問1

1.3 MeV のγ線の運動量[kg・m/s] はいくらか。次のうちから最も近いものを選べ。

1 3.1 × 10^(-23)

2 6.9 × 10^(-22)

3 3.9 × 10^(-21)

4 5.1 × 10^(-21)

5 3.0 × 10^(-20)

解答 2

光子の運動量は p = E/c で与えられる。E = 1.3 MeV = 1.3 × 10^6 eV = 1.3 × 10^6 × 1.60 × 10^(-19) J = 2.08 × 10^(-13) J、c = 3.00 × 10^8 m/s であるから、p = 2.08 × 10^(-13)/(3.00 × 10^8) = 6.93 × 10^(-22) [kg・m/s]

問2

シンクロトロンに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 磁場を用いて粒子を周回させる。

B 高周波磁場を用いて粒子を加速する。

C 電子や陽子の高エネルギー加速器として用いられる。

D 粒子をあらかじめ加速する前段の加速器が用いられる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。

A 正

B 正

C 正

D 正

問3

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A μ粒子は電荷を持った粒子である。

B 安定な原子核のうち、陽子数と中性子数が共に偶数であるものの数は、そのどちらか一方が奇数であるものの数より大きい。

C 電子は陽電子よりも質量が大きい。

D 陽子は中性子よりも質量が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

 

解答 1

A 正 μ粒子はミュオンともよばれ、電子と同じレプトンという種類の素粒子の一種である。μ粒子の電荷は負、反μ粒子の電荷は正である。

B 正 例えば、地殻に多く存在する酸素(Z=8)では、中性子数 8 が最も存在度が多く(99.8%)、次に多く存在するケイ素(Z=14)でも、中性子数 14 が最も存在度が大きい(92.2%)。これは、ともに偶数である原子核の方が結合エネルギーが大きいためである。

C 誤 同じである。

D 誤 中性子の質量は陽子よりも若干大きい。

問4

 

特性X線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A エネルギーは原子核のエネルギー準位の差で決まる。

B エネルギー分布は線スペクトルを示す。

C オージエ電子と競合して放出される。

D 電子が原子核のクーロン場により減速される過程において発生する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

 

解答 4

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を 光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、 次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、 オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。 特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

A:誤 軌道電子エネルギー準位の差で決まる。

B:正

C:正

D:誤 電子が原子核のクーロン場により減速される過程において発生する光子は制動X線である。

問5

質量数 20 以上の安定な原子核の核子 1 個当たりの結合エネルギー[MeV]は、次のどの範囲にあるか。

1 0.5 ~ 1.0

2 1.0 ~ 2.0

3 2.0 ~ 5.0

4 5.0 ~ 10

5 10 ~ 20

解答 4

結合エネルギーは約 8 MeV (およそ 7.5 MeV ~ 8.8 MeV の範囲)である。

問6

アルミニウム原子核(27Al)の半径は水素原子核(1H)の半径のおおよそ何倍か。次のうちから最も近い値を選べ。

1 2

2 3

3 4

4 5

5 13

 

解答 2

原子核の半径 R は、

R = r(0)・A^(1/3) である。R(Al)/R(H) = (r(0)×27^(1/3))/(r(0)×1^(1/3)) = 27^(1/3) = 3

問7

放射性核種に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α壊変ではニュートリノが放出されない。

B α壊変と β- 壊変は同一核種では起きない。

C β+ 壊変が起きる核種では競合して EC 壊変が起きる。

D EC 壊変ではニュートリノが放出されない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正

B 誤 例えば、ウラン系列の 218Po は 99.98% の確率でα壊変、0.02% の確率で β- 壊変する。

C 正 EC 壊変核種では β+ 壊変を起こさない核種があるが、β+ 壊変核種は EC 壊変と競合する。

D 誤 β+ 壊変と同様、ニュートリノが放出される。

問8

137Cs の壊変に際して放出される種々の放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線と内部転換電子とは同時に放出される。

B E(max) = 514 keV のβ線(β1)とγ線とは同時に放出される。

C K-X線と K 殻オージエ電子とは同時に放出される。

D 特性X線に伴い放出される。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 137mBa は 90% の確率でγ線放出し、10% の確率で内部転換電子を放出する。ただし 1 個の 137mBa の核異性体転移で放出されるのはどちらかであり、同時には放出されない。

B 誤 137Ba の 662 keV の励起準位は半減期 2.55 分 の核異性体であるため、γ線はβ線よりも遅れて放出される。

C 誤 137mBa の内部転換によって K 殻電子が放出されると、Ba の K-X線と K 殻オージエ電子の放出は競合するが、1 回の内部転換によって放出されるのはいずれか一方である。

D 正

問9

サイクロトロンにおいて、磁束密度 B の磁場に垂直な平面内を非相対論的速度 v で運動する粒子(質量 M、電荷ze)が円軌道を 1 周するのにかかる時間は次のうちどれか。

