第1種放射線取扱主任者 生物学問題・解説 第 2弾

問1

標識化合物の利用法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A [3H]ヒスチジンを用いて、タンパク質合成量を調べた。

B [11C]二酸化炭素を用いて、光合成を調べた。

C [14C]チミジンを用いて、RNA 合成量を調べた。

D [125I]ヨードウリジンを用いて、タンパク質合成を調べた。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

標識化合物の種類を下図に示す。下の表より解答は 1 となる。

標的核 アミノ酸の種類 核種
DNA チミジン 3H
デオキシリボヌクレオチド 32P
ヨードデオキシウリジン 125I
RNA ウリジン 3H
ヨードウリジン 125I
タンパク質 グリシン 3H、14C
メチオニン 35S
ヒスチジン 3H
脳、がん細胞 グルコース 14C

解説

A 正:ヒスチジンはアミノ酸の 1 つ

B 正:光合成の原理より、二酸化炭素から酸素が放出されるためこれを計測に用いる。

C 誤:チミジンは DNA の塩基であり、RNA 合成量の測定にはウリジンが用いられる。

D 誤:ヨードウリジンは核酸類似物質であり、RNA に取り込まれる。またヨードデオキシウリジンという物質もあるので注意が必要である。

問2

次のうち、陽電子放射断層撮影(PET)診断に用いられるものの正しい組み合わせはどれか。

A [3H]チミジン

B [11C]メチオニン

C [18]フルオロデオキシグルコース(FDG)

D [67Ga]クエン酸ガリウム

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:DNA 合成量の測定に用いられる。

B 正:11C は陽電子放出核種で半減期は 20.39 分。脳腫瘍の診断に用いられる。

C 正:18F は陽電子放出核種で半減期は 109.8 分。がん細胞が正常細胞よりもグルコースを多く取り込むことを利用。

D 誤:67Gaは電子軌道捕獲し、半減期は 3.26 日。93.3 keV(39.2%)、185 keV(21.2%)、300keV(16.8%)のγ線を出す。クエン酸ガリウムは腫瘍新地グラフィに用いられる。

問3

重粒子治療の特徴に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 重粒子線治療では、π中間子が用いられる。

B 重粒子線は、X線やγ線と比べて、身体の深部にあるがんの治療に適している。

C 重粒子線による治療効果は、X線やγ線と比べて、細胞周期による影響を受けやすい。

D 重粒子線による治療効果は、X線やγ線と比べて、酸素による影響が小さい。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 誤:炭素イオン線を用いる。

B 正:重粒子線(Heより重い原子番号を持つ原子の原子核をいう)はブラッグピークを作ることから、深部のがんに線量を集中できる。

C 誤:重粒子線は高LTE放射線であり、細胞周期に夜影響は小さい。

D 正:重粒子線は高LET放射線であり、間接作用による影響は小さい。

問4

水への放射線照射により生成する過酸化水素(H2O2)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A H2O2 はラジカルである。

B H2O2 は鉄(Ⅱ)イオンなど触媒効果により、体内でヒドロキシラジカルを生成する。。

C H2O2 はスーパーオキシドジスムターぜ(SOD)により分解される。

D H2O2 は細胞膜を透過する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:H2O2 は活性酵素である。

B 正:過酸化水素は細胞膜を容易に透過し、赤血球内に入り、ヘモグロビン中の Fe によりヒドロキシラジカルになる。ここで、触媒作用とは、鉄(Ⅱ)イオンが鉄(Ⅲ)イオンになり電子を供給することを言っている。

C 誤:過酸化水素はカタラーゼにより分解される。

D 正:過酸化水素は細胞膜を容易に透過する。

問5

次のうち、主として間接作用が関与する現象として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果

B 希釈効果

C ラジカルスカベンジャーによる防護効果

D 温度効果。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説 すべて間接作用を修飾する効果である。

問6

X線による DNA 損傷に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 低酸素条件下で照射すると DNA 鎖切断のあとは少なくなる。

B DNA 鎖間架橋はできない。

C 細胞には DNA 損傷を修復する機構が備わっている。

D DNA の2本鎖切断の収率は 1 本鎖切断の収率の約 2 倍である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

