問1

ある放射性同位元素 3.7 GBq は 5 年後に 37 MBq に減衰した。この 37 MBq が 3.7 kBq に減衰するのは、おおよそ何年後か。最も近い値は、次のうちどれか。

1 5

2 10

3 20

4 40

5 50

解答 2

5 年後で 3.7 GBq が 37 MBq に減衰する。すなわち、5 年後で 1/100 になる。37 MBq が 3.7 kBq に減衰するとは、1/10000 になることを意味している。37 MBq が 5 年間で 1/100 に減衰し、次の 5 年間でもその時点から 1/100 に減衰する。すなわち、10 年間で 1/100 × 1/100 = 1/10000 となる。

問2

純度 100% のトリチウムガス 3(H2) が、アンプルの中に 1.00 気圧で封入されている。これが 24.6 年間経過すると、内部の圧力は何気圧になるか。ただしトリチウムは半減期 12.3 年で β- 壊変し、アンプル中のトリチウムの化学形は常に 3(H2) とする。

1 0.75

2 1.00

3 1.25

4 1.50

5 1.75

解答 5

トリチウム 3H は半減期 12.3 年で β- 壊変して 3He になる。トリチウムは 2 原子で安定な 1 分子の気体を構成するが、ヘリウムは希ガスであるため 1 原子で安定な 1 分子の気体を構成する。そのため、壊変したトリチウム分子 3(H2) の 2 倍の個数の気体分子が生成することになり、密閉容器中では内部の圧力を上昇させる。24.6 年間は 2 半減期に相当するため、トリチウム原子の 75 % が壊変する。よって、求める内部の圧力は、壊変せず残った 25 % の トリチウム分子 3(H2) の分圧と壊変により生成した 3He の分圧との和であるので、1 気圧との和であるので、1 気圧 × (25% + 75% × 2) = 1.75 気圧となる。

問3

70 MBq の 201Tl(半減期 73 時間 = 2.6 × 10^5 秒)の質量[g]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 4.4 × 10^(-9)

2 8.7 × 10^(-9)

3 1.3 × 10^(-8)

4 2.7 × 10^(-8)

5 5.2 × 10^(-8)

解答 2

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は、A = (0.693N)/A と表される。また、原子数 N は質量数 M、重量 W グラムと以下の関係がある。N = (W/M) × 6.02 × 10^23 以上の 2 式より、重量 W グラムは以下のように表される。W = (ATM)/(0.693×6.02×10^23) それぞれい数値を代入すると、W = (70×10^6×2.6×10^5×201)/(0.693×6.02×10^23) = 8.7 × 10^(-9) となる。

問4

比放射能が 50 kBq/mg の[14C]フェノール(C6H5OH、分子量 94)を臭素化して、[14C]トリブロモフェノール(C6H2(OH)Br3、分子量 331)を得た。この[14C]トリブロモフェノールの比放射能[kBq/mg]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 14

2 23

3 50

4 120

5 170

解答 1

比放射能とは、放射性核種の属する元素の単位質量あたりの放射能のことである。また、化学反応前後で放射能は等しい。[14C]フェノールの質量を m[mg] とおくと、求める[14C]トリブロモフェノールの比放射能 A は以下のようになる。50・m = A・m × (331/94)。A = 50 × (94/331) ≒ 14 となる。

問5

親核種         娘核種

A 57Ni(1.5日) 57Co(272日)

B 68Ge(271日) 68Ga(68分)

C 87Y(79.8時間) 87mSr(2.8時間)

D 140Ba(12.8日) 140La(1.7日)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

親核種の半減期が娘核種の半減期よりも長いときに放射平衡が成立し、親核種の半減期が娘核種の半減期よりも短いときは放射平衡が成立しない。よって A 以外は放射平衡は成立する。

問6

次の核反応のうち、アルカリ金属元素の同位体を生成するのはどれか。

A 10B(n.α)

B 23Na(p,pn)

C 40Ar(α,p)

