放射性同位元素の壊変の測定に関する記述

放射性同位元素の壊変に際して放出される放射線を計数する場合、測定時間は一定であっても、得られる計数値は統計的に変動する。このような統計的変動を予測する数学的モデルとして、二項分布やこれを簡略化したポアソン分布 などがあるが、これらを適用することは煩雑にすぎるので、観測される計数値が 10 程度以下の少ない場合を除き、実際には正規分布として取り扱うことが多い。なお、この正規分布はガウス分布ともいい、平均値 m を中心に左右対称である。その標準偏差を σ とすると、m-σ から m+σ の間に計算値が入る確率が 68 %であることを意味する。m-2σ から m+2σ の間に計数値が入る確率は 95 %である。m-3σ から m+3σ の間に計数値が入る確率は 99.7 %である。したがって、同じ条件で測定を繰り返した場合、ある計数値が統計的変動によって平均値から ±3σ 以上離れる確率は 0.3 %である。このように、m-kσ から m+kσ の間に計数値が入る確率を信頼水準といい、k のことを包含計数という。

 

放射線測定器により計数を行い、時間 t の間に計数値 N を得たとすれば、その計数値の標準偏差は、 √N であり、計数値の相対標準偏差は 1/√N × 100% である。計数率 r は r = N/t となり、計数率の標準偏差は √N/t である。したがって、最初に線源をおいて時間 t1 の間、計数を行い 計数値 N1 を得た後、次にバックグラウンドを求めるために線源を取り去り、時間 t2 の間、計数を行い計数値 N2 を得たとすれば、バックグラウンドを差し引いた線源からの放射線による計数率 rs は rs = (N1/t1) – (N2/t2) となり、その標準偏差は √((N1/t1^2) + (N2/t2^2)) となる。またその相対標準偏差は √((N1/t1^2) + (N2/t2^2))/[(N1/t1) – (N2/t2)] × 100% である。

 

床面の放射能汚染を検査するため、床面を拭き取ったろ紙をGM計数管で 50s 間測定を行い、計数値 88 を得た。次に、バックグラウンドを求めるため、ろ紙を取り去った後 100s 間計数を行い、計数値 49 を得た。この場合、バックグラウンドを差し引いた計数値は 1.3 s^(-1) と計算され、その標準偏差は 0.20 s^(-1) と推定される。これを 相対標準偏差で表せば、 16 % となる。

 

解説 (88/50) – (49/100) = 1.27

解説 √[(88/50^2) + (49/100^2)] ≒ 0.2

解説 (0.20/1.27) × 100 = 15.7

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集

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