第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説3

問1

次の標識化合物のうち、陽電子放射断層撮影(PET)による腫瘍の検査に用いられるものとして、正しいものの組み合わせはどれか。

A [11C]メチオニン

B [13N]アンモニア

C [15O]二酸化炭素

D [18F]フルオロデオキシグルコース

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:アミノ酸代謝と関連して、脳腫瘍の検査に有効である。

B 誤:静脈注射して、心筋血流量の検査に用いられる。

C 誤:吸入投与して、脳血流量の検査に用いられる。

D 正:糖代謝の高い脳で最もよく用いられる。

問2

標識化合物の利用法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A [3H]ヒスチジンを用いることにより RNA の塩基配列を調べることができる。

B [14C]チミジンを用いることにより DNA の合成量を調べることができる。

C [α-32P]ATP を用いることによりタンパク質のリン酸化を調べることができる。

D [35S]メチオニンを用いることによりタンパク質の合成量を調べることができる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

下の表に標識化合物の使用方法について記載する。

標識化合物 使用方法
[3H]チミジン(あるいは[14C]チミジン)、[32P]デオキシリボヌクレオチド、[125I]ヨードデオキシウリジン DNA合成量の測定
[3H]ウリジン(あるいは[14C]ウリジン)、[125I]ヨードウリジン RNA合成量の測定
[3H]ロイシン タンパク質の代謝速度の測定
[35S]メチオニン、[3H]グリシン、[3H]ヒスチジン タンパク質合成量の測定
[125I]標識化合物 ラジオイムノアッセイ(免疫活性検査)
[14C]グルコース 脳・がん細胞を標識

A 誤:ヒスチジンはアミノ酸の 1 つで、タンパク質合成量に用いられる。

B 正:チミジンの標識化合物は DNA 合成量。ウリジンなら RNA 合成量の測定に用いられる。

C 誤:DNA の塩基配列の決定に用いられる。

D 正

問3

次の記述のうち、悪性腫瘍の炭素イオン線治療がX線治療に比べて優れている点として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 腫瘍組織に集中して線量を与えることができる。

B 腫瘍組織の吸収線量が同じ場合、抗腫瘍効果が大きい。

C 酸素効果が大きい。

D 細胞周期依存性が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:属にブラッグピークという。

B 正:RBE が高いので、抗腫瘍効果が大きい。

C 誤:炭素イオン線は高 LET 放射線なので、間接効果の修飾は小さい。

D 誤:炭素イオン線は高 LET 放射線なので、間接効果の修飾は小さい。

問4

輸血用血液放射線照射に関する次の記述のうち、誤っているものは、次のうちどれか。

1 移植片対宿主病を防ぐことが目的である。

2 吸収線量は 15 ~ 50 Gy である。

3 新鮮凍結血漿に行う。

4 照射には通常X線、γ線又は電子線を用いる。

5 リンパ球の放射線感受性が他の血漿成分に比較して著しく高いことを利用している。

解答 3

解説

輸血後移植片対宿主病(GVHD) は輸血した血液中のリンパ球が輸血された患者の組織を非自己として攻撃することをいう。輸血用血液は、リンパ球は細胞死するが他の血球には影響が及ばない線量(15 ~ 50 Gy)で照射される。血液は、有形成分(血球)と血漿に分けられる。血液照射の目的がリンパ球の不活性化であるので、血漿での照射は意味がない。

問5

放射線影響における酸素効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素濃度が高くなると放射線の細胞致死効果は小さくなる。

B OER とは、同一線量における酸素存在下と非存在下での生物効果の比である。

C 酸素効果は高 LET 放射線では低 LET 放射線に比べて小さくなる。

D 培養液の酸素分圧を 1 mmHg から 40 mmHg まで変化させた場合は、101 mmHg から 140 mmHg まで変化させた場合よりも細胞致死効果の変化が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:酸素濃度が高くなると致死効果は大きくなる。

B 誤:OER は、同一の効果を得るのに必要な酸素非存在下と存在下の線量の比である。

C 正:間接効果の修飾は高 LER 放射線で小さい。

D 正:酸素分圧が 20 mmHg を越えると感受性の変化はあまりない。

問6

放射線による直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A X線による細胞致死効果においては、直接作用の寄与が間接作用の寄与よりも大きい。。

