中性子線源である 238Pu についての記述

238Pu は α 壊変核種であり、高い発熱量を示し、半減期は 88 年 なので、長寿命のアイソトープ電池として宇宙線開発等に利用されている。238Pu の製造に利用される核反応の一つには次のものがある。
237Np (n,γ) 238Np →(β-壊変、半減期 2.1 日) 238Pu
237 グラムの 237Np ターゲットを熱中性子フルエンス率 1.0 × 10^15 cm^(-2)・s^(-1) で 50 時間照射した。上記(n,γ)反応の断面積を 180 バーンとすると、238Np に変化した。237Np の総数は約 1.9 × 10^(22) 個となる。このターゲットを 30 日間冷却した後、ターゲットから全ての Pu を化学分離により回収した。なお、生成した 238Np が全て 238Pu に変化したとすると、回収できる 238Pu の重量は約 8 グラムである。照射時間を更に長くすると、238Pu が中性子を捕獲して生成する 239Pu や 240Pu が増加し、238Pu の核種純度が低下する。

 

解説

放射化分析における生成放射能の計算
t 時間の照射によって、核反応にともなって変化する原子数 N は、f:照射粒子束密度[n/cm2s]、σ:放射化断面積[barn]、N0:試料元素の原子数、λ:生成核の壊変定数、とすると
N = N0・f・σ・t = [1.0 × 10^15 × 180 × 10^(-24) × 237] / [237 × 6.0 × 10^23 × 50 × 60 × 60] = 1.94 × 10^22 個
照射終了後 d 時間後の 238Np の原子数を Nd とすると、 238Pu の原子数は、
N – Nd = N – N・(1/2)^(d/T) = N(1 – (1/2)^(d/T))
ここで d/T = 30/2.1 ≒ 15 なので、(1/2)^15 ≒ 0 となり、N – Nd = N となる。したがって生成した 238Np が全て 238Pu に変化したと考えられる。
N(238Pu) = (W/M) × 6.0 × 10^23
1.94 × 10^22 = (W/238) × 6.0 × 10^23
W = 7.6 g

 

有用な中性子源である 252Cf (半減期 2.6年)の製造に利用される主な核反応プロセスの概略を下図に示す。原子番号、質量数ともに非常に大きい 252Cf の製造には、ⅰ) 連続した中性子捕獲による質量数の増加と、ⅱ) β- 壊変による原子番号の増加が利用される。Pu ターゲットを原子炉で照射した時に中性子捕獲で生成する 243Pu は、半減期が約 5 時間と短く、その多くは β- 壊変して243Am になる。一定期間の照射後、生成した Am を残存の Pu と核分裂生成物から分離回収する。回収した Am で、調整した Am ターゲットを高い中性子フルエンス率で照射すると、より重い Am 核種が生成するが、半減期の短い 241Am の多くは、 (n,γ) 反応で 245Am になる前に β- 壊変して 244Cm になる。同様のプロセスが繰り返される。 最終的に 252Cf を含む重い核種群が得られる。239Pu を最初の核種として 252Cf に到達するには、 13 個の中性子捕獲と 4 回の β- 壊変を経る。252Cf の製造過程では、多種類の化学分離法が利用されている。例えば、処理量が多い Pu ターゲットの化学分離処理を行うときには溶媒抽出法が、Am、Cm、Bk、Cf の相互分離を行うときには主に イオン交換クロマトグラフィ法が利用されている。

 

252Cf は主にα壊変するが、分岐比 3.1% で自発核分裂し、それに伴って中性子を放出する。自発核分裂の部分半減期は 84 年となる。1.0 グラムの 252Cf の原子数は 2.4 × 10^21 個、その核分裂速度は 6.3 × 10^11 s^(-1) である。1回の自発核分裂で放出する中性子数は平均 3.8 個であるので、1.0 グラムの 252Cf が放出する中性子数は毎秒 2.4 × 10^12 個となる。252Cf 中性子源は、即発γ線分析、中性子ラジオグラフィ、水分計等に用いられている。

 

解説

252Cf:半減期は 2.645 年、自発核分裂(SF)(3%)し、α壊変(97%、平均 6.112 MeV)とγ線、低エネルギーX線の放射を伴う。1 g 中の原子数は、
N = (1/252) × 6.0 × 10^23 = 2.38 × 10^21 個
核分裂速度は 6.3 × 10^11[s^(-1)] で1回の自発核分裂で放出する中性子数は平均 3.8 個であるので、求める 252Cf が放出する中性子数は
6.3 × 10^11 × 3.8 = 2.39 × 10^12 個
部分半減期:枝分かれする壊変を分岐壊変と呼び、その割合を分岐比という。分岐した改変についてされぞれの壊変式が成り立つので、i 番目の壊変に着目すると次のように表せる。
dN/dt = -λiN、T(1/2)i = ln2/λi
このように定義した半減期を部分半減期という。ここで、この親核種に注目すると、その壊変定数 λ は次のように表せる。
λ = λ1 + λ2 + λ3 + ・・・・・ + λi +・・・λn
この間では、252Cf の壊変定数を λ、α壊変による壊変定数を λ(248Cm) とすると、λ = λ(248Cm) + λ(SF) となり、
λ(248Cm) = 0.969λ、λ(SF) = 0.031λ
自発核分裂の半減期は、T(SF) = ln2/0.031λ = T/0.031
252Cf の半減期は 2.6 年なので、
T(SF) = 2.6/0.031 = 83.8 年

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です