ラジカルの再結合はラジカル同士の距離が近いと起きやすい。ラジカルの生成密度は、低LET放射線では 疎で高LET放射線では密であることから、低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

間接作用の修飾要因

① 希釈効果

希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。主に酵素濃度が減少する。 ① 溶質として存在する酵素などの生体高分子数の不活化を指揮とした場合吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定 → 同じ条件での不活性化率は濃度の増加に伴い低下する。

② 酸素効果

組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果という。酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは酸素分子が電子親和性が大きく、 電子を取り込んでスーパーオキシドという反応性に富むラジカルを産生するためである。また、照射後に酸素濃度を高めたとしても酸素効果は見られない。同じ生物学的効果を 得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。

OER = (無酸素下である効果を得るのに必要な線量)/(酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量)

OERは酸素分圧の上昇につれて大きくなるが、酸素分圧が 20 mmHg を越えるとほぼ一定となる。低LET(線エネルギー付与)放射線ではOERは 2.5 ~ 3 程度であるが、 高LET放射線では酸素効果は小さい。

③ 保護効果

ラジカルと反応しやすい物質が照射野に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので放射線の効果は減少する。これを保護効果といい、このような働きを持つ物質を放射線防護剤あるいは単に防護剤という。 SH化合物などのラジカルスカベンジャーはその一例である。SH基にはシステイン、システアミン、グルタチオン、シスタミンがある。またOH基も還元作用があることから、 アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなども同様に保護効果を持つ。

④ 温度効果

温度が低下した状態では放射線効果は減少する。これを温度効果という。ラジカルの拡散が低温により妨げられるためだと考えられている。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

 

第1種放射線取扱主任者まとめ集



放射性同位体特性表

放射性同位体特性表

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02   ー β-         ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC         ー
14C 5730y 0.16   ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20   ー β+         ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC         ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC         ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC         ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-         ー
30P 2.5m 3.2   ー β+ , EC         ー
32P 14.3d 1.71   ー β-         ー
33P 25d   ー 0.25 β-         ー
35S 87.5d 0.17   ー β-         ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-         ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-         ー
45Ca 164d 0.26   ー β-         ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-         ー
51Cr 27.7d   ー 0.32 EC         ー
54Mn 312d   ー 0.83 EC         ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC         ー
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-         ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC      メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC         ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC         ー
67Ni 100y 0.067   ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d   ー 0.09,0.19 EC         ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC         ー
68Ge 271d   ー 0.009 EC         ー
75Se 120d   ー 0.27,0.14 EC         ー
75Br 98m   ー (0.51),1.7 β+ , EC         ー
76Br 16.2h   ー (0.51),3.6 β+ , EC         ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-         ー
81mKr 13s   ー 0.19 IT         ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-     厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC         ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC         ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-         ー
85Sr 64.8d   ー 0.51 EC         ー
87mSr 2.8h   ー 0.39 IT,EC         ー
90Sr 28.8y 0.55   ー β-     厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC         ー
90Y 64.1 2.28   ー β-         ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-         ー
99mTc 6.0h   ー 0.14 IT      蛍光X線線源
109Cd 463d   ー 0.222 EC          ー
111In 2.8d   ー 0.17,0.25 EC          ー
113mIn 1.7h   ー 0.39 IT          ー
113Sn 115.1d   ー 0.26 EC          ー
123I 13.2h   ー 0.159 EC          ー
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC          ー
125I 60.1d   ー 0.036 EC          ー
129I 1.57×10^7y   ー 0.038 β-          ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β-          ー
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-          ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-          ー
133mXe 2.2d   ー 0.23 IT          ー
131Cs 9.7d   ー 0.03,0.004 EC          ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-   密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m   ー 0.66 IT          ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-          ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-          ー
147Pm 2.6y 0.224    ー β-         厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC        非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-          ー
197Hg 64.1h   ー 0.08 EC          ー
201Tl 73.0h   ー 0.17,0.14 EC          ー
204Tl 3.8y 0.764    ー β-,EC         厚さ計
203Pb 52.0h   ー 0.28 β-          ー
210Po 140d α線6.0    ー α      煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α          ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α          ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α 煙感知器、静電除去・・・α線、 蛍光X線、硫黄計、

厚さ計・・・γ線

252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF       中性子水分計

最低限覚えておいた方が良い核種、壊変形式、エネルギー、核種の用途をまとめました。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

光電効果・コンプトン効果・電子対生成

光電効果

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を 光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、 オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。 特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。
光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

光電効果に関する例題

0.1 MeV の光子がタングステンと光電効果を起こしたときのK軌道電子とKα-X線のエネルギーを求めよ。K軌道、L軌道の結合エネルギーは69.5 KeV、10.9 KeVとする。

光電子エネルギー 100 – 69.5 = 30.5 KeV

Kα-X線 69.5 – 10.9 = 58.6 KeV

オージエ効果

光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線の エネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子、この現象をオージエ効果という。オージエ電子は線スペクトルである。 原子番号の大きい物質ほど特性X線の発生量が多く、オージエ電子の発生量が少なくなる。

コンプトン効果

波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となる。これをコンプトン効果という。 コンプトン効果は粒子性を示し、光子エネルギー1〜3 MeV の範囲で起こる。
コンプトン散乱は非干渉性散乱であり、① 入射波長より散乱波長の方が長い。 ② 線減弱係数は原子番号Zに比例する。原子当たりの断面積は原子番号Zに比例する。
コンプトン電子のエネルギーEeは Ee = E0/[1 + (E0/(1 – cosθ)mc^2)] で表すことができる。
ここで60Coγ線についての補足。60Coγ線エネルギーでは全ての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いては、質量減弱計数はほぼ同じである。したがって、単位面積当たりの質量で 表した遮蔽体の厚さ、すなわち密度×厚さの積が大きいほど遮蔽効果が大きくなる。

電子対生成

エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。これを電子対生成という。電子対生成の全断面積は Z(Z+1) ≒ Z^2 に比例する。三対子生成:電子対生成=1:2の割合で発生する。三対子生成は低原子番号で良く発生する。また、電子対生成で発生した陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅する。 消滅時に0.51 MeVの消滅線を180°方向に2本放出する消滅線は0.51 MeV の単色光である。

問題 電子対生成の計数効率の求め方

1.17 MeV のγ線に対する計数効率30%、1.33 MeV のγ線に対する計数効率25%のとき、60Coに対する計数効率は何%か

解答

1.33 MeV のγ線が放出されない確率 1.17 MeV が放出される確率は 0.3(1-0.25)
1.33 MeV のγ線が放出され、1.17 MeV のγ線が放出されない確率は 0.25(1-0.3)
両方放出される確率は 0.3×0.25
したがって、60Coに対する計数効率は 0.225+0.175+0.075=0.475 47.5%

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性を示す。

アルミニウム(Z=13)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 50KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 50KeV ~ 20MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 20MeV]

水と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 30KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 30KeV ~ 30MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 30MeV]

鉄と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 100KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 100KeV ~ 10MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 10MeV]

鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

軌道電子捕獲

不安定な原子核が軌道電子を核内に取り込むことにより、陽子が中性子に変わることを軌道電子捕獲という。核内ではp + e- → n + ν となり、原子番号が1つ減少し、質量数は変わらない。 軌道電子捕獲が起こると空席の軌道を外側の電子が埋めるので、特性X線の発生あるいは、オージエ電子の放出がある。この場合特性X線もオージエ電子も線スペクトルである。

特性X線が放出される条件

特性X線が放出されるのはβ-壊変、β+壊変あるいはα壊変の後に内部転換を生じた場合、または軌道電子捕獲ECの場合である。

核異性体転移

原子番号も中性子数も同じで、核内エネルギー準位の異なる核種を互いに核異性体というが、エネルギーが不安定状態にある核異性体より安定なエネルギー準位の核異性体となるために γ線を放出する。これを核異性体転移という。

内部転換

核が励起状態にあるときγ線を放出する代わりに、そのエネルギーを軌道電子に与えて放出することを内部転換といい、放出される電子、つまり内部転換電子は線スペクトルをもつ。この放出される電子が K殻、L殻等の電子にエネルギーを与えることで特性X線が放出される。 内部転換の起こる確率は原子番号の3乗に比例する。またL殻からの内部転換エネルギーはK殻からの内部転換電子エネルギーより高く、γ線放出と競合して起こる。
核異性体転移によってγ線が放出される確率をPγ、内部転換電子が放出される確率をPeとすれば、全放出電子数の割合αT(内部転換係数)は αT = Pe/Pγとなる。Pe = αT/(1+αT)、 Pγ = 1/(1+αT)、 K-X線が放出が放出する確率は (α・ω・P)/(1+αT) である。ω:K特性X線が放出される割合。P:準安定状態にβ壊変する確率。

ここで内部転換電子のエネルギー、γ線で放出される光電子のエネルギー、オージエ電子のエネルギー、軌道電子の結合エネルギーのK殻、L殻の大小関係を示すと
① 内部転換電子のエネルギー K殻<L殻
② γ線で放出される光電子のエネルギー K殻<L殻
③ オージエ電子のエネルギー K殻>L殻
④ 軌道電子の結合エネルギー K殻>L殻 とまとめることができる。

ここの記述は出題頻度が高いため覚えておくと良い。

光電効果・コンプトン効果・電子対生成に関する記述

光子のエネルギーが軌道電子にすべて与えられる現象を光電効果と呼ぶ。このとき放出される電子の運動エネルギーは、光子のエネルギーと軌道電子の結合エネルギーの差に相当する。放出された電子の占めていた軌道を外側の軌道電子がうめると、両者の結合エネルギーの差に相当する単色エネルギーの光子が放出される。この光子を特性X線と呼ぶ。あるいはそのエネルギーが別の軌道電子に与えられた場合、オージエ電子が放出される。 光電効果が起きる確率は、光子のエネルギーが特定の軌道電子の結合エネルギーを少し超えたときに急激に増加する。この不連続的に変化する箇所を吸収端と呼ぶ。

 

光子が軌道電子と衝突し散乱される現象をコンプトン効果と呼ぶ。下図の通り、入射光子のエネルギーを hν(0)、散乱光子のエネルギー及び散乱角をそれぞれ hν 及び θ とする。またコンプトン電子の運動エネルギー及び放出角をそれぞれ E 及び φ とする。

コンプトン効果では、光子のエネルギーが大きく軌道電子は静止した自由電子と見なせるので、コンプトン電子の運動量を p、光速を c すると、運動量及びエネルギー保存則より次の関係が成り立つ。
hν(0)/c = hν cosθ + pcosθ
0 = hν sinθ – psinθ
hν(0) = hν + E
ここで電子の質量を m(0) とし (pc)^2 = E(E+2m(0)c^2) なる関係から次式が得られる。
hν = hν(0)/[1+(hν(0)/m(0)c^2)(1-cosθ)]
したがって、散乱光子のエネルギーは θ = 0 のとき最大となる。また、θ = π のとき最小となり、コンプトン電子のエネルギーは最大となる。このときのコンプトン電子の放出角は φ = 0 となり、このコンプトン電子の最大エネルギーをコンプトン端と呼ぶ。

 

原子核周辺のクーロン場の中で光子が消滅し、一対の電子と陽電子が生成される現象を電子対生成と呼ぶ。電子と陽電子は質量を有することから、この現象は光子のエネルギーが電子の静止質量エネルギーの 2 倍以上でないと起こらない。生成した陽電子は電子の反粒子であり、電子と結合すると 0.511 MeV の 2 個の消滅放射線を互いに反対方向に放出する。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説3

第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説3

問1

次の標識化合物のうち、陽電子放射断層撮影(PET)による腫瘍の検査に用いられるものとして、正しいものの組み合わせはどれか。

A [11C]メチオニン

B [13N]アンモニア

C [15O]二酸化炭素

D [18F]フルオロデオキシグルコース

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:アミノ酸代謝と関連して、脳腫瘍の検査に有効である。

B 誤:静脈注射して、心筋血流量の検査に用いられる。

C 誤:吸入投与して、脳血流量の検査に用いられる。

D 正:糖代謝の高い脳で最もよく用いられる。

問2

標識化合物の利用法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A [3H]ヒスチジンを用いることにより RNA の塩基配列を調べることができる。

B [14C]チミジンを用いることにより DNA の合成量を調べることができる。

C [α-32P]ATP を用いることによりタンパク質のリン酸化を調べることができる。

D [35S]メチオニンを用いることによりタンパク質の合成量を調べることができる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

