問1
ある核種の放射能が、5 時間後に 12000 dpm、6 時間後に 3000 dpm であった。はじめにあった放射能[Bq]として、最も近い値はいくらか。
1 1 × 10^5
2 2 × 10^5
3 1 × 10^7
4 2 × 10^8
5 7 × 10^8
解答 2
ある放射性同位元素の経過時間毎の放射能をそれぞれ A(0)、A(5h)、A(6h)、半減期を T とすると、A(5h) = A(0)・(1/2)^(5/T) = 12000・・・①、
A(6h) = A(5h)・(1/2)^(1/T) = 3000・・・② とおける。
①、②より 12000 × (1/2)^(1/T) = 3000
(1/2)^(1/T) = 1/4 = (1/2)^2 T = 0.5 時間
①に T = 0.5 時間 を 代入すると、もとの放射能は、
A(0) = 12000/(1/2)^(5/0.5) = 12000/(1/2)^10 [dpm] = [12000/(1/1024)]/60 [dps] = 2.0 × 10^5 [Bq]
問2
放射能が等しい 54Mn(半減期 312 日)と 60Co(半減期 5.27 年)があるとき、5 年後の放射能の比(54Mn/60Co)に最も近い値は、次のうちどれか。
1 0.001
2 0.005
3 0.03
4 0.08
5 0.2
解答 3
A = A(0)・(1/2)^(t/T) に代入し、計算をすれば解答にたどり着く。
問3
1 g のトリチウムの放射壊変による発熱量[W]として最も近い値はいくらか。ただし、トリチウムの半減期は 3.9 × 10^8 秒、β線の平均エネルギーは 5.7 keV、1 eV は 1.6 × 10^(-19) J とする。
1 0.0003
2 0.003
3 0.03
4 0.3
5 3
解答 4
1 g のトリチウムなので原子数 N は、N = 1/3 × 6.0 × 10^23 となる。壊変の際の発熱量 f は、f = λ・N・E(β)’ = [0.693・N・E(β)’]/T = [0.693 × (1/3) × 6.0 × 10^23 × 5.7 × 10^3]/(3.9 × 10^8) = 2.0 × 10^18[eV/s] よって、2.0 × 10^18 × 1.6 × 10^(-19) = 3.2 × 10^(-1)[J/s] ≒ 0.3 [W]
問4
半減期 14 日の放射性核種の製品が、検定時に不純物として半減期 28 日の核種を 4% 含むとき(核種純度 96 %)、この製品の検定時から 56 日後の核種純度[%]として最も近い値は次のうちどれか。
1 82
2 86
3 90
4 94
5 98
解答 2
全放射能を A とすると、着目する核種の放射能は 0.96 A、不純物の放射能は 0.04 A となる。それぞれの半減期は 14 日と 28 日であるので、56 日後に着目する核種の放射能は、0.96A × (1/2)^(56/28) = 0.06A となる。 また、不純物の放射能は、0.04A × (1/2)^(56/28) = 0.01A となる。よって、56 日後の全放射能は、0.06A + 0.01A = 0.07A。求める核種純度は、(0.06A/0.07A) × 100 = 85.7% ≒ 86%
問5
1.0 MBq の 59Fe(半減期 3.8 × 10^6 秒)を含む水溶液 10 ml がある。この水溶液中の非放射性鉄のモル濃度が 0.1 mol/L のとき、59Fe の全鉄に対する原子数の比(59Fe/Fe)として最も近い値は、次のうちどれか。
1 1 × 10^(-8)
2 4 × 10^(-8)
3 1 × 10^(-7)
4 4 × 10^(-7)
5 1 × 10^(-6)
解答 1
59Fe の放射能を A(59Fe)、原子数を N(59Fe) とすると、A(59Fe) = [ln2/T(59Fe)]・N(59Fe)、N(59Fe) = [A(59Fe) × T(59Fe)]/ln2。59Feの放射能は、1.0 MBq、半減期は 3.8 × 10^6 秒であるから、 N(59Fe) = (1.0 × 10^6 × 3.8 × 10^6)/0.693 ≒ 5.5 × 10^12。一方、非放射性鉄の原子数を N(Fe) とする。N(Fe) = 0.1 × 10 × 10^(-3) × 6.0 × 10^23 = 6.0 × 10^20。よって、全鉄に対する原子数の比は、 N(59Fe)/N(Fe) = (5.5 × 10^12)/(6.0 × 10^20) = 0.91 × 10^(-8) ≒ 1 × 10^(-8)
問6
1 TBq の 7Be (半減期 4.6 × 10^6秒)の質量[g]に最も近い値は、次のうちどれか。
1 6.6 × 10^(-5)
2 7.7 × 10^(-5)
3 1.1 × 10^(-4)
4 3.7 × 10^(-3)
5 6.0 × 10^(-1)
解答 2
A = N・λ = (0.693/T) × (W/M) × 6.0 × 10^23 から求めることができる。W = 7.74 × 10^(-5) [g]
問7
