第1種放射線取扱主任者 化学問題・解説3
問1
1 年間で 1000分の1 に減衰する放射性核種の放射能が、2000分の1 に減衰するのは何年後か。最も近い値は、次のうちどれか。
1 1.1
2 1.3
3 1.5
4 1.7
5 2.0
解答 1
解説
放射能 A0 の放射性核種を用いているとき、その半減期を T とすると経過時間 t における放射能 A は A = A0・e^(-0.693t/T) となる。この式は A = A0・(1/2)^(t/T) と書き直せる。最初の放射能を A とすると、1 年間で 1000 分の 1 になるので、
A/1000 = A × (1/2)^(1/T) よって 1/1000 = (1/2)^(1/T)・・・①
ここで、(1/2)^10 = 1/1024 であるため、1/T ≒ 10 となる。したがって、T = 0.1 年 となる。
最初の放射能 A が 2000 分の 1 に減衰するまでの時間を t とすると、
A/2000 = A × (1/2)^(t/T) よって 1/2000 = (1/2)^(t/T)・・・②
②÷① より、(1/2000)/(1/1000) = (1/2)^(t/T)/(1/2)/^(1/T)
(1/2) = (1/2)^[(t-1)/T] となる。
したがって 1 = (t-1)/T、すなわち T = t-1
T = 0.1 年より、t = 1 + 0.1 = 1.1 年
問2
放射性核種が同族元素の組み合わせは、次のうちどれか。
A 7Be と 28Al
B 15O と 75Se
C 38Cl と 82Br
D 41Ar と 22Rn
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 4
解説
私がまとめた資料に記載しています。ここで掲載しますと訳がわからない表示になりますのでまとめたものを下記のサイトに掲載しています。ご希望の方はご連絡ください。
https://www.radiologist-study.org
問3
陽子の数が 1 つ異なる核種の組み合わせは、次のうちどれか。
A 18O と 18F
B 40Ar と 40Ca
C 99Mo と 99Tc
D 133Xe と 133Ce
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 3
解説
A 正:18O:陽子数 8、18F:陽子数 9
B 誤:40Ar:陽子数 18、40Ca:陽子数 20
C 正:99Mo:陽子数 42、99Tc:陽子数 43
D 正:133Xe:陽子数 54、133Cs:陽子数 55
問4
1.0 MBq のトリチウム水 180 ml 全量を電気分解して水素を得た。大気圧におけるこの気体中のトリチウム濃度(Bq/l)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、大気圧における気体 1 モルの体積は 22.4 l とする。
1 2.2 × 10^2
2 4.5 × 10^2
3 2.2 × 10^3
4 4.5 × 10^3
5 2.2 × 10^4
解答 4
解説
放射能濃度:放射性核種を含む物質の単位体積当たりの放射能
トリチウム水を電気分解すると、
2 (3H2)O → 2 (3H2) + O2
180 ml のトリチウム水(式量 18)は、1 ml = 1 g とすると、 180 g となり、180/18 = 10 mol である。
電気分解して発生した 10 mol の 3H が全て回収されている。
気体 1 mol の体積は 22.4 l であるため、10 mol × 22.4 l/mol = 224 l
1.0 MBq のトリチウム水なので、
1.0 × 10^6 Bq ÷ 224 l = 4.46 × 10^3 となる。
問5
100 kBq の 45Ca を含む 0.1 mol/l 塩化カルシウム水溶液 100 ml から 45Ca を除去する目的で、フッ化ナトリウム水溶液を加えてフッ化カルシウム(CaF2)を沈殿させた。これをろ過乾燥させて得られる[45Ca]フッ化カルシウムの比放射能(kBq/g) として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、CaF2 の式量を 78 とする。
1 6.5
2 13
3 65
4 130
5 650
解答 4
解説
比放射能:放射性核種の属する元素の単位質量当たりの放射能
45Ca(2+) + 2F- → 45CaF2 ↓
塩化カルシウム水溶液中のカルシウムは (0.1 × 100)/1000 = 0.01 mol
上記より、沈殿したフッ化カルシウムは 0.01 × 78 = 0.78 g である。
ここで、[45Ca]塩化カルシウムと沈殿して得られた[45Ca]フッ化カルシウムの放射能は等しくなるはずである。
求める比放射能 A は次のように計算される。
A = 100 kBq ÷ 0.78 g = 128.2 kBq/g
問6
地殻中には、おおよそ 4.0 × 10^13 トンのウラン(238U)が存在すると推定されている。その場合、1 年間に地殻中で起きる 238U の自発核分裂の数として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、238U の自発核分裂の半減期は 8.2 × 10^15 年、 アボガドロ定数は 6.0 × 10^(-23) mol^(-1) とする。