1 (zeM)/(2πB)

2 (2πB)/(zeM)

3 (2πM)/(zeB)

4 [2π(ze)^2M]/(Bv)

5 (zeB)/(2πM)

解答 3

磁場中を磁場に直行して運動する荷電粒子に働くローレンツ力 F(L) = zevB である。円運動をする粒子に働く遠心力 F(C) は、F(C) = (Mv^2)/r である。サイクロトロンでは F(L) = F(C) が成立して加速されるのであるから、zevB = (Mv^2)/r、すなわち r = (Mv)/(zeB) である。r = (Mv)/(zeB) である。したがって 1 周に要する時間 T は、 T = (2πr)/v = (2πMv)/(zeBv) = (2πM)/(zeB) となる。

問10

熱中性子の検出に適した核反応の組み合わせは、次のうちどれか。

A 3He(n,p)3H

B 10B(n,α)7Li

C 16O(n,n’)16O*

D 35S(n,p)32P

E 197Au(n,γ)198Au

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2

A 正 3He(n,p)3H

B 正 10B(n,α)7Li

C 誤 16O(n,n’)16O*・・・高速中性子によって生じる非弾性散乱であるが、励起された 16O は直ちにγ線を放出して基底状態に戻る。

D 誤 35S(n,p)32P・・・しきい反応であり、高速中性子の検出に利用される。

E 正 197Au(n,γ)198Au

問11

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 2 MeV のα線の飛程と 1 MeV の陽子線の飛程はほぼ同じである。

B 5 MeV のα線と 1 MeV の電子線の空気に対する W 値は、α線の方が電子線より 2 倍大きい。

C 炭素の原子核を 5 MV の電圧で加速すると、得られる運動エネルギーは 30 MeV である。

D 3 MeV の電子線 2 μA の全エネルギーが 100 g の水に吸収されたとき、平均の吸収線量率は 60 Gy/s である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 より、2 MeV のα線の飛程 = 1/4。 1 MeV の陽子線の飛程 = 1 となるので、誤りとなる。

B 誤 α線の空気に対する W 値は 35.1 eV、電子では 34.0 eV であり、差は小さい。

C 正 炭素の原子番号は 6 であるから、E = zeV = 6 × 5 = 30 MeV である。

D 正 e を素電荷の値(1.6×10^(-19))とすれば、3 MeV の電子 1 個のもつ運動エネルギーは 3 × 10^6 e (J) である。2 μA の電子線で毎秒流れる電子の個数は 2 × 10^(-6)/e (個/s)であるから、吸収線量率は、[3×10^6 e×2×10^(-6)/e]/[100×10^(-3)] = 60(J/kg・s)

問12

原子番号 Z、質量 M の荷電粒子(速度 v)が物質中で停止する際の粒子飛程 R と、Z 及び M の関係として正しいものはどれか。

1 R = ∝ Z^2・M・v^4

2 R = ∝ Z^(-2)・M・v^4

3 R = ∝ Z・M・v^4

4 R = ∝ Z^(-1)・M・v^4

5 R = ∝ Z・M^(-1)・v^4

解答 2

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(n × Z)/ρ] ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(A × Z) × Na]

z : 有効電荷 e : 電子。

また S ≈ Z^2/v^2 = [(1/2)M × Z^2]/[(1/2)M × v^2] = (M × Z^2)/E とおける。

また飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 = Z^(-2)・M・v^4 と表される。

問13

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 電子対生成により生じた電子と陽電子は光子の入射方向に対して 90° の角度で放出される。

B 電子対生成では光子の全エネルギーが電子及び陽電子の運動エネルギーに転移する。

C 電子対生成が起きると特性X線又はオージエ電子が放出される。

D 電子対生成が起きる確率は物質の原子番号のほぼ 2 乗に比例して増加する。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 光子のエネルギーが 1.02 MeV より大きくなるとともに、電子と陽電子は光子の入射方向に対し前方に放出される傾向が強まる。

B 誤 光子のエネルギーから、電子と陽電子の静止質量に相当するエネルギー(0.511 MeV × 2 = 1.022 MeV)だけ小さい運動エネルギーに転移する。

C 誤 軌道電子との相互作用ではないため、放出されない。

D 正 電子対生成に対する原子断面積は、原子番号のほぼ 2 乗に比例する。

問14

500 keV 光子が物質に入射してコンプトン効果を起こした場合、次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 散乱光子のエネルギーは 332 keV を超えない。

B 反跳電子の最小エネルギーは約 170 keV である。

C 180° 方向に散乱される光子のエネルギーは約 170keV である。

D 反跳電子のエネルギーは 332 keV を超えない。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 4