14C で標識されたエタノールの 70% が酸化されて酢酸となった。エタノールの比放射能が 10 MBq/g であったとき、生成した酢酸の比放射能[MBq/g]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、エタノールと酢酸の分子量はそれぞれ、46 及び 60 とする。
1 2.5
2 3.8
3 5.4
4 7.7
5 9.5
解答 4
C2H5OH + O2 → CH3COOH + H2O 初めのエタノールの重さを w g とすると、酢酸は(0.7w/46) × 60 g 生成する。反応前のエタノールの放射能は 10w MBq で、70% が酢酸となったので、(0.7×10w)/(0.7w/46) × 60 = 7.66 [MBq/g]
問8
238U を 234 g 含む試料中の 222Rn の放射能[Bq]として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、この試料中のウラン系列核種は永続平衡にあり、238U 1 g の放射能は 1.2 × 10^4 Bq である。
1 1.2 × 10^4
2 2.8 × 10^5
3 1.2 × 10^6
4 2.8 × 10^6
5 1.2 × 10^7
解答 4
永続平衡(親核種1の半減期が娘核種2に対して非常に長い:λ1<<λ2)が成立する場合は、親核種1と娘核種2は次のような関係となる。N1・λ1 = N2・λ2。したがって、その放射能比は1となり、それぞれの放射能 A について、 A(238U) = A(222Rn) が成立する。ここでは、238U の比放射能は 1.2 × 10^4 Bq/g であるので、求める 222Rn の比放射能は次のようになる。A(222Rn) = A(238U) = 1.2 × 10^4 Bq/g × 234 = 2.8 × 10^6 Bq
問9
次の逐次壊変において放射平衡となりうるものの組み合わせはどれか。
A 42Ar(32.9年) → 42Kr(12.4時間)
B 51Mn(46.2分) → 51Cr(27.7日)
C 132Te(3.20日) → 132I(2.30時間)
D 140Ba(12.8日) → 140La(1.68日)
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 3
放射平衡が成立するのは、親核種の半減期が娘核種の半減期より長いときである。この逆は放射平衡は成立しない。
A 放射平衡は成立する 42Ar(32.9年) → 42Kr(12.4時間)・・・42Arー42K ジェネレータとして使用。
B 放射平衡は成立しない 51Mn(46.2分) → 51Cr(27.7日)
C 放射平衡は成立する 132Te(3.20日) → 132I(2.30時間)・・・ミルキングできる。
D 放射平衡は成立する 140Ba(12.8日) → 140La(1.68日)
問10
次のうち、A の核種を定量するとき B の測定器が適切なのはどれか。
A B
1 14C 液体シンチレーション計数装置
2 33P NaI(Tl)シンチレーション検出器
3 55Fe BGOシンチレーション検出器
4 60Co ZnS(Ag)シンチレーション検出器
5 90Y BF3比例計数管
解答 1
1 正 14C 液体シンチレーション計数装置・・・14Cは β- 線放出体でそのエネルギーは非常に低いので、正確に定量するには液体シンチレーションカウンタが用いられる。
2 誤 33P NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・33P は最大エネルギー 249 keV のβ線のみを放出する核種である。NaI(Tl)シンチレーション検出器は、γ線放出核種の測定に用いる。
3 誤 55Fe BGOシンチレーション検出器・・・55Feは、EC壊変での 5.9 keV の M(n)-K(α) 特性X線を放出する。BGO はγ線測定用シンチレータの一つであり、実効的な原子番号が高く、比重が大きいので、小型でも高い検出効率を持つ。
4 誤 60Co ZnS(Ag)シンチレーション検出器・・・60Co は低いエネルギーのβ-線及び 1.17 MeV と1.33 MeV の2本のγ線を放出する核種である。ZnS(Ag)は薄い膜に使用が限定され、飛程の長いβ線やγ線には不向きである。α線サーベイメータに利用される。
5 誤 90Y BF3比例計数管・・・90Y はβ-放出体であり、そのβ線のエネルギーは非常に高く最大エネルギーは 2.28 MeV である。BF3 ガスカウンターは熱中性子に対して大きな断面積を持つ核反応を利用する検出器であり、中性子の測定に用いられる。
問11
熱中性子による 235U の核分裂で生成する収率が大きい核種の組み合わせはどれか。
A 60Co
B 90Sr
C 99Mo
D 111Ag
E 133Xe
1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACDのみ 4 BCEのみ 5 CDEのみ
解答 4