下の表に標識化合物の使用方法について記載する。

標識化合物 使用方法
[3H]チミジン(あるいは[14C]チミジン)、[32P]デオキシリボヌクレオチド、[125I]ヨードデオキシウリジン DNA合成量の測定
[3H]ウリジン(あるいは[14C]ウリジン)、[125I]ヨードウリジン RNA合成量の測定
[3H]ロイシン タンパク質の代謝速度の測定
[35S]メチオニン、[3H]グリシン、[3H]ヒスチジン タンパク質合成量の測定
[125I]標識化合物 ラジオイムノアッセイ(免疫活性検査)
[14C]グルコース 脳・がん細胞を標識

A 誤:ヒスチジンはアミノ酸の 1 つで、タンパク質合成量に用いられる。

B 正:チミジンの標識化合物は DNA 合成量。ウリジンなら RNA 合成量の測定に用いられる。

C 誤:DNA の塩基配列の決定に用いられる。

D 正

問3

次の記述のうち、悪性腫瘍の炭素イオン線治療がX線治療に比べて優れている点として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 腫瘍組織に集中して線量を与えることができる。

B 腫瘍組織の吸収線量が同じ場合、抗腫瘍効果が大きい。

C 酸素効果が大きい。

D 細胞周期依存性が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:属にブラッグピークという。

B 正:RBE が高いので、抗腫瘍効果が大きい。

C 誤:炭素イオン線は高 LET 放射線なので、間接効果の修飾は小さい。

D 誤:炭素イオン線は高 LET 放射線なので、間接効果の修飾は小さい。

問4

輸血用血液放射線照射に関する次の記述のうち、誤っているものは、次のうちどれか。

1 移植片対宿主病を防ぐことが目的である。

2 吸収線量は 15 ~ 50 Gy である。

3 新鮮凍結血漿に行う。

4 照射には通常X線、γ線又は電子線を用いる。

5 リンパ球の放射線感受性が他の血漿成分に比較して著しく高いことを利用している。

解答 3

解説

輸血後移植片対宿主病(GVHD) は輸血した血液中のリンパ球が輸血された患者の組織を非自己として攻撃することをいう。輸血用血液は、リンパ球は細胞死するが他の血球には影響が及ばない線量(15 ~ 50 Gy)で照射される。血液は、有形成分(血球)と血漿に分けられる。血液照射の目的がリンパ球の不活性化であるので、血漿での照射は意味がない。

問5

放射線影響における酸素効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素濃度が高くなると放射線の細胞致死効果は小さくなる。

B OER とは、同一線量における酸素存在下と非存在下での生物効果の比である。

C 酸素効果は高 LET 放射線では低 LET 放射線に比べて小さくなる。

D 培養液の酸素分圧を 1 mmHg から 40 mmHg まで変化させた場合は、101 mmHg から 140 mmHg まで変化させた場合よりも細胞致死効果の変化が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:酸素濃度が高くなると致死効果は大きくなる。

B 誤:OER は、同一の効果を得るのに必要な酸素非存在下と存在下の線量の比である。

C 正:間接効果の修飾は高 LER 放射線で小さい。

D 正:酸素分圧が 20 mmHg を越えると感受性の変化はあまりない。

問6

放射線による直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A X線による細胞致死効果においては、直接作用の寄与が間接作用の寄与よりも大きい。。

B 直接作用は間接作用に比べて、酸素の影響を受けにくい。

C 直接作用は間接作用に比べて、ラジカルスカベンジャーで抑制されやすい。

D 乾燥した酵素のX線による不活性化は、主に直接作用によるものである。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

A 誤:直接作用と間接作用の比は、1 : 2 程度。

B 正:酸素効果は間接作用を修飾する。

C 誤:保護効果(ラジカルスカベンジャー)は間接効果を修飾する。

D 正:乾燥系では、水の放射線分解による間接効果の寄与は小さい。

問7

放射線による DNA 損傷に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射線に特異的な DNA 損傷はない。

B 細胞周期の時期により DNA 2本鎖切断の修復様式に違いが認められる。

C 細胞の生死に関しては DNA 1本鎖切断が最も重要である。

D 塩基損傷は発がんの原因とならない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:化学物質によっても同様の DNA 損傷は生じる。

B 正:G1 期では非相同末端結合が、G2 期では相同組換え修復が誘導される。

C 誤:DNA 2本鎖切断の方が細胞の生死には重要である。

D 誤:紫外線は鎖切断を起こさず、影響は塩基のレベルに留まるが、皮膚がんの原因になる。

問8

水へのX線照射によって生じるヒドロキシラジカルに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 損傷を引き起こす主要な原因の一つである。

B スーパーオキシドラジカルよりも寿命が長い。

C 強い酸化力を有する。

D ヒドロキシラジカルは pH を決める要因である。  

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD 

解答 2 

解説  

A 正:ヒドロキシラジカル(OHラジカル)は間接作用で最も重要なラジカルである。  

B 誤:ヒドロキシラジカル(OHラジカル)は反応性が高く酸化力が強いことから早く消失する(寿命が短い)。  

C 正:OH ラジカルは不対電子を解消するために強く電子を求める(酸化 = 求電子反応)。  

D 誤:pH を決めるのは水素イオン濃度である。

問9

次のうち、培養細胞のX線に対する致死感受性に影響を及ぼす因子として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果

B 気圧

C 照度

D 温度

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:酸素濃度が低くなると感受性は低くなる。

B 誤:感受性との関係はない。

C 誤:感受性との関係はない。

D 正:温度が高くなると感受性は高くなる。

問10

X線照射による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線維芽細胞は主にアポトーシスにより死ぬ。

B 間期死は、照射後一度も分裂を経ないで死に至る細胞である。

C 同一吸収線量であっても、分割照射と 1 回照射では、分割照射の方が細胞生存率は高い。

D 致死感受性は細胞周期に依存しない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

A 誤:繊維芽細胞は、コラーゲンを産生する結合組織の細胞の 1 つ。結合組織の細胞の感受性は低く、アポトーシスにはよらない。

B 正

C 正:分割照射では線量率効果(SLD)があり、生存率は高い。

D 誤:M 期と G1 後期から S 期初期で高く、S 期後半で低い。

問11

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A がんの原因となることがある。

B 細胞死の原因となることがある。

C 同一吸収線量で比較した場合、γ線の方が中性子線よりも多数の染色体異常を引き起こす。

D 低 LET 放射線の場合、線量率の高低にかかわらず、同じ吸収線量であれば染色体異常の頻度に変わりはない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:安定型の異常はがんの原因となる。

B 正:不安定型の異常は細胞分裂ができず、細胞死の原因となる。

C 誤:中性子の方が LET が高く DNA 損傷は密に起こり、染色体異常の頻度は高くなる。

D 誤:線量率効果はある。

問12

X線による 4 Gy の急性全身被ばく後の抹消血液に関する次の組み合わせのうち、正しいのはどれか。

A リンパ球数は、被ばく後 1 日以内に減少する。

B 好中球数は、被ばく後 1 ~ 2 日以内に一過性に増加する。

C 血小板は、被ばく後 5 日以内に最低値を示す。

D 赤血球数は、被ばく後 10 日以内に最低値を示す。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:末梢血中の成熟リンパ球の感受性は高く、照射により細胞死を起こす。

B 正:減少を補うために貯蔵プールから放出され、一過性の増加が見られることがある。

C 誤:血小板は 2 週間程度で最低値を示す。

D 誤:赤血球」は 1 ヵ月弱で最低値を示す。

問13

γ線による急性全身被ばく後の骨髄死に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 血小板減少は、骨髄死の原因のの一つである。

B LD(50/60)の放射線量を被ばくした時の主な死因である。

C 10 Gy 以下の被ばくでは起こらない。

D 被ばく後 2 ~ 3 日以内に起こる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

解説

A 正:白血球の減少による抵抗力の低下とともに、骨髄死の原因である。

B 正:LD (50/60) は観察期間 60 日での 50% 致死線量という意味で、ヒトでは 3 ~ 5 Gy である。

C 誤:骨髄死のしきい線量は 1.5 Gy である。

D 誤:30 ~ 60 日に起こる。

問14

放射線の医学利用とその特徴に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 10 MV の X線は、臨床的に画像診断に用いられる。

B β- 線は、臨床的に画像診断に用いられる。

C 電子線は、がんの皮膚転移の治療に用いられる。

D 陽子線は、線量分布の点から深部にあるがん治療に用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:10 MV は主に治療用で用いられる。

B 誤:β- 線は 131I による甲状腺がん治療が有名。

C 正:表層部のがんであり、がんの厚みに合わせてエネルギーを調整する。

D 正:ここでの線量分布はブラッグピークの利用を言っている。

問15

臓器全体を X線照射した場合に最も低い線量で起こるものは、次のうちどれか。

1 膀胱萎縮(膀胱)

2 放射線肺炎(肺臓)

3 心外膜炎(心臓)

4 直腸穿孔(直腸)

5 肝硬変(肝臓)

解答 2

解説

肺臓は中程度の感受性を持ち、放射線肺炎のしきい線量は 30 ~ 40 Gy とされている。照射野が肺全体となる場合にはしきい線量はさらに下がる。(10 Gy 以下)という報告がある。

問16

チェルノブイリ原子力発電所の事故による放射線被ばくによって有意に増加したものは、次のうちどれか。

1 小児における甲状腺がん

2 流産

3 奇形

4 白血病

5 乳がん

解答 1

解説

国連化学委員会の報告によれば、事故 5 年以降での小児甲状腺がんの増加が唯一確認されている影響である。流産(周産期死亡)が増加したとの報告が一時期あったが、その後の調査で事故との関連はないことが分かった。

問17

原爆被ばく影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病は、被ばく線量が高いほど潜伏期間が短い。

B 肺がんは、被ばく線量が高いほど潜伏期間が短い。

C 白血病は、被ばく後 2 ~ 3 年経過してから増加する。

D 肺がんは、被ばく後 5 ~ 6 年経過してから増加する。  

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

A 正:白血病では、高線量被ばく群は潜伏期が短い傾向にある。

B 誤:固形がんでは、がんの好発年齢を迎えてから発症するという発がん機構の方が強く働くためか、線量の大小と潜伏期間に一定の関係を見いだすことは難しい。

C 正:白血病の最小潜伏期は 2 年とされている。

D 誤:固形がんの最小潜伏期は 10 年とされている。

問18

放射線被ばくと発がんの関係のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジウム時計文字盤工 ー 乳がん

B トロトラスト被注入患者 ー 肝がん

C ウラン鉱夫 ー 肺がん

D 放射線高バックグラウンド地域住民 ー 直腸がん

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:以前は筆先をなめていたため、ラジウムの内部被ばくがあった。集積部位は骨で骨肉腫が発症する。

B 正:トロトラストは二酸化トリウムを主成分とする血管造影剤である。肝臓に集積する。

C 正:ウラン鉱山におけるラドン吸入により、肺がんが増加。

D 誤:放射線高バックグラウンド地域で、がんが高率に発生しているという報告はない。

問19

原爆被ばく者の放射線発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 胆嚢がんの発がんリスクは有意には上昇しない。

B 肺がんの発がんリスクは有意に上昇しない。

C 白血病では、ある期間を過ぎてから発がんリスクが上昇し、その後低下する。

D 固形がんでは、ある期間過ぎてから持続して発がんリスクが高い。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 3

解説

A 正:胆嚢がんの増加は確認されていない。

B 誤:肺はがんリスクが大きい臓器の 1 つである。

C 正:最小潜伏期は 2 年で、7 ~ 8 年でピークを迎えた後、減少している。

D 正:最小潜伏期は 10 年で、相乗リスクモデルに従い、現在も増加傾向にある。

問20

次のX線被ばく部位とその晩発障害の組み合わせのうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 水晶体 ー 白内障

B 肺 ー 肺繊維症

C 脊髄 ー 放射線脊髄症

D 皮膚 ー 放射線潰瘍

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 1

解説

A 正:白内障は晩発障害の代表例。

B 正:肺繊維症は、放射線肺炎に引き続き発症する晩発障害。

C 正:潜伏期は 6 ~ 12 ヵ月とされている。

D 誤:20 Gy 以上の被ばくにより 3 ~ 5 日の潜伏期で発症。

問21

X線による 1 Gy の急性全身被ばくによって引き起こされる可能性のある影響として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 脱毛

