第1種放射線取扱主任者 物理学問題・解説 第3弾
問1
α粒子の質量は、電子の質量の何倍か。次のうち最も近いものはどれか
1 2000
2 4000
3 7000
4 10000
5 13000
解答 3
解説
α粒子の質量はおよそ 4u (uか原子質量単位)である。1u ≒ 930 MeV、電子の質量は 0.511 MeV に相当するから、(930 × 4)/0.511 = 7280
問2
運動エネルギー E エオ持つ質量 m の粒子 A が、質量 4m の粒子 B と弾性衝突するとき、粒子 A が失う最大エネルギーは、次のうちどれか。
1 0.10E
2 0.16E
3 0.40E
4 0.64E
5 0.80E
解答 5
解説
A が失うエネルギーが最大になるのは散乱角 φ = 180 度の時である。A が失うエネルギーは、B が受け取る反跳エネルギーに等しい。
弾性散乱において原子核の反跳エネルギーEmax = [(2Mm)/(M + m)^2] × (1 – cosθ)En
で求められることから、
[(2m × 4m)/(m + 4m)^2] × (1-cosθ)E = (8/25) × 2E = 0.64E
問3
次の放射線のうち、連続したエネルギースペクトルをもつものの組み合わせはどれか。
A 制動放射線
B 特性X線
C β線
D 内部転換電子
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 2
解説
特性X線と内部転換電子は線スペクトルを有する。
問4
特性X線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A KX線のエネルギーは、原子番号の増加とともに高くなる。
B 特性X線の放出とオージエ電子の放出は競合しない。
C 同一原子では、LX線のエネルギーはKX線のエネルギーより高い。
D 内部転換は特性X線放出の原因となる。
解答 3
解説
A 正:軌道電子の束縛エネルギーは原子番号の増加とともに大きくなり、それらの間の遷移にともなう特性X線のエネルギーも大きくなる。
B 誤:競合過程である。
C 誤:KX線のエネルギーがもっとも高い。
D 正
問5
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 同位体の関係にある原子核では、原子番号同じで質量数が異なる。
B 同重体の関係にある原子核では、原子番号が異なり質量数が同じである。
C 核異性体の関係にある原子核では、原子番号及び質量数が同じである。
D 同中性子体の関係にある原子核では、中性子数が等しく原子番号が異なる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
問6
原子核がα壊変して質量 m(A) の原子核になるときα粒子(質量m(α))のエネルギー Eα と壊変エネルギー Q との関係を表す式として正しいものは、次のうちどれか。
1 Eα = [(m(A) + m(α))/m(A)]^2 × Q
2 Eα = [(m(A) + m(α))/m(A)] × Q
3 Eα = [m(A)/(m(A) + m(α))] × Q
4 Eα = [m(α)/(m(A) + m(α))] × Q
5 Eα = [m(A)/(m(A) + m(α))]^2 × Q
解答 3
問7
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 中性原子の質量は、原子核の質量と全軌道電子の静止質量の総和に等しい。
B 原子核の質量は、その原子核を構成する核子の質量の総和より結合エネルギーに相当する質量分だけ大きい。
C 原子核の核子当たりの平均結合エネルギーは、質量数が 50 ~ 60 で最大となる。
D 中性子の質量は、陽子の質量より大きい。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 5
解説
A 誤:総和から電子の束縛エネルギー分だけ小さい。
B 誤:結合エネルギーに相当する質量分だけ小さい。
C 正
D 正
問8
次の放射性同位元素のうち、Ni の特性X線を放出するものはどれか。
1 65Zn
2 64Cu
3 57Co
4 55Fe
5 54Mn
解答 2
解説
特性X線が放出されるのは、β- 壊変(原子番号 Z が 1 増)、β+ 壊変(Z が 1 減)あるいはα壊変(Z が 2 減)の後に内部転換を生じた場合、または軌道電子捕獲 EC (Z が 1 減)の場合である。1 から 5 の核種はα壊変しないので、Ni(Z = 28)より Z が 1 大きい Cu の EC または β+ 壊変核種か、Z が 1 小さい Co の β- 壊変核種に可能性がある。57Co は EC 壊変 43.6% の 64Cu が該当する。
