胃がん検診の重要性

検診などでよく検査項目の中に含まれている内視鏡検査・胃X線検査はなぜ必須なのかと言いますと現在胃がんの罹患率が高い傾向にあるからです。具体的には2014年の統計によると男性86656人で第一位、女性39493人で第三位の罹患者数になります。

胃がんは早期発見ができれば生存率は約95%以上となりますが、発見が遅くなれば生存率が約48%にまで減少していきます。

したがって、胃がん検診は早期発見、早期治療を目的とし、胃がんによる死亡率の減少をはかる目的として行われています。

では、どのような方々が胃がんになりやすく、検査を推奨されているかと言いますと、国のがん検診の指針によりますと、内視鏡検査であれば50歳以上なら2年に1回、胃X線検査であれば40歳以上なら年1回を推奨しています。

しかし、検査に携わっていますと、バリウムの検査が苦手な方や、便秘がひどい方、内視鏡も苦しくて苦手という方、30歳以下の若い方々も検査に来られたりして、よく相談されたりすることがあります。

そこで、ここでは胃がんになりやすい方、検査方法などを詳しく解説していきたいと思います。

まずはどんな方々が胃がんになりやすいかをご説明いたします。

これまでにわかっていることは胃がんに罹患している方々の約99%はヘリコバクターピロリ菌に感染していることが報告されています。残りの0.1%はヘリコバクターピロリ菌に感染していない方や原因不明の方々となります。

もし内視鏡検査や胃X線検査が苦手な方でご自身の胃の状態を把握してみたいという方々はまずヘリコバクターピロリ菌の感染の有無の確認をしてから内視鏡検査や胃X線検査に移っていただいてもいいのかと思います。

ここで知っておいていただきたいことは年代別ヘリコバクターピロリ菌の感染率です。20歳〜29歳では全体の約9%の方々しか感染していないことが分かります。この数値を見ていただくと検査を推奨する年齢が40歳以上ということが分かると思います。

20~29歳  9%

30~39歳  19%

40~49歳  28%

50~59歳  43%

60~69歳  54%

70~79歳  42%

ヘリコバクターピロリ菌感染の有無の検査方法には血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法という3つの方法があります。

血液検査はヘリコバクターピロリ菌自身を検査するものではなくヘリコバクターピロリ菌に感染したことによってできる血液の中に存在する抗原を検査することによって過去に感染してたり現在感染しているのかを判定するものであります。欠点としては、あくまで抗原の検査なので過去に感染していたか、現在感染しているのかまでの判定ができないという点であります。この血液検査による血清抗原陽性的中率を年代別に表すと次のようになります。

20~29歳 約27.8~65.0%

30~39歳 約47.8%~81.5%

40~49歳 約60.3%~88.0%

50~59歳 約74.7%~93.4%

60~69歳 約82.1%~95.7%

70~79歳 約73.9%~93.2%

このように年齢が若いと感染率も低くなり、陽性的中率も必然的に下がる傾向があることを注意していただきたいです。

尿素呼気検査は呼気の中に尿素が存在しているかどうかの検査になります。

この検査の原理は、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解して、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排出されます。この試験方は、この原理を利用して、検査薬(13C-尿素)を患者さんに服用していただきます。ピロリ菌に感染している場合では尿素が分解されるため呼気に 13CO2が多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していない場合では、尿素が分解されないため13CO2の呼気排出はほとんど起こりません。そしてこの尿素呼気検査による陽性的中率は次のような値となります。

20~29歳 約42.6~82.6%

30~39歳 約63.8%~91.8%

40~49歳 約74.5%~94.9%

50~59歳 約85.0%~97.3%

60~69歳 約89.8%~98.3%

70~79歳 約84.5%~97.2%

血液検査よりも精度がいいことがお分かりいただけますが、20歳〜29歳の精度はあまり良くないので注意を要します。

便中抗原法は胃の中にいるピロリ菌は便中に排出されるので、便中のヘリコバクターピロリ抗原を検出することによりピロリ菌の感染の有無を確認する検査となります。

この便中抗原検査による血清抗原陽性的中率は次のような値となる。

20~29歳 約37.8~約65.0%

30~39歳 約59.0%~約81.5%

40~49歳 約70.5%~約88.0%

50~59歳 約82.3%~約93.4%

60~69歳 約87.8%~約95.7%

70~79歳 約81.6%~約93.2%

こちらの検査も20歳〜29歳の精度はあまり良くないので注意を要します。

 

そしてピロリ菌の感染の有無でさらに精度が高い検査は内視鏡検査と胃X線検査である。内視鏡検査は胃の粘膜の状態を観察できる上に、胃の組織を採取することで迅速ウレアーゼ検査、鏡検法、培養法といった方法でピロリ菌の有無を確認することができ、さらには重要である胃がんの早期発見をも可能にする検査となります。

続いて胃X線検査は粘膜の状態を確認する検査になります。バリウムを胃全体に付着させることで、胃の状態を見ることでピロリ菌が過去に感染しているか、現在感染しているかを判断することができます。

そして一番おすすめな方法としては、まずは内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただく事で感染しているか総合的に判定することができます。

 

ヘリコバクターピロリ菌感染の有無による検査継続方法

ヘリコバクターピロリ菌感染していない方

 内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただいた結果全て陰性の場合、3年~5年間隔で内視鏡検査を受けることをお薦めします。

 

ヘリコバクターピロリ菌に現感染している方、もしくは過去に感染していた方

内視鏡検査、胃X線検査のどちらか1つ、血液検査、尿素呼気検査、便中抗原法の中の2つを受けていただいた結果1つでも陽性なら現感染、もしくは過去感染している可能性が高いため、年に1回内視鏡検査、もしくは胃X線検査を交互に行うことをお薦めします。

補足事項

2017年度佐賀県の中学生を対象にピロリ菌検査を行った結果7230人のうち234人にピロリ菌に感染していたという調査結果が出ていました。少数ではありますが若い方もピロリ菌に感染していることが分かります。今大切なことは自分自身の胃の中の状況を確認して、その状況に応じた検査を行う事が大切です。

ピロリ菌は、幼少期の時の母親からの感染や井戸水を長年使用していた方々に多く感染しているとの報告があります。近年は水道設備が整っているためピロリ菌に感染している方々が少なくなっています。

しかし最近はピロリ菌に感染していなくても胃がんに罹患する方々も増加してきているため、ピロリ菌だけの判定だけでなく、40歳以上の方々は、2〜3年に1回の内視鏡検査をすることをおすすめしたいと思います。
水道水もいいが、ピロリ菌感染を予防するなら、綺麗なお水を使用することが望ましい。





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