放射線事故等での被ばく線量評価に関する記述

放射線事故等で被ばくする形態は、外部被ばく、内部被ばく、体表面汚染及び創傷汚染に分類することができる。外部被ばくは体外から被ばくするものであるが、中性子線による外部被ばくでは体内の物質が放射化され放射線を出すため、緊急時には内部被ばくや表面汚染がある場合と区別しにくいことがある。体内で放射化される元素のうち体外から放射線計測されるものとしては ナトリウムの寄与が大きく、中性子線による外部被ばく線量評価に用いられることもある。個人線量計や事故現場での空間線量計以外の全身外部被ばくにおける線量評価方としては、臨床症状・検査データからの線量評価、染色体分析による線量評価、放射化による線量評価の他に、歯や爪を用いた電子スピン共鳴(ESR)法による線量評価などがあげられる。 臨床症状による線量評価としては、嘔吐、下痢、頭痛、意識障害及び発熱などが指標として用いられる。これらの症状の発現時期、発現頻度、重篤度は線量に依存し、嘔吐、下痢、頭痛、発熱がほぼ 80 ~ 100% の頻度で 1 ~ 2 時間以内に認められるのは 8 Gy 以上の線量域である。末梢血の検査データによる線量推定として、リンパ球や血小板の減少が用いられる。リンパ球は放射線高感受性で主に アポトーシスにより細胞死が起こり、1 ~ 2 Gy の全身被ばくにより 24 時間以内に正常の約 50 % に減少する。また、末梢血中の顆粒球数は 2 Gy 以上の全身被ばくで 2 ~ 3 日以内に一過性増加が観測され、線量評価に用いられている。染色体異常の検査は、感度、精度、再現性が高く信頼度が高い線量評価法である。染色体異常による検出限界はγ線やX線の場合、約 0.2 Gy である。

 

内部被ばくの線量評価に関して、γ線放出核種による内部被ばくが疑われる場合にはホールボディカウンタを用いて放射能測定をして線量評価を行う。測定に際しては着衣に汚染がないことの確認と、体表面に汚染がない状況で測定することが必要である。また、吸入摂取が考えられる場合には鼻スミアにより試料を採取して放射能を測定する。この評価法は、試料の放射能と摂取量との相関性の点から線量評価制度が 低い。α線やβ線放出核種による内部被ばくが疑われる場合には、排泄物等の生体試料の放射能測定から線量評価を行う。便の場合には、排泄されたものの全量を数日間にわたり採取する必要がある。また、α線放出核種であるプルトニウムの吸入の場合には、肺モニタを用いてα壊変に伴い放出される特性X線を主に測定することで線量評価を行う。体表面汚染の測定に関しては、β・γ線放出核種による汚染の測定には GM計数管式サーベイメータが主に用いられ、α線放出核種による汚染の測定にはZnS(Ag)シンチレーション式表面汚染検査用サーベイメータが主に用いられる。創傷部位の汚染に関しては生理食塩水で洗浄・除染し、その際の洗浄液を回収して放射能測定のための試料として用いる。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

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