1 8.5 × 10^21
2 8.5 × 10^22
3 8.5 × 10^23
4 8.5 × 10^24
5 8.5 × 10^25
解答 4
解説
1 トン = 1 Mg である。よって、地殻中のウラン(238U)、おおよそ 4.0 × 10^13 トン = 4.0 × 10^19 g となる。
238U の原子数は、N = [(4.0 × 10^19)/238] × 6.0 × 10^23
半減期は 8.2 × 10^15 年 であるので、
λ = 0.693/(8.2 × 10^15) [年^(-1)]
よって -dN/dt = λN = [0.693/(8.2×10^15)] × [(4.0×10^19)/238] × 6.0 × 10^23 ≒ 8.5 × 10^24 [decay/年]
問7
129I を含む水溶液(1.0l)中の 129I 放射能濃度を測定したところ 1.0 × 10^(-2) Bq/ml であった。この水溶液にヨウ素担体と AgNO3 水溶液を加え、全ての 129I を AgI の沈殿とした。この沈殿中に含まれる 129I の重量(μg)に最も近いはどれか。ただし、129I の半減期は 1.6 × 10^7年(5.0 × 10^14秒)、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1)とする。
1 1.0
2 1.5
3 10
4 15
5 100
解答 2
解説
129I を含む水溶液中にヨウ素担体と AgNO3 水溶液を加えると反応は次のようになる。
Ag+ + I- → AgI ↓
水溶液中の 129I の放射能は、1.0 × 10^(-2) Bq/ml × 1.0 × 10^3 ml = 10 Bq となる。
ここで、A = (0.693/T) × (W/M) × 6.02 × 10^23
よって、10 = [0.693/(5.0×10^14)] × (W/129) × 6.0 × 10^23
W = 1.54 × 10^(-6) g
問8
100 MBq の 82Sr を購入したところ、1 MBq の 82Sr が含まれていた。200 日後の 85Sr と 82Sr の放射能比 (85Sr/82Sr) として最も近い値は次のうちどれか。ただし、82Sr の半減期は 25 日、85Sr の半減期は 65 日とする。
1 0.1
2 0.3
3 0.8
4 1.5
5 3.0
解答 2
解説
200 日後の 82Sr(T(82Sr) = 25 日)と 85Sr(T(85Sr) = 65 日)の放射能は、
A(82Sr)200日後 = A(82Sr)0 × (1/2)^200/T(82Sr) = 100 MBq × 1/2^(200/25) = 100 × 10^6 Bq × (1/2)^8 ≒ 0.39 × 10^6 Bq
A(85Sr)200日後 = A(85Sr)0 × (1/2)^100/T(85Sr) = 1 MBq × 1/2^(200/65) ≒ 1 × 10^6 Bq × (1/2)^3 ≒ 0.125 × 10^6 Bq
A(85Sr)200日後/A(85Sr)200日後 = (0.125 × 10^6 Bq)/(0.39 × 10^6 Bq) = 0.32
問9
90Sr 及び 137Cs に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 両核種ともに 235U の熱中性子核分裂反応により高い収率で生成する。
B 両核種ともに β- 壊変する。
C 両核種ともに半減期は 30 年程度である。
D 両核種の娘核種はともに β- 壊変する。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 1
解説
A 正:共に 235U の熱中性子による核分裂生成物として核分裂収率の高いものの一つである。
B 正:90Sr は β- 壊変して 90Y に、137Cs は 137mBa となる。
C 正:90Sr の半減期は 28.74年、137Cs の半減期は 30.04 年である。
D 誤:90Sr の娘核種 90Y は β- 壊変して 90Zr(安定)になり、137Cs の娘核種 137mBa はγ線を放出し核異性体転移(IT)によって 137Ba となる。
問10
放射能が 1.6 × 10^10 Bq の 238U を含むウラン鉱石中で 238U と永続平衡にある 226Ra の質量(g) として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、226Ra の半減期は 1600 年(5.0 × 10^10秒)、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1) とする。
1 0.04
2 0.09
3 0.30
4 0.44
5 0.76
解答 4
解説
永続平衡(親核種1 の半減期が娘核種2に対して非常に長い:λ1 << λ2)が成立する場合は、親核種1と娘核種2は次の関係となる。
N1λ1 = N2λ2
したがって、その放射能比は 1 となり、それぞれの放射能 A について、
A(238U) = A(226U) が成立する。この間では、238U の放射能は 1.6 × 10^10 Bq であるので、求める 226Ra の質量 W は以下のように計算される。