A 正:X線は低LET放射線であるため、酸素効果の影響を受けるため、低酸素条件下で照射すると DNA 鎖切断のあとは少なくなる。

B 誤:DNA 損傷には1本鎖切断、2本鎖切断、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成がある。

C 正:塩基除去修復、相同組換え修復など様々な修復機構がある。

D 誤:2本鎖切断は1本鎖切断よりも生じにくく、10 倍以上のエネルギーを必要とするため収率は約1/10となる。

問7

放射線によるアポトーシスに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 断片化が起こる。

B 被ばく後 24 時間以上経過してから起こる。

C 分裂死の主要な原因である。

D 有害細胞の除去機能の一つである。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

解説

正:アポトーシスでは細胞の縮小・核濃縮・核の断片化・核内のクロマチンの凝縮・細胞の分断化・アポトーシス小体の形成、ミトコンドリアの形態的変化、数の減少・紡錘体の大きさの減少・中心体の増加、マクロファージによる貪食などがある。

誤:末梢血中のリンパ球では、照射後 1 時間以内でアポトーシスが見られるため誤りとなる。

誤:細胞死には分裂死と間期死があり、アポトーシス・ネクローシスともに間期死であるため誤りとなる。

正:一つの細胞の異常が個体全体に影響を及ぼさないための除去機能と考えられており、自爆死と呼ばれることもある。

問8

放射線による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射された後に分裂を経ないで起こる細胞死を増殖死という。

B 増殖死はコロニー形成法で調べることができる。

C 照射により分裂を停止した細胞でも代謝が継続する場合がある。

D リンパ球では照射により主に増殖死が起こる。

  

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

解説

A 誤:分裂を経ないで起こる細胞死は間期死である。

B 正:増殖死ではコロニー形成法で調べ、間期死では色素排出能が使われる。

C 正:代謝が継続することを表す例として、巨細胞の出現があげられる。

D 誤:リンパ球は間期死である。

問9

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 染色体異常は分裂期に照射された細胞だけに生じる。

B 転座及び逆位は安定型異常である。

C 姉妹染色分体交換は不安定型異常である。

D 末梢リンパ球の染色体異常の出現頻度から被ばく線量の推定が可能である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:いずれの時期の照射でも染色体異常の原因となる DNA 損傷は生じる。

B 正:転座・逆位・欠失が安定型で、環状染色体・二動原体染色体が不安定型である。

C 誤:姉妹染色分体とは、S 期に合成された同じ遺伝情報を持つ 2 本の染色分体である。したがって、この交換が起こっても異常とはならない。

D 正:検出限界が 0.2 Gy 程度なので可能となる。

問10

放射線宿酔に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 不穏状態、無気力などの精神状態が現れることがある。

B 頻脈、不整脈などの心血管症状が現れることがある。

C 症状の種類は被ばく線量によらない。

D 被ばく線量が大きいほど発症の時期は早い

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

解説

骨髄死、腸死、中枢神経死につながる前駆症状として、放射線宿酔は見られる。疲労、無気力などの精神症状、頻脈、低血圧などの心血管症状の他、悪心、嘔吐などの胃腸障害がある。線量が低いと症状が遅く出現したり、あるいは症状が現れないことがあるので C は誤りとなる。

問11

X線による全身被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 半致死線量の被ばくでは骨髄死が起こる。

B 骨髄死は消化管死よりも潜伏期が長い。

C 消化管死は骨髄死よりも低線量で起こる。

D 中枢神経死は 10Gy 程度の被ばくで起こる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:半致死線量(LD 50/60)は骨髄死により 60 日以内に 50% 死亡する線量をいい、3 ~ 5 Gy とされている。

