問1

培養中の細胞の生体高分子を標識する場合、次の標識化合物と生体高分子の組み合わせのうち、最も適切なものはどれか。

1 [3H]ウリジン ー DNA

2 [35S]メチオニン ー RNA

3 [125I]5-ヨード-2′-デオキシウリジン ー RNA

4 [α-32P]デオキシシチジン三リン酸 ー DNA

5 [3H]チミジン ー タンパク質

解答 4

主な標識化合物と使用方法

 

標識化合物 使用方法
[3H]チミジン(あるいは[14C]チミジン)、[32P]デオキシリボヌクレオチド、[125I]ヨードデオキシウリジン DNA合成量の測定
[3H]ウリジン(あるいは[14C]ウリジン)、[125I]ヨードウリジン RNA合成量の測定
[3H]ロイシン タンパク質の代謝速度の測定
[35S]メチオニン、[3H]グリシン、[3H]ヒスチジン タンパク質合成量の測定
[125I]標識化合物 ラジオイムノアッセイ(免疫活性検査)
[14C]グルコース 脳・がん細胞を標識
[α-32P]デオキシシチジン三リン酸 DNA の塩基配列の測定

1 誤 [3H]ウリジンは、RNA の標識に用いる。

2 誤 [35S]メチオニンは、タンパク質の標識に用いる。

3 誤 [125I]5-ヨード-2′-デオキシウリジン は DNA の標識に用いる。

4 正 [α-32P]デオキシシチジン三リン酸(dCTP) は、DNA の塩基配列決定に用いる。

5 誤 [3H]チミジンは、DNA の標識に用いる。

問2

治療や診断に利用される次の標識化合物と疾患又は検査項目の組み合わせのうち、適切なものはどれか。

A [90Y]抗CD20抗体 ー 悪性リンパ腫

B [51Cr]クロム酸ナトリウム ー 赤血球寿命

C [67Ga]クエン酸ガリウム ー 心筋梗塞

D [99mTc]ピロリン酸 ー 糖尿病

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 [90Y]抗CD20抗体・・・静脈内投与すると CD20 陽性細胞に集積し、90Y のβ線で細胞を破壊する。

B 正 [51Cr]クロム酸ナトリウム・・・クロム酸ナトリウムにより赤血球を標識し、循環血液量と寿命の測定が行われる。

C 誤 [67Ga]クエン酸ガリウム・・・ガリウムシンチグラフィによる悪性腫瘍診断に用いられる。

D 誤 [99mTc]ピロリン酸・・・心筋シンチグラフィによる心筋梗塞の検査に用いられる。

問3

放射線による DNA 鎖切断に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

A 低 LET放射線の場合、1 本鎖切断よりも 2 本鎖切断の方が起こりやすい。

B 低酸素下では通常酸素下よりも 2 本鎖切断が増える。

C 細胞周期の G0 期では G2 期よりも細胞当たりの 1 本鎖切断は多い。

D ラジカルスカベンジャーは 1 本鎖切断の数を増加させる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

A 誤 電離密度が粗であるため、1 本鎖切断の方が起こりやすい。

B 誤 低酸素下では酸素効果により DNA への損傷は少なくなる。

C 誤 G2 期は DNA 合成期を経て DNA が倍量となっており、G0 期に比べ影響が大きい。

D 誤 ラジカルスカベンジャーは間接効果を低減する。

問4

放射線における希釈効果についての次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 間接作用を特徴付けるものである。

B 希釈効果とは生成されたラジカルが水分子で希釈されることである。

C 溶質として存在する酸素などの生体高分子の不活性化を指標とした場合、吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定である。

D 溶質として存在する酸素などの生体高分子の不活性化を指標とした場合、吸収線量が一定であれば不活性化率は濃度によらず一定である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

A 正 間接効果の修飾要因、つまり間接効果の存在を示す根拠として説明される。

B 誤 希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。

C 正 間接効果で、不活化数を指標にすると、濃度によらず一定となる。

D 誤 間接効果で、不活化の割合を指標にすると、濃度の増加に伴い低下する。

問5

放射線被ばくと染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 二動原体染色体は被ばく線量評価に用いられる。