コンプトン効果に関する記述を下にまとめる。

波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となる。これをコンプトン効果という。 コンプトン効果は粒子性を示し、光子エネルギー1〜3 MeV の範囲で起こる。コンプトン散乱は非干渉性散乱であり、① 入射波長より散乱波長の方が長い。 ② 線減弱係数は原子番号Zに比例する。原子当たりの断面積は原子番号Zに比例する。コンプトン電子のエネルギーEeは Ee = E0/[1 + (E0/(1 – cosθ)mc^2)] で表すことができる。 ここで60Coγ線についての補足。60Coγ線エネルギーでは全ての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いては、質量減弱計数はほぼ同じである。したがって、単位面積当たりの質量で 表した遮蔽体の厚さ、すなわち密度×厚さの積が大きいほど遮蔽効果が大きくなる。

A 誤 光子の散乱角度が 0° では、エネルギーは変化せず 500 keV である。

B 誤 光子の散乱角度が 0° では、反跳エネルギーは 0 である。

C 正 散乱光子のエネルギーhν = (hν0)/[1 + ((hν0)/(m0c^2)) × (1 – cosθ)] と表されることから、hν = 500/[1 + (500/511) × (1 – cos180°)] = 169 keV となる。

D 正 反跳電子のエネルギーが最大になるのは、光子が 180° 方向に散乱されるときであり、最大エネルギーは 500 – 169 = 331 keV である。

問15

50 ~ 200 keV 程度の光子の光電効果に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 光電効果に対する線減弱係数は、光子エネルギーに逆比例する。

2 光電効果に対する線減弱係数は、物質の原子番号の 2 乗に比例する。

3 光電効果は、光子と軌道電子との弾性衝突である。

4 光電効果に伴って、オージエ電子が放出されることがある。

5 光電子の運動エネルギーは、入射光子のエネルギーに比例する。

解答 4

光電効果の記述を下記に示す。

光電効果

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

1 誤 光子エネルギーを E(γ)として、E(γ)^(-3.5) に比例する。

2 誤 原子の断面積は、ほぼ Z^5 に比例し、質量減弱係数は、ほぼ Z^4 に比例する。ただし、線減弱係数は物質の密度に依存するため、一概には言えない。

3 誤 光電子の運動エネルギーは、光子エネルギーよりも軌道電子の結合エネルギーだけ小さいので、非弾性散乱である。

4 正 光電効果では K 殻電子が放出されることが多いため、K-X線の放出とともにオージエ電子の放出が競合する。

5 誤 光電子の運動エネルギーは光子エネルギーよりも軌道電子の毛癒合エネルギーだけ小さい。

問16

図に示されたヨウ化ナトリウム(NaI)の質量減弱係数における①〜④の相互作用及び⑤の吸収端に関し、正しい組み合わせは次のうちどれか。

 

 

①     ②     ③     ④      ⑤

1 光電効果 レイリー散乱 電子対生成 コンプトン効果 L吸収端

2 光電効果 レイリー散乱 コンプトン効果 電子対生成 L吸収端

3 レイリー散乱 コンプトン効果 光電効果 電子対生成 K吸収端

4 レイリー散乱 光電効果 コンプトン効果 電子対生成 K吸収端

5 光電効果 レイリー散乱 コンプトン効果 電子対生成 K吸収端

解答 4

低エネルギー領域では、全減弱係数は光電効果による減弱係数にほぼ等しいため、②は光電効果であることが分かる。光電効果の領域で、エネルギーが下がるにつれて最初に現れる不連続が⑤K吸収端である。①は低エネルギー光子によって生じる弾性散乱(散乱によって光子エネルギーが変化しない)であるレイリー散乱である。1 MeV 近辺では、あらゆる物質について③コンプトン効果が最も優勢であり、エネルギーがさらに高くなるにつれ、④電子対生成過程が増加する。

問17

ある遮蔽材に対して、半価層が 1 cm である細い線束のγ線の強度を 1/100 に減ずるのに要する遮蔽材厚さ[cm]として、最も近いものは次のうちどれか。ただし、ビルドアップ効果は考慮しないものとする。

1 2

2 5

3 7

4 9

5 10

解答 3

半価層は、放射線の強度が 1/2 になる遮蔽材の厚さである。(1/2)^6 = 1/64、(1/2)^7 = 1/128 であるから、7 cm が最も近い。

問18

2 MeV の中性子が水素核(1H)との弾性衝突で失う平均エネルギーを A、酸素核(18O)との衝突で失う平均エネルギーを B としたとき、A/B の値として最も近いものは次のうちどれか。

1 0.11

2 0.39

3 4.5

4 9.0

5 20.0

解答 3

反跳粒子のエネルギーが最大となるのは中性子が重心系で 180° の方向に散乱するときである。その時の反跳粒子のエネルギー E は、E(n) を散乱前の中性子エネルギー、m を中性子の質量、M を衝突する原子核の質量として、E = [(2mM)/(m+M)]・(1-cos180°)E(n) = [(4mM)/(m+M)^2] ・ E(n) で与えられる。水素との衝突では、m ≒ 1u、M ≒ 1u であるから、E = [(4×1×1)/(1+1)^2] × 2 = 2 MeV、酸素との衝突では E = [(4×1×16)/(1+16)^2] × 2 = 0.44 MeV。衝突で 失う平均エネルギーは、最大エネルギーの 1/2 であるから、A = 1 MeV、B = 0.22 MeV より、A/B = 1/0.22 = 4.5 となる。

