DNA損傷と修復

DNAの構造

塩基、糖(デオキシリボース)およびリン酸が1分子ずつ結合したものをヌクレオチドという。このヌクレオチドが数多く繋がった鎖がらせん状に2本並んだ巨大な分子がDNAである。これはDNAの2重らせん構造と呼ばれる。 DNAを作る塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類であり、向かい合う塩基が水素結合をして2本の鎖をつないでいる。塩基の組み合わせは決まっておりAとT、GとC間のみで行われる。DNAの 2重らせん構造と塩基の水素結合の様子を図に示す。

① 1本鎖切断 ② 2本鎖切断 ③ 塩基損傷・欠失 ④ 水素結合の破壊 ⑤ 糖の破壊

DNA損傷

電離放射線により引き起こされる DNA 損傷は、1本鎖切断、2本鎖切断、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成などに分けられる。これらは細胞死や突然変異の原因となる。2本鎖切断は1本鎖切断 よりも生じにくく、10 倍以上のエネルギーを必要とする。また高LET放射線では電離密度が密なため2本鎖切断の割合が増える。紫外線は非電離放射線であり、電離は起こさず 励起のみが起こる。DNA を構成する 4 種の塩基はいずれも紫外線をよく吸収し、塩基分子の励起が起こる。この際ピリミジンダイマー(ピリミジン2量体)が形成される。DNA ではチミンとシトシンがピリミジン塩基でありダイマーとは隣接する塩基間に共有結合ができた状態をいう。

光回復

光回復は、紫外線による損傷であるピリミジンダイマーが光回復酵素の存在下で可視光に当たることによりモノマーに戻り回復するものである。除去修復では、まず損傷部の塩基やヌクレオチドが切り出され、その後塩基や ヌクレオチドが相補的に合成される。塩基やヌクレオチドを除去する過程に関係する酵素(エンドヌクレアーゼ)を欠いた先天性遺伝疾患にまた色素性乾皮症(紫外線に弱い)がある。 色素性乾皮症ではピリミジンダイマーを修復できないことから紫外線に高感受性を示し、皮膚がんが効率に発生する。

細胞周期による放射線感受性の変化

細胞は細胞分裂を繰り返して増殖する。分裂から次の分裂までの 1 サイクルを細胞周期といい、図6に示すように M 期 → G1 期 → S 期 → G2 期 → M 期 と繰り返される。M 期は分裂期、S 期は DNA 合成期である。 この 2 つの時期を埋めるものとして G1 期および G2 期がある。細胞分裂は行わず、 G1 期に長く留まっている場合、特別に G0 期(静止期)と呼ぶことがある。また、分裂期以外の時期をまとめて間期と呼ぶ。 細胞の放射線感受性は、細胞周期のの時期によって異なる。図7に示すように、M 期の放射線感受性が高く、S 期後期と G1 期初期の放射線感受性が低い。G1 後期から S 期前期に かけても放射線感受性は高くなる。

DNA にできた傷は様々な機構で修復される。紫外線によるピリミジン2量体は光回復酵素により認識され、320 ~ 410 nm の光の存在下でシクロブタン環が直接開裂されて 元のピリミジンに戻る。ラジカルなどによりできた塩基損傷は、その損傷部位の前後で DNA の一部が切り出され、向かい側の DNA 鎖を鋳型として埋め戻される。損傷のある部位だけが切り出される場合を 塩基除去修復、損傷部位を含めて広い範囲が切り出される場合をヌクレオチド除去修復という。この修復過程に関与する遺伝子に 異常がある遺伝性疾患が色素性乾皮症である。放射線による致死的で重要な傷は DNA の2 本鎖切断で相同組換え修復または非相同末端結合 で修復される。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

 

第1種放射線取扱主任者まとめ集

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