D 84Kr(d,2n)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

生成する核種を下に示す。また周期表も同時に覚えておかなければならない。

A 10B(n.α)7Li

B 23Na(p,pn)22Na

C 40Ar(α,p)43K

D 84Kr(d,2n)84Rb

問7

23Na を 1.0 × 10^(-6) mol 含む試料を、原子炉で熱中性子フルエンス率 1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1) で照射したとき、生成する 24Na の飽和放射能[Bq]に最も近い値は、次のうちどれか。ただし、23Na の熱中性子捕獲断面積γは 0.53b(バーン)とする。

1 3.2 × 10^5

2 5.3 × 10^6

3 3.2 × 10^7

4 5.3 × 10^8

5 3.2 × 10^9

解答 1

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、ターゲット核の原子数 N、生成核の半減期 T、照射時間 t、とすると次のような関係が成り立つ。A = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。飽和放射能とは、無限時間の照射を行なった場合の放射能である。よって、前の式の [1-(1/2)^(t/T)] の部分は 1 となる。1 mol は 6 × 10^23 個であるので、1.0 × 10^(-6) mol noscript 23Na の 原子数は 6 × 10^23 × 1.0 × 10^(-6) 個 = 6 × 10^17 個である。また、1b(バーン)は、10^(-24) cm2 である。各数値を代入すると、A = 1.0 × 10^12 × 0.53 × 10^(-24) × 6 × 10^17 = 3.2 × 10^5 となる。

問8

ある短寿命核種(半減期T分)を加速器で製造するのに、2T 分間照射して 2T 分間冷却したときの放射能は、T 分間照射して T 分間冷却したときの放射能の何倍か。

1 3/4

2 1

3 4/3

4 3/2

5 5/3

解答 1

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、ターゲット核の原子数 N、生成核の半減期 T、照射時間 t とは次のような関係が成り立つ。A = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。[1-(1/2)^(t/T)] の部分を、飽和係数と呼ぶ。生成する放射能は飽和係数に比例するので、2T 分間の照射で生成する放射能は、[1-(1/2)^(t/T)] = [1-(1/2)^(2T/t)] = 1 – 1/4 = 3/4 となり、2T 分間の冷却は、 2 半減期の経過を意味するのでこの 1/4、すなわち 3/16 となる。一方、T 分間の照射で生成する放射能は、[1-(1/2)^(t/T)] = 1 – (1/2)^(T/T) = 1 – 1/2 = 1/2 となり、T 分間の冷却は 1 半減期の経過を意味するので、この 1/2、すなわち、1/4 となる。よって、(3/16)/(1/4) = 3/4 となる。

 

問9

ある物質 A を 40 分間中性子照射したところ、半減期 40 分の放射性核種 B が 5.0 MBq 生成した。勝者条件を変えずに同じ量の A を 20 分間又は 120 分間中性子照射したときに生成する B の放射能の値[MBq]として正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

20 分間 120 分間

1 1.8 6.1

2 2.5 7.5

3 2.5 8.8

4 2.9 8.8

5 3.8 15

解答 4

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 X は、ターゲット核の数 n、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、生成核の半減期 T、照射時間 t と次のような関係が成り立つ。A = nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。40 分間中性子照射で、半減期 40 分の放射性核種が 5.0 MBq 生成したので、5.0 × 10^6 = A = nfσ[1-(1/2)^(40/40)]。5.0 × 10^6 = (1/2)nfσ。nfσ = 1 × 10^7。よって、20 分間の同じ照射条件で生成する半減期 40 分の放射性核種の 放射能 X(20) は、X(20) = 1 × 10^7 × [1 – (1/2)^(20/40)] = 1 × 10^7 × [1 – (1/√2)] = 2.9 × 10^6 Bq となる。また、120 分間の同じ照射条件で生成する半減期 40 分の放射性核種の放射能 X(120) は、X(120) = 1 × 10^7 × [1 – (1/2)^(120/40)] = 1 × 10^7 × [1 – (1/8)] = 8.8 × 10^6 Bq となる。

問10

[133Ba]BaCl2 の 0.1 mol/L 水溶液がある。これに次の溶液を加えると放射性の沈殿が生成するのはどれか。

A 0.1 mol/L 硫酸

B 0.1 mol/L 炭酸ナトリウム水溶液

C 0.1 mol/L 硫化ナトリウム水溶液

D 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 BaCl2 + H2SO4 → 2HCl + BaSO4 ↓ の化学反応が起き、白色の硫酸バリウムが沈殿する。