235U の熱中性子による核分裂では亜鉛の RI の 72Zn(原子番号 30)からテルビウムのRIの 161Tb(原子番号 63)まで、原子番号でいえば 30 から 65 までのいろいろな元素の RI が生成する。これらを核分裂生成物と呼び、質量数95、 138 付近に核分裂収率の極大(核分裂収率は約 6 %)があり、極小は質量数 118(核分裂収率は 0.009%)くらいである。
その他の核分裂収率 [235U(n,f)] 90Sr:5.78 %、99Mo:6.11%、111Ag:0.0174、135Xe:6.70%
問12
アクチノイド元素とランタノイド元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A すべてのアクチノイド元素は放射性である。
B すべてのランタノイド元素は安定同位体をもつ。
C すべてのアクチノイド元素は3価の状態が最も安定である。
D すべてのランタノイド元素は遷移元素である。
1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 2
A 正 原子番号 82 の Pb 以上の元素は、全て天然の放射性核種をもち、特に原子番号 83 の Bi 以上の元素は、安定核種が無く全て放射性である
B 誤 Pm は、安定同位体を持たない。
C 誤 Am より重いアクチノイド元素は、3価をとる場合がほとんどであるが、Am より軽い元素は3価値と異なる原子価をとる。
D 正 遷移元素には、周期表の 3 ~ 11 の各族の元素が該当する。ランタノイド元素は 3 族である。
問13
次の核種の組み合わせのうち、β+ 壊変核種を含むものの組み合わせはどれか。
A 11C 12C 13C
B 13N 14N 15N
C 16O 17O 18O
D 18F 19F 20F
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
下記に示す。その他の壊変や安定核種に関しては別途まとめたものを作っていますので下記のサイトまでお問い合わせください。
A 正 11C:β+壊変、EC 12C:安定核種 13C:安定核種
B 正 13N:β+壊変、EC 14N::安定核種 15N:安定核種
C 誤 16O:安定核種 17O:安定核種 18O:安定核種
D 正 18F:β+壊変 19F:安定核種 20F:β-壊変
問14
リンの同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A 31P は リンで唯一の安定同位体である。
B 32P は β- 壊変して 32S になる。
C 32P は 33P より半減期が長い。
D 32P は 33P よりβ線の最大エネルギーが大きい。
1 ABDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 1
リンの安定核種は 31P のみである。そのほかの核種については別紙の放射化学にまとめて記載していますので下記のサイトまでお問い合わせください。
A 正:31P は唯一の安定同位体である。
B 正:32P(原子番号15) は β- 壊変して 32S(安定)(原子番号16)となる。
C 誤:32P の半減期は 14.26 日、33P の半減期は 25.34日である。
D 正:β線の最大エネルギー:32P(1.71 MeV) > 33P(0.249MeV)。
問15
ヨウ素の同位体に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 123I はシングルフォトン断層撮影法(SPECT)に用いられる。
2 125I はラジオイムノアッセイに用いられる。
3 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。
4 129I は陽電子放射断層撮影(PET)に用いられる。
5 131I は甲状腺疾患の内服療法に用いられる。
解答 4
1 正 インビボ検査であるSPECT では、123I や 99mTc 等のγ線放出核種が用いられる。
2 正 125I はラジオイムノアッセイに用いられる。
3 正 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。
4 誤 PET 製剤に使用される主な β+ 壊変核種は 11C、13N、15O、18F の4種類である。129I はβ- 壊変核種である。
5 正 131I は甲状腺疾患の内服療法に用いられる。
問16
安定同位体が存在しない元素の組み合わせは、次のうちどれか。
A Tc
B Cs
C La
D Pm
E U
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 3
安定同位体については別紙の放射化学にまとめて記載していますので下記のサイトまでお問い合わせください。
原子番号 82 の Pb 以上の元素はすべて天然の放射性核種を持ち、特に原子番号 83 の Bi 以上の元素は安定核種がなくすべて放射性である。
問17
放射性核種が元素の周期表で同族であるものの組み合わせは、次のうちどれか。
A 15O と 35S
B 32P と 76As
C 86Rb と 133Ba
D 24Na と 67Ga