問19

物理量と単位の次の対応のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射線量率 ー C・kg^(-1)

B 質量阻止能 ー J・kg・m^(-2)

C 空気カーマ ー J・kg^(-1)

D エネルギーフルエンス率 ー J・m^(-2)・s^(-1)

E 線エネルギー付与 ー J・m^(-1)

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 5

A 誤 照射線量率 ー C・kg^(-1)・s^(-1) が正しい

B 誤 質量阻止能 ー J・kg^(-1)・m^2 が正しい

C 正 空気カーマ ー J・kg^(-1)

D 正 エネルギーフルエンス率 ー J・m^(-2)・s^(-1)

E 正 線エネルギー付与 ー J・m^(-1)

問20

厚さ 0.1 mm、一辺の長さ 10 mm の正方形のアルミニウム板 2 枚で 210Po (α線のエネルギーは 5.3 MeV) 10 MBq 放置した場合、上昇温度[K]として最も近い値次のうちどれか。ただし、アルミニウムの密度は 2.7 g・cm^(-3)、比熱は 0.90 J・g^(-1)・K^(-1) とする。

1 0.05

2 0.11

3 0.21

4 0.49

5 0.77

 

解答 2

α粒子 1個が有するエネルギーは、5.3 × 10^6 (eV) = 5.3 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) (J) = 8.48 × 10^(-13) (J) である。10 分間にアルミニウムが吸収するエネルギーは、8.48 × 10^(-13) × 10 × 10^6 × 60 × 10 = 5.09 × 10^(-3) (J) である。2 枚のアルミニウム板の質量は、2.7 × 0.01 × 1.0 × 1.0 × 2 = 5.4 × 10^(-2) (g) である。したがって上昇温度は、(5.09 × 10^-3)/(5.4 × 10^(-2) × 0.90) = 0.105 (K) となる。

問21

放射線検出器として利用される半導体に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップエネルギーが絶縁体より大きい。

B ε値はシリコンよりゲルマニウムのほうが小さい。

C ゲルマニウム中において電子と正孔の移動度は等しい。

D シリコン中に微量のガリウムが不純物として存在すると p 型半導体となる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

A 誤 バンドギャップエネルギーは絶縁体より小さい。

B 正 シリコンでは 3.6 eV、ゲルマニウムでは 3.0 eV である。

C 誤 電界強度を E(V・m^(-1))、その時の電子や正孔の流動速度を v(m・s^(-1))とすれば、v = μ・E で表される。μ を移動度といい、常温のゲルマニウム中では、電子に対し 0.39、正孔に対して 0.19 である。

D 正 4 価 のシリコンに 3 価のガリウムを添加すると、結晶内で電子が不足し、正孔が電気伝導に寄与する p 型半導体となる。

問22

空気を充填した空洞電離箱に 60Co γ線を照射して電離電流を測定したところ I(air) を得た。この充填期待をアルゴンに置き換えた場合、電離電流は I(air) の何倍となるか。次のうちから最も近いものを選べ。ただし、気温、圧力は同一とする。なお、アルゴンの電子に対する W 値は 26.4 eV であり、二次電子に対して(アルゴンの質量阻止能)/(空気の質量阻止能) = 0.82 とする。

1 0.9

2 1.2

3 1.5

4 1.8

5 2.0

解答 3

空気は十分小さく、気体の置き換えによって2次電子の分布に変化がないと考えれば、アルゴンの吸収線量は空気の場合の 0.82 倍になる。一方、同一の吸収線量では、質量が同じ場合、電離電流は W 値に反比例する(空気のW値は 34 eV)。また、体積が同じ場合、気体の質量は分子量に比例する。空気は 80 % が窒素、20 % が酸素と近似できるので、空気の平均的な分子量は 14 × 2 × 0.8 + 16 × 2 × 0.2 = 28.8 である。したがってアルゴンと空気の質量の比は 40/28.8 = 1.39 である。したがって、アルゴンの場合の電離電流を I(Ar) とすれば、I(Ar)/I(air) = (0.82×1.39)/(26.4/34) = 1.47 となる。

問23

次のシンチレータのうち、それ自体の放射能によるバックグラウンドが測定上問題になるものの組み合わせはどれか。

A CsI(Tl)