A(226Ra) = A(238U) = 1.6 × 10^10 Bq = (0.693/5.0×10^10) × (W/226) × 6.0 × 10^23
W = 0.433
問11
140Ba は以下のように 2 回 β- 壊変して 140Ce になる。この逐次壊変に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能が最大となるまでに、140La と 140Ba の放射能の和に極大があらわれる。
B 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能が最大となるとき、140La と 140Ba の放射能は等しくなる。
C 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能は、最大になった後、次第に半減期 12.8 日で減衰するようになる。
D 140Ba、140La、140Ce の原子数の総和は一定である。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正
B 正:140Ba の半減期が 140La の半減期に比べて長いので(半減期が約7 ~ 10 倍)、過度平衡である。それぞれの放射能を A(140Ba)、A(140La)とすると、最終的には A(140Ba) < A(140La) となる。
C 正:140La の原子数は 140Ba の半減期に従って減少する。
D 正:140Ba と 140La の原子数の総和は減少するが、逐次壊変に伴い 140Ce (安定) が増加するため 3 核種の総和は一定となる。
問12
87Y (半減期 80 時間)を吸着させたイオン交換カラムから、娘核種の 87mSr (半減期 2.8 時間)を溶離するジェネレータがある。ミルキング操作で 87mSr の全量を溶出した後、カラム中に生成する 87mSr の放射能が最大になる経過時間として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、ln80 = 4.38、ln2.8 = 1.03 とする。
A 8
B 14
C 20
D 32
解答 2
解説
t(max) = [1/(λ2-λ1)] × ln(λ2/λ1) であるから、
λ1 = ln2/T1、λ2 = ln2/T2 より、
t(max) = [(T1・T2)/ln2(T1-T2)] × ln(T1/T2) = [(T1・T2)/ln2(T1-T2)] × (lnT1-lnT2)
よって、t(max) = [(80×2.8)/(0.693 × (80-2.8))] × (4.38-1.03) ≒ 14 時間
問13
アルカリ金属元素を生成する核反応の組み合わせは、次のうちどれか。
A 10B (n,α)
B 18O (p,n)
C 40Ar (α,pn)
D 27Al (n,α)
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 3
解説 生成核種の計算と、周期表を覚えておく必要がある。
問14
表に示した標的核種から目的核種 A と B それぞれを生成する核反応として、正しい組み合わせは、次のうちどれか。
A B
1 (γ,n) (p,n)
2 (n,γ) (p,γ)
3 (p,pn) (n,p)
4 (n,2n) (d,n)
5 (γ,p) (α,n)
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 4
解説 質量数の変化と陽子数の変化を見れば分かる。
問15
ある試料を熱中性子(1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1))により 10 日間照射したところ、23Na (n,γ) 24Na 反応で 1 MBq の24Na が生成した。照射試料中のナトリウムの重量(g)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、放射化断面積は 0.53 バーン、24Na の半減期は 15 時間、アボガドロ定数は 6.0 × 10^23 mol^(-1)とする。
1 7 × 10^(-5)
2 1 × 10^(-4)
3 4 × 10^(-4)
4 8 × 10^(-4)
5 2 × 10^(-3)
解答 1
解説
t 時間照射して照射終了後得られる半減期 T、壊変定数 λ の生成核の放射能 A は、熱中性子フルエンス率 f と放射化断面積 σ を用いて次の関係となる。ここで N は試料元素の個数である。
A = Nfσ[1-e^(-λt)] = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]
試料元素の個数 N は、
N = A/(fσ[1-(1/2)^(t/T)])= [(1×10^6 Bq)/(1.0×10^12 cm^(-2)・s^(-1)・0.53×10^(-24) cm2)] × [1-(1/2)^(240/15)]
ここで、1-(1/2)^(240/15) ≒ 1 であるから、N = 1.8 × 10^18 個
ナトリウムの重量は、[(1.8×10^18)/(6.0×10^23)] × 23 = 6.9 × 10^(-5)
問16
熱中性子照射した U3O8 粉末を溶解した硝酸溶液から、陽イオン交換カラムに吸着させることができる核分裂生成核種の組み合わせは、次のうちどれか。