問9
特性X線、オージエ電子及び蛍光収率に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A オージエ電子は、原子核から放出されることがある。
B 蛍光収率は、特性X線とオージエ電子の放出率の和に対する特性X線の放出率の割合である。
C 特性X線とオージエ電子のエネルギーは同じである。
D 蛍光収率は、原子番号に依存する。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 4
解説
A 誤:軌道電子がエネルギーを受けて放出される。
B 正
C 誤:オージエ電子のエネルギーは放出される軌道電子の結合エネルギーだけ小さい。
D 正
問10
1.0 MBq の 137Cs から放出される 0.662 MeV 光子の毎秒の個数(s^(-1))として正しいものはどれか。ただし、137Ba の全内部転換係数を 0.11 とする。
1 1.0 × 10^6
2 9.4 × 10^5
3 8.9 × 10^5
4 8.5 × 10^5
5 8.3 × 10^4
解答 4
解説
内部転換係数αは、放出されるγ線数を λ(γ)、内部転換電子数を λe として、α = λe/λ(γ)と定義される。したがって IT あたりγ線が放出される確率は、λ(γ)/(λ(γ)+λe) = 1/(1+α) である。1.0 MBq の 137Cs から放出される γ線数は 1.0 × 10^6 × 0.94 ×[1/(1+0.11)] = 8.47 × 10^5 (s^(-1))
問11
次の組み合わせのうち、適切な関係にあるものはどれか。
1 コッククロフト・ワルトン型加速器 ー 直流高電圧
2 ファン・デ・グラーフ型 ー 高周波電圧
3 サイクロトロン ー 静電加速
4 直線加速器 ー 電荷移送用絶縁ベルト
5 シンクロトロン ー 静磁場
解答 1
解説
1 正
2 誤:直流高電圧が正しい。
3 誤:高周波電圧が正しい。
4 誤:高周波電圧が正しい。電荷移送用絶縁ベルトを用いるのはファン・デ・グラーフ型加速器である。
5 誤:シンクロトロンの磁場は加速にともなって変化する。静磁場で加速するのはサイクロトロンである。
問12
サイクロトロン内を速度 v、半径 r、で回転する粒子の角速度 (=v/r) を表す式として正しいものはどれか。ただし、粒子の電荷を e、質量を M とし、サイクロトロンの磁束密度を B とする。
1 (BM)/e
2 (B/e)・(M/r)
3 (eB)/M
4 eBM
5 (eBM)/r
解答 3
解説
荷電粒子が磁場から受けるローレンツ力は eBv、つりあうべき向心力は (Mv^2)/r である。したがって、eBv = (Mv^2)/r より v/r = (eB)/M
問13
原子番号 Z、質量数 A の原子核に次のような核反応が起こった。生成核の原子番号 Z’ と質量数 A’ の正しいものの組み合わせはどれか。
Z’ A’
1 Z-1 A-1
2 Z A-1
3 Z A
4 Z A+1
5 Z+1 A+1
解答 3
問14
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 中性子捕獲反応の断面積は、低エネルギー領域では中性子エネルギーの 0.5 乗に逆比例する場合が多い。
B 1H (n,γ) 2H 反応の際、結合エネルギーに相当する 2.2 MeV のγ線が放出される。
C 20 ℃ における熱中性子のエネルギーは、平均値が 0.025 eV のガウス分布をしている。
D 熱中性子による 235U の核分裂において、核分裂片は質量数が 117 及び 118 のものが多い。。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
解説
A 正:(n,γ)反応の断面積は共鳴のない領域で 1/v (vは中性子速度)、すなわち 1/√E = 1/E^0.5 に比例する。
B 正:この場合は反応にともなって Q 値(2.2 MeV)に等しいエネルギーのγ線が放出される。ただし、重い核による捕獲では様々なエネルギーのγ線が放出される。
C 誤:ガウス分布ではなく、マクスウェル・ボルツマン分布をしている。
D 誤:熱中性子による核分裂では対称的な2つの核分裂片に分かれるのではなく、質量数約 95 と約 140 に2つの極大値を持った非対称に分裂する。
問15