B 正 BaCl2 + Na2CO3 → 2NaCl + BaCO3 ↓ の化学反応が起き、白色の炭酸バリウムが沈殿する。

C 誤 バリウムは、酸性でもアルカリ性でも硫化物沈殿を生成しない。

D 誤 バリウムは、、酸性でもアルカリ性でも水酸化物沈殿を生成しない。

問11

放射性ヨウ素に関する次の記述のうち、適切なものの組み合わせはどれか。

A 123I は核医学診断に用いられる。

B 125I の測定に NaI(Tl)シンチレーション検出器が用いられている。

C 128I はラジオイムノアッセイに用いられている。

D 129I の定量に加速器質量分析法(AMS)が用いられている。

E 131I はポジトロン線源に用いられている。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

解答 2

A 正 123I は、半減期 12.3 時間と短いこと、EC 壊変核種であって β-線を放出しないことから、人体への被ばく量が小さい。また、放出する 159 keV のγ線は検出器に対する感度が高い。そのため、脳血流、心筋、甲状腺新地グラフィーなどの核医学診断に用いられている。

B 正 125I は EC 壊変して 125Te になる。その際に、35.5 keV のγ線を 6.7 % の割合で放出する。低エネルギーγ線のみを放出する核種のため、125I による表面汚染は薄窓式 NaI(Tl) サーベイメータで検出する。

C 誤 ラジオイムノアッセイとは、抗体ー抗原反応を利用した抗原の定量法である。抗原の標識には主に、半減期が 60 日の放射性ヨウ素である 125I を用いるのが一般的であり、半減期が 25 分の 128I は用いられない。

D 正 129I は半減期 1600 万年の核種である。加速器質量分析法(AMS)とは、壊変による放射線を計測する手法とは異なり、同重体などを除去した特定の原子のみを直接計数する手法である。なお、AMS の利用により、14C を測定する年代測定法では極微量の試料から高精度の年代決定を行うことが可能になった。

E 誤 131I は陽電子放出核種でないため、ポジトロン線源に用いられることはない。131I はβ-壊変核種であり多くの種類のγ線を放出する。そのため、甲状腺疾患の診断および治療に用いられる。

問12

次の放射性核種のうち、半減期が 3 倍以上異なるものはどれか。

A 11C と 13N

B 99Mo と 99mTc

C 60Co と 137Cs

D 125I と 131I

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 11C:20 分、13N:10 分

B 正 99Mo:66 時間、99mTc:6 時間

C 正 60Co:5.3 年、137Cs:30 年

D 正 125I:60 日、131I:8 日

問13

次のうち、放射性核種のみの組み合わせはどれか。

1 11C、12C、14C

2 13N、14N、15N

3 30P、32P、33P

4 35Cl、36Cl、37Cl

5 40Ca、42Ca、45Ca

解答 3

1 誤 安定同位体の核種は 12C、13C である。

2 誤 安定同位体の核種は 14N、15N である。

3 正 安定同位体の核種は 31P のみである。

4 誤 安定同位体の核種は 35Cl、37Cl である。

5 誤 安定同位体の核種は 40Ca、42Ca、43Ca、44Ca である。

問14

3H、14C、32P、35S、45Ca について半減期の短い順に正しく並んでいるものは、次のうちどれか。

1 35S < 32P < 14C < 3H < 45Ca

2 35S < 32P < 45Ca < 3H < 14C

3 32P < 35S < 14C < 45Ca < 3H

4 45Ca < 32P < 35S < 3H < 14C

5 32P < 35S < 45Ca < 3H < 14C

解答 5

少なくとも下に記載してある放射性同位体特性表は暗記しておくと良い。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問15

それぞれの放射性核種と壊変系列の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。

1 232Th ー トリウム系列

2 224Ra ー ウラン系列

3 208Tl ー トリウム系列

4 234U ー ウラン系列

5 235U ー アクチニウム系列

解答 2 下記に放射性連鎖崩壊を示す。

放射性連鎖崩壊(一次放射性崩壊)