B 直接作用は間接作用に比べて、酸素の影響を受けにくい。

C 直接作用は間接作用に比べて、ラジカルスカベンジャーで抑制されやすい。

D 乾燥した酵素のX線による不活性化は、主に直接作用によるものである。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

A 誤:直接作用と間接作用の比は、1 : 2 程度。

B 正:酸素効果は間接作用を修飾する。

C 誤:保護効果(ラジカルスカベンジャー)は間接効果を修飾する。

D 正:乾燥系では、水の放射線分解による間接効果の寄与は小さい。

問7

放射線による DNA 損傷に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射線に特異的な DNA 損傷はない。

B 細胞周期の時期により DNA 2本鎖切断の修復様式に違いが認められる。

C 細胞の生死に関しては DNA 1本鎖切断が最も重要である。

D 塩基損傷は発がんの原因とならない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:化学物質によっても同様の DNA 損傷は生じる。

B 正:G1 期では非相同末端結合が、G2 期では相同組換え修復が誘導される。

C 誤:DNA 2本鎖切断の方が細胞の生死には重要である。

D 誤:紫外線は鎖切断を起こさず、影響は塩基のレベルに留まるが、皮膚がんの原因になる。

問8

水へのX線照射によって生じるヒドロキシラジカルに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 損傷を引き起こす主要な原因の一つである。

B スーパーオキシドラジカルよりも寿命が長い。

C 強い酸化力を有する。

D ヒドロキシラジカルは pH を決める要因である。  

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD 

解答 2 

解説  

A 正:ヒドロキシラジカル(OHラジカル)は間接作用で最も重要なラジカルである。  

B 誤:ヒドロキシラジカル(OHラジカル)は反応性が高く酸化力が強いことから早く消失する(寿命が短い)。  

C 正:OH ラジカルは不対電子を解消するために強く電子を求める(酸化 = 求電子反応)。  

D 誤:pH を決めるのは水素イオン濃度である。

問9

次のうち、培養細胞のX線に対する致死感受性に影響を及ぼす因子として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果

B 気圧

C 照度

D 温度

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

解説

A 正:酸素濃度が低くなると感受性は低くなる。

B 誤:感受性との関係はない。

C 誤:感受性との関係はない。

D 正:温度が高くなると感受性は高くなる。

問10

X線照射による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線維芽細胞は主にアポトーシスにより死ぬ。

B 間期死は、照射後一度も分裂を経ないで死に至る細胞である。

C 同一吸収線量であっても、分割照射と 1 回照射では、分割照射の方が細胞生存率は高い。

D 致死感受性は細胞周期に依存しない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

A 誤:繊維芽細胞は、コラーゲンを産生する結合組織の細胞の 1 つ。結合組織の細胞の感受性は低く、アポトーシスにはよらない。

B 正

C 正:分割照射では線量率効果(SLD)があり、生存率は高い。

D 誤:M 期と G1 後期から S 期初期で高く、S 期後半で低い。

問11

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A がんの原因となることがある。

B 細胞死の原因となることがある。

C 同一吸収線量で比較した場合、γ線の方が中性子線よりも多数の染色体異常を引き起こす。

D 低 LET 放射線の場合、線量率の高低にかかわらず、同じ吸収線量であれば染色体異常の頻度に変わりはない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:安定型の異常はがんの原因となる。

B 正:不安定型の異常は細胞分裂ができず、細胞死の原因となる。

C 誤:中性子の方が LET が高く DNA 損傷は密に起こり、染色体異常の頻度は高くなる。

D 誤:線量率効果はある。

問12

X線による 4 Gy の急性全身被ばく後の抹消血液に関する次の組み合わせのうち、正しいのはどれか。

A リンパ球数は、被ばく後 1 日以内に減少する。

B 好中球数は、被ばく後 1 ~ 2 日以内に一過性に増加する。

C 血小板は、被ばく後 5 日以内に最低値を示す。

D 赤血球数は、被ばく後 10 日以内に最低値を示す。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

解説

A 正:末梢血中の成熟リンパ球の感受性は高く、照射により細胞死を起こす。

B 正:減少を補うために貯蔵プールから放出され、一過性の増加が見られることがある。

C 誤:血小板は 2 週間程度で最低値を示す。

D 誤:赤血球」は 1 ヵ月弱で最低値を示す。

問13

γ線による急性全身被ばく後の骨髄死に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 血小板減少は、骨髄死の原因のの一つである。