A 90Sr
B 99Tc
C 131I
D 144Ce
解答 3
解説
イオン交換法は有力な分離法である。イオン交換樹脂カラムを用いたクロマトグラフが用いられる。陽イオン交換樹脂を用いた核分裂生成物の分離や、陰イオン交換樹脂を用いた Fe、Co、Ni 等など、多くの応用例がある。
90Sr(3+)、144Ce(3+)・・・強酸性陽イオン交換樹脂に吸着される。
99mTc・・・硝酸溶液中で 99TcO4-(過テクネチウム酸)となる。
131I・・・化学種は、I2、I-、IO3-、 IO4- である。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
問17
ヨウ素の同位体に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 123I は EC 壊変する。
2 125I は EC 壊変する。
3 127I はヨウ素で唯一の安定同位体である。
4 128I の半減期は 1000 万年以上である。
5 131I- は β- 壊変する。
解答 4
解説
1 正:131I は EC壊変ののち 123Te となる。
2 正:125I は EC 壊変し、γ線を放出し、125Te となる。
3 正:127I が唯一安定同位体となる。
4 誤:128I の半減期は 1000 万年以上である。
5 正:131I は β- 壊変する。
問18
水溶液中の放射性同位体の化学分離に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 35S(2-) は、H2S として蒸留分離できる。
B 60Co(2+) は、クロロ錯体としてイソプロピルエーテルに抽出できる。
C 65Zn(2+) は、酸性溶液中で金属銅を加えると金属として析出する。
D 110mAg+ は、硝酸塩として分離できる。
E 222Rn は、トルエンに抽出できる。
1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE
解答 2
解説
A 正:硫黄 S は、硫化物と HCl で加熱することで、H2S として蒸発する。
B 誤:塩酸濃度によって抽出率が異なるが、Fe(3+) は、クロロ錯体を形成することでイソプロピルエーテルに抽出される。Co(2+) も塩化物イオンが共存すると、クロロ錯体の CoCl4(2-) を形成する。しかし、抽出率(分配比)が金属ごとに異なるためクロロ錯体を形成しても Co(CuやZnも)はイソプロピルエーテルに抽出されない。Co(2+) はクロロ錯体として、強塩基性陰イオン 交換樹脂に吸着することで分離できる。
C 誤:イオン化傾向を覚えておくと良い。K > Ca > Na > Mg > Al >Zn >Fe > Ni > Sn >Pb > (H) >Cu > Hg > Ag > Pt >Au イオン化傾向が大きいほどイオンとなる。
D 誤:銀イオンは塩化物沈殿を生成し、分離する。
D 正:ラドンはトルエン抽出をして、液体シンチレーション等で計測する。有機溶媒にかなり溶ける。
問19
水相中の放射性同位元素 X (110 MBq) を有機相へ溶媒抽出する際に、X の分配比(有機相中濃度/水相中濃度)が 10 の時、次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 有機相の容積が水相の 10 倍の場合、X の水相の放射能は 100 MBq となる。
B 有機相と水相の容積が等しい場合、X の有機相の放射能は 100 MBq となる。
C 有機相の容積が水相の 1/10 の場合、X の抽出率は 50 % となる。
D 有機相の容積が水相の 1/2 の場合、X の抽出率は 25 % となる。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 4
解説
有機相と水相への放射性核種の分配を示す数値を分配比 D という。D = C(0)/C(W) (C(0):有機相中の放射性核種全濃度、C(W):水相中の放射性核種全濃度)。さらに、V(W) と V(0)をそれぞれ水相と有機相の容量とすると、有機相への抽出率 E は、E = D/[D+(V(W)/V(0))]、D = 10 より、E = 10/[10+(V(W)/V(0))] となる。
A 誤:V(0) = 10V(W)、E = 10/[10+(V(W)/10V(W))] = 0.99 よって 110 × (1-0.99) = 1.1 MBq
B 正:V(0) = V(W)、すなわち V(W)/V(0) = 1、E = 10/(10+1) = 10/11 したがって 110 × (10/11) = 100 MBq(有機相中)
C 正:V(0) = (1/10)V(W)、E = 10/[10+(V(W)/V(W)/10)] = 0.5 よって抽出率は 50 %
D 誤:V(0) = (1/2)V(W)、E = 10/[10+(V(W)/(V(W)/2))] ≒ 0.83 よって抽出率は 83 %
問20
6 mol/l 塩酸に溶けている 45Ca(2+)、59Fe(3+)及び 65Zn(2+) をジエチルエーテルで抽出すると、有機相に核種 A が抽出された。その後、水相に陰イオン交換樹脂カラムを通すと、核種 B がカラムに吸着し、核種 C は通過した。核種 A、B、C の組み合わせは、次のうちどれか。