B Bi4(Ce3)O12

C Lu2(SiO5)Ce

D La(Br3)Ce

E CdWO4

1 AとB 2 AとE 3 BとD 4 CとD 5 CとE

解答 4 Lu と La には、それぞれ天然放射性核種である 176Li、138La が、その存在度にしたがって必ず含まれる。これらの放射性核種が放出するβ線、γ線が、検出器自体のバックグラウンドとして測定を妨害する。これは外部に存在する天然の放射性物質からの放射線、宇宙線によるバックグラウンドと異なり、検出器を遮蔽しても防ぐことはできない。

問24

電離箱からの電離電流を電気容量 100 pF のコンデンサ(キャパシタ)に送り込み、その両端の電位差を電位計で測定したところ、10 分後の電位差上昇が 3.0 V であった。平均の電離電流[pA]として最も近い値は次のうちどれか。

1 0.15

2 0.5

3 1.0

4 1.5

5 5.0

 

解答 2

10 分間に流れた電気量は、100 × 10^(-12) × 3.0 = 3.0 × 10^(-10) (C) である。したがって平均電離電流は、(3.0 × 10^(-10))/(60 × 10) = 5.0 × 10^(-13)(A) = 0.50 (pA) となる。

問25

1 MeV 程度のβ線の最大エネルギーを知る方法として、最適なものは次のうちどれか。

1 2πガスフロー型比例計数管により波高分布を求める。

2 端窓型 GM 計数管でアルミニウム板による吸収曲線を求める。

3 TLD を用いてグロー曲線を求める。

4 NaI(Tl)シンチレーション検出器により波高分布を求める。

5 Ge 検出器により波高分布を求める。

解答 2

GM 計数管を用いて吸収曲線からアルミニウム中の最大飛程を推定し、電子の最大飛程の文献値と比較することによってβ線の最大エネルギーを知る。GM計数管によって放射能を決定するための手順を下記に示す。

GM計数管によって放射能を決定するための手順

はじめにβ線の最大飛程よりも厚い吸収板を用いて計数を行い、γ線とバックグラウンドによる計数率を評価する。次に種々の厚さ(2mg/cm2 ~ 50mg/cm2 程度)のアルミニウム製吸収板を置いた時の計数率を順次求める。この値について予め計数装置の不感時間による数え落としの補正を行うとともに厚い吸収板 を用いた時の計数率を差し引き、計数管のγ線に対する感度とバックグラウンドの影響を補正する。これらの結果を片対数グラフの横軸に吸収板厚[mg/cm2]、縦軸に計数率をプロットするとほぼ直線状のグラフが得られる。これは吸収板厚の増加とともにほぼ指数的に計数率が 減少することを意味する。このようなグラフを吸収曲線と呼び、その形はあまり吸収体の材質に依存しない。したがって線源ーGM計数管入射窓間に介在する空気層やGM計数管入射窓におけるβ線の吸収を補正するためには線源ーGM計数管入射窓間と空気密度から空気層の厚さ[mg/cm2]を求め、空気層厚及びGM計数管入射窓の厚さ[mg/cm2]の分だけ 吸収曲線を外挿すればよい。この結果を n’ [s^(-1)]とすると、60Co 試料(線源)の放射能 A [Bq] は次式により決定する。 A = n’/[ε1 × (1+ε2) × (1-ε3)]と表される。ここで ε1 は幾何学的効率。ε2 は後方散乱率。εs は自己吸収率。

端窓型GM計数管を用いた定位体角法では、線源から計数管へ入射するβ-線の割合を絞りにより一定に保ち、放射能 A を求める。この時測定で得られるβ-線の計数率 n と点状線源の放射能との関係は次式で与えられる。n = Aε1 × (1+ε2) × (1-ε3) × (1-ε4) ここで、ε1 は幾何学的効率であり、絞りの半径を R 、絞りと線源との距離を d とするとε1 = 1/2[1 – (d/(√d^2 + R^2))] となる。ε2 は線源支持板の後方散乱の割合、ε3 は線源ー検出器間の空気層や検出器窓による吸収損失の割合、ε4 は線源の自己吸収による損失の割合を表す。また、この測定法を拡張し、幾何学的効率が 0.5 、さらに線源と検出領域との間のβ-線の吸収損失をなくした測定器が 2πβ計数管である。βーγ線同時計数法では、β線検出器とγ線検出器を対向させ、その間に点状線源を置いて測定する。β-線とこれに連続して放出されるγ線について、バックグラウンドを補正したそれぞれの計数率を nβ、nγ、またそれらの同時計数の計数率を nc で表すと、β線検出器及びγ線検出器の計数効率 εβ、εγは εβ = nc/nγ , εγ = nc/nβ となる。この時放射能 A = (nβ・nγ)/nc となる。この測定方法において計数率が高い場合は、β-線と同時事象の関係にないγ線による偶発同時計数率の影響を補正することが必要となり、この補正量は同時計数回路の信号パルスの分解時間を τ とすると 2τ ・ nβ ・ nγ で与えられる。またβ線検出器として 4πβ計数管を用いれば、β線の計数へのγ線の影響がほとんどなく補正が軽減される。