トリウム系列(4n)・・・232Th – 1.4×10^10 y – 208Pb
ネプチニウム系列(4n+1)・・・237Np – 2.1×10^6 y – 209Bi
ウラン系列(4n+2)・・・238U – 4.5×10^9 y – 206Pb
アクチニウム(4n+3)・・・235U – 7.1×10^8 y – 207Pb

原子番号 82 以上の Pb 以上の元素には全て天然の放射性核種が存在し、壊変系列を作る。トリウム系列、ネプチニウム系列、ウラン系列、アクチニウム系列のいずれかに属することになるが、壊変系列の中で質量数が変化する壊変は、アルファ壊変のみである。

問16

次のうち、宇宙線により生成し、地上でも観測される放射性核種のみの組み合わせはどれか。

1 3H、7Be、14C

2 11C、13N、15O

3 19F、23Na、59Co

4 40K、87Rb、137Cs

5 222Rn、226Ra、238U

解答 1

宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する放射性同位体元素を天然誘導放射性核種と呼ぶ。宇宙線が大気上層で大気中の酸素、窒素、アルゴンなどに当たり核反応や破砕反応によって生成する核種としては、3H、7Be、10B、14C、22Na、32S、32P、33P などがある。

問17

次の放射性核種の壊変形式と壊変で放出されるγ線の有無について、正しいものの組み合わせはどれか。

核種 壊変形式 γ線放出の有無

A 13N β+ 無

B 32P β- 有

C 63Ni EC 無

D 137mBa IT 有

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2 放射性同位体特性表を下に示す。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問18

次の操作のうち、放射性気体が発生するのはどれか。

A Ba(14CO3)に塩酸を加える。

B Fe(35S)に塩酸を加える。

C Na2(35SO4)に水酸化カリウム水溶液を加える。

D Cu(36Cl2)にアンモニア水を加える。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

A 正 Ba(14CO3)に塩酸を加える。・・・Ba(14CO2) + 2HCl → BaCl2 + 14CO2↑ + H2O となり、14C を含む CO2 気体が発生する。

B 正 Fe(35S)に塩酸を加える。・・・Fe(35S) + 2HCl → FeCl2 + H2(35S)↑ となり、35S を含む H2(35S) 気体が発生する。

C 誤 Na2(35SO4)に水酸化カリウム水溶液を加える。・・・Na2(35SO4) + 2KOH → 2K2(35SO4) + 2NaOH という反応になり、放射性物質を含む気体は発生しない。

D 誤 Cu(36Cl2)にアンモニア水を加える。・・・Cu(36Cl2) + 2NH3 → Cu(OH)2 + 2NH4(36Cl) という反応になり、放射性物質を含む気体は発生しない。

問19

ビーカーに入った各 0.1 mol/L 水溶液に、よく磨いた金属板を浸して静置したときに、金属板に放射性物質が析出するのはどれか。

A [65Zn]ZnSO4 +Cu板

B [64Cu]CuSO4 +Fe板

C [110mAg]AgNO3 +Cu板

D [210Pb]Pb(CH3COO)2 +Zn板

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

金属が陽イオンになろうとする性質のことをイオン化傾向と呼ぶ。イオン化傾向の小さい元素は、イオンではなく金属の方が安定である。よって、水溶液中の金属元素よりも金属板の元素のイオン化傾向が高いときに、金属板に水溶液中の金属元素が析出する。イオン化傾向は次の通りである。 K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > H > Cu > Hg > Ag > Pt >Au。