B 誘発される染色体異常の頻度は、線量率により異なる。

C 小核の形成は放射線に特有な異常である。

D 安定型の染色体異常が観察されることがある。

1 ABDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 形態の異常が観察しやすいため。

B 正 線量率が低ければ、頻度は低下する。

C 誤 小核は染色体の断片。化学物質などの他の変異原物質でも見られる。

D 正

染色体突然変異(染色体異常)

染色体突然変異では、染色体の構造に変化が生じ、その変化に伴い染色体上の遺伝子に変化が生じる。染色体突然変異は遺伝子側に注目した呼び方であるが、染色体側に注目した呼び方は染色体異常である。 染色体異常の原因は染色体の切断であり、切断の大部分は修復されるが、切断されたままであったり、誤って再結合した場合に異常が現れる。染色体異常の型には欠失、逆位、環状染色体、転座、2動原体染色体 などがある。

① 欠失・・・同一腕内の 2 ヶ所に切断が起こり中央部が欠失した腕内欠失と 1 ヶ所で切断が起こり末端部が欠失した末端欠失がある。

② 逆位・・・2 ヶ所で切断が起こり、中央部が 180°回転して再結合したもの。

③ 環状染色体・・・両腕で切断が生じ、動原体を含む中央部の両端が再結合しリング状になったもので、リングとも呼ばれる。

④ 転座・・・2 個の染色体の間で部分的に交換が起こったもの。

⑤ 2動原体染色体・・・転座の交換の仕方によっては動原体を持った2動原体染色体が生じる。主に G1 期の被ばくによりなり、G2 期の時に染色分体異常が起きる。

環状染色体や 2動原体染色体は細胞分裂に際してうまく両極に分かれることがでず、異常は比較的早期に消失する。これを不安定型の異常という。一方、欠失、逆位、転座などは 細胞分裂によっても引き継がれ長期にわたって存在し、安定型の異常(発がんしやすい異常)といわれる。放射線の生物影響に基づき被ばく線量を推定する方法をバイオドシメトリ (生物学的線量算定)と呼ぶ。染色体異常の発生は確率的であり、低線量域では統計的なバラツキが大きい。染色体異常は染色体型と染色分体型に分けられる。 DNA 合成期より前(G1期での照射)に染色体が切断される(1対の染色分体の同じ位置に異常が認められる)と M 期で染色体型、DNA 合成期より後(G2期での照射)に染色体分体が切断されると M 期で染色分体型の異常となる。

問6

放射線による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 増殖死は照射された後に分裂を経て起こる細胞死である。

B 小核形成は増殖死の原因となる。

C 照射された細胞では分裂停止とともに代謝も停止する。

D 増殖死を定量するにはコロニー形成法を用いる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正

B 正 主要な部分の染色体が欠損すれば細胞死につながる。

C 誤 代謝が継続されるために、巨細胞などが見られる。

D 正 これに対して、間期死の定量では色素排出能などを観察する。

問7

放射線による突然変異に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 2 本鎖切断は染色体異常の原因となる。

B 放射線に特有な突然変異がある。

C G2 期に被ばくを受けると染色体型異常が生じる。

D 同一吸収線量で比較した場合、γ線の方が中性子線より誘発率は高い。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 2 本鎖切断では、誤修復が起こりやすい。

B 誤 非特異的な影響であり、他の要因で引き起こされたものと区別はつかない。

C 正 G2 期は DNA 合成期を経ており、照射を受ければ染色体分体の片側の異常となる。

D 誤 中性子線の方が影響が大きい。

問8

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 環状染色体をもつ細胞は正常に分裂する。

B 転座は安定型異常である。

C 二動原体をもつ細胞は細胞分裂により増殖する。

D 相互転座は染色体型異常である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 CとD

解答 5

染色体異常について下に記述する。

染色体突然変異(染色体異常)