B 一時不妊

C 皮膚の潰瘍

D 放射線宿酔

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:脱毛のしきい線量は 3 Gy。

B 正:一時的不妊のしきい線量は、男性で 0.15 Gy、女性で 0.65 ~ 1.5 Gy。。

C 誤:皮膚の紅斑のしきい線量は 3 ~ 6 Gy。

D 正:放射線宿酔のしきい線量は 1 Gy。。

問22

放射線の確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線量が増加しても重篤度は変わらない。

B しきい値はない。

C 不妊は確定的影響である。

D 発がんは確定的影響ではない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:線量が増加するとともに重篤度も増す。

B 誤:しきい線量が存在する。

C 正:永久不妊のしきい線量は男性で 3.5 Gy ~ 6 Gy、女性で 2.5 ~ 6 Gy。

D 正:発がんは確率的影響である。

問23

次の自然放射線及び人工放射線のうち、日本における 1 人当たりの実効線量に最も大きく寄与しているものはどれか。

1 大地宇宙線

2 宇宙線

3 ラドンからの放射線

4 医療用放射線

5 体内に摂取された食物由来の放射性核種からの放射線

解答 4

解説

放射線医学綜合研究所(1995年)の報告によれば、1.大地放射線 0.32 mSv、2.宇宙線 0.27 mSv、3.ラドンからの放射線 0.43 mSv、4.医療用放射線 2.3 mSv、5.体内に摂取された食物由来の放射性核種からの放射線 0.41 mSv とされている。

問24

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 一般に人工放射線は自然放射線に比べて RBE が高い。

B 放射線業務従事者以外は放射線に被ばくすることはない。

C 自然放射線による年間の被ばく線量は、世界平均で約 2.4 mSv である。

D 航空機で高高度を飛行することにより。地上に比べて被ばくする線量が増加する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:人工放射線、自然放射線ともに様々な線種があり、一定傾向はない。

B 誤:自然放射線被ばくは誰もがしている。

C 正:日本ではラドンからの放射線が少なく、約 1.5 mSv である。

D 正:宇宙線は、地上で 0.03 μSv/h、高度 10000 m で 5 μSv/h である。

問25

次の放射性核種と主な集積臓器の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

1 32P ー 肺臓

2 59Fe ー 腎臓

3 60Co ー 肝臓

4 90Sr ー 脾臓

5 137Cs ー 骨

解答 3

解説 下の表に臓器親和性の核種を示す。       

核種 臓器親和性
32P , 45Ca , 65Zn , 90Sr , 226Ra , 232Th , 238U , 239Pu , 241Am
40K , 137Cs 筋肉
222Rn , 232Th , 238U , 239Pu
53Fe , 59Fe 骨髄
3H , 14C , 24Na , 40K , 137Cs 全身
59Fe , 60Co , 65Zn , 232Th , 239Pu 肝臓
131I 甲状腺
59Fe 脾臓

1 誤:32P ー 骨

2 誤:59Fe ー 骨髄、肝臓、脾臓

3 正

4 誤:90Sr ー 骨

4 誤:137Cs ー 全身(筋肉)

問26

預託実効線量に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 臓器・組織が受ける吸収線量率を 50 年にわたって積算した線量である。

B 単位は Sv である。

C 預託等価線量とその臓器又は組織の組織荷重係数との積の総和として求められる。

D 長期にわたる外部被ばくを評価するために用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

預託実効線量とは体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝の実効線量をおよそ一生分について積算した値。成人では摂取後 50 年間、子供は 70 歳になるまでの年数で計算する。

A 誤

B 正

C 正

D 誤:預託とは、内部被ばくにおいて長期にわたる被ばくを摂取時に被ばくしたものとして扱うことを言う。

問27

125I の有効半減期を 42 日、物理的半減期を 60 日としたとき、生物学的半減期として最も近い値は、次のうちどれか。

1 20 日

2 60 日

3 100 日

4 140 日

5 180 日

解答 4

解説

1/42 = 1/60 + 1/T(b) を解いて、T(b) = 140 日

問28

125I の有効半減期を 42 日、物理的半減期を 60 日としたとき、生物学的半減期として最も近い値は、次のうちどれか。

A 奇形が生じやすい時期は、受精後 1 週間までの期間である。

B 発がんリスクは、成人と同程度である。

C 期間形成期に胎児が 0.5 Gy 被ばくすると、奇形発生のリスクが増す。

D 胎児に対する影響には、確率的影響と確定的影響の両方がある。 

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:奇形は、受精 2 ~ 8 週で生じやすい。

B 誤:発がんリスクは成人に比べて 2 ~ 3 倍高い。

C 正:奇形のしきい線量は 0.1 Gy とされている。

D 正:確率的影響:発がん、遺伝的影響。確定的影響:胚死亡、奇形、精神発達遅滞など。

問29

RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 組織による放射線感受性の違いを表す指標である。

B 線量率によって値が変化する。

C 生物学的効果の指標によって値が異なる。

D 基準の放射線として一般に α線 が用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:放射線の線質の違いによる影響の違いを表す指標である。

B 正:線量率効果があるため値は変化する。

C 正

D 誤:基準放射線にはX線あるいはγ線が用いられる。

問30

外部照射した場合の体内での線量分布に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 陽子線は、飛程の終点付近で最大のエネルギーを付与する。

B X線は、深部にいくにしたがって大きなエネルギーを付与する。

C 重粒子線は、飛程の終点付近で最大のエネルギーを付与する。

D 5 MeV の電子線は、表面で最大のエネルギーを付与する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

A 正:荷電粒子なので、ブラッグピークを作る。

B 誤:深くなると次第に減弱されるため、付与するエネルギーは小さくなる。

C 正:荷電粒子なので、ブラッグピークを作る。

D 誤:5 MeV の電子線は、深さ約 1 cm で最大となる。

放射線照射による影響

水溶液に放射線を照射した時に溶質(標的分子)が受ける放射線の影響には、直接作用と間接作用がある。放射線のエネルギーが標的分子に吸収されて損傷が生じるとき、これを直接作用という。水の放射線分解で生じたラジカルが標的分子を攻撃して損傷が生じるとき、 これを間接作用という。ラジカルの中では ・OH による作用が最も重要であり、間接作用でできる DNA 損傷の大部分が・OH によりものと考えられている。放射線防護剤の多くは ラジカルと反応してこれを取り除くことにより作用する。

 

X線やγ線の培養細胞に対する致死効果は酸素濃度によって変化する。一般には、酸素濃度が増加すると放射線の効果は大きくなる。また、放射線感受性は酸素濃度が 0 の時を 1 とすると大気中の酸素濃度においては約 3 になる。酸素濃度の変化に伴う放射線感受性の大きな変化は、酸素濃度が大気中の濃度に比べて非常に低い領域で現れる。

 

細胞が分裂を繰り返して増殖するとき、分裂から分裂までの1サイクルを細胞周期と呼ぶ。細胞周期は4つの時期が区分され、 M 期から S 期に至る期間を G1 期と呼び、 S 期から M 期に至る期間を G2 期と呼ぶ。放射線致死感受性は細胞がどの時期あるかによって異なり、 G1 期から S 期への移行期と M 期で高く、 S 期の後半で低い。

 

細胞集団に、ある線量を数回に分けて照射した場合の生存率は、同じ線量を一度に照射した場合(1回照射)に比べて高くなる。その程度は、亜致死損傷(SLD)からの回復を示し、1回照射の場合の生存曲線の肩の大きさに依存している。また、被ばく線量が同じであっても、被ばく時間の違いによってその効果が異なってくる 現象(線量率効果)にも同じメカニズムが関与している。高LET放射線の場合、これらの効果は小さくなる。

 

解説

標的説では、細胞はいくつかの標的を持つ。すべてがヒットされると細胞死を起こし、いくつかがヒットされただけでは死なず、亜致死損傷(SLD)の状態にあると呼ばれる。一方、照射後に細胞が置かれる環境によって、生存率が異なることがある。つまり、死ぬはずであった細胞が置かれる環境によっては死なないことがある。このような状態にある細胞を、潜在的致死損傷(PLD)という。

放射線の種類によって起こる損傷の違いに関する記述

電離放射線を、大きく電磁波と粒子線に分類することがある。この場合、X線やγ線は電磁波であり、α線、β線や中性子線は粒子線である。また、電離放射線は直接電離放射線と間接電離放射線に分類することもある。α線やβ線は直接電離放射線 に分類され、中性子線やX線は間接電離放射線に分類される。X線は、医療分野で最もよく利用されている電離放射線である。X線と物質の相互作用はエネルギーに依存し、エネルギーの低い方から光電効果、コンプトン効果、電子対生成が主にみられる。これらの相互作用の起こる確率は、 透過する物質の原子番号にも依存する。光電効果の起こる確率は、低エネルギー域で、かつ、原子番号の大きい場合に急激に大きくなる。筋肉や臓器などを構成する元素は、C、H、N、Oなど原子番号が比較的小さいものが主である。一方、骨は、リン酸カルシウムが主体で、Ca の原子番号は筋肉などを構成する元素の原子番号より大きい。そのため、例えばエネルギーが 50 keV 程度のX線であれば、同じ照射線量を与えた場合の骨のエネルギー吸収は、筋肉や臓器のエネルギー吸収に比べて数倍高い。また、脂肪組織やグリセリンから構成されているため、エネルギー吸収は筋肉や臓器などと比べてさらに低い値をとる。X線のエネルギーが高くなり、 200 keV 程度以上になると、組織による吸収の程度の違いは小さくなる。治療用に高エネルギー X線を用いるのは、骨の存在などによらず深部のがん組織への線量を確保するためである。また、高エネルギーX線を用いることによって2次電子が飽和する位置が深くなり、皮膚表面の被ばく線量を低下させることができる。このことをビルドアップと呼ぶ。

 

解説

質量エネルギー吸収係数( × 10^(-3) m^2・kg)を参考までに下の表に記載する。

 光子エネルギー  H  C  N  O  Ca
 50 keV  2.709  2.397  3.217  4.414  78.22
 200 keV  5.254  2.655  2.655  2.679  3.639

 

哺乳動物の培養細胞に線質を異にする放射線を照射した場合、同じ吸収線量であっても、その生物学的効果は必ずしも同じになるとは限らない。また、放射線の種類による生物効果の大きさの違いを表す指標として RBE がある。これは、問題としている放射線がある生物効果を起こすのに必要な吸収線量に対する、基準となる放射線が同じ生物効果を起こすのに必要な吸収線量の比として表される。基準となる放射線には、ピーク電圧が 250 kV の X線や 60Co のγ線などが用いられることが多い。例えば、同じ吸収線量のX線とα線が培養細胞に及ぼす致死効果を比較するとα線による効果の方が大きい。これはX線による2次電子の線エネルギー付与(LET)とα線のLETが異なることが主な要因である。横軸にLETをとり、縦軸に細胞致死効果を指標とした RBE 値をとった図を作成すると、 100 ~ 200 keV ・μm^(-1) にピークをもつ曲線となる。これは、この LET 領域では DNA 2 本鎖切断の収率あるいは、修復しにくい切断の収率が高くなるためであり、さらに LET が高くなるとこれらの収率がかえって下がるためと考えられている。放射線防護の立場からは、放射線の種類による生物効果の違いを反映させる係数として、 放射線荷重係数が定義されている。この係数は低線量・低線量率放射線被爆した場合の確率的影響を指標としたもので、これに物理的に吸収されたエネルギーに基づく吸収線量を乗じることによって等価線量が得られる。

 

また、詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

 