1 誤 2πガスフロー型比例計数管・・・β線の飛程が長いため、エネルギーの一部しか検出されず、最大エネルギーの測定はできない。

2 正

3 誤 TLD・・・吸収線量の測定に用いられ、個々の放射線の測定はできない。

4 誤 NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・NaI(Tl)は潮解を防ぐための容器に納められている。また検出器の実効的な原子番号が大きく、入射したβ線が、後方散乱によって再び検出器外に出てしまう確率が高い。これらの理由によって、β線が全エネルギーを検出器に与えることがないため、エネルギー測定には用いられない。

5 誤 Ge 検出器・・・Ge 検出器は低温にするための真空容器に納められている。また、検出器の実効的な原子番号が大きいため、NaI(Tl)検出器と同様、β線のエネルギー測定には用いられない。

問26

同一の条件で試料と標準線源からの放射線をそれぞれ測定した。バックグラウンドを差し引いて求めた計数率は、試料では 6300 ± 63 cpm で標準線源は 2100 ± 21 cpm であった。試料と標準線源の計数率の比に対して誤差が正しく表されているものは、次のうちどれか。

1 3000 ± 0.006

2 3000 ± 0.015

3 3000 ± 0.024

4 3000 ± 0.033

5 3000 ± 0.042

解答 5

計数率の比:6300/2100 = 3.0。誤差:6300/2100 × √[(63/6300)^2 + (21/2100)^2] = 3 × √[(1/100)^2 (1/100)^2] = 3 × (1/100) × √2 = 0.042

問27

ブラッグ・グレイの空洞原理が成り立つための条件として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子平衡が成立していなければならない。

B 空洞内ガスは固体壁と等価な物質でなければならない。

C 空洞内ガスと固体壁の質量阻止能比はエネルギーによって大きく変化しない。

D 空洞の存在はそこを通過する荷電粒子のエネルギー分布に影響を与えない。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 1 ブラッグ・グレイの空洞理論についての記述について下記に示す。

ブラッググレイの原理

吸収線量とは、任意電離放射線が任意物質に当たった時、その物質の単位質量当たりに吸収されたエネルギーとして定義されている。本来の SI 単位は J/kg であるが、この単位に対してグレイ[Gy] という特別単位名称と記号とが与えられる。吸収線量の測定法として最も定義に忠実な方法は熱量計法である。例えば、断熱状態の水に 1.0 Gy の吸収線量が 与えられた時でも、温度上昇は約 0.24 × 10^(-3) ℃ にとどまり、これを正確に測定することは容易ではない。そのため、実用的な吸収線量測定は、ブラッグ・グレイの原理に準拠した空洞電離箱法によることが多い。空洞電離箱とは固体壁(グラファイトなど)の中に空洞を設け、その空洞中に空気などの気体を充填したものである。空洞の中心には細い導電性の棒状電極を配置し、これと固体壁の間に 電圧を印加して電離電流を測定する。固体壁が絶縁体である場合には、内壁面に炭素などを薄く塗布し、導電性を確保する。印加電圧が低いと、電離によって生じたイオン対が再結合するので、充分な電圧をかけて、飽和電流が得られるようにする。

解説

水の比熱は 1.0[cal・℃^(-1)・g^(-1)] = 4.2 × 10^3[J・℃^(-1)・kg^(-1)] であるから、温度上昇は1/(4.2 × 10^3) = 0.238 × 10^(-3) ℃ となる。

空洞体積 V [m^3]、空洞気体密度 ρ [kg/m^3] の空洞電離箱にX線又はγ線を照射して、電離電流 I [A] を得た場合壁物質中の吸収線量率 Dm [Gy/s]は次式により求めることができる。
Dm = 1.6 × 10^(-19) × (W・I)/(V・ρ・e) × Sm Dg = (W・N)/m
ここで、Wは空洞気体中で1イオン対を作るのに要するエネルギー[eV]。すなわち、W値であって、空域の場合は 34 eV である。
Smは壁物質の空洞気体に対する平均質量阻止能比であり、
Sm = (壁物質の二次電子に対する平均質量阻止能)/(空洞気体の二次電子に対する平均質量阻止能)となる。
ここで二次電子とは、コンプトン効果や光電効果によって生じた電子をいう。空洞気体が空気であり、壁物質がグラファイトのような原子番号の低い材料を使う場合、Smはほとんど 1 に近い。 こうした空洞電離箱法の適用にあたっては、二次電子の飛程に比較して空洞が小さく、空洞の存在が二次電子の粒子束に、大きく影響しないことが 前提となっているが、空洞を小さくすると電離電流が少なくなってしまう。また壁厚は壁物質中で二次電子の電子平衡が成立するように留意する。 壁部室として組織等価物質を用いれば生体組織における吸収線量(率)が決定できるが、測定対象物質と壁物質とが異なる場合には、測定対象物質に小さな空洞電離箱を挿入して測定を行い、得られた結果に測定対象物質と 壁物質の質量エネルギー吸収係数比を用いて測定対象物質の吸収線量を間接的に求める。体積 10 × 10^(-6) m3 の空洞に空気(密度 1.3 kg/m3) を充填したグラファイト空洞電離箱にγ線を照射して、1.0 mGy/s の吸収線量率を与えた場合、流れる電流は 0.38 nA である。このような微小な電流を測定するためには MOSFET を用いた高感度電位計や振動容量電位計などが用いられる。