問20

次の実験操作のうち、空気中の放射性濃度の上昇を招くおそれのあるものの組み合わせはどれか。

A OH 基が 3H で標識されたエタノールに米粒大のナトリウムを入れた。

B 14C で標識された炭酸カルシウム粒に濃水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。

C 放射性粉末試料を実験用容器に分取した。

D 144Ce(4+) の水溶液に 60Co 密封線源からのγ線を照射した。

E 125I(-)の弱アルカリ性水溶液に塩酸を加えて酸性とした。

1 ABCのみ 2 ACEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 BDEのみ

解答 2

A 正 2(C2H5O(3H)) + 2Na → 2(C2H5ONa) + 3(H2)↑ の化学反応がおき、3(H2)ガスが発生する。

B 誤 炭酸カルシウムは、塩酸などの強酸と反応して二酸化炭素を発生するが、水酸化ナトリウムとは反応しない。

C 正 粉末試料を取扱う際には、粉塵の飛散に注意が必要である。

D 誤 大線量のγ線ならば、Ce(4+) が Ce(3+) に還元されることがある。これを応用したのが、セリウム線量計である。

E 正 I(-) は酸性にすると酸化されて I2 となり、揮発しやすい。

問21

図のトリチウム標識酢酸エチルの希硫酸による加水分解での生成物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射性の酢酸が生成する。

B 放射性のエタノールが生成する。

C 非放射性の酢酸が生成する。

D 非放射性のエタノールが生成する。

E 放射性の水が生成する。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 CとE 5 DとE

解答 3 加水分解では以下のような反応が起きる。

問22

放射性核種とその利用に関する次の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

1 14C ー 石炭の生成年代の測定

2 18F ー 人体の陽電子放射断層撮影(PET)

3 57Co ー 岩石中のコバルトの中性子放射化分析

4 90Sr ー じゃがいもの発芽防止

5 99Tc ー 人体のシングルフォトン断層撮影(SPECT)

解答 2

1 誤 14C を利用した年代分析法で分かるのは、生命活動が終わった年代である。石炭は植物腐敗する前に長期間地熱や地圧を受けることで徐々に変質して生成したものであるため、石炭の生成年代は分からない。

2 正 PET(陽電子放射断層撮影)には、短半減期の陽電子放出核種である 11C、13N、15O、18F が用いられる。

3 誤 コバルトは単核種元素であり、唯一の安定同位体である 59Co が (n,γ)反応を起こして放出される即発γ線、あるいは生成する 60Co が出すγ線を測定することにより中性子放射化分析する。57Co はメスバウア装置の線源として用いられる。

4 誤 90Sr は、β-線のみを放出する核種である。じゃがいもの発芽防止のため照射に用いられるのはγ線であり、日本では 60Co のみ実用化されれいる。

5 誤 シングルフォトン断層撮影(SPECT)に用いられるのは、荷電粒子を放出せずかつ単一光子を放出する核種である。内部転換や EC 壊変でγ線を放出する 99mTc や 123I が用いられる。

問23

次のような 14C/12C の比がすべて等しい炭化水素があるとき、各化合物 1 グラム中の 14C 放射能も、各化合物 1 モル中の 14C 放射能も、ともに最大である化合物はどれか。

1 エタン (C2H6)

2 エチレン (C2H4)

3 アセチレン (C2H2)

4 ベンゼン (C6H6)

5 シクロヘキサン (C6H12)

解答 4

分子量 M の物質 1 モル(= 6.02×10^23 個)の質量が M g であるので、分子量が小さいほど 1 g 中に含まれる物質量(分子の個数)は多くなる。それぞれの 1 分子中の炭素数および、炭素数を分子量で割った値は以下のようになる。

炭素数 炭素数/分子量

1 エタン 2 2/30=1/15

2 エチレン 2 2/28=1/14

3 アセチレン 2 2/26=1/13

4 ベンゼン 6 6/78=1/13

5 シクロヘキサン 6 6/84=1/14

1 g 中に含まれる 14C 放射能が最大になるのは、炭素数/分子量が最も大きいアセチレンとベンゼンである。また、1 モル中に含まれる 14C 放射能が最大になるのは、1 分子中に炭素を最も多く含むベンゼンとシクロヘキサンである。よってともに最大なのはベンゼンである。

問24

次のトリチウム標識有機化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 有機化合物中の特定位置の標識にはウィルツバッハ法が用いられる。

B 化学純度を上げるために精製を繰り返すと比放射能は一定となる。

C 放射化学純度は非放射性の不純物の量とは無関係である。

D 保管時にはできるだけ放射能濃度の高い状態とする。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 ウィルツバッハ法は、トリチウムガスと有機化合物を同じ容器に入れて密閉する方法である。簡便な方法であるが、標識位置が一致しない。