染色体突然変異では、染色体の構造に変化が生じ、その変化に伴い染色体上の遺伝子に変化が生じる。染色体突然変異は遺伝子側に注目した呼び方であるが、染色体側に注目した呼び方は染色体異常である。 染色体異常の原因は染色体の切断であり、切断の大部分は修復されるが、切断されたままであったり、誤って再結合した場合に異常が現れる。染色体異常の型には欠失、逆位、環状染色体、転座、2動原体染色体 などがある。

① 欠失・・・同一腕内の 2 ヶ所に切断が起こり中央部が欠失した腕内欠失と 1 ヶ所で切断が起こり末端部が欠失した末端欠失がある。

② 逆位・・・2 ヶ所で切断が起こり、中央部が 180°回転して再結合したもの。

③ 環状染色体・・・両腕で切断が生じ、動原体を含む中央部の両端が再結合しリング状になったもので、リングとも呼ばれる。

④ 転座・・・2 個の染色体の間で部分的に交換が起こったもの。

⑤ 2動原体染色体・・・転座の交換の仕方によっては動原体を持った2動原体染色体が生じる。主に G1 期の被ばくによりなり、G2 期の時に染色分体異常が起きる。

環状染色体や 2動原体染色体は細胞分裂に際してうまく両極に分かれることがでず、異常は比較的早期に消失する。これを不安定型の異常という。一方、欠失、逆位、転座などは 細胞分裂によっても引き継がれ長期にわたって存在し、安定型の異常(発がんしやすい異常)といわれる。放射線の生物影響に基づき被ばく線量を推定する方法をバイオドシメトリ (生物学的線量算定)と呼ぶ。染色体異常の発生は確率的であり、低線量域では統計的なバラツキが大きい。染色体異常は染色体型と染色分体型に分けられる。 DNA 合成期より前(G1期での照射)に染色体が切断される(1対の染色分体の同じ位置に異常が認められる)と M 期で染色体型、DNA 合成期より後(G2期での照射)に染色体分体が切断されると M 期で染色分体型の異常となる。

A 誤 環状染色体は細胞分裂の際にうまく両極に分かれることができず、二動原体染色体とともに不安定型の異常に分類される。

B 正 上記参照

C 誤 上記参照

D 正 相互転座(転座と同じ)は安定型の異常である。したがって、細胞分裂を経て、DNA 合成が行われると、両腕に異常がある染色体型の異常となる。

問9

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 染色体異常は分裂期に照射された細胞だけに生じる。

B 間期染色体を薬剤で凝集させることで、分裂期を経なくても染色体異常を観察できる。

C 不安定型異常は発がんの原因となる。

D 抹消血中のリンパ球の染色体異常の出現頻度から被ばく線量の推定が可能である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 どの時期の照射によっても起こる・

B 正 カリクリンAという薬剤が用いられる。

C 誤 不安定型は比較的早期に消失するため、発がんの原因とはなりにくい。

D 正 生物学的線量評価(バイオドシメトリ)といい、主に二動原体染色体を観察する。

問10

細胞周期と放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A S 期後半は放射線抵抗である。

B どの細胞周期でも細胞致死感受性に関する OER に大きな変化はない。

C 高 LET 放射線では、X 線に比べて放射線致死感受性の細胞周期依存性が大きい。

D 放射線照射によって細胞周期は M 期と G1 期の間で停止する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 合成された相同染色体が距離的に近くにあるため、相同組換え修復の効率が高い。

B 正 OER の細胞周期依存性は小さい。

C 誤 高 LET 放射線では、X線に比べて細胞周期による影響の差は小さい。

D 誤 細胞周期の停止は、あらゆる時期に起こると考えられている。

問11

γ線急性全身被ばくによる骨髄死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病の異常増殖による。

B 晩発障害である。

C 治療方法として骨髄移植がある。

D 治療しなければ、4 Gy の被ばくで約半数のヒトが骨髄死で死亡する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 造血臓器が障害され白血球減少が起こり、感染、免疫能の低下が原因となる。