第1種放射線取扱主任者 化学問題・解説3

第1種放射線取扱主任者 化学問題・解説3

問1

1 年間で 1000分の1 に減衰する放射性核種の放射能が、2000分の1 に減衰するのは何年後か。最も近い値は、次のうちどれか。

1 1.1

2 1.3

3 1.5

4 1.7

5 2.0

解答 1

解説

放射能 A0 の放射性核種を用いているとき、その半減期を T とすると経過時間 t における放射能 A は A = A0・e^(-0.693t/T) となる。この式は A = A0・(1/2)^(t/T) と書き直せる。最初の放射能を A とすると、1 年間で 1000 分の 1 になるので、
A/1000 = A × (1/2)^(1/T) よって 1/1000 = (1/2)^(1/T)・・・①
ここで、(1/2)^10 = 1/1024 であるため、1/T ≒ 10 となる。したがって、T = 0.1 年 となる。
最初の放射能 A が 2000 分の 1 に減衰するまでの時間を t とすると、
A/2000 = A × (1/2)^(t/T) よって 1/2000 = (1/2)^(t/T)・・・②
②÷① より、(1/2000)/(1/1000) = (1/2)^(t/T)/(1/2)/^(1/T)
(1/2) = (1/2)^[(t-1)/T] となる。
したがって 1 = (t-1)/T、すなわち T = t-1
T = 0.1 年より、t = 1 + 0.1 = 1.1 年

問2

放射性核種が同族元素の組み合わせは、次のうちどれか。

A 7Be と 28Al

B 15O と 75Se

C 38Cl と 82Br

D 41Ar と 22Rn

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

解説

私がまとめた資料に記載しています。ここで掲載しますと訳がわからない表示になりますのでまとめたものを下記のサイトに掲載しています。ご希望の方はご連絡ください。

https://www.radiologist-study.org

問3

陽子の数が 1 つ異なる核種の組み合わせは、次のうちどれか。

A 18O と 18F

B 40Ar と 40Ca

C 99Mo と 99Tc

D 133Xe と 133Ce

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

解説

A 正:18O:陽子数 8、18F:陽子数 9

B 誤:40Ar:陽子数 18、40Ca:陽子数 20

C 正:99Mo:陽子数 42、99Tc:陽子数 43

D 正:133Xe:陽子数 54、133Cs:陽子数 55

問4

1.0 MBq のトリチウム水 180 ml 全量を電気分解して水素を得た。大気圧におけるこの気体中のトリチウム濃度(Bq/l)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、大気圧における気体 1 モルの体積は 22.4 l とする。

1 2.2 × 10^2

2 4.5 × 10^2

3 2.2 × 10^3

4 4.5 × 10^3

5 2.2 × 10^4

解答 4

解説

放射能濃度:放射性核種を含む物質の単位体積当たりの放射能
トリチウム水を電気分解すると、
2 (3H2)O → 2 (3H2) + O2
180 ml のトリチウム水(式量 18)は、1 ml = 1 g とすると、 180 g となり、180/18 = 10 mol である。
電気分解して発生した 10 mol の 3H が全て回収されている。
気体 1 mol の体積は 22.4 l であるため、10 mol × 22.4 l/mol = 224 l
1.0 MBq のトリチウム水なので、
1.0 × 10^6 Bq ÷ 224 l = 4.46 × 10^3 となる。

問5

100 kBq の 45Ca を含む 0.1 mol/l 塩化カルシウム水溶液 100 ml から 45Ca を除去する目的で、フッ化ナトリウム水溶液を加えてフッ化カルシウム(CaF2)を沈殿させた。これをろ過乾燥させて得られる[45Ca]フッ化カルシウムの比放射能(kBq/g) として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、CaF2 の式量を 78 とする。

1 6.5

2 13

3 65

4 130

5 650

解答 4

解説

比放射能:放射性核種の属する元素の単位質量当たりの放射能
45Ca(2+) + 2F- → 45CaF2 ↓
塩化カルシウム水溶液中のカルシウムは (0.1 × 100)/1000 = 0.01 mol
上記より、沈殿したフッ化カルシウムは 0.01 × 78 = 0.78 g である。
ここで、[45Ca]塩化カルシウムと沈殿して得られた[45Ca]フッ化カルシウムの放射能は等しくなるはずである。
求める比放射能 A は次のように計算される。
A = 100 kBq ÷ 0.78 g = 128.2 kBq/g

問6

地殻中には、おおよそ 4.0 × 10^13 トンのウラン(238U)が存在すると推定されている。その場合、1 年間に地殻中で起きる 238U の自発核分裂の数として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、238U の自発核分裂の半減期は 8.2 × 10^15 年、 アボガドロ定数は 6.0 × 10^(-23) mol^(-1) とする。

1 8.5 × 10^21

2 8.5 × 10^22

3 8.5 × 10^23

4 8.5 × 10^24

5 8.5 × 10^25

解答 4

解説

1 トン = 1 Mg である。よって、地殻中のウラン(238U)、おおよそ 4.0 × 10^13 トン = 4.0 × 10^19 g となる。
238U の原子数は、N = [(4.0 × 10^19)/238] × 6.0 × 10^23
半減期は 8.2 × 10^15 年 であるので、
λ = 0.693/(8.2 × 10^15) [年^(-1)]
よって -dN/dt = λN = [0.693/(8.2×10^15)] × [(4.0×10^19)/238] × 6.0 × 10^23 ≒ 8.5 × 10^24 [decay/年]

問7

129I を含む水溶液(1.0l)中の 129I 放射能濃度を測定したところ 1.0 × 10^(-2) Bq/ml であった。この水溶液にヨウ素担体と AgNO3 水溶液を加え、全ての 129I を AgI の沈殿とした。この沈殿中に含まれる 129I の重量(μg)に最も近いはどれか。ただし、129I の半減期は 1.6 × 10^7年(5.0 × 10^14秒)、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1)とする。

1 1.0

2 1.5

3 10

4 15

5 100

解答 2

解説

129I を含む水溶液中にヨウ素担体と AgNO3 水溶液を加えると反応は次のようになる。
Ag+ + I- → AgI ↓
水溶液中の 129I の放射能は、1.0 × 10^(-2) Bq/ml × 1.0 × 10^3 ml = 10 Bq となる。
ここで、A = (0.693/T) × (W/M) × 6.02 × 10^23
よって、10 = [0.693/(5.0×10^14)] × (W/129) × 6.0 × 10^23
W = 1.54 × 10^(-6) g

問8

100 MBq の 82Sr を購入したところ、1 MBq の 82Sr が含まれていた。200 日後の 85Sr と 82Sr の放射能比 (85Sr/82Sr) として最も近い値は次のうちどれか。ただし、82Sr の半減期は 25 日、85Sr の半減期は 65 日とする。

1 0.1

2 0.3

3 0.8

4 1.5

5 3.0

解答 2

解説

200 日後の 82Sr(T(82Sr) = 25 日)と 85Sr(T(85Sr) = 65 日)の放射能は、
A(82Sr)200日後 = A(82Sr)0 × (1/2)^200/T(82Sr) = 100 MBq × 1/2^(200/25) = 100 × 10^6 Bq × (1/2)^8 ≒ 0.39 × 10^6 Bq
A(85Sr)200日後 = A(85Sr)0 × (1/2)^100/T(85Sr) = 1 MBq × 1/2^(200/65) ≒ 1 × 10^6 Bq × (1/2)^3 ≒ 0.125 × 10^6 Bq
A(85Sr)200日後/A(85Sr)200日後 = (0.125 × 10^6 Bq)/(0.39 × 10^6 Bq) = 0.32

 

問9

90Sr 及び 137Cs に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 両核種ともに 235U の熱中性子核分裂反応により高い収率で生成する。

B 両核種ともに β- 壊変する。

C 両核種ともに半減期は 30 年程度である。

D 両核種の娘核種はともに β- 壊変する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:共に 235U の熱中性子による核分裂生成物として核分裂収率の高いものの一つである。

B 正:90Sr は β- 壊変して 90Y に、137Cs は 137mBa となる。

C 正:90Sr の半減期は 28.74年、137Cs の半減期は 30.04 年である。

D 誤:90Sr の娘核種 90Y は β- 壊変して 90Zr(安定)になり、137Cs の娘核種 137mBa はγ線を放出し核異性体転移(IT)によって 137Ba となる。

問10

放射能が 1.6 × 10^10 Bq の 238U を含むウラン鉱石中で 238U と永続平衡にある 226Ra の質量(g) として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、226Ra の半減期は 1600 年(5.0 × 10^10秒)、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1) とする。

1 0.04

2 0.09

3 0.30

4 0.44

5 0.76

解答 4

解説

永続平衡(親核種1 の半減期が娘核種2に対して非常に長い:λ1 << λ2)が成立する場合は、親核種1と娘核種2は次の関係となる。
N1λ1 = N2λ2
したがって、その放射能比は 1 となり、それぞれの放射能 A について、
A(238U) = A(226U) が成立する。この間では、238U の放射能は 1.6 × 10^10 Bq であるので、求める 226Ra の質量 W は以下のように計算される。
A(226Ra) = A(238U) = 1.6 × 10^10 Bq = (0.693/5.0×10^10) × (W/226) × 6.0 × 10^23
W = 0.433

問11

140Ba は以下のように 2 回 β- 壊変して 140Ce になる。この逐次壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。 

A 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能が最大となるまでに、140La と 140Ba の放射能の和に極大があらわれる。

B 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能が最大となるとき、140La と 140Ba の放射能は等しくなる。

C 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能は、最大になった後、次第に半減期 12.8 日で減衰するようになる。

D 140Ba、140La、140Ce の原子数の総和は一定である。 

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正

B 正:140Ba の半減期が 140La の半減期に比べて長いので(半減期が約7 ~ 10 倍)、過度平衡である。それぞれの放射能を A(140Ba)、A(140La)とすると、最終的には A(140Ba) < A(140La) となる。

C 正:140La の原子数は 140Ba の半減期に従って減少する。

D 正:140Ba と 140La の原子数の総和は減少するが、逐次壊変に伴い 140Ce (安定) が増加するため 3 核種の総和は一定となる。

問12

87Y (半減期 80 時間)を吸着させたイオン交換カラムから、娘核種の 87mSr (半減期 2.8 時間)を溶離するジェネレータがある。ミルキング操作で 87mSr の全量を溶出した後、カラム中に生成する 87mSr の放射能が最大になる経過時間として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、ln80 = 4.38、ln2.8 = 1.03 とする。

A 8

B 14

C 20

D 32

解答 2

解説

t(max) = [1/(λ2-λ1)] × ln(λ2/λ1) であるから、
λ1 = ln2/T1、λ2 = ln2/T2 より、
t(max) = [(T1・T2)/ln2(T1-T2)] × ln(T1/T2) = [(T1・T2)/ln2(T1-T2)] × (lnT1-lnT2)
よって、t(max) = [(80×2.8)/(0.693 × (80-2.8))] × (4.38-1.03) ≒ 14 時間

問13

アルカリ金属元素を生成する核反応の組み合わせは、次のうちどれか。

A 10B (n,α)

B 18O (p,n)

C 40Ar (α,pn)

D 27Al (n,α)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

解説 生成核種の計算と、周期表を覚えておく必要がある。

問14

表に示した標的核種から目的核種 A と B それぞれを生成する核反応として、正しい組み合わせは、次のうちどれか。

A B

1 (γ,n) (p,n)

2 (n,γ) (p,γ)

3 (p,pn) (n,p)

4 (n,2n) (d,n)

5 (γ,p) (α,n)

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 4

解説 質量数の変化と陽子数の変化を見れば分かる。

問15

ある試料を熱中性子(1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1))により 10 日間照射したところ、23Na (n,γ) 24Na 反応で 1 MBq の24Na が生成した。照射試料中のナトリウムの重量(g)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、放射化断面積は 0.53 バーン、24Na の半減期は 15 時間、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1)とする。

1 7 × 10^(-5)

2 1 × 10^(-4)

3 4 × 10^(-4)

4 8 × 10^(-4)

5 2 × 10^(-3)

解答 1

解説

t 時間照射して照射終了後得られる半減期 T、壊変定数 λ の生成核の放射能 A は、熱中性子フルエンス率 f と放射化断面積 σ を用いて次の関係となる。ここで N は試料元素の個数である。
A = Nfσ[1-e^(-λt)] = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]
試料元素の個数 N は、
N = A/(fσ[1-(1/2)^(t/T)])= [(1×10^6 Bq)/(1.0×10^12 cm^(-2)・s^(-1)・0.53×10^(-24) cm2)] × [1-(1/2)^(240/15)]
ここで、1-(1/2)^(240/15) ≒ 1 であるから、N = 1.8 × 10^18 個
ナトリウムの重量は、[(1.8×10^18)/(6.0×10^23)] × 23 = 6.9 × 10^(-5)

