2πガスフロー比例計数管の使用について
Ⅰ 表面汚染検査計の校正に使用するために、均一な天然ウラン面線源(線源部の有効面積:150cm2)を内部封入型2πガスフロー比例計数管を用いて測定した。この面線源が1年前に作製されたとすると、測定対象となる主な放射線は、238U、及び 234U からの α線 と、 234Th 及び234mPaからの β線 である。 比例計数ガスとしてメタンガスを流し、印加電圧を上昇させながら計数率を測定し、横軸に印加電圧、縦軸に計数率をプロットした。図のように両者の関係には、領域1及び領域2のようなプラトーと呼ばれる計数率変化の小さい部分が生じた。この時、領域1で計数される放射線は、 α線 であり、 また、領域2で計数される放射線は、 α線+β線 である。比例計数管は、ガス増幅により、放射線による信号をノイズに比べ十分に大きくできるため、領域1で得られた計数率からバックグラウンド計数率を差し引いた正味の計数率は、面線源から放出される α線 の表面放出率に相当する。
Ⅱ バックグラウンド計数率を差し引いて得られた表面汚染検査計の正味の計数率Ns(cps)と表面汚染密度As(Bq/cm2)との関係は、 放射性核種のα(β)線の放出割合が100%の場合には、Ns = As × εi × εs × W で与えられる。ここで、この表面汚染検査計のεiは機器効率と呼ばれ、測定器固有の特性や線源との幾何学的条件で決まる。一方、εsは線源効率と呼ばれ、線源におけるα(β)線の全放出率に対するα(β)線の表面放出率の割合で与えられる。また、W(cm2)は、表面汚染検査計の有効窓面積を表す。 前述のⅠで示した天然ウラン面線源の全面を厚さ7mg/cm2のアルムニウム板で覆って面線源とし、2πガスフロー型比例計数管で測定したところ、計数率1875cpsであった。次に、GM管式表面汚染検査計(有効窓面積:20cm2)を用いて、汚染検査時と同じように線源面にできる限り近づけて測定したところ、計数率として9000cpmを得た。両測定においてバッググラウンド計数率及び測定器の数え落としをともに無視すると、このGM管式表面汚染検査計のεiは 0.60 となる。 上記の測定で求めたεiの値を14Cによる表面汚染の評価に適用した場合、天然ウラン面線源のβ線平均エネルギーが14Cのそれと比べて高いので、この値は14Cに対しては過大となり、結果として表面汚染は過小に評価されることになる。一方、εsの値は、汚染線源の性状により変化するため実験的に求めることが望ましいが、14Cの評価においてこの値が不明な場合には、 210Po と同様に 0.25 を使用することが推奨されている。
[ GM管式表面汚染検査計のεiの求め方 ] ウランから放出されるα線のエネルギーは約4から5MeVであり、空気中の飛程は2.5から3.5cm程度である。(飛程R[cm]は R = 0.318E^1.5で表される。)空気の密度は約1.2mg/cm3であるから、飛程は3.0から4.2mg/cm2である。(mg/cm2)単位で表した飛程は物質にあまり依存しないため、7mg/cm2のアルミニウム板で覆うことにより、α線は完全に遮蔽される。したがって計数されるのはβ線だけである。2πガスフロー型比例計数管は、 検出器内に線源を入れるため、プラトー領域では線源から放出される荷電粒子はほぼ100%計数される。したがってウラン線源のβ線面放出率は1875(/s)である。単位面積あたりでは、1875/150 = 12.5(s^(-1)・cm^(-2))、したがってεi = (9000/60)/(12.5 × 20) = 0.60である。
[ 14Cの評価においてεsの値が不明な場合 ] β線の最大エネルギーが0.15から0.4MeVのときは、α線に対する値と同じとし、線源効率は安全側に0.25とするのが推奨されている。解答群の核種のうち、3Hのβ線最大エネルギーは18.86keVと低すぎ、また32P、90Sr – 90Yのβ線最大エネルギーはそれぞれ1.711MeV、2.28MeV(90Y)と高すぎる。55Feは低エネルギー特性X線線源である。したがって、14Cと同様に扱えるのは、α線源である210Poである。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。