気体分子のイオン化ポテンシャル I(eV) と W値(eV) との間の関係を示す式として、最も適切なものは次のうちどれか。
1 W ≈ 0.2I
2 W ≈ 0.5I
3 W ≈ I
4 W ≈ 2I
5 W ≈ 5I
解答 4
解説
W値は電離エネルギー、すなわちイオン化ポテンシャルの 2倍程度である。
問16
陽子 p とヘリウム原子核 A を 1 MV の電位差で加速した。それぞれの粒子の運動エネルギーEp、E(A)及び速度 vp、v(A)の関係で、正しいものの組み合わせはどれか。
1 Ep = E(A)、vp = 2v(A)
2 Ep = (1/4)E(A)、v(p) = 4v(A)
3 Ep = (1/2)E(A)、vp = √2・v(A)
4 Ep = E(A)、vp = √2・v(A)
5 Ep = (1/2)E(A)、vp = 2・v(A)
解答 3
解説
陽子の電荷は +1、ヘリウム原子核の電荷は +2 なので、E(p) = 1 MeV、E(A) = 2 MeV であり、Ep = (1/2)E(A) となる。E = (1/2)mv^2 であるから (E(p)/E(A)) = [m(p)・v(p)^2]/[m(A)・v(A)^2] = [1 × v(p)^2]/[4 × v(A)^2]、ここでE(p)/E(A) = 1/2 であるから、v(p)^2/[4・v(A)^2] = 1/2、すなわち v(p) = √[2v(p)^2] = √2・v(A) となる。
問17
1 MeV の電子線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 吸収体の厚さに対し、強度が指数関数に減衰する。
B 原子核と衝突して中性子を放出させる。
C 空気中 (1気圧、0℃) においてチェレンコフ光が生じる。
D 物質中で連続エネルギー分布の光子が生じる。
1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて
解答 4
解説
A 誤:指数関数的に減衰するのは連続エネルギー分布を持つβ線であり、単一エネルギーの電子線では異なる。
B 誤:電子は直接原子核とは相互作用しない。電子は制動放射線を生成し、制動放射線が原子核と光核反応を起こして中性子を放出させることはあるが、最大エネルギーが 1 MeV の光子では原子核の中性子の結合エネルギーに満たないため、核反応は生じない。
C 誤:チェレンコフ光はある誘導体内に荷電粒子が入射した時、その物質中の光速度 C より粒子速度 v が大きい時に可視光線が発生するため、空気中では発生しない。
D 正
問18
次の記述のうち、正しいものの無味合わせはどれか。
A 光電効果は、光子と自由電子との相互作用である。
B 鉛の K 吸収端のエネルギーは、約 90 keV である。
C 1.2 MeV γ線に対する鉛の半価層は、約 10 mm である。
D 鉛と光子の相互作用は、光子エネルギーが 100 keV から 2 MeV の範囲でコンプトン効果が主である。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 3
解説
A 誤:光子と軌道電子との相互作用である。
B 正:正確には 88 keV である。
C 正
D 誤:鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]
問19
60Co γ線に対する減弱が最も大きいものは、次のうちどれか。ただし、ビルドアップ効果は無いものとし、鉛、鉄及びコンクリートの密度(g/cm3)は、それぞれ 11.4、7.86、及び2.35 とする。
1 6 cm 厚さの鉛
2 10 cm 厚さの鉄
3 30 cm 厚さのコンクリート
4 2 cm 厚さの鉛と 15 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの
5 5 cm 厚さの鉄と 20 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの
解答 5
解説
60Co のγ線エネルギーではすべての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いて質量減弱係数はほぼ同じである。したがって単位面積当たりの質量で表した遮蔽体の厚さ、すなわち 密度 × 厚さ の積が大きい物質ほど遮蔽効果は大きい。
1. 6 cm 厚さの鉛・・・6 × 11.4 = 68.4 g/cm^2
2. 10 cm 厚さの鉄・・・10 × 7.86 = 78.6 g/cm^2
3. 30 cm 厚さのコンクリート・・・30 × 2.35 = 70.5 g/cm^2