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
これは周期表を覚えておかないと解けない。
問18
次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A ラドン Rn はラジウム Ra と同族元素である。
B テクネチウム Tc は モリブデン Mo と同族元素である。
C ネプツニウム Np はアクチノイド元素である。
D アメリシウム Am は超ウラン元素である。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 5
これも周期表を覚えておかなければ解けない。
A 誤 ラドン Rn は 18族でラジウム Ra は 2族である。
B 誤 テクネチウム Tc は 7族で、モリブデン Mo は 6族である。
C 正 原子番号89 ~ 103 の 15元素をアクチノイド元素と呼ぶ。アクチノイド元素はすべて放射性である。Np の原子番号は 93 である。
D 正 超ウラン元素とは、ウランより大きい原子番号を持つ元素の総称である。Am の原子番号は 95 である。
問19
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 238U と 234U は同じ壊変系列の核種である。
B 222Rn は 220Rn に比べて半減期が長い。
C 210Po のα壊変により 206Pb が生成する。
D 238U と 235U の同位体存在度は地球誕生以来一定である
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 1
A 正 ウラン系列は 238U から始まり 234U を経て 206Pb(安定)で終わる系列である。
B 正 222Rn の半減期は 3.8235 日、 220Rn の半減期は 55.6 秒。
C 正 210Po のα壊変により 206Pb が生成する。
D 誤 地球ができた時には非常に多くの放射性核種が存在していたが、46 億年(4.6 × 10^9 年)を経た現在残っているのは長寿命の放射性核種である。地球上の元素の大部分は安定で壊変しないので、その存在量は変わらない。しかし放射性核種は、壊変するので変化し、存在量に比例した一定の 割合の放射性壊変によって、はじめと違った別の核種に変わる。ここで 238U の半減期は 4.468 × 10^9 年、235U の半減期は 7.038 × 10^8 年である。
問20
64Cu の壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A γ線スペクトルに 511keV のピークがみられる。
B 64Zn を生成する部分半減期は、64Ni を生成する部分半減期より長い。
C EC 壊変に伴い、Cu の特性X線が放出される。
D β-壊変はγ線放出を伴わない。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
A 正 64Cu は β+ 壊変して 64Ni になる。その際に放出される陽電子は、通常の電子の反物質であるため、運動エネルギーを失って停止すると、物質中の電子と結合して消滅する。その際に消滅放射線と呼ばれる 511 keV のγ線 2 本を 180°反対方向に放出する。これがγ線スペクトルに現れる。
B 正 放射性核種の中には、2 種類以上の壊変を行うものもある。64Cu の壊変もその一つであり、このように枝分かれする壊変を分岐壊変と呼び、その割合を分岐比という。64Cuの壊変定数をλとすると、λ(64Cu) = λ(EC) + λ(β+) + λ(EC) + λ(β-) となる。
λ(64Ni) = λ(EC) + λ(β-) + λ(EC) = 0.005λ + 0.174λ + 0.431λ
λ(64Zn) = λ(β-) 0.39λ
よってそれぞれの部分半減期 T(64Ni) = 0.693/0.61λ T(64Zn) = 0.693/0/39λ となり、64Zn を生成する部分半減期は 64Ni より長くなる。
C 誤 β壊変では原子核内の陽子が中性子に壊変するとき。陽子が軌道電子を捕獲して中性子に壊変する場合がある。これを電子捕獲あるいは EC 壊変という。この時に特性X線あるいはオージエ電子が発生する。ここでの特性X線は Ni によるものである。
D 正 原子核の励起エネルギー、壊変モード、γ線の強度比などを表した図を壊変図という。β+ 壊変や α壊変は左へ進む斜めの矢印、β- 壊変は右へ進む斜めの矢印、γ線は垂直の矢印で示す。励起準位の半減期が励起状態および核異性体転移に示され、核異性体転移は IT で示す。
問21
次のうち、NaI(Tl)シンチレーション検出器で測定することができる放射性核種の組み合わせはどれか。
A 24Na
B 35S
C 60Co
D 63Ni
E 131I
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ
解答 3