A B C
1 59Fe(3+) 65Zn(2+) 45Ca(2+)
2 59Fe(3+) 45Ca(2+) 65Zn(2+)
3 45Ca(2+) 65Zn(2+) 59Fe(3+)
4 65Zn(2+) 45Ca(2+) 59Fe(3+)
5 45Ca(2+) 59Fe(3+) 65Zn(2+)
解答 1
解説
Fe(3+) は塩酸溶液中で、FeCl3 + HCl → HFeCl4 と反応してクロロ錯体(HFeCl4)になっており、ジイソプロピルエーテルまたはジエチルエーテルで抽出される。Zn(2+) も塩化物イオンが存在すると、ZnCl4(2-) のクロロ錯体を形成するので、強塩基性イオン交換樹脂に吸着するようになる。Ca2+ はクロロ錯体を形成しないので、 陰イオン交換樹脂カラムを通過する。
黒男ρ錯体の形成の強さ・・・(Ni2+) < Mn2+ < Co2+ < Cu2+ < Fe2+ < Zn2+
問21
次の化学捜査により、そのほとんどの放射性核種が沈殿するものの組み合わせはどれか。ただし、全ての溶液の濃度は 1 mol/l とする。
A [22Na]NaCl を含む水溶液 10 ml に AgNO3 水溶液を 20 ml 加える。
B [45Ca]CaCl2 を含む水溶液 10 ml に Na2SO4 水溶液を 40 ml 加える。
C [59Fe]FeCl3 を含む水溶液 10 ml に NaOH 水溶液を 90 ml 加える。
D [64Cu]CuCl2 を含む水溶液 10 ml に Na2S 水溶液を 40 ml 加える。
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 5
解説 反応式を下に示す。
A 誤:[22Na]NaCl + AgNO3 → AgCl ↓ + [22Na]NaNO3
B 正:[45Ca]CaCl2 + Na2SO4 → [45Ca]CaSO4 ↓ + 2NaCl
C 正:[59Fe]FeCl3 + 3NaOH → [59Fe]Fe(OH)3 ↓ + 3NaCl
D 正:[64Cu]CuCl2 + Na2S → [64Cu]CuS ↓ + 2NaCl
問22
ある溶液中に含まれる化合物 X の比放射能が S0 であるとき、これと同じ化合物で非放射性の X を W μg 含む溶液を加えてよく混合した結果、X の比放射能が S1 になった。はじめの溶液中に含まれていた X の量(μg)を求める式は、次のうちどれか。
1 (S0/S1)・W
2 [(S0/S1)-1]・W
3 (S1/S0)・W
4 [(S1/S0)-1]・W
5 [1/((S0/S1)-1)]・W
解答 5
解説
直接希釈法であるため、S(0)・x = S(1)・(x + W) と表される。x = [S(1)・W]/(S(0)-S(1)) よって x = [1/((S0/S1)-1)]・W
問23
ラジオイムノアッセイに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 抗原の定量に不足当量法の原理を応用した分析手法である。
B 抗原の標識には 123I が用いられる。
C 抗原タンパク質を放射性ヨウ素で標識する場合、チロシン残基が標識されることが多い。
D 検体中の抗原が多くなると、抗体と結合していない標識抗原も多くなる。
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて
解答 3
解説
ラジオイムノアッセイ(放射免疫測定法)は、患者の尿や血液中の微量生理活性物質や薬物などを定量するために放射性医薬品を体外で使用する。患者には直接投与しないで、試験管などに移した患者の尿や血液などに放射性医薬品を加えて定量する。
A 正:ラジオイムノアッセイは同位体希釈分析法の応用ということができる。同位体希釈分析は、比放射能を放射能測定で求め、担体量を通常の分析法で定量するので、その正確さは、操作に含まれる通常の分析法の正確さに左右される。したがって微量の試料では高い正確さは気体できない。不足当量法は、目的成分の不足一定量を試料溶液より再現性よく分離することで、放射能測定 だけで目的の微量成分を正確に測定できる。
B 誤:123I の半減期が短く不敵、標識核種としては 125I の利用が多い。
C 正:タンパク質と K(125I) の混合物溶液にクロラミンT を加えると、K(125I) から (125I)2 が生成し、タンパク質分子中のチロシン残基が 125I で標識される。
D 正:既知量の標識された抗原 *Ag を用意し、抗原と抗体が 1:1 のモル比で抗原抗体反応する抗体 Ab を *Ag の 1/2 モル量を用いて反応させる。反応により結合型(B) が生成、一方で *Ag は Ab よりも多量なので、結合できない *Ag すなわち遊離型(F)ができる。B と F を分離した後に、B の放射能と F の放射能を測定する。その結果、Ag の添加量を増加すると、B の放射能は 減少し、F の放射能は増加する関係が認められる。
問24
原子炉での中性子利用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 試料に熱中性子を照射し、生成する放射能を測定することにより、元素分析が行われる。。
B 即発γ線分析法では、試料に中性子を照射し、発生するγ線を測定することにより、元素分析が行われる。
C 熱中性子を試料に照射し、中性子の透過率を測定することにより、試料中の水分の分布が観測される。