B 誤 リンパ球は被ばくした直後から減少する。

C 正 造血幹細胞移植として骨髄移植の他、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植がある。

D 正 ヒトの LD(50) は 3 ~ 5 Gy、LD(100) は 7 ~ 10 Gy とされている。

問12

γ線全身被ばくによる腸管への影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 腺窩細胞(クリプト細胞)は絨毛上皮細胞よりも放射線感受性が高い。

B 腺窩細胞(クリプト細胞)がすべて死に至っても、絨毛上皮細胞が生き残れば腸死に至ることはない。

C 一般に腸死は被ばく後 2 日以内に起こる。

D 脱水は腸死の直接の原因の一つである。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 正 クリプト細胞は幹細胞で、吸収上皮細胞を産生する。幹細胞の感受性が高い。

B 誤 クリプト細胞の死により吸収上皮細胞の供給が絶たれる。現在ある吸収上皮細胞の寿命が尽きると、粘膜上皮の剥離、萎縮、潰瘍が発生する。

C 誤 2 週間程度である。

D 正 体液バランスの失調は死亡原因となる。

問13

放射性核種と体内での集積部位の関係として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 32P ー 肝臓

B 60Co ー 肺

C 90Sr ー 骨

D 137Cs ー 全身

E 226Ra ー 骨

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACDのみ 4 BCEのみ 5 CDEのみ

解答 5 放射性核種の臓器親和性を下記にまとめた。

放射性核種の臓器親和性

 

核種 臓器親和性
32P , 45Ca , 65Zn , 90Sr , 226Ra , 232Th , 238U , 239Pu , 241Am
40K , 137Cs 筋肉
222Rn , 232Th , 238U , 239Pu
53Fe , 59Fe 骨髄
3H , 14C , 24Na , 40K , 137Cs 全身
59Fe , 60Co , 65Zn , 232Th , 239Pu 肝臓
131I 甲状腺
59Fe 脾臓

問14

γ線急性全身被ばくによる中枢神経死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中枢神経死は腸死よりも小さい線量で起こる。

B 被ばく線量が大きくなると中枢神経死に至るまでの期間は短くなる。

C 血管障害は中枢神経死の直接の原因の一つである。

D 血液脳関門の障害は中枢神経死では起きない。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 誤 線量の小さい頃に、骨髄死ー腸死ー中枢神経死である。

B 正 一般に、被ばく線量の増加は潜伏期間を短縮させる。

C 正 神経細胞自体の細胞死は起こらず、血管系の障害が死亡の大きな原因となる。

D 誤 神経細胞自体の細胞死は起こらず、血管系の障害が死亡の大きな原因となる。

問15

ベルゴニー・トリボンドーの法則に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 形態及び機能において未分化な細胞ほど放射線感受性は高い。

B 将来の分裂回数が少ない細胞ほど放射線感受性は高い。

C 細胞分裂頻度の高い細胞ほど放射線感受性は低い。

D ベルゴニー・トリボンドーの法則はリンパ球には当てはまらない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3 ベルゴニー・トリボンドーの法則を下記に記述する。

ベルゴニー・トリボンドーの法則

ベルゴニーとトリボンドーは「放射線感受性は細胞分裂の頻度の高いものほど、将来行う細胞分裂の数が多いものほど、形態・機能が未分化なものほど高い」という 3 点からなる放射線感受性についてのベルゴニー・トリボンドーの法則をまとめた。 成人において細胞分裂の頻度が高いのは細胞再生系であり、造血臓器(骨髄)、小腸、皮膚、水晶体、精巣(睾丸)などがこれに属する。さらに、細胞再生系には芽球(骨髄)や精原細胞(精巣)といった未分化な細胞も存在し、放射線感受性は高い。また、小児 あるいは胎児は活発な成長・発達をしており、将来行う細胞分裂の数も多く、細胞再生系に限らず全体の放射線感受性が高い。