NaI(Tl)シンチレータはタリウムを少量添加したヨウ化カリウムの結晶をガラス窓がついた金属のケースに封入したものであり、γ線測定用として用いられる。
A 正 24Na・・・β- 壊変のエネルギーは 1.393 MeV で、γ線エネルギーは 1.369 MeV、2.754 MeV 他を放出する。
B 誤 35S・・・β- 壊変のエネルギーは低く 0.167 MeV、γ線は放出しない。
C 正 60Co・・・低いエネルギー(0.31 NeV)の β- 線および 1.17 MeV、1.33 MeV の 2 本のγ線を放出する。
D 誤 63Ni・・・β- 壊変エネルギーは、0.0669 MeV である。
E 正 131I・・・β- 壊変エネルギーは 0.812 MeV(0.6%)、0.608(90.4%)、0.33(6.9%)、0.250(1.6%)でγ線放射(主に0.364 MeV)を伴う。
問22
次の実験操作のうち、放射性の気体が発生するものの組み合わせはどれか。
A 64CuCl2 水溶液に亜鉛粉末を加える。
B Ba(14CO3) に硝酸を加える。
C Fe(35S) に塩酸を加える。
D トリチウム水を電気分解する。
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 BDのみ 5 BCDのみ
解答 5
下に反応式を示す。
A 誤 亜鉛は銅よりイオン化傾向が高いため気体は発生しない。
B 正 Ba[14C]O3 + 2HNO3 → Ba(NO3)2 + [14C]O2 ↑ + H2O
C 正 Fe[35S] + H2SO4 → FeSO4 + H2[35S] ↑
D 正 2[3H]20 → 2[3H]2 ↑ + O2 ↑
問23
[35S]O4(2-)、[45Ca]2+、[55Fe]3+、[82Br]- のうち1種類とその同位体担体を含む水溶液がある。各水溶液に適切な操作を加えて放射性核種を沈殿させたい。放射性核種とその化学形Ⅰ〜Ⅳと、その化学操作A〜Dの組み合わせで正しいのはどれか。
<核種・化学形> <化学操作>
Ⅰ [35S]O4(2-) A 硝酸銀水溶液を加える。
Ⅱ [45Ca]2+ B 塩化カルシウム水溶液を加える。
Ⅲ [55Fe]3+ C シュウ酸アンモニウム水溶液を加える。
Ⅳ [82Br]- D アンモニア水溶液を加えて弱アルカリ性にする。
1 ⅠーA、ⅡーB、ⅢーC、ⅣーD
2 ⅠーB、ⅡーC、ⅢーD、ⅣーA
3 ⅠーD、ⅡーB、ⅢーA、ⅣーC
4 ⅠーB、ⅡーD、ⅢーC、ⅣーA
5 ⅠーC、ⅡーA、ⅢーD、ⅣーB
解答 2
Ⅰ [35S]O4(2-)
B 塩化カルシウム水溶液を加える。・・・CaCl2 + [35S]O4(2-) → Ca[35S]O4 ↓ + 2Cl-
Ⅱ [45Ca]2+
C シュウ酸アンモニウム水溶液を加える。・・・[45Ca]2+ + (NH4)2(C2)O4 → [45Ca](C2)O4 ↓ + 2(NH4)+
Ⅲ [55Fe]3+
D アンモニア水溶液を加えて弱アルカリ性にする。・・・(Fe)3+ にアンモニア水を加えてアルカリ性にすると、水酸化鉄(Ⅲ)が沈殿する。
Ⅳ [82Br]-
A 硝酸銀水溶液を加える。・・・AgNO3 + [82Br]- → Ag[82Br] ↓ + (NO3)-
問24
水溶液中の化合物 X を、ある有機溶媒で抽出すると、X の分配比(有機相中濃度/水相中濃度)は 80 である。50 kBq の放射性同位体で標識した X の水溶液から、水相の 1/2 の体積の有機溶媒で X を抽出したとき、水相に残る X の放射能[kBq]に最も近い値は、次のうちどれか。
1 0.61
2 0.94
3 1.2
4 1.8
5 2.4
解答 3
有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値を分配比 D という。
D = C(0)/C(W)
[C(0):有機相中の放射性核種全濃度、C(W):水相中の放射性核種全濃度]。
さらに、V(W)とV(0)をそれぞれ水相と有機相の容量とすると、有機相への抽出率 E は、
E = D/[D + (V(W)/V(0))]。D = 80 より、E = 80/[80 + (V(W)/V(0))]。
ここで有機溶液は水相の 1/2 の体積であるから、V(0) = 1/2・V(W) より、
E = 80/[80 + (V(W)/1/2V(W))] = 80/[80+2] = 0.9756。
水相に残る X の放射能は、50 × (1 – 0.976) = 1.2 [kBq]
問25
水溶液中の放射性同位体(RI)の分離法についての次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 キレート抽出では RI は正の電荷を帯びた分子イオンとして抽出される。
2 イオン会合体抽出では RI 原子同士が凝集して抽出される。
3 イオン交換クロマトグラフィーでは RI は中性分子として捕集される
4 沈殿法では RI は溶解度積が大きい塩を形成して沈殿する。
5 蒸留法では RI は蒸気圧が高い中性分子として蒸留される。
解答 5
1 誤 オキシン、ジチゾン、クペロンのようなキレート剤は金属とキレート化合物をつくる。これらの化合物の多くは有機溶媒に溶け、水に溶けないので分離できるため、キレート抽出される。
