一般公衆が受ける被ばく、自然放射線についての記述
Ⅰ
一般公衆が受ける自然放射線及び人工放射線による1人当たりの年間実効線量は、世界平均値に比べ日本の推定値は大きい。これは、日本において医療用放射線による被ばく線量が大きいためである。自然放射線による被ばく線量で比較した場合には、日本の年間被ばく線量は世界平均値に比べ小さい。これは日本では 222Rn による被ばく線量が世界平均値に比べ小さいためであり、その原因としては建築様式の違いがあげられる。
解説
自然放射線による被ばく線量は、世界平均で 2.4 mSv/年、日本では 1.5 mSv/年であり、これは建築様式の違い(木造家屋の建材や密封性の違い)により、ラドンによる被ばく線量が小さいことによる。一方、異様放射線被ばくは、諸外国が 1 mSv強/年であるのに対し、日本では 2.3 mSv/年と大きく、一般公衆の自然・人工を合わせたトータルの年間被ばく線量は諸外国に比べ大きくなっている。
Ⅱ
自然放射線は、宇宙線、宇宙線起源核種からの放射線及び原始放射線核種からの放射線の3種類に大別される。宇宙線には、地球外の宇宙空間から飛来する一次宇宙線と、それが大気と相互作用を起こして生成される二次宇宙線がある。一次宇宙線は主に陽子からなる。二次宇宙線は陽子、中性子、電子、γ線、パイオン(π中間子)及びミューオンなどからなる。 宇宙線起源核種とは、宇宙線が他の元素と衝突して生成される放射性核種である。宇宙線起源核種には 14C や 3H などが含まれ、体内に取り込まれることにより内部被ばくの原因となる。これらの宇宙線起源核種による被ばくは、原始放射性核種による被ばくに比べて小さい。宇宙線による被ばくは地磁気の影響により、高緯度で大きい。また、高度とともに 増加する。
補足
一次宇宙線は陽子や重粒子からなり、大気圏に突入すると大気を構成する原子(分子)と衝突して核破砕を起こし、二次宇宙線や宇宙線起源核種を生成する。中性子による 14N (n,p) 14C は有名な反応である。宇宙線について、地磁気により高緯度で高線量率になること、空気による遮蔽が薄れることにより高高度で高線量率になることは押さえておきたい。
Ⅲ
原始放射性核種とは地球の誕生時から存在してきた放射性核種で、それらの主なものは、40K、トリウム系列核種及びウラン系列核種の3種類である。これらのうち 40K の半減期は 12.5 億年であり、40K は β-壊変 を起こして 40Ca になり、あるいは軌道電子捕獲 を起こして 40Ar になる。原始放射性核種は、地殻、岩石・土壌、海水、建材、人体などほとんどすべての物質中に様々な濃度で含まれている。地殻や岩石等の違いにより含まれる放射能濃度はまちまちであり、このことも地域による自然放射線の線量率が異なる原因となっている。日本国内では、一般に西日本の方が東日本よりも自然放射線の線量率は高くなる傾向がある。また、トンネル内での自然放射線の線量率は高く、湖の上では 低くなる。
また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。