D 中性子回折法は、物質中の水素原子の位置決定に利用される。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正:熱中性子を照射し、生成する放射能の測定により元素分析することを、放射化分析という。
B 正:熱外中性子ビームを試料に照射し、共鳴吸収後に放射される即発γ線を測定することにより、非破壊多元素(同位体)分析することを即発γ線分析法という。
C 正:中性子線は水素等の軽い元素を含んだ物質の観察に適しているため、生物中の水分の移動の観察などに使われている。中性子線を用いる放射線透過試験方法に中性子らジオグラフィがある。
D 正:中性子回折法は物質内部の結晶配列や磁気構造の情報が得られる。軽元素と重元素が混合して含まれる物質の軽元素の位置や存在比を決定できる。
問25
ホットアトム効果に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 地下水中の 234U/238U 放射能比は 1 より大きいことがある。
B 室温で熱中性子照射した液体の C2H5I を水と混合すると、放射能の一部が水相に移動する。
C 有機化合物に Li2CO3 を混合し、原子炉で熱中性子を照射すると、トリチウム標識化合物が得られる。
D 原子炉で熱中性子照射した [Co(NH3)6]Cl3 を水に溶解すると 60Co(2+) が得られる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正:234U は、陸水や海水を除く自然界に、238U と放射平衡の状態で存在している。鉱物と地下水等の間では、親の 238U から α壊変によって 234U が生じるとき、α反跳の効果で娘核種の 234U のまわりの結晶格子が損傷を受けるため、238U のまわりの結晶状態と異なり、234U の方が溶出しやすい状態になる。これは天然における一種のホットアトム効果である。
B 正:熱中性子照射したヨウ化エチルを、水と混合すると、大部分の放射性ヨウ素が水相に移る。
C 正:有機化合物に 3He または炭酸リチウムを混合して中性子を照射して、3He (n,p) 3H または 6Li (n,α) 3H を生成するホットアトムである 3H によって有機化合物を標識する。これを反跳合成法とする。
D 正:ヘキサアミンコバルト(Ⅲ)硝酸塩を中性子で照射し、核反応の結果生じた 60Co(2+) が水溶液中に存在する。
問26
放射性同位元素とその利用の関係として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。
放射性同位元素 利用
A 14C オートラジオグラフィ
B 32P DNA塩基配列の決定
C 60Co メスバウアー線源
D 24Na PET(陽電子放射断層撮影)
E 201Tl SPECT(単一光子放射断層撮影)
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 2
解説
放射線利用機器及び診断・検査・撮影に用いられる線源を下図に示す。
機器及び検査等の名称 | 放射性核種 | 備考 |
---|---|---|
非破壊検査(ラジオグラフィ) | 192Ir,60Co,137Cs | |
3H,14C,35S | ミクロオートラジオグラフィ | |
14C,35S,59Fe,32P | マクロオートラジオグラフィ | |
3H | 電子顕微鏡オートラジオグラフィ | |
厚さ計 | 60Co,137Cs | 高エネルギーγ線(薄い鋼板) |
90Sr | 高エネルギーβ線(薄い鋼板) | |
241Am | 低エネルギーγ線(薄い鋼板) | |
85Kr,147Pm | 低エネルギーβ線(紙) | |
レベル計 | 60Co,137Cs | |
密度計 | 137Cs,60Co | |
硫黄計 | 55Fe | 励起型 |
241Am | 透過型 | |
蛍光X線分析装置 | 55Fe,109Cd,241Am | |
水分計 | 252Cf,241Am-Be | 中性子源 |
ECDガスクロマトグラフ装置 | 63Ni | |
骨塩定量分析装置 | 125I,119mSn | |
タバコ量目計 | 90Sr | 密度計の一種 |
DNAシーケンシング | 32P | DNA塩基配列の決定 |
ラジオイムノアッセイ | 125I | 免疫活性検査 |
SPECT | 99mTc,123I,201Tl,67Ga | 核医学インビボ検査 |
PET | 11C,13N,15O,18F | 陽電子断層撮影法 |
問27
ある有機溶液の体積を推定するため、2.0 MBq の 132I で標識したヨードベンゼンを添加してよく攪拌の後、液の一部を採取して 132I 放射能濃度を測定した。132I 添加の 70 分経過後における濃度は 10 Bq/ml であった。その溶液の体積(l)を求めよ。ただし、132I の半減期は 140 分とする。
1 100
2 120
3 140
4 160
5 200
解答 3
解説
ある有機溶媒の体積を V[l] とする。また、 2.0 MBq の 123I で標識したヨードベンゼンの添加量を v[l] とする。ヨードベンゼンの添加後の溶液量は V + v 、放射能は 2.0 MBq である。液の一部を採取、測定して得られた 132I 放射能濃度が 10 Bq・ml であることから、溶液の放射能は 10 × 10^3(V + v) Bq となる。