問16

熱中性子照射した U3O8 粉末を溶解した硝酸溶液から、陽イオン交換カラムに吸着させることができる核分裂生成核種の組み合わせは、次のうちどれか。

A 90Sr

B 99Tc

C 131I

D 144Ce

解答 3

解説

イオン交換法は有力な分離法である。イオン交換樹脂カラムを用いたクロマトグラフが用いられる。陽イオン交換樹脂を用いた核分裂生成物の分離や、陰イオン交換樹脂を用いた Fe、Co、Ni 等など、多くの応用例がある。
90Sr(3+)、144Ce(3+)・・・強酸性陽イオン交換樹脂に吸着される。
99mTc・・・硝酸溶液中で 99TcO4-(過テクネチウム酸)となる。
131I・・・化学種は、I2、I-、IO3-、 IO4- である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

問17

ヨウ素の同位体に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 123I は EC 壊変する。

2 125I は EC 壊変する。

3 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。

4 128I の半減期は 1000 万年以上である。

5 131I- は β- 壊変する。

解答 4

解説

1 正:131I は EC壊変ののち 123Te となる。

2 正:125I は EC 壊変し、γ線を放出し、125Te となる。

3 正:127I が唯一安定同位体となる。

4 誤:128I の半減期は 1000 万年以上である。

5 正:131I は β- 壊変する。

問18

水溶液中の放射性同位体の化学分離に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 35S(2-) は、H2S として蒸留分離できる。

B 60Co(2+) は、クロロ錯体としてイソプロピルエーテルに抽出できる。

C 65Zn(2+) は、酸性溶液中で金属銅を加えると金属として析出する。

D 110mAg+ は、硝酸塩として分離できる。

E 222Rn は、トルエンに抽出できる。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 2

解説

A 正:硫黄 S は、硫化物と HCl で加熱することで、H2S として蒸発する。

B 誤:塩酸濃度によって抽出率が異なるが、Fe(3+) は、クロロ錯体を形成することでイソプロピルエーテルに抽出される。Co(2+) も塩化物イオンが共存すると、クロロ錯体の CoCl4(2-) を形成する。しかし、抽出率(分配比)が金属ごとに異なるためクロロ錯体を形成しても Co(CuやZnも)はイソプロピルエーテルに抽出されない。Co(2+) はクロロ錯体として、強塩基性陰イオン 交換樹脂に吸着することで分離できる。

C 誤:イオン化傾向を覚えておくと良い。K > Ca > Na > Mg > Al >Zn >Fe > Ni > Sn >Pb > (H) >Cu > Hg > Ag > Pt >Au イオン化傾向が大きいほどイオンとなる。

D 誤:銀イオンは塩化物沈殿を生成し、分離する。

D 正:ラドンはトルエン抽出をして、液体シンチレーション等で計測する。有機溶媒にかなり溶ける。

問19

水相中の放射性同位元素 X (110 MBq) を有機相へ溶媒抽出する際に、X の分配比(有機相中濃度/水相中濃度)が 10 の時、次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 有機相の容積が水相の 10 倍の場合、X の水相の放射能は 100 MBq となる。

B 有機相と水相の容積が等しい場合、X の有機相の放射能は 100 MBq となる。

C 有機相の容積が水相の 1/10 の場合、X の抽出率は 50 % となる。

D 有機相の容積が水相の 1/2 の場合、X の抽出率は 25 % となる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値を分配比 D という。D = C(0)/C(W) (C(0):有機相中の放射性核種全濃度、C(W):水相中の放射性核種全濃度)。さらに、V(W) と V(0)をそれぞれ水相と有機相の容量とすると、有機相への抽出率 E は、E = D/[D+(V(W)/V(0))]、D = 10 より、E = 10/[10+(V(W)/V(0))] となる。

A 誤:V(0) = 10V(W)、E = 10/[10+(V(W)/10V(W))] = 0.99 よって 110 × (1-0.99) = 1.1 MBq

B 正:V(0) = V(W)、すなわち V(W)/V(0) = 1、E = 10/(10+1) = 10/11 したがって 110 × (10/11) = 100 MBq(有機相中)

C 正:V(0) = (1/10)V(W)、E = 10/[10+(V(W)/V(W)/10)] = 0.5 よって抽出率は 50 %

D 誤:V(0) = (1/2)V(W)、E = 10/[10+(V(W)/(V(W)/2))] ≒ 0.83 よって抽出率は 83 %

問20

6 mol/l 塩酸に溶けている 45Ca(2+)、59Fe(3+)及び 65Zn(2+) をジエチルエーテルで抽出すると、有機相に核種 A が抽出された。その後、水相に陰イオン交換樹脂カラムを通すと、核種 B がカラムに吸着し、核種 C は通過した。核種 A、B、C の組み合わせは、次のうちどれか。

A B C

1 59Fe(3+) 65Zn(2+) 45Ca(2+)

2 59Fe(3+) 45Ca(2+) 65Zn(2+)

3 45Ca(2+) 65Zn(2+) 59Fe(3+)

4 65Zn(2+) 45Ca(2+) 59Fe(3+)

5 45Ca(2+) 59Fe(3+) 65Zn(2+)

解答 1

解説

Fe(3+) は塩酸溶液中で、FeCl3 + HCl → HFeCl4 と反応してクロロ錯体(HFeCl4)になっており、ジイソプロピルエーテルまたはジエチルエーテルで抽出される。Zn(2+) も塩化物イオンが存在すると、ZnCl4(2-) のクロロ錯体を形成するので、強塩基性イオン交換樹脂に吸着するようになる。Ca2+ はクロロ錯体を形成しないので、 陰イオン交換樹脂カラムを通過する。
黒男ρ錯体の形成の強さ・・・(Ni2+) < Mn2+ < Co2+ < Cu2+ < Fe2+ < Zn2+

問21

次の化学捜査により、そのほとんどの放射性核種が沈殿するものの組み合わせはどれか。ただし、全ての溶液の濃度は 1 mol/l とする。

A [22Na]NaCl を含む水溶液 10 ml に AgNO3 水溶液を 20 ml 加える。

B [45Ca]CaCl2 を含む水溶液 10 ml に Na2SO4 水溶液を 40 ml 加える。

C [59Fe]FeCl3 を含む水溶液 10 ml に NaOH 水溶液を 90 ml 加える。

D [64Cu]CuCl2 を含む水溶液 10 ml に Na2S 水溶液を 40 ml 加える。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

解説 反応式を下に示す。

A 誤:[22Na]NaCl + AgNO3 → AgCl ↓ + [22Na]NaNO3

B 正:[45Ca]CaCl2 + Na2SO4 → [45Ca]CaSO4 ↓ + 2NaCl

C 正:[59Fe]FeCl3 + 3NaOH → [59Fe]Fe(OH)3 ↓ + 3NaCl

D 正:[64Cu]CuCl2 + Na2S → [64Cu]CuS ↓ + 2NaCl

問22

ある溶液中に含まれる化合物 X の比放射能が S0 であるとき、これと同じ化合物で非放射性の X を W μg 含む溶液を加えてよく混合した結果、X の比放射能が S1 になった。はじめの溶液中に含まれていた X の量(μg)を求める式は、次のうちどれか。

1 (S0/S1)・W

2 [(S0/S1)-1]・W

3 (S1/S0)・W

4 [(S1/S0)-1]・W

5 [1/((S0/S1)-1)]・W

解答 5

解説

直接希釈法であるため、S(0)・x = S(1)・(x + W) と表される。x = [S(1)・W]/(S(0)-S(1)) よって x = [1/((S0/S1)-1)]・W

問23

ラジオイムノアッセイに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 抗原の定量に不足当量法の原理を応用した分析手法である。

B 抗原の標識には 123I が用いられる。

C 抗原タンパク質を放射性ヨウ素で標識する場合、チロシン残基が標識されることが多い。

D 検体中の抗原が多くなると、抗体と結合していない標識抗原も多くなる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 3

解説

ラジオイムノアッセイ(放射免疫測定法)は、患者の尿や血液中の微量生理活性物質や薬物などを定量するために放射性医薬品を体外で使用する。患者には直接投与しないで、試験管などに移した患者の尿や血液などに放射性医薬品を加えて定量する。

A 正:ラジオイムノアッセイは同位体希釈分析法の応用ということができる。同位体希釈分析は、比放射能を放射能測定で求め、担体量を通常の分析法で定量するので、その正確さは、操作に含まれる通常の分析法の正確さに左右される。したがって微量の試料では高い正確さは気体できない。不足当量法は、目的成分の不足一定量を試料溶液より再現性よく分離することで、放射能測定 だけで目的の微量成分を正確に測定できる。

B 誤:123I の半減期が短く不敵、標識核種としては 125I の利用が多い。

C 正:タンパク質と K(125I) の混合物溶液にクロラミンT を加えると、K(125I) から (125I)2 が生成し、タンパク質分子中のチロシン残基が 125I で標識される。

D 正:既知量の標識された抗原 *Ag を用意し、抗原と抗体が 1:1 のモル比で抗原抗体反応する抗体 Ab を *Ag の 1/2 モル量を用いて反応させる。反応により結合型(B) が生成、一方で *Ag は Ab よりも多量なので、結合できない *Ag すなわち遊離型(F)ができる。B と F を分離した後に、B の放射能と F の放射能を測定する。その結果、Ag の添加量を増加すると、B の放射能は 減少し、F の放射能は増加する関係が認められる。

問24

原子炉での中性子利用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 試料に熱中性子を照射し、生成する放射能を測定することにより、元素分析が行われる。。

B 即発γ線分析法では、試料に中性子を照射し、発生するγ線を測定することにより、元素分析が行われる。

C 熱中性子を試料に照射し、中性子の透過率を測定することにより、試料中の水分の分布が観測される。

D 中性子回折法は、物質中の水素原子の位置決定に利用される。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正:熱中性子を照射し、生成する放射能の測定により元素分析することを、放射化分析という。

B 正:熱外中性子ビームを試料に照射し、共鳴吸収後に放射される即発γ線を測定することにより、非破壊多元素(同位体)分析することを即発γ線分析法という。

C 正:中性子線は水素等の軽い元素を含んだ物質の観察に適しているため、生物中の水分の移動の観察などに使われている。中性子線を用いる放射線透過試験方法に中性子らジオグラフィがある。

D 正:中性子回折法は物質内部の結晶配列や磁気構造の情報が得られる。軽元素と重元素が混合して含まれる物質の軽元素の位置や存在比を決定できる。

問25

ホットアトム効果に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 地下水中の 234U/238U 放射能比は 1 より大きいことがある。

B 室温で熱中性子照射した液体の C2H5I を水と混合すると、放射能の一部が水相に移動する。

C 有機化合物に Li2CO3 を混合し、原子炉で熱中性子を照射すると、トリチウム標識化合物が得られる。

D 原子炉で熱中性子照射した [Co(NH3)6]Cl3 を水に溶解すると 60Co(2+) が得られる。 

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

A 正:234U は、陸水や海水を除く自然界に、238U と放射平衡の状態で存在している。鉱物と地下水等の間では、親の 238U から α壊変によって 234U が生じるとき、α反跳の効果で娘核種の 234U のまわりの結晶格子が損傷を受けるため、238U のまわりの結晶状態と異なり、234U の方が溶出しやすい状態になる。これは天然における一種のホットアトム効果である。

B 正:熱中性子照射したヨウ化エチルを、水と混合すると、大部分の放射性ヨウ素が水相に移る。

C 正:有機化合物に 3He または炭酸リチウムを混合して中性子を照射して、3He (n,p) 3H または 6Li (n,α) 3H を生成するホットアトムである 3H によって有機化合物を標識する。これを反跳合成法とする。

D 正:ヘキサアミンコバルト(Ⅲ)硝酸塩を中性子で照射し、核反応の結果生じた 60Co(2+) が水溶液中に存在する。

問26

放射性同位元素とその利用の関係として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。 

放射性同位元素 利用

A 14C オートラジオグラフィ

B 32P DNA塩基配列の決定

C 60Co メスバウアー線源

D 24Na PET(陽電子放射断層撮影)

E 201Tl SPECT(単一光子放射断層撮影)

 