問16

2 Gy のγ線急性全身被ばく後の末梢血の変化に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 赤血球の減少率は血小板に比べ小さい。

B 赤血球の減少は顆粒球の減少よりも早く認められる。

C リンパ球の減少は血球の中で最も遅く起こる。

D 顆粒球は被ばく後数日の間に一過性に増加する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3 末梢血の変化に関する記述を下記に示す。

造血臓器は、赤血球、白血球などの血液細胞(血球)を産生する臓器であり、骨髄、リンパ球がこれにあたる。胎児期には、肝臓、脾臓も造血機能を持つ。骨髄は造血機能を持つ赤色骨髄と脂肪変性して造血機能を失った 白色骨髄(黄色骨髄)に分けられる。小児期において、ほとんど全ての骨髄が赤色骨髄であるが、年齢が増大すると白色骨髄の割合が大きくなる。赤色骨髄が 0.5 Gy 程度被ばくすると、造血機能の低下が起こり 血球の供給が止まる。このため、造血臓器の放射線障害は末梢血中の血球数の変化によって検出できる。しかし一方では、放射線被ばくによりリンパ球は血球自体の細胞死が引き起こされるし、他の血球においても 寿命が尽きたものは死んで抹消血中から除かれていく。したがって、放射線影響による血球数の変化は、造血臓器と抹消血球の両方について供給と減少の関係を総合してとらえることが重要である。赤血球および血小板は核を持たないが、 白血球には核がある。白血球は起源や形態から、リンパ球と顆粒球に分類され、さらに顆粒球は、酸性や塩基性の染色液によく染まるか否かおよび形態の観点から、好酸球、好中球、好塩基球および単球に分類される。白血球においては、 リンパ球を除き、顆粒球の種類による放射線影響の違いは特にない

A 正 図に示すように赤血球の減少率は血小板に比べ小さい。

B 誤

C 誤 リンパ球の減少は最も早く見られる。

D 正 貯留プールからの一過性の放出による初期白血球増加が見られることがある。

問17

原爆被爆者の疫学調査において、放射線発がんの過剰絶対リスクが最も大きいものはどれか。

1 白血病

2 食道がん

3 胃がん

4 肝がん

5 甲状腺がん

解答 3

絶対リスクは放射線により影響が増加した総数(または率)をいい、相対リスクはコントロール群と比較して被ばく群のリスクが何倍になっているかを表すものである。がんの過剰症例数は、胃、乳房、直腸、甲状腺の順に多いとの寿命調査(LSS)の報告がある。

絶対リスク予測モデル

線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法。自然発生が少ない白血病が適合。絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定で、年齢が関わるのは相対リスク。

相対リスク予測モデル

線量あたり自然発生率の何倍の影響が発生するという評価法。自然発生が多い固形がんが適用。相対リスクの大小は自然発生が多いものは小さくなり、自然発生が少ないものは大きくなる。 日本人では白血病の自然発生は少なく、胃がんは多い。2012年に発表された寿命調査第14報では、全固形がんの過剰相対リスクは 1 Gy あたり 0.42 とされている。したがって相対リスクは 1.42 となる。

補足 相対リスクは自然発生の何倍かを考えており、過剰相対リスクは自然発生分の 1 を引いた値である。したがって相対リスクと過剰相対リスクの差は常に 1 である。また相対リスクは白血病が最も高くなる。 相対リスクの大小関係は自然発生が多いものは小さく、少ないものは大きい。

 

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

問18

原爆被爆者における発がんの潜伏期間に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病では被ばく時の年齢が若いほど短い。

B 白血病では被ばく線量が大きいほど短い。

C 肺がんでは被ばく時の年齢が若いほど短い。

D 肺がんでは被ばく線量が大きいほど短い。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2 放射線発がんの潜伏期間については、白血病とその他の固形がんとでは様相が全く異なる。肺がん(固形がん)の発現分布は、相対リスク予測モデルに良く従い、発がんの好発年齢(壮年期、老年期)における発症が多い。このため、被ばく年齢が若ければ潜伏期間が 長くなるし、被ばく線量が大きくても好発年齢まで発症が遅れる。一方、白血病は絶対リスク予測モデルに発現分布は従い、最小潜伏期間は 2 年、発症のピークは 7 ~ 8 年とされている。