B LD(50/60)の放射線量を被ばくした時の主な死因である。

C 10 Gy 以下の被ばくでは起こらない。

D 被ばく後 2 ~ 3 日以内に起こる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

解説

A 正:白血球の減少による抵抗力の低下とともに、骨髄死の原因である。

B 正:LD (50/60) は観察期間 60 日での 50% 致死線量という意味で、ヒトでは 3 ~ 5 Gy である。

C 誤:骨髄死のしきい線量は 1.5 Gy である。

D 誤:30 ~ 60 日に起こる。

問14

放射線の医学利用とその特徴に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 10 MV の X線は、臨床的に画像診断に用いられる。

B β- 線は、臨床的に画像診断に用いられる。

C 電子線は、がんの皮膚転移の治療に用いられる。

D 陽子線は、線量分布の点から深部にあるがん治療に用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:10 MV は主に治療用で用いられる。

B 誤:β- 線は 131I による甲状腺がん治療が有名。

C 正:表層部のがんであり、がんの厚みに合わせてエネルギーを調整する。

D 正:ここでの線量分布はブラッグピークの利用を言っている。

問15

臓器全体を X線照射した場合に最も低い線量で起こるものは、次のうちどれか。

1 膀胱萎縮(膀胱)

2 放射線肺炎(肺臓)

3 心外膜炎(心臓)

4 直腸穿孔(直腸)

5 肝硬変(肝臓)

解答 2

解説

肺臓は中程度の感受性を持ち、放射線肺炎のしきい線量は 30 ~ 40 Gy とされている。照射野が肺全体となる場合にはしきい線量はさらに下がる。(10 Gy 以下)という報告がある。

問16

チェルノブイリ原子力発電所の事故による放射線被ばくによって有意に増加したものは、次のうちどれか。

1 小児における甲状腺がん

2 流産

3 奇形

4 白血病

5 乳がん

解答 1

解説

国連化学委員会の報告によれば、事故 5 年以降での小児甲状腺がんの増加が唯一確認されている影響である。流産(周産期死亡)が増加したとの報告が一時期あったが、その後の調査で事故との関連はないことが分かった。

問17

原爆被ばく影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病は、被ばく線量が高いほど潜伏期間が短い。

B 肺がんは、被ばく線量が高いほど潜伏期間が短い。

C 白血病は、被ばく後 2 ~ 3 年経過してから増加する。

D 肺がんは、被ばく後 5 ~ 6 年経過してから増加する。  

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

A 正:白血病では、高線量被ばく群は潜伏期が短い傾向にある。

B 誤:固形がんでは、がんの好発年齢を迎えてから発症するという発がん機構の方が強く働くためか、線量の大小と潜伏期間に一定の関係を見いだすことは難しい。

C 正:白血病の最小潜伏期は 2 年とされている。

D 誤:固形がんの最小潜伏期は 10 年とされている。

問18

放射線被ばくと発がんの関係のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジウム時計文字盤工 ー 乳がん

B トロトラスト被注入患者 ー 肝がん

C ウラン鉱夫 ー 肺がん

D 放射線高バックグラウンド地域住民 ー 直腸がん

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:以前は筆先をなめていたため、ラジウムの内部被ばくがあった。集積部位は骨で骨肉腫が発症する。

B 正:トロトラストは二酸化トリウムを主成分とする血管造影剤である。肝臓に集積する。

C 正:ウラン鉱山におけるラドン吸入により、肺がんが増加。

D 誤:放射線高バックグラウンド地域で、がんが高率に発生しているという報告はない。

問19

原爆被ばく者の放射線発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 胆嚢がんの発がんリスクは有意には上昇しない。

B 肺がんの発がんリスクは有意に上昇しない。

C 白血病では、ある期間を過ぎてから発がんリスクが上昇し、その後低下する。

D 固形がんでは、ある期間過ぎてから持続して発がんリスクが高い。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 3

