水の吸収線量評価法
200 MeV の陽子線を水に照射したとき、水中のある深さにおける吸収線量は、そこでの陽子線のフルエンスと水の質量阻止能の積で与えられる。(吸収線量 D = (S/ρ)・φ = Sm・φ[Gy]。S:水の線衝突阻止能。φ:体積 V の受けるエネルギーが通過する陽子数のフルエンス。Sm:質量衝突阻止能)また、そこに空気の空洞を導入し、空洞のサイズが陽子線の場 を乱されないほど十分小さい場合、空洞理論によって水と空気の吸収線量の比はそれらの質量阻止能の比で与えられる。空気の吸収線量を 0.68 Gy としたとき、空気の質量阻止能が 4.82 MeV・cm2/g。水の質量阻止能が 5.44 MeV・cm2/g としたとき、水の吸収線量 Dm は Dm = Dg・(Sm/Sg) = 0.68 × (5.44/4.82) = 0.77 Gy Dg:空気の吸収線量。Sg:空気の質量阻止能。Sm:水の質量阻止能。光子を照射したときの水の吸収線量は空気の空洞電離箱により次のように評価される。
① 水中に空洞電離箱を挿入する場合
空洞のサイズが二次電子の飛程に比べ十分小さいときには、水中で発生した二次電子のフルエンスは空洞中で変化せず一様であり、また、空洞中での光子の相互作用は無視でき、光子束は変化しない。よってこうした条件では空洞電離に基づき、水の吸収線量は水の空気に対する二次電子の平均質量阻止能の比を空気の吸収線量に乗ずることにより得られる。
② 空気中に空洞電離箱を置き、その吸収線量から水の吸収線量に換算する場合。
空洞空気の吸収線量は光子が空気との相互作用により生じた二次電離により主としてもたらせるため、荷電粒子平衡の条件下において光子のエネルギーフルエンスとその光子に対する空気の質量エネルギー吸収係数の積で表すことができる。
補足
エネルギーが Eg の光子(フルエンスφ)に物質が照射されたとき、二次電子平衡が成り立っていれば、吸収線量はカーマに等しく D = K = (μen/ρ)・Eγ・φ = μen,m・φ[Gy] μen:線エネルギー吸収線量。ρ:密度。μen,m:質量エネルギー吸収係数。φ:エネルギーフルエンス