4. 2 cm 厚さの鉛と 15 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの・・・2 × 11.4 + 15 × 2.35 = 58.05 g/cm^2
5. 5 cm 厚さの鉄と 20 cm 厚さのコンクリートを合わせたもの・・・5 × 7.86 + 20 × 2.35 = 86.3 g/cm^2
問20
コンプトン散乱による散乱γ線のエネルギー E'(γ)(MeV)は、入射γ線のエネルギーを Eγ (MeV) とすると、次式で表される。ただし、θ は散乱角である。
E'(γ) = Eγ/[1 + AEγ(1-cosθ)]
上式において A に相当する数値は、次のうちどれか。
1 0.51
2 0.98
3 1.02
4 1.96
5 2.04
解答 4
解説 A = 1/(mc^2) = 1/0.511 = 1.96
問21
光子と物質の相互作用に関する係数を大きいものから順に並べたとき、正しいものは次のうちどれか。
1 質量エネルギー吸収係数 > 質量減弱係数 > 質量エネルギー転移係数
2 線エネルギー転移係数 > 線減弱係数 > 線エネルギー吸収係数
3 質量エネルギー転移係数 > 質量エネルギー吸収係数 > 質量減弱係数
4 線減弱係数 > 線エネルギー吸収係数 > 線エネルギー転移係数
5 線減弱係数 > 線エネルギー転移係数 > 線エネルギー吸収係数
解答 5
解説
線減弱係数
光子が物質を通過する時、物質との相互作用により減弱される。その減弱の割合をいう。この線減弱係数を密度で割ったものを質量減弱係数という。
エネルギー転移係数 μ1
光電効果、コンプトン効果、電子対生成などにより、荷電粒子に与えられるエネルギーの割合。
こうしによる物質へのエネルギー付与やその結果生じる効果などエネルギー伝達を扱う場合にはエネルギー転移係数μ1、エネルギー吸収係数μ2で考える。ここで光電効果の原子断面積σa、コンプトン効果の原子断面積σb、 電子対生成の原子断面積σc、特性X線として持ち去られる平均エネルギーをδとし、コンプトン効果において放出される二次電子の平均エネルギーをE^、電子の静止質量をm0c^2とすると、
μ1 = [(1-(δ/Eγ))σa + (E^/Eγ)σb + (1-((2m0c^2)/Eγ)σc]N で表すことができる。
エネルギー吸収係数
エネルギー転移係数から制動放射で逃げる割合Gを差し引いた値
線減弱係数 > エネルギー転移係数 > エネルギー吸収係数 という符号関係が成り立つ。
二次電子の運動エネルギーのうち制動放射線として失われるエネルギーの割合をgとするとき μ2 = μ1(1 – g) で表される。
問22
次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 中性子は β+ 壊変して陽子となる。
B 中性子は核外では壊変しない。
C 中性子の質量は陽子と電子の質量の和より大きい。
D 中性子数より陽子数が大きい核種がある。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 5
解説
A 誤:核外において中性子は β- 壊変して陽子に変化する。β- 壊変・・・ n → p + e- + ν-(反ニュートリノ)。ちなみに β+ 壊変は・・・ p → n + e+ ν(ニュートリノ)となる。
B 誤
C 正:中性子は β- 壊変して陽子と電子、反ニュートリノに変化する。β- 壊変・・・ n → p + e- + ν-(反ニュートリノ)
D 正:例えば 11C (半減期 20 分)は、陽子数 6、中性子数 5 である。
問23
中性子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 241Am-Be 線源から(p,n)反応により中性子が放出される。
B 241Am-Be 線源から放出される中性子の平均エネルギーは、d-T 反応による中性子の平均エネルギーより高い。
C 252Cf の自発核分裂により中性子が放出される。
D 原子核が光子を吸収すると中性子が放出されることがある。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 5
解説
A 誤:9Be (α,n) 12C 反応によって中性子が放出される。
B 誤:241 Am-Be 線源から放出される中性子の平均エネルギーは約 5 MeV であるのに対し、d-T 反応の中性子の平均エネルギーは 14MeV である。d-T 反応とは加速器を用いた原子核融合反応で、3H (2H , n) 4He]による約 14 MeV の単色中性子を利用する
