自然放射線についての記述

天然に存在する放射性核種には、地球が形成された40数億年前から存在している一次放射性核種、これの壊変で生成した二次 放射性核種、及び主に宇宙線による核反応で生成した誘導放射性核種がある。一次放射性核種として現存するものは、数億年以上 の半減期を持っている。一次放射性核種のうち232Th、235U、238Uはそれぞれトリウム系列、アクチニウム系列、ウラン系列と呼ばれる 壊変系列を作り、多くの放射性核種をえて最後は鉛になる。

 

II

壊変系列を作らない一次放射性核種の代表的なものとして40Kがあり、カリウムに同位体存在度で0.0117%含まれている。半減期は1.28×10^9年(4.04×10^16秒)で、500gのヨウ化カリウム(KI)の中の40Kの放射能は 3600Bqとなる。ただし、ヨウ化カリウムの式量は166、アボガドロ定数は6.02×10^23/molとする。40Kの10.7%は EC 壊変して40Arになり、89.3%は β- 壊変して40Caになる。ある鉱物の生成時にアルゴンが含まれておらず、その後40Kの壊変で生成した40Arがすべて鉱物中に保持されているとすると、40Kの半減期のX倍経過後の40Kの原子数は鉱物生成時の (1/2)^x 倍、40Arの原子数は鉱物生成時の40Kの 0.107×(1-(1/2)^x) 倍となる。

解説

40Kは壊変系列を作らない天然放射線核種の1つである。その半減期は T1/2(40K) = 1.28 × 10^9年(4.04 × 10^16秒)で、普通のカリウムに0.0117%の割合で含まれる。 ここで、ヨウ化カリウム(KI)中の40Kの放射能をA(40K)とすると40Kの原子数 N(40K)、壊変定数λ、ヨウ化カリウムの質量w = 500gと分子量M = 166より、次のように示される。
A(40K) = λ・N(40K) ここでN(40K) = (w/M) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = (500[g]/166[mol/g]) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = 21.9 × 10^19 個 したがって、A(40K) = λ・N(40K) = (ln2/T(1/2)(40K)) × 21.9 × 10^19 = (0.693/4.04×10^16[s]) × 21.9 × 10^19 = 3600Bq
40Kは、β-(89.3%)、EC(10.7%)の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と40Ar(安定)にそれぞれ変換する。40Kが壊変すると40Arが生成するが、この40Arと40Kの存在量から年代を 知ることができるため、40Kは岩石などの年代測定に利用できる。ここでは、40Kの半減期TのX倍経過後の40Kと生成した40Arの原子数(それぞれNx(40K)とNx(40Ar))について 鉱物生成時の40K(初期原子数N0)に対する割合を考える。
ここで、半減期のX倍経過後の時間はX・Tとなる。Nx(40K) = N0・e^(-λt) = N0・(1/2)^(t/T) = N0・(1/2)^(XT/T)
よって、Nx(40K)/N0 = (1/2)^X
次に、40Kの壊変で生成した40Arがすべて保持されるので、分岐比10.7%より Nx(40Ar) = [N0 – N0(1/2)^X] × (10.7/100) = N0 × 0.107 × [1 – (1/2)^X]
よって、Nx(40Ar)/N0 = 0.107 × [1 – (1/2)^X]

 

III

14Cは大気中14Nと二次宇宙線の中性子との(n,p)反応で生成する誘導放射性核種で、半減期は 5730 である。この14Cは考古学者資料などの年代決定に利用されており、例えば、14Cの半減期の1/2を経過したコメ試料中の14Cは、イネ枯死時の 0.71 倍になっている。 年代決定のための14Cの測定には比例計数管や液体シンチレーションなどの放射能測定器が用いられてきたが、最近は加速器質量分析器の利用により、数万年前までの年代測定が可能になっている。宇宙線による誘導放射性核種としては、14Cのほかに、窒素、酸素及びアルゴンの核破砕反応で生成する3H、7Be、36Clなどの多数の核種がある。

解説

天然誘導放射性核種:宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する核種である。14Nと二次宇宙線の中性子は次の核反応により14Cを生成する。 14N(n,p)14C 放射性炭素14Cは14CO2として、植物や動物の組織内に吸収されて生体の一部となる。樹木や骨、貝殻のような個体に取り込まれ、その中に留まるようになった 炭素は、その個体の中で14C固有の壊変定数で放射能を失う。この測定には、14Cの非常に低いβ-線のエネルギーより液体シンチレーションカウンタが用いられる。近年は 加速器質量分析装置の利用も可能になっている。また、宇宙線が大気中の酸素、窒素、アルゴンなどにあたって起こる破砕反応で生成する誘導放射性核種には、3H、7Be、10Be、 14C、22Na、32Si、32P、33P、35Sなどがある。
イネ枯死直後のコメ試料中の14Cの放射能をA0、14Cの半減期をTとすると、経過時間t後の放射能は次のようになる。A = A0・(1/2)^(t/T)
ここで、半減期の1/2経過した後なので、t = T/2 A = A0・(1/2)^(T/2)/T = A0・(1/2)^(1/2) = A0/√2 よってA/A0 = 1/√2 ≒ 0.71

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

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