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2

解説

放射線利用機器及び診断・検査・撮影に用いられる線源を下図に示す。

 機器及び検査等の名称  放射性核種  備考
 非破壊検査(ラジオグラフィ)  192Ir,60Co,137Cs
 3H,14C,35S  ミクロオートラジオグラフィ
 14C,35S,59Fe,32P  マクロオートラジオグラフィ
 3H  電子顕微鏡オートラジオグラフィ
 厚さ計  60Co,137Cs  高エネルギーγ線(薄い鋼板)
 90Sr  高エネルギーβ線(薄い鋼板)
 241Am  低エネルギーγ線(薄い鋼板)
 85Kr,147Pm  低エネルギーβ線(紙)
 レベル計  60Co,137Cs
 密度計  137Cs,60Co
 硫黄計  55Fe  励起型
 241Am  透過型
 蛍光X線分析装置  55Fe,109Cd,241Am
 水分計  252Cf,241Am-Be  中性子源
 ECDガスクロマトグラフ装置  63Ni
 骨塩定量分析装置  125I,119mSn
 タバコ量目計  90Sr  密度計の一種
 DNAシーケンシング  32P  DNA塩基配列の決定
 ラジオイムノアッセイ  125I  免疫活性検査
 SPECT  99mTc,123I,201Tl,67Ga  核医学インビボ検査
 PET  11C,13N,15O,18F  陽電子断層撮影法

問27

ある有機溶液の体積を推定するため、2.0 MBq の 132I で標識したヨードベンゼンを添加してよく攪拌の後、液の一部を採取して 132I 放射能濃度を測定した。132I 添加の 70 分経過後における濃度は 10 Bq/ml であった。その溶液の体積(l)を求めよ。ただし、132I の半減期は 140 分とする。

1 100

2 120

3 140

4 160

5 200

解答 3

解説

ある有機溶媒の体積を V[l] とする。また、 2.0 MBq の 123I で標識したヨードベンゼンの添加量を v[l] とする。ヨードベンゼンの添加後の溶液量は V + v 、放射能は 2.0 MBq である。液の一部を採取、測定して得られた 132I 放射能濃度が 10 Bq・ml であることから、溶液の放射能は 10 × 10^3(V + v) Bq となる。
A = A0(1/2)^(t/T) より、10 × 10^3(V + v) = 2.0 × 10^6 × (1/2)^(70/140) (V + v) = 2.0 × 10^2 × (1/√2) = 141 l
添加するヨードベンゼンの量を体積を推定する溶液量に対して極少量と、V >> v となり、V ≒ 140 l となる。

問28

放射性同位元素の利用した測定機器に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 192Ir を線源とする非破壊検査装置では、β線の物質との相互作用を利用している。

B 55Fe を線源とする硫黄計では、X線の物質との相互作用を利用している。

C 63Ni を線源とするガスクロマトグラフ用 ECD では、EC 壊変に伴うγ線の物質との相互作用を利用している。

D 241Am – Be を線源とする水分計では、中性子の物質との相互作用を利用している。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:非破壊検査(ラジオグラフィ)とは、放射線の物体に対する透過減弱作用と写真作用とを利用して物体の内部の状況を調べる方法をいう。一般的には半減期がやや短い欠点はあるがその他の条件が最も良い。192Ir がγ線らジオグラフィの線源として広く用いられている。

B 正:液体燃料中の硫黄含有量を測定するもので、241Am などの核種から放出される低エネルギーγ線の吸収を利用した透過型と 55Fe を用いた励起型とがある。55Fe では、Mn の KX 線でイオン原子を励起して発生する S の蛍光X線を測定する。

C 誤:63Ni ガスクロマト用ECD は、放射性物質(63Ni)から出るβ線によるガスの電離を利用している。

D 正:速中性子が水素原子と衝突して減速され熱中性子になる現象を利用したもので、線源としては、241Am、226Ra-Be、252Cf などの速中性子源が用いられている。

問29

線量計に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A フリッケ線量計では、Fe2+ → Fe3+ の反応が利用される。

B フリッケ線量計は、使用前に空気を吹き込む。

C セリウム線量計では、Ce4+ → Ce3+ の反応が利用される。

D アラニン線量計では、重合反応が利用される。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

解説

A 正:Fe(2+) → Fe(3+) の酸化反応

B 正:鉄塩として 10^(-4) M 程度の硫化第一鉄(FeSO4)又はモール塩[FeSO4・(NH4)2 SO4・6H2O] を用い、溶液を 0.8 m 硫酸酸性とし、使用前に空気を通す。

C 正:Ce(4+) → Ce(3+) の還元反応

D 誤:アラニン線量計は、アミノ酸の一種であるアラニンの粉末をパラフィン中に溶かし込み、放射線照射で生じたフリーラジカル(遊離基)の数を電子スピン共鳴装置(ESR)で測定する線量計である。

問30

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

1 速中性子が入射したポリエチレン中に正イオンは存在しない。

2 γ線が入射したヘキサン中に正イオンは生成しない。

3 α線が入射した水中に負イオンは生成しない。

4 β線が入射したアルミニウム中に負イオンは生成しない。

5 陽子線が入射したアルゴン中に水素は生成しない。

解答 4

解説

放射性核種から放出されるα線、β線、γ線、高エネルギーの粒子加速器から発生する電子、陽子、重陽子などは、物質に当たるとイオン化(電離)を起こすので、電離性放射線とも呼ばれる。放射線が液体、固体の分子性の物質に入射すると、その飛跡にそって断続的にイオン化(電離)を起こして、イオン、ラジカルなどの集合体であるスプールができる。

1 誤:中性子は電荷を持たないため分子内電子と直接相互作用を持たず、直接的に分子内電子を励起したり、イオン化したりすることはない。速中性子によって起こる直接作用は分子内原子核との弾性衝突が多い。

2 誤:共有結合を有する物質の分子にX線やγ線が入射すると主としてコンプトン散乱によるイオン化(AB → AB+ + e-)が起こる。

3 誤:水を放射線で照射すると、分解して H,OH,H2,H2O が生じる。これらの遊離基や分子生成物が溶質に作用して種々の化学変化を起こす(水の放射線分解)。この家庭の際に、α線によるイオン化で生じた二次電子が水分子に作用し、負イオンが生じる。

4 正:β粒子は電荷を持った粒子の流れで、物質に入射すると原子を励起したり電離したりする点ではα線と同じである。しかし、β粒子は電子なのでα線よりずっと軽い。荷電粒子により電離されるとき、正イオンと自由電子の対が生じる。

5 誤:陽電子が止まる際に、媒質から電子を捕獲し中性化し水素原子へと変わる。

自然放射線についての記述

天然に存在する放射性核種には、地球が形成された40数億年前から存在している一次放射性核種、これの壊変で生成した二次 放射性核種、及び主に宇宙線による核反応で生成した誘導放射性核種がある。一次放射性核種として現存するものは、数億年以上 の半減期を持っている。一次放射性核種のうち232Th、235U、238Uはそれぞれトリウム系列、アクチニウム系列、ウラン系列と呼ばれる 壊変系列を作り、多くの放射性核種をえて最後は鉛になる。

 

II

壊変系列を作らない一次放射性核種の代表的なものとして40Kがあり、カリウムに同位体存在度で0.0117%含まれている。半減期は1.28×10^9年(4.04×10^16秒)で、500gのヨウ化カリウム(KI)の中の40Kの放射能は 3600Bqとなる。ただし、ヨウ化カリウムの式量は166、アボガドロ定数は6.02×10^23/molとする。40Kの10.7%は EC 壊変して40Arになり、89.3%は β- 壊変して40Caになる。ある鉱物の生成時にアルゴンが含まれておらず、その後40Kの壊変で生成した40Arがすべて鉱物中に保持されているとすると、40Kの半減期のX倍経過後の40Kの原子数は鉱物生成時の (1/2)^x 倍、40Arの原子数は鉱物生成時の40Kの 0.107×(1-(1/2)^x) 倍となる。

解説 40Kは壊変系列を作らない天然放射線核種の1つである。その半減期は T1/2(40K) = 1.28 × 10^9年(4.04 × 10^16秒)で、普通のカリウムに0.0117%の割合で含まれる。 ここで、ヨウ化カリウム(KI)中の40Kの放射能をA(40K)とすると40Kの原子数 N(40K)、壊変定数λ、ヨウ化カリウムの質量w = 500gと分子量M = 166より、次のように示される。
A(40K) = λ・N(40K) ここでN(40K) = (w/M) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = (500[g]/166[mol/g]) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = 21.9 × 10^19 個 したがって、A(40K) = λ・N(40K) = (ln2/T(1/2)(40K)) × 21.9 × 10^19 = (0.693/4.04×10^16[s]) × 21.9 × 10^19 = 3600Bq
40Kは、β-(89.3%)、EC(10.7%)の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と40Ar(安定)にそれぞれ変換する。40Kが壊変すると40Arが生成するが、この40Arと40Kの存在量から年代を 知ることができるため、40Kは岩石などの年代測定に利用できる。ここでは、40Kの半減期TのX倍経過後の40Kと生成した40Arの原子数(それぞれNx(40K)とNx(40Ar))について 鉱物生成時の40K(初期原子数N0)に対する割合を考える。
ここで、半減期のX倍経過後の時間はX・Tとなる。Nx(40K) = N0・e^(-λt) = N0・(1/2)^(t/T) = N0・(1/2)^(XT/T)
よって、Nx(40K)/N0 = (1/2)^X
次に、40Kの壊変で生成した40Arがすべて保持されるので、分岐比10.7%より Nx(40Ar) = [N0 – N0(1/2)^X] × (10.7/100) = N0 × 0.107 × [1 – (1/2)^X]
よって、Nx(40Ar)/N0 = 0.107 × [1 – (1/2)^X]

 

III

14Cは大気中14Nと二次宇宙線の中性子との(n,p)反応で生成する誘導放射性核種で、半減期は 5730 である。この14Cは考古学者資料などの年代決定に利用されており、例えば、14Cの半減期の1/2を経過したコメ試料中の14Cは、イネ枯死時の 0.71 倍になっている。 年代決定のための14Cの測定には比例計数管や液体シンチレーションなどの放射能測定器が用いられてきたが、最近は加速器質量分析器の利用により、数万年前までの年代測定が可能になっている。宇宙線による誘導放射性核種としては、14Cのほかに、窒素、酸素及びアルゴンの核破砕反応で生成する3H、7Be、36Clなどの多数の核種がある。

解説

天然誘導放射性核種:宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する核種である。14Nと二次宇宙線の中性子は次の核反応により14Cを生成する。 14N(n,p)14C 放射性炭素14Cは14CO2として、植物や動物の組織内に吸収されて生体の一部となる。樹木や骨、貝殻のような個体に取り込まれ、その中に留まるようになった 炭素は、その個体の中で14C固有の壊変定数で放射能を失う。この測定には、14Cの非常に低いβ-線のエネルギーより液体シンチレーションカウンタが用いられる。近年は 加速器質量分析装置の利用も可能になっている。また、宇宙線が大気中の酸素、窒素、アルゴンなどにあたって起こる破砕反応で生成する誘導放射性核種には、3H、7Be、10Be、 14C、22Na、32Si、32P、33P、35Sなどがある。
イネ枯死直後のコメ試料中の14Cの放射能をA0、14Cの半減期をTとすると、経過時間t後の放射能は次のようになる。A = A0・(1/2)^(t/T)
ここで、半減期の1/2経過した後なので、

t = T/2 A = A0・(1/2)^(T/2)/T = A0・(1/2)^(1/2) = A0/√2 よってA/A0 = 1/√2 ≒ 0.71

 

また、詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説3

第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説 第3弾

問1

α粒子の質量は、電子の質量の何倍か。次のうち最も近いものはどれか

1 2000

2 4000

3 7000

4 10000

5 13000

解答 3

解説

α粒子の質量はおよそ 4u (uか原子質量単位)である。1u ≒ 930 MeV、電子の質量は 0.511 MeV に相当するから、(930 × 4)/0.511 = 7280