B 正:骨髄死の潜伏期は 30 ~ 60 日、消化管は 10 ~ 20 日なので骨髄死の方が潜伏期は長い。

C 誤:骨髄死は 3 ~ 5 Gy、消化管死は 5 ~ 15 Gy なので骨髄死の方が低線量で起こる。

D 誤:中枢神経死は 15 Gy 以上で起こる。

問12

30 Gy のX線を被ばくした組織と、その組織に生じているとされている障害に関する次の組み合わせのうち、正しいのはどれか。

A 肝臓 ー 脂肪肝

B 甲状腺 ー 機能亢進症

C 皮膚 ー 潰瘍

D 大腸 ー 穿孔

E 脊椎神経 ー 麻痺

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 5

解説

A 誤:脂肪肝は放射線被ばくとは無関係。

B 誤:甲状腺の機能低下が起こる。

C 正:皮膚潰瘍は 10 Gy 以上で起こる。

D 正:大腸に限らず、食道などの消化管でも穿孔することがある。

E 正:片麻痺がみられることがある。

問13

4 Gy のX線を全身に均等被ばくした場合の末梢血の変化に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A 血小板は赤血球より早期に減少する。

B リンパ球の減少は被ばく後 4 週間以内に起こる。

C 好中球は一過性に増加する。

D 赤血球数は被ばく後 1 週間前後で最低値を示す。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:上図より血小板は赤血球より早期に減少していることがわかる。末梢の赤血球、血小板は被ばくにより細胞死を起こすことなく、その減少の程度は寿命の長さに従う。赤血球は 120 日。血小板は 10 日である。

B 正:リンパ球のアポトーシスは被ばく後 1 時間以内にみられはじめる。

C 正:好中球は上図より被ばく後 1 ~ 2 日間に一時的増加がみられる。

D 誤:上図より数 Gy 程度の被ばくでは、25 日程度で最低値となる。

問14

放射線被ばくによるリスクに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 絶対リスクモデルでは、リスクは年齢にかかわらず一定とする。

B 発がんリスクは、大人より小児の方が高い。

C 男性が胸部に線量計をつけるのは、肺がんのリスクが高いためである。

D 預託実効線量は、外部被ばくによるリスクの指標となる。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2

解説

A 正:絶対リスクは線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法で、絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定である。

B 正:代表的なものとして小児甲状腺がんが挙げられる。

C 誤:胸部は体幹部の代表として考えられている。

D 誤:預託実効線量は、体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝の実効線量をおよそ一生分について積算した値。

問15

放射線による発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 主として内部被ばくによって引き起こされる。

B 遺伝的影響に分類される。

C 確率的影響に分類される。

D 晩発影響に分類される。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:外部被ばくによっても、内部被ばくによっても、引き起こされる。

B 誤:発がんは身体的影響である。

C 正:確率的影響には、発がんと遺伝的影響が分類される。

D 正:長い潜伏期を持つ。白血病では 2 年。固形がんでは 10 年。

問16

標識化合物を用いた生物実験に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 125I 標識化合物は、131I 標識化合物に比べて長期にわたって使用することができる。

B 131I 標識化合物は、125I 標識化合物に比べて体外からの計測がしやすい。

C オートラジオグラフィでは、3H 標識化合物よりも 14C 標識化合物を用いた方が高い解像度が得られる。

D [3H]チミジンのパルス標識により細胞周期の解析ができる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 2

解説

A 正:125I の半減期は 59.4 日。131I の半減期は 8.02 日。

B 正:131I では 364 keV のγ線を、125I では 27.5 keV の特性X線を測定する。

C 誤:オートラジオグラフィは低エネルギーβ線を用いることで、解像度がよくなるため、3H 核種を用いる。

D 正:細胞周期解析は、細胞増殖機構の解明のために欠かせない解析の一つです。、DNA検出試薬を用いて染色した個々の細胞の蛍光強度を測定することにより、DNA含量に応じた細胞周期の各期(G0/G1期:静止・細胞成長期[核相は2n]。S期:DNA合成期[核相が2nから4nへと増加]。G2/M期:分裂準備・分裂期核相は4n])の細胞割合を算出することが可能です。 DNA を解析するため [3H]チミジンが用いられる。

問17

次の放射性核種とその集積部位の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

A 226Ra ー 肺

B 14C ー 骨

C 32P ー 肝臓

D 90Sr ー 骨

1 ABCのみ 2 ADのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

解説

放射性核種の臓器親和性を下図に示す。

       