2 誤 イオン会合抽出系には3つの型がある。金属イオンが大きな有機の基をもつイオンとも結合するか、あるいは大きいイオンと会合するような過程を経るもの。ハロゲン、チオシアン酸、硝酸のイオンなどと、アルコール、エーテル、ケトン及びエステルのような酸素を含んでいる有機化合物とが、 金属イオンに配位している水分子を置換して抽出できる化学種を生ずる過程を経るもの。金属イオンが高分子の塩になって有機溶媒に溶けているもの。
3 誤 イオン交換樹脂を固定相に用いるクロマトグラフィー(混合成分を固定相に接して流れる移動相にのせることにより分離する方法)をイオン交換クロマトグラフィーと呼ぶ。
4 誤 溶解度積:難溶性の塩 MA は固体のまま水中に溶けるだけ溶かして飽和溶液をつくると余分の MA は固体のまま残る。このとき溶解しない MA と溶解した MA との間には平衡が成り立ち、溶解した M+ と A- とを生じる。この時のそれぞれの濃度の積を溶解度積といい、一定温度で一定である。 沈殿分離では、生成する塩の溶解度積が小さい反応を選ぶ。
5 正 揮発性の RI は蒸留により不揮発性物質から分離できる。蒸留法は揮発性化合物をつくる RI に対し、有力な無担体分離の手段となる。
問26
混合物資料に含まれるある成分 X を、同位体希釈法(直接法)で定量した。試料に放射性同位体で標識した X(比放射能は 500 dpm/mg)を 10 mg 加えて完全に混合したのち、一部を純粋に化学分離したところ、その比放射能が 100 dpm/mg となった。試料中に含まれた成分 X の量[mg] として 正しい値は次のうちどれか。
1 10
2 40
3 50
4 100
5 150
解答 2
この問いは直接希釈法なので、同位体希釈分析法の基本形で RI によって定量分析をする手法である。定量する資料の重量 X、添加する同じ化学形の RI の重量 a、比放射能 S0 とすると次式の関係が成り立つ。S(a+X) = S0a これにより 500 × 10 = 100(X + 10) 100X = 4000 a = 40 [mg] となる。
問27
次の放射性同位体とその性質を利用した分析・計測装置の関係のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 60Co ー メスバウアー分光装置
B 63Ni ー ECDガスクロマトグラフ
C 241Am ー 蛍光X線分析装置
D 252Cf ー 中性子水分計
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
A 正 メスバウアー分光装置としては 59Fe、57Co、125Te、119mSn 等の低エネルギー線源が用いられる。
B 正 まれに 3H が線源に使用される。
C 正 55Fe、109Cd、241Am が線源として用いられる。
D 正 241Am-Be も線源として使用されることがある。
問28
放射線化学に関連する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 気体の W 値はその気体のイオン化エネルギーに等しい。
2 5 MeV の陽子の水中での LET は同じエネルギーのα粒子のそれに比べて大きい。
3 G 値は LET には依存しない。
4 化学線量計では G 値の線量依存性を利用する。
5 フリッケ線量計では酸素を水溶液中に飽和させることでより高線量の測定が可能となる。
解答 5
1 誤 1つの電子ーイオン対を生成するのに要する平均エネルギーを W 値という。気体の種類によって W 値は異なるが、電子、2次電子に対して大部分の気体では 25 eV から 40 eV 程度で、He では 41 eV、Ar では 26 eV、空域は 34 eV である。
2 誤 線阻止能が大きいほど LET が大きいと考えて良い。そこで LET を同じ粒子について比較すればエネルギーが小さいほど LET は 大、同じエネルギーの粒子については質量の大きい粒子ほど LET は大である。LET の大きさは、5 MeV の α粒子>5 MeV の陽子核となる。
3 誤 LET の大きい放射線では、スプール内に生じた活性種は再結合して消滅し、LET の小さいものより G 値 は低い。LET の大きいときには、小さいものよりラジカル・ラジカル反応による生成物の G 値は大きいが、重要なラジカル・中性分子の反応の G 値は減少する。また水和電子が関与する 反応の G 値も LET の大きいときは小さい。
4 誤 化学線量計は、放射線照射によって化学変化を起こしたときの原子数が放射線量に比例することを利用して線量を測定する線量計である。放射線照射によって起こる物質の化学変化の量を示すために用いる数値で、物質が放射線のエネルギーを 100 eV 吸収したときに変化を受ける分子または 原子の数を G 値という。
5 正 フリッケ線量計は硫酸酸性の硫化鉄(Ⅲ)水溶液に空気または酸素と飽和して用いる。空気飽和より酸素飽和の方が高線量の測定が可能。
問29