B 正 化学的精製を繰り返すと不純物の濃度は下がり、標識化合物の純度が上がるため、最終的に比放射能は一定になる。

C 正 放射化学純度とは、指定の化学形で存在する着目放射性核種がその物質の全放射能に占める割合である。非放射性物質は放射能を持たないため、放射化学純度は非放射性物質の不純物量と無関係である。

D 誤 保管時には放射能濃度を下げて、放射線による自己分解を低減させる。

問25

中性子放射化分析の特徴として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。

A 多元素同時分析ができる。

B 非破壊分析ができる。

C 中性子捕獲断面積の大きい元素が共存すると、定量誤差の原因となる。

D 照射後の化学分離の際の目的元素の混入は、定量に影響しない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 放出されるγ線をゲルマニウム半導体検出器で測定するため、多元素を同時に分析できる。

B 正 測定するのはγ線のため、非破壊で分析可能である。

C 正 中性子捕獲断面積が大きい不純物があると、目的元素に照射される中性子フルエンスが相対的に小さくなるため、放射能が少なくなり定量誤差が大きくなる。

D 正 中性子の照射により核反応を起こして別の核種にした後に測定するため、照射後に非放射性の目的元素が混入しても定量には影響しない。

問26

荷電粒子励起X線(PIXE)分析法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 生体試料中の重金属元素分析に適している。

B 多元素同時分析ができる。

C 微小領域の分析が可能である。

D 分析試料が放射化される。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

荷電粒子励起X線(PIXE)分析法とは、試料にイオンビームを照射した際に発生する特性X線を検出して、そのエネルギーと強度から元素を同定・定量する方法である。

A 正 生体中の主要構成元素である炭素などの軽元素は検出できないため、含まれる重金属元素の分析に適している。

B 正 特性X線は元素ごとに特有のエネルギーを持つため、ナトリウムからウランまでの多元素を同時に分析できる。

C 正 イオンビームの大きさを小さくすれば、細胞中の微量元素分析も可能である。

D 誤 試料に照射するのは 3 MeV 程度のイオンビームのため、分析試料の放射化はおきない。

問27

210Po は 5.304 MeV のα線を放出し、安定な 206Pb になる。α線による 206Pb の反跳エネルギー[keV]に最も近いものはどれか。

1 83

2 96

3 103

4 110

5 122

解答 3

生成核の質量を M、α粒子の質量を m、生成する粒子の運動エネルギーをそれぞれ E(Po)、E(α) とすると、E(Po) = (m/M)・E(α) で求めることができる。よって E(Po) = (4/206) × 5.304[MeV] = 0.1034[MeV] となる。

問28

ホットアトム化学に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子照射したヨウ化エチル C2H5I を水と振り混ぜると放射性の 128I が水に溶け出す。

B 有機化合物を炭酸リチウムと混合して中性子照射すると、14C の標識化合物が得られる。

C 中性子照射したクロム酸カリウム K2CrO4 を水に溶かすと陽イオンの 51Cr も観測される。

D 37Cl(n,γ)35Cl で 38Cl が得る反跳エネルギーは 1 eV 程度である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 127I(n,γ)128I 反応のγ線の反跳エネルギーによって、C2H5-I の結合が切られたため水相に高比放射能の 128I が移行する。

B 誤 有機化合物に炭酸リチウムまたは 3He を混合して中性子照射することにより、6Li(n,α)3H または 3He(n,p)3H で生成するホットアトムである 3H によって有機化合物を標識する。これを反跳合成法と呼び、トリチウムの標識化合物が生成する。

C 正 反跳エネルギーにより CrO4(-) 中の結合が切られるため、51Cr(3+) イオンが生成する。

D 誤 (n,γ)反応の反跳エネルギー E(γ)は、反跳原子の質量を M、γ線のエネルギーを E とおくと、E(γ) = 537・(E^2/M) [eV] で表される。この式から、37Cl(n,γ)38Cl 反応によって生成する 38Cl の反跳エネルギーを求めると 527 eV となる。

