DNA損傷と修復

放射線、紫外線、活性酵素などの影響やDNA複製過程でのエラーもよって、異常な塩基対が形成される。細胞にはこのような異常な塩基や塩基対を修復する機構が備わっている。例えばシトシンが脱アミノ化されるとウラシルが生じる。ウラシルはRNAに含まれるものの、 本来DNAに含まれない塩基であるため細胞はこれを異常と察知し修復を行う。この場合の修復は塩基除去修復によって行われる。塩基除去修復において、まずDNAグリコシラーぜによって下図の a の位置で切断が起こり、塩基のない 部位が生じる。次のAPエンドヌクレアーゼによって下図の b の位置で切断が起こる。さらにホスホジエステラーゼによってもう一方のリン酸ジエステル結合が切断され、損傷塩基が取り除かれると、DNAの2本の鎖のうち一方の鎖が切れた構造が残ることになる。

補足

損傷した塩基がDNAグリコシラーぜによって切除される。塩基のない部位は(プリンが無い、ピリミジンが無いという意味でAP部位という)AP部位といい、AP部位はAPエンドヌクレアーゼによって、5’端のリン酸基をもつ部位で切断を受け、さらにホスホジエステラーゼによってもう一方のリン酸ジエステル結合が加水分解・切断 され、リン酸 – デオキシリボースが切り出される。

放射線によって生じるDNA損傷には塩基損傷や架橋に加え、鎖切断がある。鎖切断には大きく分けて1本鎖切断と2本鎖切断がある。正常ヒト2倍体細胞に 1 Gy のγ線を照射した場合細胞 1 個あたり、1 本鎖切断は約1000個、2本鎖切断は約40個生成する。1本鎖切断と2本鎖切断は 最終的にDNAリガーゼによって結合されるが、結合の際には 5’末端にリン酸基、3’末端基に水酸基が必要である。末端の形状がこれと異なる場合には、ポリヌクレオチドキナーゼ/ホスファターゼなどによる整形を必要とする。

補足

鎖切断箇所は必要によって切断末端が5’端にリン酸、3’端に水酸基を持つようにポリヌクレオチドキナーゼ/ホスファターゼによって消化・整形され、DNAポリメラーゼによってヌクレオチド欠損箇所に正常なヌクレオチドが挿入され、最終的にDNAリガーゼによって結合が行われ、修復が完了する。

ヒトやマウスの体細胞において、DNA2本鎖切断は主として相同組換えと非相同末端結合の二つの機構で修復される。相同組換えは鋳型として、姉妹染色分体を必要とするため、細胞周期のS期 後半からG2期に限定される。非相同末端結合に関わるDNA依存プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA – PKcs)遺伝子に変異を有するscid(スキッド)マウスは放射線致死高感受性に加え、免疫機能の異常を呈する。また近年ヒトでも DNA – PKcs の遺伝子に変異を有する 患者が報告され、免疫抗体遺伝子の再編成過程において非相同末端結合が関わるためである。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です