Bragg-Gray
物質中の吸収線量測定の関係
ブラッググレイの原理
Ⅰ
吸収線量とは、任意電離放射線が任意物質に当たった時、その物質の単位質量当たりに吸収されたエネルギーとして定義されている。本来の SI 単位は J/kg であるが、この単位に対してグレイ[Gy] という特別単位名称と記号とが与えられる。吸収線量の測定法として最も定義に忠実な方法は熱量計法である。例えば、断熱状態の水に 1.0 Gy の吸収線量が 与えられた時でも、温度上昇は約 0.24 × 10^(-3) ℃ にとどまり、これを正確に測定することは容易ではない。そのため、実用的な吸収線量測定は、ブラッグ・グレイの原理に準拠した空洞電離箱法によることが多い。空洞電離箱とは固体壁(グラファイトなど)の中に空洞を設け、その空洞中に空気などの気体を充填したものである。空洞の中心には細い導電性の棒状電極を配置し、これと固体壁の間に 電圧を印加して電離電流を測定する。固体壁が絶縁体である場合には、内壁面に炭素などを薄く塗布し、導電性を確保する。印加電圧が低いと、電離によって生じたイオン対が再結合するので、充分な電圧をかけて、飽和電流が得られるようにする。
解説
水の比熱は 1.0[cal・℃^(-1)・g^(-1)] = 4.2 × 10^3[J・℃^(-1)・kg^(-1)] であるから、温度上昇は1/(4.2 × 10^3) = 0.238 × 10^(-3) ℃ となる。
Ⅱ
空洞体積 V [m^3]、空洞気体密度 ρ [kg/m^3] の空洞電離箱にX線又はγ線を照射して、電離電流 I [A] を得た場合壁物質中の吸収線量率 Dm [Gy/s]は次式により求めることができる。
Dm = 1.6 × 10^(-19) × (W・I)/(V・ρ・e) × Sm Dg = (W・N)/m
ここで、Wは空洞気体中で1イオン対を作るのに要するエネルギー[eV]。すなわち、W値であって、空域の場合は 34 eV である。
Smは壁物質の空洞気体に対する平均質量阻止能比であり、
Sm = (壁物質の二次電子に対する平均質量阻止能)/(空洞気体の二次電子に対する平均質量阻止能)となる。
ここで二次電子とは、コンプトン効果や光電効果によって生じた電子をいう。空洞気体が空気であり、壁物質がグラファイトのような原子番号の低い材料を使う場合、Smはほとんど 1 に近い。 こうした空洞電離箱法の適用にあたっては、二次電子の飛程に比較して空洞が小さく、空洞の存在が二次電子の粒子束に、大きく影響しないことが 前提となっているが、空洞を小さくすると電離電流が少なくなってしまう。また壁厚は壁物質中で二次電子の電子平衡が成立するように留意する。 壁部室として組織等価物質を用いれば生体組織における吸収線量(率)が決定できるが、測定対象物質と壁物質とが異なる場合には、測定対象物質に小さな空洞電離箱を挿入して測定を行い、得られた結果に測定対象物質と 壁物質の質量エネルギー吸収係数比を用いて測定対象物質の吸収線量を間接的に求める。体積 10 × 10^(-6) m3 の空洞に空気(密度 1.3 kg/m3) を充填したグラファイト空洞電離箱にγ線を照射して、1.0 mGy/s の吸収線量率を与えた場合、流れる電流は 0.38 nA である。このような微小な電流を測定するためには MOSFET を用いた高感度電位計や振動容量電位計などが用いられる。
解説
空気の W値は 34 eV であるから、電流は
[1.0× 10^(-3)[Gy/s]×1.3×10×10^(-6)[kg]×1.6×10^(-19)[C]]/[34×1.6×10^(-19)[J]] =
3.8 × 10^(-10)[A] = 0,38[nA]
Bethe公式
荷電粒子の阻止能との関係式
Fano因子
検出器で生じるキャリア数のゆらぎとポアソン統計によるゆらぎの予測値とのずれを量的に表した因子。F <= 1 である。
Rutherford散乱
重荷電粒子線が原子核の電場により弾性散乱される現象。
Laudau(ラウダウ)分布
薄い物質層を通過した荷電粒子のエネルギー分布を表す。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。