核種 臓器親和性
32P,45Ca,65Zn,90Sr,226Ra,232Th,238U,239Pu,241Am
3H,24Na 全身
40K,137Cs 筋肉
222Rn,232Th,238U,239Pu
53Fe,59Fe 骨髄
3H,14C,40K,137Cs 全身
60Co,65Zn,232Th,239Pu 肝臓
131I 甲状腺

A 誤:226Ra – 骨

B 誤:14C – 全身

C 誤:32P – 骨

D 正:90Sr – 骨

問18

確率的影響と確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 晩発障害には確定的影響はない。

B 早期障害には確率的影響はない。

C 組織荷重係数は確率的影響を考慮した係数である。

D 遺伝的影響は確率的影響である。

E 内部被ばくでは確定的影響は起こらない。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 4

解説

A 誤:白内障は確定的影響で晩発影響である。

B 正:確率的影響は発がんと遺伝的影響であり、いずれも発生までに時間を要する。

C 正:組織荷重係数は各組織・臓器の確率的影響のなりやすさを規格化した係数である。

D 正

E 誤:内部被ばくでもしきい線量を越える被ばくがあれば、確定的影響は起こる。

問19

器官形成期にある胎児がγ線に急性被ばくした場合、奇形の発生に関するしきい線量(Gy)として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.005

2 0.02

3 0.1

4 0.5

5 2

解答 3

解説

胎児の奇形発生のしきい線量は 0.1 ~ 0.2 Gy。また、その他の胎児の影響を下の表に示す。

胎児期の放射線影響

   

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形  0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延  0.5 ~ 1.0
全期間     - 発がんと遺伝的影響    -

問20

γ線急性被ばくの場合にみられる次の障害のうち、しきい線量が 2 Gy よりも大きいものの組み合わせはどれか。

A 脱毛

B 放射線肺炎

C 男性の永久不妊

D 女性の永久不妊

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 5

解説

A 正:脱毛 – 3 Gy

B 正:放射線肺炎 – 6 ~ 8 Gy

C 正:男性の永久不妊 – 3.5 ~ 6 Gy

D 正:女性の永久不妊 – 2.5 ~ 6 Gy

問21

ある放射性核種の物理的半減期が 30 日、生物学的半減期が 20 日の場合、有効半減期(日)は次のうちどれか。

1 6

2 8

3 10

4 12

5 14

解答 4

解説

物理的半減期(Tp)、生物学的半減期(Tb)及び有効半減期(Teff)には、次の関係式が成り立つ。(1/Teff) = (1/Tp) + (1/Tb) Tp = 30 日、Tb = 20 日を代入すると、Teff = 12 日となる。

問22

放射性核種による内部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 体内に入る経路としては、経口、吸入及び経皮(創傷を含む)3経路がある。

B 主として遺伝的影響をもたらす。

C 外部被ばくと比べ、飛程の短い放射線を出す核種であってもその影響は大きい。

D 核種によらず全身にほぼ均等に影響を与える。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正

B 誤:核種により蓄積する臓器が異なるため必ずしも遺伝的影響が出るとは限らない。

C 正:飛程の短い放射線では限られた狭い範囲にすべての放射線エネルギーが与えられるので影響は大きい。

D 誤:核種により蓄積する臓器が異なる。

問23

胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 重度精神発達遅滞は受精後 26 週以降の被ばくで多い。

B 被ばく線量推定には母親の子宮線量が用いられる。

C 着床前に被ばくすると奇形の発生頻度が高い。

D 確定的影響も確率的影響も起こる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

解説

A 誤:精神発達遅滞は 8 ~ 25 週の被ばくで発生する。

B 正:簡便には、子宮線量で評価することができる。

C 誤:着床前期の被ばくでは胚死亡が起こる。

D 正:胚死亡、奇形、精神発達遅滞の確定的影響のほか、発がん、遺伝的影響の確率的影響のリスクも指摘されている。

問24

組織荷重係数(ICRP1990年勧告)の値を比較した次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 赤色骨髄 = 乳房 = 甲状腺

