自然放射線
自然放射線による被ばくには、宇宙船によるものと天然放射性核種からのものの2つがある。さらに天然放射性核種は地球誕生時から存在していた原始放射性核種とその子孫核種及び、宇宙線が大気に当たって生成した宇宙線生成核種からなる。宇宙線は外部被ばくの原因となる。また、大地の 天然放射性核種からも外部被ばくを受ける。世界平均では、自然放射線による被ばくで最も寄与が大きいのはラドン及びその子孫核種の吸入による内部被ばくである。 40K は原始放射性核種であり、外部被ばくをもたらすとともに、食品から摂取され、体の構成要素として内部被ばくももたらす。宇宙線生成 核種からの被ばくの大部分は 14C による内部被ばくがあるが、ごくわずかである。宇宙線の源は、太陽から放出される粒子と、太陽系以外から飛沫する銀河宇宙線とに大別される。大気圏での被ばくの大部分は太陽粒子に比べエネルギーの高い銀河宇宙線のものによる。銀河宇宙線の組成は 98% が 原子核で残り 2% のほとんどが電子である。原子核のうち 87% が陽子(水素原子核)、12% がヘリウム原子核、残り 1% がさらに重いもので構成している。
直接電離放射線・間接電離放射線
電離放射線を大別すると自身が電荷を持つ直接性電離放射線と、自身は電荷を持たず、物質との相互作用の結果、二次的に発生した直接電離性放射線が電離を引き起こす間接電離性放射線の二種類に分けられる。直接電離性放射線のうちα線は物質中でクーロン力を受けながら連続的に減速しやがて停止する。一方間接電離性放射線の一つであるγ線は物質中で 吸収・散乱されることもあれば、全く相互作用を起こさず透過することもある。γ線が物質中で相互作用するかどうかは確率的な問題である。N0個の細い線束の単色γ線が、線束と垂直に置かれた厚さ dx の薄い板に入射し、これを透過するγ線の数が N であるとする。この時 dN 個のγ線が吸収・散乱によって失われたとすると、 dN/dx = -μN これを積分し、初期条件を考慮すると、N = N0 e^(-μx) と表される。この μ は線減弱係数と呼ばれ、吸収・散乱の原子断面積の総和と単位体積あたりの原子の積である。(吸収や散乱の原子断面積の和である全原子断面積σ(tot)は、線減弱係数μを単位体積中の原子数Nで割った値、σ(tot) = μ/Nとして得られる。すなわち μ = σ(tot) × N になる。)
放射線分解について
γ線ではその生物効果の 50 ~ 80 %が水の放射線分解の結果生じるラジカルによる間接作用の寄与によるものであるとされている。間接作用の大きさに影響する因子はいくつか存在し、酸素もその一つである。すなわち水の放射線分解では生体分子と反応する様々なラジカルが 生じるが、そのうちのスーパーオキシドラジカルは水の電離で生じた電子に水分子が配位した水和電子により酸素が1電子還元されて生じる。また、酸素には生体分子に生じた損傷が化学的修復をされる前に損傷として固定する働きがあるといわれる・したがって酸素の有無は放射線により引き起こされる生体反応の大きさに影響する。酸素が存在しない条件で、ある効果を起こす吸収線量と酸素が存在する 条件で同じ効果を起こす吸収線量の比を酸素効果比という。生体内での酸素効果比は最大 3 程度までの値となる。酸素効果比が 2 となる酸素分圧が 3 mmHg程度の時である。正常組織では酸素分圧はおよそ 20 ~ 100 mmHgである。LETの高い放射線による致死効果では酸素効果はγ線に比べて小さくなる。LETが 200keV/nmを越えると酸素効果比はほぼ 1 になることが知られている。またLETの高い放射線では間接作用の寄与がγ線より小さくなる。
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