β- 壊変に続いて γ線を放出する核種の正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A 32P
B 60Co
C 90Sr
D 131I
E 192Ir
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ
解答 4
A 誤 32P・・・β- 壊変し、32S(原子番号16)(安定) となる。γ線は放出しない。
B 正 60Co・・・低いエネルギー(0.31 MeV)の β- 線及び 1.17 MeV、1.33 MeV の 2本の γ線を放射して 60Ni(原子番号)(安定) となる。
C 誤 90Sr・・・β- 壊変して半減期 64.1 時間の β- 放出体の 90Y(原子番号39) となる。
D 正 131I・・・β- 壊変し、133Xe(原子番号54)(安定)となる。そのエネルギーは 0.812 MeV(0.6%)、0.608(90.4%)、0.33(6.9%)、0.250(1.6%)でγ線放射(主に 0.364 MeV)を伴う。
E 正 192Ir・・・分岐壊変。β- 壊変(95%)、γ線放射により 192Pt(原子番号78)になり、電子捕獲(5%)、γ線放射によって 192Os(原子番号76)(安定)となる。放射されるγ線は複雑であるが、0.3 MeV 付近が多い。
問30
放射性核種を生成する次の核反応で、無担体の核種が得られるのはどれか。
1 27Al(d,p)
2 31P(p,pn)
3 34S(n,γ)
4 48Ti(p,n)
5 65Cu(α,2p3n)
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 4
RI がその安定同位体を含まないで存在している状態のことを無担体であるという。(n,γ)、(d,p)、(n,2n)、(γ,n)反応などによって生ずる RI は常に非放射性のターゲットによって薄められる。したがって、無担体の RI をつくることができない。 例えば、(d,n)、(d,2n)、(d,α)、(n,p)、(n,f)などのような核反応は、ターゲットと違った原子番号の RI が製造でき、ターゲットから化学的に目的の RI を分離できるので、無担体の RI が製造できる。
1 誤 27Al(d,p)28Al
2 誤 31P(p,pn)30P
3 誤 34S(n,γ)35S
4 正 48Ti(p,n)48V
5 誤 65Cu(α,2p3n)64Cu
熱中性子による核分裂についての記述
Ⅰ
235U は、熱中性子により核分裂すると、2 ~ 3 個の中性子と、二つの質量の異なる核分裂片を生成(非対称核分裂)するとともに、約 200 MeV のエネルギーを発生する。したがって、1 g の 235U がすべて核分裂すると、約 8×10^10 J のエネルギーを発生する。二つの核分裂片は、質量数が90 ~ 100 及び 133 ~ 144 で大きな生成収率を示す。これらの核分裂生成核種はいずれも中性子過剰であり、ほとんどが β- 壊変する。
Ⅱ
原子力発電所の事故による環境の放射能汚染において、主要なγ線放出核種として 137Cs(半減期:30年;1cm線量当量率定数:0.093μSv・m^2・MBq^(-1)・h^(-1))と 134Cs(半減期:2年;1cm線量当量率定数:0.25μSv・m^2・MBq^(-1)・h^(-1))がある。137Cs は 235U の熱中性子核分裂で高い収率で生成する一方、134Cs の核分裂生成収率は極めて小さい。この 134Cs は、数種類の核分裂生成物から生じた安定核種 133Cs が原子炉の核燃料中に蓄積し、さらに (1) 式のように、その (n,γ) 反応で生成したものであり、長時間使用した核燃料中に多く含まれる。133Cs(n,γ)134Cs ・・・(1)。したがって、134Cs は、過去の 核爆発実験のフォールアウトでは、ほとんど検出されていない。137Cs と 134Cs が放射能[Bq] で等量(1:1) であるとき、137Cs と 134Cs の原子数比は 15:1 であり、また、 137Cs と 134Cs による 1cm 線量当量率の比は 0.37:1 である。これが 15年後においては、137Cs と 134Cs の放射能の比は 128:1 となり、1cm 線量当量率の比は 47:1 となる。
解説
半減期を T、原子数を N、放射能を A、とすると、A = 0.693N/T と表される。よって、原子数 N は N = AT/0.693 となり、放射能と半減期の積 AT に比例することがわかる。放射能が等量の時、137Cs の原子数:134Cs の原子数 = 137Cs の AT :134 の AT = 30:2 = 15:1 となる。
線量当量率は、放射能と線量当量率定数との積に比例する。放射能が等量の時、137Cs の線量当量率定数:134Cs の線量当量率定数 = 0.093:0.25 = 0.37:1 となる。
15 年後は、137Cs の 15/30 = 1/2 半減期であり、134Cs の 15/2 半減期である。 137Cs の放射能を A(Cs-134) とすると、137Cs と 134Cs との放射能の比は、A(Cs-137)/A(Cs-134) = [(1/2)^(1/2)]/[(1/2)^(15/2)] = (1/2)^(1/2) × (1/2)^(-15/2) = (1/2)^(-7) = 2^7 = 128 となる。
