DNAの構成
放射線の生物作用を理解する上で重要なDNAはデオキシリボースとリン酸と塩基から構成される。デオキシリボースとリン酸は交互に並んで結合し、主鎖を形成する。この鎖が2本、互いに逆向きに並んで二重らせん構造を形成する。塩基にはアデニン(A)、 シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種類があり、向かい合った鎖の A と T、G と C が互いに水素結合で結合している。 A と T の間の水素結合の数は2個であり、G と C との間の水素結合 の数は3個である。正常ヒト2倍体細胞1個のDNAでは、A と T の対、G と C の対が合計で約6 × 10^9 個並んでいる。
ヒトのゲノムは30億塩基対とされており、ここでは2倍体について聞かれているので 6 × 10^9 個となる。通常正常ヒト2倍体細胞は1個当たり46本の染色体があり、6 × 10^9 個の塩基対がある。
電離放射線によって引き起こされるDNA損傷には、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成、1本鎖切断、2本鎖切断などがある。正常ヒト2倍体細胞に 1Gy の X線を照射すると、細胞1個当たりDNA鎖切断は約1000個、DNA2本鎖切断は約40個生成する。
補足
2009年米国放射線防護学会では、1 mGy で 1 細胞当たり 1 本鎖切断は 1 個、2 本鎖切断は 0.04 個という報告がある。
DNA2本鎖切断が起こると、その近傍において、ヒストンを構成する H2A の一種である H2AX がリン酸化を受けγ-H2AXが生成する。そのため、放射線照射した細胞をγ-H2AXに対する蛍光標識抗体を 用いて染色し、蛍光顕微鏡で観察すると、ドット状に見える。これをγ-H2AXのフォーカスという。このフォーカスを数えることによりDNA2本鎖切断の生成や修復を調べることができる。例えば、DNA2本鎖切断修復酵素の一つであるDNAリガーゼⅣを欠損する細胞に 2 Gy のX線を照射し、2時間後に残っている γ-H2AXのフォーカスを数えると。正常細胞に同様の処置を施した時よりも多い。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。