解説

空気の W値は 34 eV であるから、電流は [1.0× 10^(-3)[Gy/s]×1.3×10×10^(-6)[kg]×1.6×10^(-19)[C]]/[34×1.6×10^(-19)[J]] = 3.8 × 10^(-10)[A] = 0,38[nA]

A 正 荷電粒子平衡の成立が必要である。

B 誤 等価でない場合は、2次荷電粒子に対する質量阻止能の比を用いて補正する。

C 正 大きく変化すると、固体壁と空洞内の2次電子のわずかなエネルギースペクトルの変化によって影響を受けてしまい、正確な補正ができない。

D 正 固体壁と空洞内のエネルギー分布に大きな違いがあると、2次荷電粒子の質量阻止能の比のエネルギーによる変動が影響して正確な補正ができない。

問28

水中の一点に空洞体積 1 cm3 で水等価壁の空気電離箱を設置し 60Co γ線 を照射したとき収集電荷 20 nC を得た。この点での水吸収線量[Gy]の値として最も近いのはどれか。ただし、空気の密度及び W 値をそれぞれ 1.2 kg/m3、34 eV とし、この点における二次電子に対する水と空気の平均質量阻止能比(水/空気)を 1.1 とする。

1 0.1

2 0.3

3 0.6

4 0.9

5 1.2

解答 1

空気の吸収線量 D(g) は、素電荷の値(1.60×10^(-19))を e として、D(g) = (WN)/m = [(34e)×(20×10^(-9)/e)]/[1.2×1×10^(-6)] = 0.57 Gy である。したがって水吸収線量 G(m) は、D(m) = D(g) × 1.1 = 0.62 Gy となる。

問29

GM 管式表面汚染検査計を用いて、純β線放出核種が均一に分布した面線源(放射能:1500 Bq、大きさ:縦 100 mm × 横 150 mm )を測定したところ、正味の計数率が 2400 cpm あった。表面汚染検査計の入射窓面積が 20 cm2、面線源との距離が 5 mm、面線源の線源効率が 0.54 とすると、この表面検査計の機器効率として最も近い値は次のうちどれか。

 

1 0.17

2 0.37

3 0.48

4 0.57

5 0.63

解答 2

機器効率とは、検出器に入射した放射線が計数される割合である。また線源効率とは、放出された放射線のうち、表面から放出される割合をいう。0.5 より大きいのはβ線の後方散乱の影響である。検出器と面線源の距離は 5 mm であり、面線源の大きさに比較して十分小さいため、実質的に、面線源のうち 20 cm2 の領域にある放射性物質から表面に放出されたβ線は、全て検出器の入射窓に入ると考えることができる。すなわち検出器に入射するβ線数は、1500/(10×15) × 20 × 0.54 = 108 s^(-1) である。したがって機器効率は (2400/60)/108 = 0.37 となる。

問30

次の表中に示された A から C までの空間線量率を測定する一般のサーベイメータの方式として、最も適切な組み合わせはどれか。また、B.G はバックグラウンド放射線による線量率を表す。

A B C
 エネルギー特性  エネルギー補償可  Cより劣る  良好
 測定範囲  BG ~ 30 μSv/h  BG ~ 300 μSv/h  1 μSv/h ~ 1 Sv/h
 方向特性  Cより劣る  Cより劣る  良好
 感度  非常に高い  Aより劣る  Bより劣る

A       B    C

1 シンチレーション式 GM管式 電離箱式

2 シンチレーション式 電離箱式 GM管式

3 GM管式 シンチレーション式 電離箱式

4 GM管式 電離箱式 シンチレーション式

5 電離箱式 GM管式 シンチレーション式

解答 1

感度は、高い順に並べて、シンチレーション式 > GM管式 > 電離箱式 である。エネルギー特性とエネルギー依存性は同義である。方向特性(方向依存性)については、GM管式では前方入射に比べて横方向からの入射の方が数十%感度が高い。シンチレーション式と電離箱式の方向特性は、180度方向をのぞいてともに良好であるが、若干電離箱式の方が優れていることが多い。