線量当量率は放射能と線量当量率定数との積に比例する。前述より、137Cs の放射能:134Cs の放射能 = 128:1、また 137Cs の線量当量率定数:134Cs の線量当量率定数 = 0.37:1 であるので、それぞれの積をとって、137Cs の線量当量率:134Cs の線量当量率定数 = 128 × 0.37:1 × 1 = 47:1 となる。
Ⅲ
核分裂生成物に含まれている長寿命核種のうち、体内に摂取された場合、問題になるのが 90Sr(半減期:29年)である。90Sr はアルカリ土類金属であり、人体内に入ると骨に沈着し長時間にわたる内部被ばくが問題になる。90Sr は β- 壊変により 90Y 、90Zr へと逐次壊変する。単離した 90Sr は 18日間以上経過すると、生成する 90Y(半減期:2.7 日)の放射能がほぼ一定な値となり、90Sr の放射能と 1% 以内で等しくなる。このような放射平衡を永続平衡という。環境試料中の 90Sr の分析では、90Sr のβ-線の最大エネルギーが 0.54 MeV と低く、90Y が共存すると定量困難である。一方、娘核種 90Y のβ-線の最大エネルギー が 2.28 MeV と高いことから、90Sr の定量にはこれを利用する。試料からストロンチウムを分離回収して生成した後、2週間以上待つ。その塩酸溶液に 90Y の捕集材として Fe3+ を、90Sr の保持単体として Sr(2+) を、それぞれ塩化物の形で加えた後、加熱しながらアンモニア水を加えて水酸化鉄(Ⅲ)の沈殿をつくり、この沈殿中に娘核種 90Y を共沈させて親核種 90Sr から分離する。90Y の放射能測定から共沈させた時刻における 90Y の放射能を算出し、放射平衡にあった 90Sr の放射能を求めることができる。
補足
環境試料中の 90Sr は、娘核種の 90Y と永続平衡になっている。娘核種の 90Y から放出されるβ-線の最大エネルギーは 2.28 MeV で、90Sr から放出されるβ-線の 0.54 MeV よりも高いために、90Sr から放出されるβ-線を直接測定して定量することは困難である。そのため、一旦、90Sr のみを分離回収してその時点から娘核種の 90Y を生成させて永続平衡にさせる。その後、90Y だけを分離してそのβ-線を測定することにより、永続平衡にある 90Sr の放射能を求める手法が用いられる。
生成する 90Y の物質量は極めて小さいため、そのままでは沈殿を生成しない。化学的性質の似ている Fe(3+) を共沈剤として加えて、水酸化鉄(Ⅲ)の沈殿中に 90Y を集める。図で表すと下のようになる。
分離過程でのストロンチウムの回収率を測定するために、試料中に 90Sr に比べて十分多量の安定ストロンチウムが存在しない場合には、十分多い量の安定ストロングを加える必要がある。この安定ストロンチウムは、その後の操作で担体として働く。
Ⅳ
核医学診断で最も多く用いられている 99mTc(半減期:6.0時間)の製造には、99Mo(半減期:66時間)による 99mTc ジェネレータが利用できる。それに使用する 99Mo は、235U の熱中性子核分裂反応で製造され、無担体に近いものが得られる。99Mo はβ-壊変し、その 88% は 99mTc に、残りの 12% は直接 99Tc(半減期:2.1×10^5年)になる。生成した 99mTc は核異性体転移して 99Tc になる。分離生成した 99Mo の中では、99mTc の放射能が増加し、約 23 時間後に最大となるとき、99mTc の放射能は、その時点での 99Mo の放射能の約 88% になる。その後、99mTc の放射能は次第に半減期 66 時間で減衰 するようになる。約 60 時間以上で 99Mo と 99mTc は放射平衡状態になり、これを過渡平衡という。この時、99mTc の放射能と 99Mo の放射能の比は、99mTc と 99Mo の壊変定数をそれぞれ λ(Tc) 及び λ(Mo) とすると、[0.88λ(Tc)]/[λ(Tc)-λ(Mo)] で表され、99mTc の放射能は、99Mo の放射能を上回ることはない。
補足
親核種の半減期が娘核種の半減期に対して長い場合、十分な時間が経過すると娘核種は親核種の半減期で減衰するようになる。これを過渡平衡と呼ぶ。親核種が壊変して全て娘核種になる場合、娘核種の放射能が最大となるときに親核種と同じ放射能になる。この時を境に、娘核種と親核種の放射能が逆転し、娘核種の放射能が親核種の放射能よりも多くなる。99Mo の壊変では、88% が 99mTc を生成して放射平衡が成り立つが、12% は直接 99mTc になる。99mTc は 99Mo よりも半減期が長いため、99Mo の 12% は放射平衡が成り立たないことになる。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。
https://www.radiologist-study.org