問29

次の放射性核種の用途と放出核種の中で正しい組み合わせはどれか。

1 55Fe ー 硫黄計 ー β線

2 63Ni ー ECD ガスクロマトグラフ ー X線

3 90Sr ー 透過型厚さ計 ー γ線

4 147Pm ー 散乱型厚さ計 ー α線

5 252Cr ー 水分計 ー 中性子線

解答 5

核種の半減期、エネルギー、用途などをまとめた表を下に示す。少なくともこれを覚えておいた方が良い。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問30

線量計に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A フリッケ線量計は、Fe(2+) の酸化反応を利用している。

B フリッケ線量計の G 値は、60Co のγ線に対して約 15.5 である。

C セリウム線量計は、感度は低いが大線量の測定に適している。

D アラニン線量計はラジカル生成を利用する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 フリッケ線量計(鉄線量計)は、放射線の照射により Fe(2+) が Fe(3+) に酸化されることを利用した線量計である。大線量の測定に用いられ、個人線量計としては適さない。

B 正 フリッケ線量計では、通常用いられる 0.4 M 硫酸濃度で、放射線のエネルギーが 100 keV ~ 2 MeV の範囲で、G 値は 15.5 と一定の値をとる。

C 正 セリウム線量計は、放射線の照射により Ce(4+) が Ce(3+) に還元されることを利用した線量計である。低線量の測定は不可能であり、10 ~ 50 kGy の大線量の測定に用いられる。

D 正 アラニン線量計は、放射線の照射によりアラニン分子中のアミノ基が切断され、ラジカルが生成することを利用した線量計である。放射線照射により、吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)によって測定する。線量測定範囲が 1 ~ 10^5 Gy と広く、高い精度と安定性を持つ。組成が人体組織に近いため、放射線治療における吸収線量測定に用いられる。

 

放射性気体の発生について

放射性気体が発生するような化合物はフードまたはグローブボックス内に取り扱う。空気中の放射性物質の濃度を測定を測定するには、いったん捕集して行う方法がとらえる場合が多い。捕集するには放射性物質の物理的、化学的性状によって様々な手法が用いられる。 例えば、気体の HTO(トリチウム水蒸気) を捕集するにはシリカゲルを用いた固体捕集法や、ドライアイスを用いた冷却凝縮法などがとられる。HT(トリチウムガス)の場合にはパラジウム触媒 を用いて HTO(トリチウム水蒸気)に変えたのちに集める。(水素ガス状トリチウムの場合には、前段でもレギュラーシーブを通して HTO を除いた乾燥空気に無トリチウム水素ガスを担体として加えたのち、パラジウム酸化触媒を通して 水に変換して捕集する。)また、放射性ヨウ素が I2 の状態で存在する場合には活性炭での捕集が行われるが、CH3I の場合にはトリエチレンジアミン担持の 活性炭が利用されている。(気体状のヨウ素の捕集には、活性炭を用いる。トリエチレンジアミン(TEDA)を添着させた活性炭を用いることにより、有機状のヨウ素を高収率で捕集できる。) 放射性の二酸化炭素を捕集するにはアルカリ性溶液に通す方法がとられる。(例えば水酸化ナトリウム溶液に通すと炭酸水素ナトリウムの形で溶液中に捕集できる。NaOH + CO2 → NaHCO3) 一般的に非密封放射性同位元素の排気設備は、実験室内を換気し空気中濃度限度以下にするとともに、排気中の放射性同位元素の濃度を排気中濃度限度以下にするためのものである。排気設備に備えられるフィルタとして、プレフィルタと高性能エアフィルタがある。 プレフィルタにはガラス繊維フィルタ等が用いられている。高性能エアフィルタは HEPA フィルタとも呼ばれ、定格風量で 0.3 μm の微粒子を 99.97 % 以上の捕集効率で捕集する性能を有するものとされている。 (HEPA フィルターの性能は、JIS 規格により「定格流量で粒径が 0.3 μm の粒子に対して、99.97 % 以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が 24.5 Pa 以下の性能を持つエアフィルター」として定められている。)

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です