がん治療
がんの放射線治療において、がん細胞を死滅させる治療効果を高める一方で正常組織に対する副作用を小さくするために、酸素効果、温度効果を利用したり、防護剤や増加剤の使用が試みられている。
酸素効果
正常細胞では酸素分圧はすでにある程度高いため、さらに酸素分圧を高めても増感作用は認められない。がん細胞の中心部は低酸素状態にあり、放射線治療に対して低感受性である。酸素分圧を高めることによって感受性を高められればよいが、 中心部まで直接に酸素分圧を高める方法はなく、1回目の照射により腫瘍細胞の周辺部位の酸素分圧の高い細胞を死滅させ、その内部にあった腫瘍細胞の酸素分圧が高まった後に再び照射するように、数回にわたり照射を分割して行い腫瘍細胞を 順々に再酸素化して治療する方法が考えられている。
温度効果
細胞を40°以上にすると放射線感受性は著しく上昇する。がん細胞の感受性を高めるために、温熱処理(ハイパーサーミア)する治療法がある。40° ~ 45°の温熱処理が一般的であり、温熱単独でも致死作用が見られるが、 放射線治療や化学療法を併用した方が効果は高い。
放射線防護剤
低LET放射線による間接作用では拡散性のフリーラジカルが重要な役割を果たす。このフリーラジカルとよく反応する物質が存在すれば間接作用を抑えることができる。このような防護効果を拮抗的作用という。 ラジカルスカベンジャーと呼ばれるSH基を持つ化合物が古くから知られており、システインとシステアミンが有名である。s-s 結合を持つ化合物も同様な働きを持ち、その例としてはシスタミンがあげられる。 防護剤は照射に先立ちあらかじめ与えておくか、少なくとも照射中に与えなければ効果がない。
増感剤
放射線増感剤として臨床的に用いられているものに、BUdR(5-ブロムデオキシウリジン)がある。BUdRはDNAの構成物質であるチミジンと類似しており、DNAに取り込まれやすい。 BUdRを取り込んだ細胞は放射線感受性が高くなる。低酸素細胞増感剤としてメトロニダゾールやミソニダゾールがあるが、副作用が強く現在のところ臨床の現場で実用化されているものはない。
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