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

白血病と固形ガンの特徴

白血病

① 造血細胞由来の腫瘍

② 原爆被ばく後最小潜伏期間 2年、ピーク 6 ~ 7年

③ 白血病では潜伏期間は被ばく線量が大きい程短い

④ 被ばく時の年齢が若い程、潜伏期間が短い

⑤ LQ(直線-2次曲線)モデルがよく適合する・・・低LET放射線の場合、被ばく線量と不安定型染色体異常の頻度の関係はLQモデルに当てはまる。

⑥ 絶対リスク予測モデルが適合

固形ガン

① 最少潜伏期間は 10 年

② 潜伏期間は年齢によって複雑

③ 若年被ばくの方が潜伏期間が短い

④ 直線モデル(Lモデル)が適合・・・X線による線量の突然変異頻度と吸収線量との関係は直線的とされている。

⑤ 相対リスク予測モデルが適合

問19

次の放射線による影響のうち、確定的影響として正しいものの組み合わせはどれか。

A 胎児被ばくによる発がん

B 胎児被ばくによる奇形

C 白内障

D 皮膚潰瘍

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

A 誤 発がんは確率的影響である。

B 正 しきい線量は 0.1 Gy。

C 正 しきい線量は 0.5 Gy。

D 正 しきい線量は 10 Gy。

問20

我が国における自然放射線による年間実効線量の最近の評価に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 年間実効線量は約 2.1 mSv と推定されている。

B 世界平均に比べ我が国ではラドン・トロンによる内部被ばく線量が大きい。

C 内部被ばくは主に鉛 210、ポロニウム 210 によるとされている。

D 大地からの放射線による被ばく線量は宇宙線による被ばく線量の約 3 倍である。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 主として魚に含まれる 210Po からの寄与分の評価が増加したことにより、2.1 mSv/年 とされた。

B 誤 ラドン・トロンの寄与が低いのは、木造家屋が多いことによる。

C 正 主として魚に含まれる 210Po からの寄与分の評価とされている。

D 誤 大地からの放射線と宇宙線による被ばくは約 0.3 mSv/年 と同程度である。

問21

X線による体内被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 小頭症のしきい線量は 10 mGy 程度である。

B 精神遅滞が生じやすいのは妊娠 25 週目以降である。

C 精神遅滞のしきい線量は 10 mGy 程度である。

D 致死感受性が最も高いものは着床前期である。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4 胎児期の放射線影響を下表に示す。

胎児期の放射線影響

 

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

A 誤 小頭症のは奇形の一つであり、しきい線量は 150 mGy。

B 誤 精神遅滞が生じやすいのは受精 8 週 ~ 受精 25 週である。

C 誤 精神遅滞のしきい線量は 200 ~ 400 mGy 程度である。

D 正

問22

X線による体内被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 奇形が生じやすい時期は、受精後 1 週間までの期間である。

B 発がんリスクは、小児と比較して非常に高い。

C 器官形成期に胎児が 0.5 Gy 被ばくすると奇形発生のリスクが増す。

D 遺伝的影響も想定されている。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5 胎児期の放射線影響を下表に示す。

胎児期の放射線影響

 

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

A 誤 奇形は器官形成期(受精 9 日 ~ 受精 8 週)に生じやすい。

B 誤 体内被ばくと小児期の被ばくのリスクは同程度である。

C 正 奇形のしきい線量は 150 mGy。

D 正 遺伝的影響も発がんも想定されている。

問23

遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 倍加線量の逆数は単位線量当たりの突然変異の過剰相対リスクを表す。