解説

A 正:胆嚢がんの増加は確認されていない。

B 誤:肺はがんリスクが大きい臓器の 1 つである。

C 正:最小潜伏期は 2 年で、7 ~ 8 年でピークを迎えた後、減少している。

D 正:最小潜伏期は 10 年で、相乗リスクモデルに従い、現在も増加傾向にある。

問20

次のX線被ばく部位とその晩発障害の組み合わせのうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 水晶体 ー 白内障

B 肺 ー 肺繊維症

C 脊髄 ー 放射線脊髄症

D 皮膚 ー 放射線潰瘍

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 1

解説

A 正:白内障は晩発障害の代表例。

B 正:肺繊維症は、放射線肺炎に引き続き発症する晩発障害。

C 正:潜伏期は 6 ~ 12 ヵ月とされている。

D 誤:20 Gy 以上の被ばくにより 3 ~ 5 日の潜伏期で発症。

問21

X線による 1 Gy の急性全身被ばくによって引き起こされる可能性のある影響として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 脱毛

B 一時不妊

C 皮膚の潰瘍

D 放射線宿酔

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:脱毛のしきい線量は 3 Gy。

B 正:一時的不妊のしきい線量は、男性で 0.15 Gy、女性で 0.65 ~ 1.5 Gy。。

C 誤:皮膚の紅斑のしきい線量は 3 ~ 6 Gy。

D 正:放射線宿酔のしきい線量は 1 Gy。。

問22

放射線の確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線量が増加しても重篤度は変わらない。

B しきい値はない。

C 不妊は確定的影響である。

D 発がんは確定的影響ではない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:線量が増加するとともに重篤度も増す。

B 誤:しきい線量が存在する。

C 正:永久不妊のしきい線量は男性で 3.5 Gy ~ 6 Gy、女性で 2.5 ~ 6 Gy。

D 正:発がんは確率的影響である。

問23

次の自然放射線及び人工放射線のうち、日本における 1 人当たりの実効線量に最も大きく寄与しているものはどれか。

1 大地宇宙線

2 宇宙線

3 ラドンからの放射線

4 医療用放射線

5 体内に摂取された食物由来の放射性核種からの放射線

解答 4

解説

放射線医学綜合研究所(1995年)の報告によれば、1.大地放射線 0.32 mSv、2.宇宙線 0.27 mSv、3.ラドンからの放射線 0.43 mSv、4.医療用放射線 2.3 mSv、5.体内に摂取された食物由来の放射性核種からの放射線 0.41 mSv とされている。

問24

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 一般に人工放射線は自然放射線に比べて RBE が高い。

B 放射線業務従事者以外は放射線に被ばくすることはない。

C 自然放射線による年間の被ばく線量は、世界平均で約 2.4 mSv である。

D 航空機で高高度を飛行することにより。地上に比べて被ばくする線量が増加する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:人工放射線、自然放射線ともに様々な線種があり、一定傾向はない。

B 誤:自然放射線被ばくは誰もがしている。

C 正:日本ではラドンからの放射線が少なく、約 1.5 mSv である。

D 正:宇宙線は、地上で 0.03 μSv/h、高度 10000 m で 5 μSv/h である。

問25

次の放射性核種と主な集積臓器の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

1 32P ー 肺臓

2 59Fe ー 腎臓

3 60Co ー 肝臓

4 90Sr ー 脾臓

5 137Cs ー 骨

解答 3

解説 下の表に臓器親和性の核種を示す。       

核種 臓器親和性
32P , 45Ca , 65Zn , 90Sr , 226Ra , 232Th , 238U , 239Pu , 241Am
40K , 137Cs 筋肉
222Rn , 232Th , 238U , 239Pu
53Fe , 59Fe 骨髄
3H , 14C , 24Na , 40K , 137Cs 全身
59Fe , 60Co , 65Zn , 232Th , 239Pu 肝臓
131I 甲状腺
59Fe 脾臓

1 誤:32P ー 骨

2 誤:59Fe ー 骨髄、肝臓、脾臓

3 正

4 誤:90Sr ー 骨

4 誤:137Cs ー 全身(筋肉)

問26

預託実効線量に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 臓器・組織が受ける吸収線量率を 50 年にわたって積算した線量である。