 

バックグラウンドについて

低レベル放射能の測定にとって大切な事柄として、バックグラウンド計数率の低減、高い検出効率の確保、長時間測定などが共通的に挙げられる。また測定対象の 放射能濃度を求める場合には、測定試料の量を多くすることが有効である。バックグラウンドの原因として次のようなものがある。
① 建材、土壌、空気などの周囲環境中に存在する放射性物質
② 検出器自体や遮蔽材などに含まれる放射性物質
③ μ粒子などの宇宙線
④ 他の電気機器からの高周波信号や電源スイッチの開閉に伴う電磁的ノイズ。
これらの原因のうち、①の環境中の放射性物質として232Thや238Uの壊変生成物や40Kなどの 天然の放射性物質が主なものであるが、原子力発電所事故により放出された134Cs、137Csによりバックグラウンドにも注意すべきである。 40Kは高いエネルギーのβ線、γ線を放出し、γ線バックグラウンドスペクトルの 1.46 MeV 相当位置に顕著なピークを出現させる。また、 2.6 MeV 付近にも顕著なピークが 認められるが、これは232Thの子孫核種の208Tlから放出されるγ線によるものである。また、238Uの 子孫核種である 214Bi から 609 keV のγ線が放出されるが、このエネルギーは134Csから放出される 605 keV γ線エネルギーに近接しているので 134Cs の測定に際し、妨害となることがある。 ②については、核種が検出器自体や遮蔽体に含有されると、ここから放出される放射線に対して遮蔽も有効に機能しないため材料の吟味が必要である。例えば、遮蔽体の鉛には半減期22年の210Pbが含まれることもあり、 この場合、その娘核種の210Biからのβ線に起因する制動放射線によるバックグラウンドが問題になることがある。また、 半田(はんだ)には232Thや238Uの壊変生成物が含まれることがあり、ガラスには40Kが含有することがあるので注意する必要がある。 ③に対してμ粒子は極めて透過力が強いため、遮蔽体の使用もあまり効果がない。これを効果的に除去するためには、計数管の周囲や上部にガード計数管を配置し、この出力パルスで主計数管のパルスに対して 逆同時計数を行うと良い。これは特にβ線の低レベル放射能測定測定にとって有効である。④における電磁的ノイズ対策として、金属箱などによる電磁的遮蔽や電源部のフィルタの使用などがある。高い 検出効率を確保するためには、測定試料を検出器に近づけたり、大きな検出器を用いて幾何学効率を大きくすることが有効であるが、大きな検出器を用いると、バックグラウンド計数率 も高くなるので、その兼ね合いに配慮する必要がある。また、測定器がスペクトロメータの場合、検出効率が同じであってもエネルギー分解能が高い方が 連続的なバックグラウンドスペクトルとピークとの識別に関して有利である。

低レベルβ線の測定において、測定試料からの放射線による計数率 ns は、バックグラウンドを含めた全体の計数率 ng から、バックグラウンド計数率 nb を差し引いた値となる。すなわち、
ns = ng – nb = (Ng/Tg) – (Nb/Tb) となる。ここで Ng は試料を置いた状態で計数を時間 Tg の間行った時に得られた計数値、Nb は試料を置かないで計数を時間 Tb の間行った時に得られた計数値である。 この場合、ns の標準偏差を、σs とすると、ns の分散 Vs は、Vs = (σs)^2 = (Ng/(Tg)^2) + (Nb/(Tb)^2) = (ng/Tg) + (nb/Tb)で与えられる。 全体の計数時間 T が一定、すなわち T = Tg – Tb が一定の場合、左式において Tg = T – Tb とし、(σs)^2 を Tb で微分すると、(d(σs)^2)/(dTb) = (d/dTb) × (ng/(T-Tb) + nb/Tb) = ng/(T-Tb)^2 – nb/Tb^2 の関係が得られる。バックグラウンド計測に関わる最適配分時間は dσs^2/dTb = 0 とおいて、(T-Tb)/Tb = Tg/Tb = nb/Tb^2 = ng/(T-Tb)^2 から (T-Tb)^2/Tb^2 = ng/nb よって(T-Tb)/Tb = √(ng/nb)と求めることができる したがって、例えば測定試料を置いたときの計数率が毎分約 20 カウント、バックグラウンド計数率が毎分約 10 カウントであることが予備測定でわかっているとき、測定に関わる時間 T が一定という制約の中で計数率の統計誤差を宰相にするためには Tg/Tb を√2 ≒ 1.41にするのが良い。したがって T = 100 min の場合、Tg = 59min、Tb = 41minとする。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

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