A = A0(1/2)^(t/T) より、10 × 10^3(V + v) = 2.0 × 10^6 × (1/2)^(70/140) (V + v) = 2.0 × 10^2 × (1/√2) = 141 l
添加するヨードベンゼンの量を体積を推定する溶液量に対して極少量と、V >> v となり、V ≒ 140 l となる。
問28
放射性同位元素の利用した測定機器に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 192Ir を線源とする非破壊検査装置では、β線の物質との相互作用を利用している。
B 55Fe を線源とする硫黄計では、X線の物質との相互作用を利用している。
C 63Ni を線源とするガスクロマトグラフ用 ECD では、EC 壊変に伴うγ線の物質との相互作用を利用している。
D 241Am – Be を線源とする水分計では、中性子の物質との相互作用を利用している。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 5
解説
A 誤:非破壊検査(ラジオグラフィ)とは、放射線の物体に対する透過減弱作用と写真作用とを利用して物体の内部の状況を調べる方法をいう。一般的には半減期がやや短い欠点はあるがその他の条件が最も良い。192Ir がγ線らジオグラフィの線源として広く用いられている。
B 正:液体燃料中の硫黄含有量を測定するもので、241Am などの核種から放出される低エネルギーγ線の吸収を利用した透過型と 55Fe を用いた励起型とがある。55Fe では、Mn の KX 線でイオン原子を励起して発生する S の蛍光X線を測定する。
C 誤:63Ni ガスクロマト用ECD は、放射性物質(63Ni)から出るβ線によるガスの電離を利用している。
D 正:速中性子が水素原子と衝突して減速され熱中性子になる現象を利用したもので、線源としては、241Am、226Ra-Be、252Cf などの速中性子源が用いられている。
問29
線量計に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A フリッケ線量計では、Fe2+ → Fe3+ の反応が利用される。
B フリッケ線量計は、使用前に空気を吹き込む。
C セリウム線量計では、Ce4+ → Ce3+ の反応が利用される。
D アラニン線量計では、重合反応が利用される。
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 1
解説
A 正:Fe(2+) → Fe(3+) の酸化反応
B 正:鉄塩として 10^(-4) M 程度の硫化第一鉄(FeSO4)又はモール塩[FeSO4・(NH4)2 SO4・6H2O] を用い、溶液を 0.8 m 硫酸酸性とし、使用前に空気を通す。
C 正:Ce(4+) → Ce(3+) の還元反応
D 誤:アラニン線量計は、アミノ酸の一種であるアラニンの粉末をパラフィン中に溶かし込み、放射線照射で生じたフリーラジカル(遊離基)の数を電子スピン共鳴装置(ESR)で測定する線量計である。
問30
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
1 速中性子が入射したポリエチレン中に正イオンは存在しない。
2 γ線が入射したヘキサン中に正イオンは生成しない。
3 α線が入射した水中に負イオンは生成しない。
4 β線が入射したアルミニウム中に負イオンは生成しない。
5 陽子線が入射したアルゴン中に水素は生成しない。
解答 4
解説
放射性核種から放出されるα線、β線、γ線、高エネルギーの粒子加速器から発生する電子、陽子、重陽子などは、物質に当たるとイオン化(電離)を起こすので、電離性放射線とも呼ばれる。放射線が液体、固体の分子性の物質に入射すると、その飛跡にそって断続的にイオン化(電離)を起こして、イオン、ラジカルなどの集合体であるスプールができる。
1 誤:中性子は電荷を持たないため分子内電子と直接相互作用を持たず、直接的に分子内電子を励起したり、イオン化したりすることはない。速中性子によって起こる直接作用は分子内原子核との弾性衝突が多い。
2 誤:共有結合を有する物質の分子にX線やγ線が入射すると主としてコンプトン散乱によるイオン化(AB → AB+ + e-)が起こる。
3 誤:水を放射線で照射すると、分解して H,OH,H2,H2O が生じる。これらの遊離基や分子生成物が溶質に作用して種々の化学変化を起こす(水の放射線分解)。この家庭の際に、α線によるイオン化で生じた二次電子が水分子に作用し、負イオンが生じる。
4 正:β粒子は電荷を持った粒子の流れで、物質に入射すると原子を励起したり電離したりする点ではα線と同じである。しかし、β粒子は電子なのでα線よりずっと軽い。荷電粒子により電離されるとき、正イオンと自由電子の対が生じる。
5 誤:陽電子が止まる際に、媒質から電子を捕獲し中性化し水素原子へと変わる。
自然放射線についての記述
Ⅰ
天然に存在する放射性核種には、地球が形成された40数億年前から存在している一次放射性核種、これの壊変で生成した二次 放射性核種、及び主に宇宙線による核反応で生成した誘導放射性核種がある。一次放射性核種として現存するものは、数億年以上 の半減期を持っている。一次放射性核種のうち232Th、235U、238Uはそれぞれトリウム系列、アクチニウム系列、ウラン系列と呼ばれる 壊変系列を作り、多くの放射性核種をえて最後は鉛になる。