B 単位は Sv である。

C 預託等価線量とその臓器又は組織の組織荷重係数との積の総和として求められる。

D 長期にわたる外部被ばくを評価するために用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

解説

預託実効線量とは体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝の実効線量をおよそ一生分について積算した値。成人では摂取後 50 年間、子供は 70 歳になるまでの年数で計算する。

A 誤

B 正

C 正

D 誤:預託とは、内部被ばくにおいて長期にわたる被ばくを摂取時に被ばくしたものとして扱うことを言う。

問27

125I の有効半減期を 42 日、物理的半減期を 60 日としたとき、生物学的半減期として最も近い値は、次のうちどれか。

1 20 日

2 60 日

3 100 日

4 140 日

5 180 日

解答 4

解説

1/42 = 1/60 + 1/T(b) を解いて、T(b) = 140 日

問28

125I の有効半減期を 42 日、物理的半減期を 60 日としたとき、生物学的半減期として最も近い値は、次のうちどれか。

A 奇形が生じやすい時期は、受精後 1 週間までの期間である。

B 発がんリスクは、成人と同程度である。

C 期間形成期に胎児が 0.5 Gy 被ばくすると、奇形発生のリスクが増す。

D 胎児に対する影響には、確率的影響と確定的影響の両方がある。 

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:奇形は、受精 2 ~ 8 週で生じやすい。

B 誤:発がんリスクは成人に比べて 2 ~ 3 倍高い。

C 正:奇形のしきい線量は 0.1 Gy とされている。

D 正:確率的影響:発がん、遺伝的影響。確定的影響:胚死亡、奇形、精神発達遅滞など。

問29

RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 組織による放射線感受性の違いを表す指標である。

B 線量率によって値が変化する。

C 生物学的効果の指標によって値が異なる。

D 基準の放射線として一般に α線 が用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:放射線の線質の違いによる影響の違いを表す指標である。

B 正:線量率効果があるため値は変化する。

C 正

D 誤:基準放射線にはX線あるいはγ線が用いられる。

問30

外部照射した場合の体内での線量分布に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 陽子線は、飛程の終点付近で最大のエネルギーを付与する。

B X線は、深部にいくにしたがって大きなエネルギーを付与する。

C 重粒子線は、飛程の終点付近で最大のエネルギーを付与する。

D 5 MeV の電子線は、表面で最大のエネルギーを付与する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

解説

A 正:荷電粒子なので、ブラッグピークを作る。

B 誤:深くなると次第に減弱されるため、付与するエネルギーは小さくなる。

C 正:荷電粒子なので、ブラッグピークを作る。

D 誤:5 MeV の電子線は、深さ約 1 cm で最大となる。

放射線照射による影響

水溶液に放射線を照射した時に溶質(標的分子)が受ける放射線の影響には、直接作用と間接作用がある。放射線のエネルギーが標的分子に吸収されて損傷が生じるとき、これを直接作用という。水の放射線分解で生じたラジカルが標的分子を攻撃して損傷が生じるとき、 これを間接作用という。ラジカルの中では ・OH による作用が最も重要であり、間接作用でできる DNA 損傷の大部分が・OH によりものと考えられている。放射線防護剤の多くは ラジカルと反応してこれを取り除くことにより作用する。

 

X線やγ線の培養細胞に対する致死効果は酸素濃度によって変化する。一般には、酸素濃度が増加すると放射線の効果は大きくなる。また、放射線感受性は酸素濃度が 0 の時を 1 とすると大気中の酸素濃度においては約 3 になる。酸素濃度の変化に伴う放射線感受性の大きな変化は、酸素濃度が大気中の濃度に比べて非常に低い領域で現れる。

 

細胞が分裂を繰り返して増殖するとき、分裂から分裂までの1サイクルを細胞周期と呼ぶ。細胞周期は4つの時期が区分され、 M 期から S 期に至る期間を G1 期と呼び、 S 期から M 期に至る期間を G2 期と呼ぶ。放射線致死感受性は細胞がどの時期あるかによって異なり、 G1 期から S 期への移行期と M 期で高く、 S 期の後半で低い。

 

細胞集団に、ある線量を数回に分けて照射した場合の生存率は、同じ線量を一度に照射した場合(1回照射)に比べて高くなる。その程度は、亜致死損傷(SLD)からの回復を示し、1回照射の場合の生存曲線の肩の大きさに依存している。また、被ばく線量が同じであっても、被ばく時間の違いによってその効果が異なってくる 現象(線量率効果)にも同じメカニズムが関与している。高LET放射線の場合、これらの効果は小さくなる。