問2

運動エネルギー E エオ持つ質量 m の粒子 A が、質量 4m の粒子 B と弾性衝突するとき、粒子 A が失う最大エネルギーは、次のうちどれか。

1 0.10E

2 0.16E

3 0.40E

4 0.64E

5 0.80E

解答 5

解説

A が失うエネルギーが最大になるのは散乱角 φ = 180 度の時である。A が失うエネルギーは、B が受け取る反跳エネルギーに等しい。

弾性散乱において原子核の反跳エネルギーEmax = [(2Mm)/(M + m)^2] × (1 – cosθ)En

で求められることから、
[(2m × 4m)/(m + 4m)^2] ×   (1-cosθ)E = (8/25) × 2E = 0.64E

問3

次の放射線のうち、連続したエネルギースペクトルをもつものの組み合わせはどれか。

A 制動放射線

B 特性X線

C β線

D 内部転換電子

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

特性X線と内部転換電子は線スペクトルを有する。

問4

特性X線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A KX線のエネルギーは、原子番号の増加とともに高くなる。

B 特性X線の放出とオージエ電子の放出は競合しない。

C 同一原子では、LX線のエネルギーはKX線のエネルギーより高い。

D 内部転換は特性X線放出の原因となる。

解答 3

解説

A 正:軌道電子の束縛エネルギーは原子番号の増加とともに大きくなり、それらの間の遷移にともなう特性X線のエネルギーも大きくなる。

B 誤:競合過程である。

C 誤:KX線のエネルギーがもっとも高い。

D 正

問5

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 同位体の関係にある原子核では、原子番号同じで質量数が異なる。

B 同重体の関係にある原子核では、原子番号が異なり質量数が同じである。

C 核異性体の関係にある原子核では、原子番号及び質量数が同じである。

D 同中性子体の関係にある原子核では、中性子数が等しく原子番号が異なる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

問6

原子核がα壊変して質量 m(A) の原子核になるときα粒子(質量m(α))のエネルギー Eα と壊変エネルギー Q との関係を表す式として正しいものは、次のうちどれか。

1 Eα = [(m(A) + m(α))/m(A)]^2 × Q

2 Eα = [(m(A) + m(α))/m(A)] × Q

3 Eα = [m(A)/(m(A) + m(α))] × Q

4 Eα = [m(α)/(m(A) + m(α))] × Q

5 Eα = [m(A)/(m(A) + m(α))]^2 × Q

解答 3

問7

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性原子の質量は、原子核の質量と全軌道電子の静止質量の総和に等しい。

B 原子核の質量は、その原子核を構成する核子の質量の総和より結合エネルギーに相当する質量分だけ大きい。

C 原子核の核子当たりの平均結合エネルギーは、質量数が 50 ~ 60 で最大となる。

D 中性子の質量は、陽子の質量より大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:総和から電子の束縛エネルギー分だけ小さい。

B 誤:結合エネルギーに相当する質量分だけ小さい。

C 正

D 正

問8

次の放射性同位元素のうち、Ni の特性X線を放出するものはどれか。

1 65Zn

2 64Cu

3 57Co

4 55Fe

5 54Mn

解答 2

解説

特性X線が放出されるのは、β- 壊変(原子番号 Z が 1 増)、β+ 壊変(Z が 1 減)あるいはα壊変(Z が 2 減)の後に内部転換を生じた場合、または軌道電子捕獲 EC (Z が 1 減)の場合である。1 から 5 の核種はα壊変しないので、Ni(Z = 28)より Z が 1 大きい Cu の EC または β+ 壊変核種か、Z が 1 小さい Co の β- 壊変核種に可能性がある。57Co は EC 壊変 43.6% の 64Cu が該当する。

問9

特性X線、オージエ電子及び蛍光収率に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A オージエ電子は、原子核から放出されることがある。

B 蛍光収率は、特性X線とオージエ電子の放出率の和に対する特性X線の放出率の割合である。

C 特性X線とオージエ電子のエネルギーは同じである。

D 蛍光収率は、原子番号に依存する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:軌道電子がエネルギーを受けて放出される。

B 正

C 誤:オージエ電子のエネルギーは放出される軌道電子の結合エネルギーだけ小さい。

D 正

問10

1.0 MBq の 137Cs から放出される 0.662 MeV 光子の毎秒の個数(s^(-1))として正しいものはどれか。ただし、137Ba の全内部転換係数を 0.11 とする。

1 1.0 × 10^6

2 9.4 × 10^5

3 8.9 × 10^5

4 8.5 × 10^5

5 8.3 × 10^4

解答 4

解説

内部転換係数αは、放出されるγ線数を λ(γ)、内部転換電子数を λe として、α = λe/λ(γ)と定義される。したがって IT あたりγ線が放出される確率は、λ(γ)/(λ(γ)+λe) = 1/(1+α) である。1.0 MBq の 137Cs から放出される γ線数は 1.0 × 10^6 × 0.94 ×[1/(1+0.11)] = 8.47 × 10^5 (s^(-1))

問11

次の組み合わせのうち、適切な関係にあるものはどれか。

1 コッククロフト・ワルトン型加速器 ー 直流高電圧

2 ファン・デ・グラーフ型 ー 高周波電圧

3 サイクロトロン ー 静電加速

4 直線加速器 ー 電荷移送用絶縁ベルト

5 シンクロトロン ー 静磁場

解答 1

解説

1 正

2 誤:直流高電圧が正しい。

3 誤:高周波電圧が正しい。

4 誤:高周波電圧が正しい。電荷移送用絶縁ベルトを用いるのはファン・デ・グラーフ型加速器である。

5 誤:シンクロトロンの磁場は加速にともなって変化する。静磁場で加速するのはサイクロトロンである。

問12

サイクロトロン内を速度 v、半径 r、で回転する粒子の角速度 (=v/r) を表す式として正しいものはどれか。ただし、粒子の電荷を e、質量を M とし、サイクロトロンの磁束密度を B とする。

1 (BM)/e

2 (B/e)・(M/r)

3 (eB)/M

4 eBM

5 (eBM)/r

解答 3

解説

荷電粒子が磁場から受けるローレンツ力は eBv、つりあうべき向心力は (Mv^2)/r である。したがって、eBv = (Mv^2)/r より v/r = (eB)/M

問13

原子番号 Z、質量数 A の原子核に次のような核反応が起こった。生成核の原子番号 Z’ と質量数 A’ の正しいものの組み合わせはどれか。

Z’ A’

1 Z-1 A-1

2 Z A-1

3 Z A

4 Z A+1

5 Z+1 A+1

解答 3

問14

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子捕獲反応の断面積は、低エネルギー領域では中性子エネルギーの 0.5 乗に逆比例する場合が多い。

B 1H (n,γ) 2H 反応の際、結合エネルギーに相当する 2.2 MeV のγ線が放出される。

C 20 ℃ における熱中性子のエネルギーは、平均値が 0.025 eV のガウス分布をしている。

D 熱中性子による 235U の核分裂において、核分裂片は質量数が 117 及び 118 のものが多い。。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:(n,γ)反応の断面積は共鳴のない領域で 1/v (vは中性子速度)、すなわち 1/√E = 1/E^0.5 に比例する。

B 正:この場合は反応にともなって Q 値(2.2 MeV)に等しいエネルギーのγ線が放出される。ただし、重い核による捕獲では様々なエネルギーのγ線が放出される。

C 誤:ガウス分布ではなく、マクスウェル・ボルツマン分布をしている。

D 誤:熱中性子による核分裂では対称的な2つの核分裂片に分かれるのではなく、質量数約 95 と約 140 に2つの極大値を持った非対称に分裂する。

問15

気体分子のイオン化ポテンシャル I(eV) と W値(eV) との間の関係を示す式として、最も適切なものは次のうちどれか。

1 W ≈ 0.2I

2 W ≈ 0.5I

3 W ≈ I

4 W ≈ 2I

5 W ≈ 5I

解答 4

解説

W値は電離エネルギー、すなわちイオン化ポテンシャルの 2倍程度である。

問16

陽子 p とヘリウム原子核 A を 1 MV の電位差で加速した。それぞれの粒子の運動エネルギーEp、E(A)及び速度 vp、v(A)の関係で、正しいものの組み合わせはどれか。

1 Ep = E(A)、vp = 2v(A)

2 Ep = (1/4)E(A)、v(p) = 4v(A)

3 Ep = (1/2)E(A)、vp = √2・v(A)

4 Ep = E(A)、vp = √2・v(A)

5 Ep = (1/2)E(A)、vp = 2・v(A)

解答 3

解説

陽子の電荷は +1、ヘリウム原子核の電荷は +2 なので、E(p) = 1 MeV、E(A) = 2 MeV であり、Ep = (1/2)E(A) となる。E = (1/2)mv^2 であるから (E(p)/E(A)) = [m(p)・v(p)^2]/[m(A)・v(A)^2] = [1 × v(p)^2]/[4 × v(A)^2]、ここでE(p)/E(A) = 1/2 であるから、v(p)^2/[4・v(A)^2] = 1/2、すなわち v(p) = √[2v(p)^2] = √2・v(A) となる。

問17

1 MeV の電子線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 吸収体の厚さに対し、強度が指数関数に減衰する。

B 原子核と衝突して中性子を放出させる。

C 空気中 (1気圧、0℃) においてチェレンコフ光が生じる。

D 物質中で連続エネルギー分布の光子が生じる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

解説

A 誤:指数関数的に減衰するのは連続エネルギー分布を持つβ線であり、単一エネルギーの電子線では異なる。

B 誤:電子は直接原子核とは相互作用しない。電子は制動放射線を生成し、制動放射線が原子核と光核反応を起こして中性子を放出させることはあるが、最大エネルギーが 1 MeV の光子では原子核の中性子の結合エネルギーに満たないため、核反応は生じない。

C 誤:チェレンコフ光はある誘導体内に荷電粒子が入射した時、その物質中の光速度 C より粒子速度 v が大きい時に可視光線が発生するため、空気中では発生しない。

D 正

問18

次の記述のうち、正しいものの無味合わせはどれか。

A 光電効果は、光子と自由電子との相互作用である。

B 鉛の K 吸収端のエネルギーは、約 90 keV である。

C 1.2 MeV γ線に対する鉛の半価層は、約 10 mm である。

D 鉛と光子の相互作用は、光子エネルギーが 100 keV から 2 MeV の範囲でコンプトン効果が主である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:光子と軌道電子との相互作用である。

B 正:正確には 88 keV である。

C 正

D 誤:鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

問19

60Co γ線に対する減弱が最も大きいものは、次のうちどれか。ただし、ビルドアップ効果は無いものとし、鉛、鉄及びコンクリートの密度(g/cm3)は、それぞれ 11.4、7.86、及び2.35 とする。

1 6 cm 厚さの鉛

2 10 cm 厚さの鉄

3 30 cm 厚さのコンクリート

4 2 cm 厚さの鉛と 15 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの

5 5 cm 厚さの鉄と 20 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの

解答 5

解説

60Co のγ線エネルギーではすべての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いて質量減弱係数はほぼ同じである。したがって単位面積当たりの質量で表した遮蔽体の厚さ、すなわち 密度 × 厚さ の積が大きい物質ほど遮蔽効果は大きい。
1. 6 cm 厚さの鉛・・・6 × 11.4 = 68.4 g/cm^2
2. 10 cm 厚さの鉄・・・10 × 7.86 = 78.6 g/cm^2
3. 30 cm 厚さのコンクリート・・・30 × 2.35 = 70.5 g/cm^2
4. 2 cm 厚さの鉛と 15 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの・・・2 × 11.4 + 15 × 2.35 = 58.05 g/cm^2
5. 5 cm 厚さの鉄と 20 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの・・・5 × 7.86 + 20 × 2.35 = 86.3 g/cm^2

問20

コンプトン散乱による散乱γ線のエネルギー E'(γ)(MeV)は、入射γ線のエネルギーを Eγ (MeV) とすると、次式で表される。ただし、θ は散乱角である。
E'(γ) = Eγ/[1 + AEγ(1-cosθ)]
上式において A に相当する数値は、次のうちどれか。

1 0.51

2 0.98

3 1.02

4 1.96

5 2.04

解答 4

解説 A = 1/(mc^2) = 1/0.511 = 1.96

問21

光子と物質の相互作用に関する係数を大きいものから順に並べたとき、正しいものは次のうちどれか。

1 質量エネルギー吸収係数 > 質量減弱係数 > 質量エネルギー転移係数

2 線エネルギー転移係数 > 線減弱係数 > 線エネルギー吸収係数

3 質量エネルギー転移係数 > 質量エネルギー吸収係数 > 質量減弱係数

4 線減弱係数 > 線エネルギー吸収係数 > 線エネルギー転移係数

5 線減弱係数 > 線エネルギー転移係数 > 線エネルギー吸収係数

解答 5

解説

線減弱係数

光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱される。その減弱の割合をいう。この線減弱係数を密度で割ったものを質量減弱係数という。