C 正
D 正
問24
次の2放射線と物理量の関係として適切でないものはどれか。
1 陽子線 ー 質量阻止能
2 β線 ー 後方散乱係数
3 中性子線 ー 飛程
4 γ線 ー 質量減弱係数
5 α線 ー 線エネルギー付与(LET)
解答 3
解説 中性子は電荷を有していないので一律には停止せず、飛程の概念はない。
問25
次の量と単位の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。
1 エネルギーフルエンス ー kg・s^(-2)
2 質量阻止能 ー kg・m^4・s^(-1)
3 吸収線量 ー m^2・s^(-2)
4 W値 ー kg・m^2・s^(-2)
5 線減弱係数 ー m^(-1)
解答 5
解説
1 正:エネルギーフルエンス(J・m^(-2)) = kg・m^2・s^(-2)・m^(-2) = kg・s^(-2)
2 誤:質量阻止能(J・m^2・kg^(-1)) = kg・m^2・s^(-2)・kg^(-1) = m^4・s^(-2)
3 正:吸収線量(J・kg^(-1)) = kg・m^2・s^(-2)・kg^(-1) = m^2・s^(-2)
4 正:W値(J) = kg・m^2・s^(-2)
5 正
問26
分解時間 0.25 ms の放射線検出器により、5 秒間で 4.0 × 10^3 カウントを得た。この場合、真の計数率(cps)に最も近い値は、次のうちどれか。
1 800
2 900
3 1000
4 1100
5 1200
解答 3
解説
測定された計数率(cpm)は、(4.0 × 10^3)/5 = 8 × 10^2 であるから、真の計数率は (8 × 10^2)/(1 – 0.25 × 10^(-3) × 8 × 10^2) = 1 × 10^3
問27
空気等価電離箱(有効体積:50 cm^3)をγ線場に置き、この電離箱に直列に接続した抵抗(0.01TΩ) の両端の電圧として、65 mV を得た。このγ線場における照射線量率(C・kg^(-1)・h^(-1))として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、電離箱の空気の密度を 1.3 × 10^(-3) g・cm^(-3) とし、二次電子平衡が成り立ち、生成電荷は完全に収集されるものとする。
1 7 × 10^(-11)
2 1 × 10^(-7)
3 1 × 10^(-4)
4 4 × 10^(-4)
5 7 × 10^(-3)
解答 4
解説
0.01 TΩ = 0.01 × 10^12 Ω = 10^10 Ω である。電流を i A とすれば、
オームの法則より、65 × 10^(-3) = 10^10i、すなわち i = 6.5 × 10^(-12) A であり、
照射線量率 = (6.5 × 10^(-12) × 60 × 60)/(1.3 × 10^(-3) × 10^(-3) × 50) = 3.6 × 10^(-4) C・kg^(-1)・h^(-1)
問28
トリチウムの測定に適している検出器として正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。
A 通気型電離箱
B 表面障壁型Si半導体検出器
C ZnS(Ag)シンチレーション検出器
D 固体飛跡検出器
E 液体シンチレーション検出器
1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE
解答 2
解説
A 正:通気型電離箱・・・電離箱中に測定する空気を直接導入し、主に空気中の β核種、α核種を測定する。
B 誤:表面障壁型Si半導体検出器・・・主にα線のエネルギー測定に用いる。
C 誤:ZnS(Ag)シンチレーション検出器・・・主にα線検出に用いる。
D 誤:固体飛跡検出器・・・主に中性子の個人被ばく線量測定に用いる。
E 正
問29
有機液体シンチレータに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A NaI(Tl)シンチレータに比べ発光の減衰時間が短い。
B α線放出核種の測定に用いられる。
C NaI(Tl)シンチレータに比べ発光収率が大きい。
D β線のエネルギースペクトル測定には使えない。
E CsI(Tl)シンチレータに比べ発光波長が長い。
1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE
解答 1
解説