 

解説

標的説では、細胞はいくつかの標的を持つ。すべてがヒットされると細胞死を起こし、いくつかがヒットされただけでは死なず、亜致死損傷(SLD)の状態にあると呼ばれる。一方、照射後に細胞が置かれる環境によって、生存率が異なることがある。つまり、死ぬはずであった細胞が置かれる環境によっては死なないことがある。このような状態にある細胞を、潜在的致死損傷(PLD)という。

放射線の種類によって起こる損傷の違いに関する記述

電離放射線を、大きく電磁波と粒子線に分類することがある。この場合、X線やγ線は電磁波であり、α線、β線や中性子線は粒子線である。また、電離放射線は直接電離放射線と間接電離放射線に分類することもある。α線やβ線は直接電離放射線 に分類され、中性子線やX線は間接電離放射線に分類される。X線は、医療分野で最もよく利用されている電離放射線である。X線と物質の相互作用はエネルギーに依存し、エネルギーの低い方から光電効果、コンプトン効果、電子対生成が主にみられる。これらの相互作用の起こる確率は、 透過する物質の原子番号にも依存する。光電効果の起こる確率は、低エネルギー域で、かつ、原子番号の大きい場合に急激に大きくなる。筋肉や臓器などを構成する元素は、C、H、N、Oなど原子番号が比較的小さいものが主である。一方、骨は、リン酸カルシウムが主体で、Ca の原子番号は筋肉などを構成する元素の原子番号より大きい。そのため、例えばエネルギーが 50 keV 程度のX線であれば、同じ照射線量を与えた場合の骨のエネルギー吸収は、筋肉や臓器のエネルギー吸収に比べて数倍高い。また、脂肪組織やグリセリンから構成されているため、エネルギー吸収は筋肉や臓器などと比べてさらに低い値をとる。X線のエネルギーが高くなり、 200 keV 程度以上になると、組織による吸収の程度の違いは小さくなる。治療用に高エネルギー X線を用いるのは、骨の存在などによらず深部のがん組織への線量を確保するためである。また、高エネルギーX線を用いることによって2次電子が飽和する位置が深くなり、皮膚表面の被ばく線量を低下させることができる。このことをビルドアップと呼ぶ。

 

解説

質量エネルギー吸収係数( × 10^(-3) m^2・kg)を参考までに下の表に記載する。

 光子エネルギー  H  C  N  O  Ca
 50 keV  2.709  2.397  3.217  4.414  78.22
 200 keV  5.254  2.655  2.655  2.679  3.639

 

哺乳動物の培養細胞に線質を異にする放射線を照射した場合、同じ吸収線量であっても、その生物学的効果は必ずしも同じになるとは限らない。また、放射線の種類による生物効果の大きさの違いを表す指標として RBE がある。これは、問題としている放射線がある生物効果を起こすのに必要な吸収線量に対する、基準となる放射線が同じ生物効果を起こすのに必要な吸収線量の比として表される。基準となる放射線には、ピーク電圧が 250 kV の X線や 60Co のγ線などが用いられることが多い。例えば、同じ吸収線量のX線とα線が培養細胞に及ぼす致死効果を比較するとα線による効果の方が大きい。これはX線による2次電子の線エネルギー付与(LET)とα線のLETが異なることが主な要因である。横軸にLETをとり、縦軸に細胞致死効果を指標とした RBE 値をとった図を作成すると、 100 ~ 200 keV ・μm^(-1) にピークをもつ曲線となる。これは、この LET 領域では DNA 2 本鎖切断の収率あるいは、修復しにくい切断の収率が高くなるためであり、さらに LET が高くなるとこれらの収率がかえって下がるためと考えられている。放射線防護の立場からは、放射線の種類による生物効果の違いを反映させる係数として、 放射線荷重係数が定義されている。この係数は低線量・低線量率放射線被爆した場合の確率的影響を指標としたもので、これに物理的に吸収されたエネルギーに基づく吸収線量を乗じることによって等価線量が得られる。

 

また、詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

 

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