B 胃 = 結腸 > 食道

C 甲状腺 = 膀胱 > 骨表面

D 肺 > 肝臓 > 皮膚

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

解説

下の表に ICRP 1990 組織荷重係数 の値を示す。 

臓器 組織荷重係数
胃・肺・結腸・骨髄 0.12
生殖腺 0.20
膀胱・食道・乳房・肝臓・甲状腺・その他 0.05
骨表面・脳・唾液腺・皮膚 0.01

問25

放射線による白内障に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A しきい値が認められる。

B 進行した症例でも他の原因で誘発された白内障と区別できる。

C 線量による違いは認められない。

D 被ばく線量によらず潜伏期間は一定である。

E 水晶体上皮細胞の障害による。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 2

解説

A 正:白内障は確定的影響なのでしきい値は存在する。

B 誤:放射線による白内障と他の原因で誘発された白内障とでは区別できない。

C 誤:中性線の被ばくで引き起こされやすい。

D 誤:一般に高線量被ばくすると潜伏期間は短くなる。

E 正:白内障は水晶体上皮細胞の障害で起こる。

問26

遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 自然発生突然変異率をもとに影響を推定する。

B 倍加線量の逆数は単位線量当たりの相対突然変異リスクをあらわす。

C 潜在的回収能補正係数はメンデル型遺伝病にも多因子遺伝病にも用いる。

D 重篤度は線量に依存する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

解説

A 正:遺伝的影響の発生確率の推定(間接法)を用い、自然発生の突然変異率を 2 倍にするのに必要な線量を倍加線量というが、ヒトの遺伝的疾患の自然発生率と動物実験による倍加線量を比較して推定する方法をいう。

B 正:倍加線量の被ばくによって自然発生と同じだけの突然変異が生じる。また、単位線量あたりの相対リスクは自然発生の何倍の発生率があるかを表す。したがって、倍加線量の逆数(Gy^(-1))は単位線量あたりの相対突然変異リスクを表す。

C 正:潜在的回収能補正係数(PRCF)は、遺伝的影響の評価にあたり、親が生殖腺に被ばくした結果、胎児に突然変異が誘導されても個体の生存ができないほど大きな障害であれば産まれてこないため、子の世代の突然変異としてカウントできないことを補正する係数である。メンデル型遺伝病にも多因子遺伝病にも適用可能である。

D 誤:遺伝的影響は確率的影響であり、重篤度は線量に依存しない。

問27

高LET放射線の特徴を低LET放射線の特徴と比較した次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジカルスカベンジャーの効果が小さい。

B 酸素効果が大きい。

C 線量率効果が小さい。

D 照射後の回復の程度が大きい。

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

解説

A 正:高LET放射線では間接作用の修飾を受けにくくなるので、ラジカルスカベンジャーの効果は小さい。

B 誤:酸素効果は小さい。

C 正:高LET は高電離密度のため SLD(亜致死損傷)の蓄積が少なく、線量率効果は小さい。

D 誤:2 本鎖切断の割合が多くなるため、回復の程度は小さい。

問28

培養細胞の細胞致死効果を指標とした RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果の高低による効果の違いを表す指標である。

B 線量率を変化させても、その値は変わらない。

C 生存率 10% の場合と 50% の場合とでは値が異なる。

D 放射線防護剤の存在下で照射すると、その値は変化する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

解説

A 誤:RBE は線質による効果の違いを表す指標である。

B 誤:RBE は線量率、防護剤の存在などの照射条件が異なれば、値は変化する。

C 正:注目する指標が異なれば、値は変化する。

D 正

問29

放射線荷重係数(ICRP1990年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 電子線の場合、エネルギーによらず一定の値が与えられる。

B γ線の放射線荷重係数は、X 線と等しい。

C α 線の放射線荷重係数は、陽子線と等しい。

D 中性子の放射線荷重係数は、エネルギーが高くなるにつれ大きくなる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

解説

下の表に放射線荷重係数(ICRP1990年勧告)の値を示す。

光子(X線、γ線) 1
電子、β線、μ粒子 1
中性子(10 keV 未満) 5
中性子(10 keV ~ 100 keV まで) 10
中性子(100 keVを超え ~ 2 MeV まで) 20
中性子(2 MeV ~ 20 MeV まで) 10
中性子(20 MeV 未満) 5
陽子線(2 MeVを越える) 5
陽子線 2
α粒子、核分裂片、重原子 20