エネルギー転移係数 μ1

光電効果、コンプトン効果、電子対生成などにより、荷電粒子に与えられるエネルギーの割合。

こうしによる物質へのエネルギー付与やその結果生じる効果などエネルギー伝達を扱う場合にはエネルギー転移係数μ1、エネルギー吸収係数μ2で考える。ここで光電効果の原子断面積σa、コンプトン効果の原子断面積σb、 電子対生成の原子断面積σc、特性X線として持ち去られる平均エネルギーをδとし、コンプトン効果において放出される二次電子の平均エネルギーをE^、電子の静止質量をm0c^2とすると、
μ1 = [(1-(δ/Eγ))σa + (E^/Eγ)σb + (1-((2m0c^2)/Eγ)σc]N で表すことができる。

エネルギー吸収係数

エネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値

線減弱係数 > エネルギー転移係数 > エネルギー吸収係数 という符号関係が成り立つ。

二次電子の運動エネルギーのうち制動放射線として失われるエネルギーの割合をgとするとき μ2 = μ1(1 – g) で表される。

問22

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子は β+ 壊変して陽子となる。

B 中性子は核外では壊変しない。

C 中性子の質量は陽子と電子の質量の和より大きい。

D 中性子数より陽子数が大きい核種がある。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:核外において中性子は β- 壊変して陽子に変化する。β- 壊変・・・ n → p + e- + ν-(反ニュートリノ)。ちなみに β+ 壊変は・・・ p → n + e+ ν(ニュートリノ)となる。

B 誤

C 正:中性子は β- 壊変して陽子と電子、反ニュートリノに変化する。β- 壊変・・・ n → p + e- + ν-(反ニュートリノ)

D 正:例えば 11C (半減期 20 分)は、陽子数 6、中性子数 5 である。

問23

中性子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 241Am-Be 線源から(p,n)反応により中性子が放出される。

B 241Am-Be 線源から放出される中性子の平均エネルギーは、d-T 反応による中性子の平均エネルギーより高い。

C 252Cf の自発核分裂により中性子が放出される。

D 原子核が光子を吸収すると中性子が放出されることがある。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:9Be (α,n) 12C 反応によって中性子が放出される。

B 誤:241 Am-Be 線源から放出される中性子の平均エネルギーは約 5 MeV であるのに対し、d-T 反応の中性子の平均エネルギーは 14MeV である。d-T 反応とは加速器を用いた原子核融合反応で、3H (2H , n) 4He]による約 14 MeV の単色中性子を利用する

C 正

D 正

問24

次の2放射線と物理量の関係として適切でないものはどれか。

1 陽子線 ー 質量阻止能

2 β線 ー 後方散乱係数

3 中性子線 ー 飛程

4 γ線 ー 質量減弱係数

5 α線 ー 線エネルギー付与(LET)

解答 3

解説 中性子は電荷を有していないので一律には停止せず、飛程の概念はない。

問25

次の量と単位の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。

1 エネルギーフルエンス ー kg・s^(-2)

2 質量阻止能 ー kg・m^4・s^(-1)

3 吸収線量 ー m^2・s^(-2)

4 W値 ー kg・m^2・s^(-2)

5 線減弱係数 ー m^(-1)

解答 5

解説

1 正:エネルギーフルエンス(J・m^(-2)) = kg・m^2・s^(-2)・m^(-2) = kg・s^(-2)

2 誤:質量阻止能(J・m^2・kg^(-1)) = kg・m^2・s^(-2)・kg^(-1) = m^4・s^(-2)

3 正:吸収線量(J・kg^(-1)) = kg・m^2・s^(-2)・kg^(-1) = m^2・s^(-2)

4 正:W値(J) = kg・m^2・s^(-2)

5 正

問26

分解時間 0.25 ms の放射線検出器により、5 秒間で 4.0 × 10^3 カウントを得た。この場合、真の計数率(cps)に最も近い値は、次のうちどれか。

1 800

2 900

3 1000

4 1100

5 1200

解答 3

解説

測定された計数率(cpm)は、(4.0 × 10^3)/5 = 8 × 10^2 であるから、真の計数率は (8 × 10^2)/(1 – 0.25 × 10^(-3) × 8 × 10^2) = 1 × 10^3

問27

空気等価電離箱(有効体積:50 cm^3)をγ線場に置き、この電離箱に直列に接続した抵抗(0.01TΩ) の両端の電圧として、65 mV を得た。このγ線場における照射線量率(C・kg^(-1)・h^(-1))として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、電離箱の空気の密度を 1.3 × 10^(-3) g・cm^(-3) とし、二次電子平衡が成り立ち、生成電荷は完全に収集されるものとする。

1 7 × 10^(-11)

2 1 × 10^(-7)

3 1 × 10^(-4)

4 4 × 10^(-4)

5 7 × 10^(-3)

解答 4

解説

0.01 TΩ = 0.01 × 10^12 Ω = 10^10 Ω である。電流を i A とすれば、

オームの法則より、65 × 10^(-3) = 10^10i、すなわち i = 6.5 × 10^(-12) A であり、
照射線量率 = (6.5 × 10^(-12) × 60 × 60)/(1.3 × 10^(-3) × 10^(-3) × 50) = 3.6 × 10^(-4) C・kg^(-1)・h^(-1)

問28

トリチウムの測定に適している検出器として正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 通気型電離箱

B 表面障壁型Si半導体検出器

C ZnS(Ag)シンチレーション検出器

D 固体飛跡検出器

E 液体シンチレーション検出器

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 2

解説

A 正:通気型電離箱・・・電離箱中に測定する空気を直接導入し、主に空気中の β核種、α核種を測定する。

B 誤:表面障壁型Si半導体検出器・・・主にα線のエネルギー測定に用いる。

C 誤:ZnS(Ag)シンチレーション検出器・・・主にα線検出に用いる。

D 誤:固体飛跡検出器・・・主に中性子の個人被ばく線量測定に用いる。

E 正

問29

有機液体シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A NaI(Tl)シンチレータに比べ発光の減衰時間が短い。

B α線放出核種の測定に用いられる。

C NaI(Tl)シンチレータに比べ発光収率が大きい。

D β線のエネルギースペクトル測定には使えない。

E CsI(Tl)シンチレータに比べ発光波長が長い。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 1

解説

液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定できるためその放射性物質からの放射線について検出効率が高い。また放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定に極めて有効である。 さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。) 有機シンチレータである液体シンチレータは発光の減衰時間は通常数ナノ秒程度であり、NaI(Tl)シンチレータと比べると一桁以上短い。

A 正

B 正

C 誤:発光効率は無機シンチレータは 10 % 以下に対して、有機シンチレータは 5 % 未満のものが多い。

D 誤:無機シンチレータは主にγ線スペクトルを測定し、有機シンチレータはβ線スペクトルと中性子測定を行う。

E 誤:有機シンチレータであるトルエン、キシレンの発光波長は最大 290 nm 程度に対して、CsI(Tl)シンチレータの発光波長は最大 540 nm である。

問30

GM 計数管に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 印加電圧と計数率の関係は、プラトー特性と呼ばれる。

B プラトーが長く傾斜が小さい方が望ましい。

C 分解時間、不感時間、回復時間の順に時間が長くなる。

D 多重放電を防止するため充填ガスに有機ガスを添加する場合がある。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

解説 詳しいことは別紙の実務プリントの GM 計数管についての記述に記載する。

A 正

B 正

C 誤:不感時間 < 分解時間 < 回復時間 の順である。

D 正

光子・粒子のエネルギーについての記述

I

入射強度Q0のX線が、厚さxcmの物質を通過して強度Q1になったとする。Rを次式で定義する。

R = ln[B・(Q0/Q1)]・・・(1)

この時、R は x に比例する。その比例定数を線減弱係数といい、この逆数を平均自由行程と呼ぶ。 線減弱係数を物質の密度で除した質量減弱係数は、物質の状態に依存しない。(1)式の右辺における B はビルドアップ係数と呼ばれ次式で与えられる。

B = 1 + [散乱X線光子数/全X線光子数]・・・(2)

BはX線のエネルギー、物質の材質、厚さ、幾何学的配置に依存し、物質に入射するX線ビームが細い場合は、広い場合に比べてBの値が小さい。入射強度Q0のX線を強度Q0/2に減らすために必要な物質の厚さをD1とする。D1は半価層と呼ばれる。X線エネルギーが単一でなく分布を持つ場合、 半価層を通過したX線は入射X線に比べて、その平均エネルギーが大きい。その通過X線の強度をさらにQ0/2からQ0/4に減らすのに必要な厚さをD2とするとD1とD2の関係はD1<D2である。

 

II

α粒子などの重荷電粒子は、物質中を通過するとき主に電離作用と励起作用によって徐々にエネルギーを失っていく。β線の場合は、さらに制動放射による エネルギー損失が無視できない。エネルギーE0の荷電粒子が物質中を厚さ dx だけ通過するときに失うエネルギーを dE とすると、阻止能 S はdE/dxで表される。また、飛程は∮1/s(dE)の式で表される。 α粒子はその質量が電子に比べて7300倍であるため、軌道電子との衝突の過程でその進行は直線的である。α粒子の進行に沿う単位長さ当たりの生成イオン対数を表わすグラフで、止まる前で急にイオン対数が増加する様子を示すのがブラッグピークである。空気中における 5MeVのα粒子の平均飛程は、ほぼ3.5cmである。β線のエネルギー分布は、連続分布である。β線の透過率を縦軸に物質の厚さを横軸としてグラフに示すと、その関係はほぼ指数関数で表される。最大エネルギーが 2.3MeV のβ線は、水中での最大飛程が1.1g/cm2である。

7300倍の解答 求め方 (930×4)/0.511 ≒ 7300

5MeVのα粒子の平均飛程の解答 線のエネルギーをE(MeV)、空気中の飛程をR(cm)とすレバ、近似的にR = 0.318E^1.5 と表される。

最大エネルギーが 2.3MeV のβ線は、水中での最大飛程の解答 エネルギーE(MeV)のβ線の最大飛程R(g/cm2)はおよそR = 0.5Eで表される。

壊変についての記述

I

β壊変にはβ-壊変、β+壊変及び軌道電子捕獲があり、いずれも弱い相互作用によって起こる。β-壊変では原子核内の中性子が陽子にかわり、 電子と反ニュートリノが放出される。その結果、生成核の原子番号は1つ増加するが、質量は変わらない。壊変エネルギーQは、生成核、電子及び反ニュートリノの運動 エネルギーに分配される。一般に、β線のエネルギーを表わす場合には、電子が持ち出す最大のエネルギーが用いられる。 β+壊変では陽電子とニュートリノが放出される。陽電子のエネルギー分布の形状はβ-線のエネルギー分布と異なる。 β+壊変における親核の原子質量を X 、生成核の原子質量を Y とすると、壊変エネルギーQは、(X-Y-2m)・c2と表わすことができる。ただし、c を光速度、 m を電子の静止質量とする。軌道電子捕獲は、原子核の陽子が軌道電子と結合して中性子になり、ニュートリノを放出する現象である。これにより、電子軌道に 空孔が生じ、そこへ外側の軌道電子が遷移した場合には、特性X線またはオージエ電子が放出される。K軌道及びL軌道における電子の結合エネルギーを Ek及びElとすると、特性X線のエネルギーはEk-El、オージエ電子のエネルギーはEk-2Elとなる。

 

II

β壊変と同様に、電子を放出する過程に内部転換があり、励起状態にある原子核がそのエネルギーを軌道電子に与えて、これを放出する現象をいう。 ただし、この過程は、電磁相互作用として起こり、つねにγ遷移の競合過程として存在する。137Csがβ壊変して137mBaが生成するとき、その確率をp、 137mBaの転移における全γ線放出光子数に対する内部転換による全放出電子数の割合をαT、K軌道電子に対して起こる割合をαK、K特性X線の放出される割合 (K殻蛍光収率)をωとする。このとき、1壊変当たりにK特性X線の放出される確率は(p・(αk/1+αT)・ω)であり、662keVのγ線の放出される割合を(p・(1/1+αT))となる。

詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org