II
壊変系列を作らない一次放射性核種の代表的なものとして40Kがあり、カリウムに同位体存在度で0.0117%含まれている。半減期は1.28×10^9年(4.04×10^16秒)で、500gのヨウ化カリウム(KI)の中の40Kの放射能は 3600Bqとなる。ただし、ヨウ化カリウムの式量は166、アボガドロ定数は6.02×10^23/molとする。40Kの10.7%は EC 壊変して40Arになり、89.3%は β- 壊変して40Caになる。ある鉱物の生成時にアルゴンが含まれておらず、その後40Kの壊変で生成した40Arがすべて鉱物中に保持されているとすると、40Kの半減期のX倍経過後の40Kの原子数は鉱物生成時の (1/2)^x 倍、40Arの原子数は鉱物生成時の40Kの 0.107×(1-(1/2)^x) 倍となる。
解説 40Kは壊変系列を作らない天然放射線核種の1つである。その半減期は T1/2(40K) = 1.28 × 10^9年(4.04 × 10^16秒)で、普通のカリウムに0.0117%の割合で含まれる。 ここで、ヨウ化カリウム(KI)中の40Kの放射能をA(40K)とすると40Kの原子数 N(40K)、壊変定数λ、ヨウ化カリウムの質量w = 500gと分子量M = 166より、次のように示される。
A(40K) = λ・N(40K) ここでN(40K) = (w/M) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = (500[g]/166[mol/g]) × 6.02×10^23 × (0.0117/100) = 21.9 × 10^19 個 したがって、A(40K) = λ・N(40K) = (ln2/T(1/2)(40K)) × 21.9 × 10^19 = (0.693/4.04×10^16[s]) × 21.9 × 10^19 = 3600Bq
40Kは、β-(89.3%)、EC(10.7%)の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と40Ar(安定)にそれぞれ変換する。40Kが壊変すると40Arが生成するが、この40Arと40Kの存在量から年代を 知ることができるため、40Kは岩石などの年代測定に利用できる。ここでは、40Kの半減期TのX倍経過後の40Kと生成した40Arの原子数(それぞれNx(40K)とNx(40Ar))について 鉱物生成時の40K(初期原子数N0)に対する割合を考える。
ここで、半減期のX倍経過後の時間はX・Tとなる。Nx(40K) = N0・e^(-λt) = N0・(1/2)^(t/T) = N0・(1/2)^(XT/T)
よって、Nx(40K)/N0 = (1/2)^X
次に、40Kの壊変で生成した40Arがすべて保持されるので、分岐比10.7%より Nx(40Ar) = [N0 – N0(1/2)^X] × (10.7/100) = N0 × 0.107 × [1 – (1/2)^X]
よって、Nx(40Ar)/N0 = 0.107 × [1 – (1/2)^X]
III
14Cは大気中14Nと二次宇宙線の中性子との(n,p)反応で生成する誘導放射性核種で、半減期は 5730 である。この14Cは考古学者資料などの年代決定に利用されており、例えば、14Cの半減期の1/2を経過したコメ試料中の14Cは、イネ枯死時の 0.71 倍になっている。 年代決定のための14Cの測定には比例計数管や液体シンチレーションなどの放射能測定器が用いられてきたが、最近は加速器質量分析器の利用により、数万年前までの年代測定が可能になっている。宇宙線による誘導放射性核種としては、14Cのほかに、窒素、酸素及びアルゴンの核破砕反応で生成する3H、7Be、36Clなどの多数の核種がある。
解説
天然誘導放射性核種:宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する核種である。14Nと二次宇宙線の中性子は次の核反応により14Cを生成する。 14N(n,p)14C 放射性炭素14Cは14CO2として、植物や動物の組織内に吸収されて生体の一部となる。樹木や骨、貝殻のような個体に取り込まれ、その中に留まるようになった 炭素は、その個体の中で14C固有の壊変定数で放射能を失う。この測定には、14Cの非常に低いβ-線のエネルギーより液体シンチレーションカウンタが用いられる。近年は 加速器質量分析装置の利用も可能になっている。また、宇宙線が大気中の酸素、窒素、アルゴンなどにあたって起こる破砕反応で生成する誘導放射性核種には、3H、7Be、10Be、 14C、22Na、32Si、32P、33P、35Sなどがある。
イネ枯死直後のコメ試料中の14Cの放射能をA0、14Cの半減期をTとすると、経過時間t後の放射能は次のようになる。A = A0・(1/2)^(t/T)
ここで、半減期の1/2経過した後なので、
t = T/2 A = A0・(1/2)^(T/2)/T = A0・(1/2)^(1/2) = A0/√2 よってA/A0 = 1/√2 ≒ 0.71
また、詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。
https://www.radiologist-study.org