B 遺伝的影響のしきい線量は 1 Gy 程度とされている。

C 放射線被ばくとは無関係に生じることがある。

D 遺伝的影響には線量率効果が見られない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 倍加線量は自然発生と同じだけの影響を起こすのに必要な線量であり、倍加線量が大きいということは、一定の影響を起こすために大きな線量が必要であるということを示すので、感受性が低いことを意味する。したがって、倍加線量が大きいほど遺伝的影響は起こりにくいということを意味する。倍加線量の逆数は単位線量あたりの相対突然変異リスクを表す。

B 誤 遺伝的影響のしきい線量はない。

C 正 自然発生の遺伝的影響がある。

D 誤 精原細胞、卵細胞に照射したマウスの実験で線量率効果は確認されている。

問24

放射線による遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 遺伝的影響の重篤度は線量に依存しない。

B 原爆被爆者の調査では見つかっていない。

C 遺伝的影響ののリスク推定では、動物実験のデータも利用されている。

D 遺伝的影響は倍加線量が大きいほど起こりやすい。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 確率的影響の重篤度は線量に依存しないとされている。

B 正 マウス等では確認されているが、ヒト(原爆被爆者)では確認されていない。

C 正 ヒトでは確認されていないため、倍加線量法で間接的に求める際に用いる。

D 誤 倍加線量は自然発生と同じだけの影響を起こすのに必要な線量であり、倍加線量が大きいということは、一定の影響を起こすために大きな線量が必要であるということを示すので、感受性が低いことを意味する。したがって、倍加線量が大きいほど遺伝的影響は起こりにくいということを意味する。

問25

低 LET 放射線と比較した高 LET 放射線の細胞致死作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジカルスカベンジャーによる防護効果が小さい。

B 間接作用の寄与が大きい。

C RBE が大きい。

D 線量率効果が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2 低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

間接作用の修飾要因

① 希釈効果

希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。主に酵素濃度が減少する。 ① 溶質として存在する酵素などの生体高分子数の不活化を指揮とした場合吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定 → 同じ条件での不活性化率は濃度の増加に伴い低下する。

② 酸素効果

組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果という。酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは酸素分子が電子親和性が大きく、 電子を取り込んでスーパーオキシドという反応性に富むラジカルを産生するためである。また、照射後に酸素濃度を高めたとしても酸素効果は見られない。同じ生物学的効果を 得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。

OER = (無酸素下である効果を得るのに必要な線量)/(酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量)

OERは酸素分圧の上昇につれて大きくなるが、酸素分圧が 20 mmHg を越えるとほぼ一定となる。低LET(線エネルギー付与)放射線ではOERは 2.5 ~ 3 程度であるが、 高LET放射線では酸素効果は小さい。

③ 保護効果

ラジカルと反応しやすい物質が照射野に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので放射線の効果は減少する。これを保護効果といい、このような働きを持つ物質を放射線防護剤あるいは単に防護剤という。 SH化合物などのラジカルスカベンジャーはその一例である。SH基にはシステイン、システアミン、グルタチオン、シスタミンがある。またOH基も還元作用があることから、 アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなども同様に保護効果を持つ。

④ 温度効果

温度が低下した状態では放射線効果は減少する。これを温度効果という。ラジカルの拡散が低温により妨げられるためだと考えられている。

A 正 高 LET 放射線は電離密度が高く、生じたラジカルの再結合が起こる。このため、間接作用の寄与は小さくなる。

B 誤 低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

C 正

D 誤 線量率効果を含め、照射条件による修飾は一般に小さい。

問26

次の放射線のうち、高 LET 放射線に分類されるものの組み合わせはどれか。

A γ線

B β線

C 中性子線

D 炭素イオン線

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5 低 LET 放射線:γ線、β線。高 LET 放射線:中性子線、炭素イオン線

問27

培養細胞の致死効果を指標とした RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞の種類によって値が異なる。

B 線量率によって値が変化する。

C 酸素濃度の違いによる効果の違いを表す。

D LET の増加とともに増加し続ける。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1 RBE(生物学的効果比)についての記述を下記に示す。

RBE(生物学的効果比)