問30

LQ モデルに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 係数 α は細胞生存率曲線の 1 次項の係数を示す。

B α/β 比が小さい細胞生存率曲線は肩が大きい。

C 一般に晩期反応組織の α/β 比は早期反応組織の α/β 比に比べ小さい。

D 一般に腫瘍組織の α/β 比は早期反応組織よりも晩期反応組織の α/β 比に近い。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDのみ

解答 1

解説

A 正:LQ モデルは、直線2次曲線モデルとも呼ばれ、生存率(S)は線量(D)の関数として S = exp(-αD-βD^2)の式で表される。

B 正:α/β比が大きいと直線に近づく。

C 正:α/β比は早期反応組織で約 10 Gy、晩期反応組織で 1 ~ 4 Gy とされる。

D 誤:腫瘍組織のα/β比は 10 Gy 程度で早期反応組織に近い。

造血幹細胞についての記述

造血は胎児期では主に肝臓で行われるが、出生後は主に骨髄で行われ、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞を生産している。白血球が減少すると免疫機能が低下する。赤血球の減少は、貧血をおこし、 血小板が減少すると血液が凝固しにくくなる。骨髄では造血幹細胞から種々の血液細胞が生産される。幼児期には造血が多く、骨髄は赤色を呈することから赤色骨髄と呼ばれ、 放射線による障害のリスクは大きい。しかし、高齢者では加齢によりその機能は低下し、脂肪細胞が増えていく。このような骨髄はその外観から黄色と呼ばれる。

 

造血細胞由来の腫瘍は広義では白血球と呼ばれ、原爆被爆者では発生の潜伏期は2〜3年、ピークは被爆後6〜7年である。被爆時年齢が若いほど初期の 死亡リスクは高く、リスク減少は急激である。一方、被爆時年齢の高い者は初期の死亡リスクは低く、その減少傾向は緩やかである。線量反応関係は2Gy以下では直線2次(LQ)モデル が最も良い適合を示す。病型別では慢性リンパ性白血球発生のリスクの増加は認められていない。

DNA分裂に関する記述

細胞は、DNAの複製と細胞分裂を繰り返しながら増殖する。これを細胞周期と呼び、DNA複製の時期をS期、細胞分裂の時期をM期と呼ぶ。 細胞分裂の時期には、DNAが染色体という特徴的な構造をとるので、形態的に区別することができる。S期の細胞は、形態的に区別することは困難であるが、 DNAの前駆体であるチミジンの取り込みによって知ることができる。また、S期の後、M期の前の時期をG2期、M期の後、 S期の前をG1期と呼ぶ。細胞周期の進行が停止し、増殖していない細胞はG1期の特定の時期にとどまっていると考えられており、これをG0期と呼ぶことがある。 細胞周期をそろえた培養細胞の各時期に放射線を照射し、その後の生存率を解析することにより、放射線感受性の細胞周期依存性を調べることができる。一般的に細胞はM期で照射した場合に最も高い感受性を示す。また、G1期の後半からS期への移行期も高い感受性を示す。 これに対し、S期後半の細胞が最も高い抵抗性を示す。

 

増殖している細胞に放射線照射をすると、細胞周期の進行が一時的に停滞する。この細胞周期の停滞には、DNA損傷を基点とする細胞内情報伝達系の関与が 知られており、がん抑制タンパク質としても知られるp53や、ヒトの放射線感受性遺伝病である毛細血管拡張性運動失調症のタンパク質として知られるATMなどが重要な役割を果たしている。 毛細血管拡張性運動失調症の細胞では放射線感受性と照射後の細胞周期の停滞の両方に異常が認められることから、放射線感受性と細胞周期の進行が深く関わっていることが示唆される。 照射後細胞を一時的に、増殖を抑制するような環境におくことによって致死効果が軽減されるPLD回復と呼ばれる現象もこのことを示している。

 

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