放射線の線質の違い、すなわちLETの違いにより影響の違いを表す指標として、生物学的効果比(RBE)がある。RBEは酸素分圧、中性子のエネルギー、線量率効果、細胞の種類によって変化する。一般に高LET放射線の方がRBEは大きいが、LETが100keV/μmを越えるあたりからRBEはかえって減少する。これは overkill と呼ばれるが、細胞を殺すために必要なエネルギー以上の エネルギーが無駄になっているからと考えられている。

問28

炭素イオン線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線よりも細胞致死効果を指標とした RBE が大きい。

B 停止する付近で LET が最大となる。

C 治療に利用する場合、体内よりも体表面のがんに有効である。

D γ線よりも細胞致死効果の OER が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 炭素イオン線は重荷電粒子であり、高 LET 放射線である。

B 正 ブラッグピークを作る。

C 誤 ブラッグピークを作るため、深部治療に適している。

D 誤 酸素効果は間接効果であるため、高 LET 放射線では効果が小さい。

問29

各種放射線による外部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α線は身体の深部にまで到達する。

B β線は骨髄障害に比べ皮膚障害を起こしやすい。

C γ線は体内でブラッグピークを形成する。

D 熱中性子は骨髄障害に比べ皮膚障害を起こしやすい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 α線は皮膚の表皮で止まる。

B 正 β線の透過力も大きくなく、表層部にある皮膚への影響が大きい。

C 誤 ブラッグピークは荷電粒子で見られる現象である。

D 正 熱中性子の透過力は小さい。

問30

放射線荷重係数(ICRP 2007 年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光子では 1 である。

B α粒子と重イオンでは 20 である。

C 陽子では 5 である。

D 中性子では 25 である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1 放射線荷重係数 ICRP 2007 を下表に示す。

放射線荷重係数 ICRP 2007

 光子  放射線荷重係数
 光子(X線、γ線)  1
 電子、β線、μ粒子  1
 中性子(エネルギーの連続関数で設定)  2.5 ~ 20
 陽子線  2
 α粒子、核分裂片、重原子  20

下の表に詳しく示す。

 

急性障害・晩発障害

X線やγ線による高線量急性被ばくでは、全身被ばくする場合と局所被ばくする場合で様相が異なる。全身被ばくでは致死が問題となり、局所被ばくでは高線量を被ばくしても致死とはならず、被ばくした組織や臓器の障害が問題となることが多い。組織や臓器の放射線障害では、被ばくした直後から数週間以内に起こる障害を急性障害と呼び、 数ヶ月から数年後以降に起こる障害を晩期障害と呼ぶ。臓器にはそれぞれ特徴的な晩期障害が存在する。脳では脳壊死、脊髄神経では脊髄神経麻痺、腸管では穿孔・狭窄が晩期障害として重要である。これらの晩期障害は 主に血管の閉塞が原因であると考えられる。ただし、全ての晩期障害が血管の閉塞ではなく、肺の晩期障害として重要である放射線肺線維症では肺胞細胞の障害などが原因として考えられている。消化管に関しては、 放射線障害による小腸上皮の喪失を原因とする体液漏出や感染が原因となる。中枢神経障害による死亡は被ばく線量が 50 ~ 100 Gy を越える場合に起こり、脳浮腫による頭蓋内圧亢進が主な原因の1つと考えられている。LD 50/60 程度以上の線量を 全身被ばくした場合には肺では 30 日以内に放射線肺炎が生じる。特に肺でウイルス感染が高頻度に生じる点に注意が必要である。

補足

① 血管の閉塞では主に放射線脊髄炎(脊髄神経麻痺)、消化管穿孔、心筋症が起こる。② 肺、特に全肺照射の場合 10 Gy を下回る線量でも重篤な影響が現れる。 ③ 放射線肺炎のしきい線量は 6 ~ 8 Gy。肺は肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の放射線感受性が高く、フリーラジカル 産生、透過性亢進、サイトカインの誘導を経て、間質の浮腫が原因である。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

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