液体シンチレータは放射性物質をシンチレータに直接混合して測定できるためその放射性物質からの放射線について検出効率が高い。また放射線の自己吸収を小さくできることから、トリチウムのような低エネルギー純β線放出核種やα線放出核種の放射線管理測定に極めて有効である。 さらに、液体シンチレータやプラスチックシンチレータは水素原子を多く含むことからその原子核の反跳により生じる陽子に着目して速中性子の測定に用いられる。(水素は高速中性子と弾性散乱を起こし、その結果生じる反跳陽子が発光する。) 有機シンチレータである液体シンチレータは発光の減衰時間は通常数ナノ秒程度であり、NaI(Tl)シンチレータと比べると一桁以上短い。
A 正
B 正
C 誤:発光効率は無機シンチレータは 10 % 以下に対して、有機シンチレータは 5 % 未満のものが多い。
D 誤:無機シンチレータは主にγ線スペクトルを測定し、有機シンチレータはβ線スペクトルと中性子測定を行う。
E 誤:有機シンチレータであるトルエン、キシレンの発光波長は最大 290 nm 程度に対して、CsI(Tl)シンチレータの発光波長は最大 540 nm である。
問30
GM 計数管に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 印加電圧と計数率の関係は、プラトー特性と呼ばれる。
B プラトーが長く傾斜が小さい方が望ましい。
C 分解時間、不感時間、回復時間の順に時間が長くなる。
D 多重放電を防止するため充填ガスに有機ガスを添加する場合がある。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
解説 詳しいことは別紙の実務プリントの GM 計数管についての記述に記載する。
A 正
B 正
C 誤:不感時間 < 分解時間 < 回復時間 の順である。
D 正
光子・粒子のエネルギーについての記述
I
入射強度Q0のX線が、厚さxcmの物質を通過して強度Q1になったとする。Rを次式で定義する。
R = ln[B・(Q0/Q1)]・・・(1)
この時、R は x に比例する。その比例定数を線減弱係数といい、この逆数を平均自由行程と呼ぶ。 線減弱係数を物質の密度で除した質量減弱係数は、物質の状態に依存しない。(1)式の右辺における B はビルドアップ係数と呼ばれ次式で与えられる。
B = 1 + [散乱X線光子数/全X線光子数]・・・(2)
BはX線のエネルギー、物質の材質、厚さ、幾何学的配置に依存し、物質に入射するX線ビームが細い場合は、広い場合に比べてBの値が小さい。入射強度Q0のX線を強度Q0/2に減らすために必要な物質の厚さをD1とする。D1は半価層と呼ばれる。X線エネルギーが単一でなく分布を持つ場合、 半価層を通過したX線は入射X線に比べて、その平均エネルギーが大きい。その通過X線の強度をさらにQ0/2からQ0/4に減らすのに必要な厚さをD2とするとD1とD2の関係はD1<D2である。
II
α粒子などの重荷電粒子は、物質中を通過するとき主に電離作用と励起作用によって徐々にエネルギーを失っていく。β線の場合は、さらに制動放射による エネルギー損失が無視できない。エネルギーE0の荷電粒子が物質中を厚さ dx だけ通過するときに失うエネルギーを dE とすると、阻止能 S はdE/dxで表される。また、飛程は∮1/s(dE)の式で表される。 α粒子はその質量が電子に比べて7300倍であるため、軌道電子との衝突の過程でその進行は直線的である。α粒子の進行に沿う単位長さ当たりの生成イオン対数を表わすグラフで、止まる前で急にイオン対数が増加する様子を示すのがブラッグピークである。空気中における 5MeVのα粒子の平均飛程は、ほぼ3.5cmである。β線のエネルギー分布は、連続分布である。β線の透過率を縦軸に物質の厚さを横軸としてグラフに示すと、その関係はほぼ指数関数で表される。最大エネルギーが 2.3MeV のβ線は、水中での最大飛程が1.1g/cm2である。
7300倍の解答 求め方 (930×4)/0.511 ≒ 7300
5MeVのα粒子の平均飛程の解答 線のエネルギーをE(MeV)、空気中の飛程をR(cm)とすレバ、近似的にR = 0.318E^1.5 と表される。
最大エネルギーが 2.3MeV のβ線は、水中での最大飛程の解答 エネルギーE(MeV)のβ線の最大飛程R(g/cm2)はおよそR = 0.5Eで表される。
壊変についての記述
I
β壊変にはβ-壊変、β+壊変及び軌道電子捕獲があり、いずれも弱い相互作用によって起こる。β-壊変では原子核内の中性子が陽子にかわり、 電子と反ニュートリノが放出される。その結果、生成核の原子番号は1つ増加するが、質量は変わらない。壊変エネルギーQは、生成核、電子及び反ニュートリノの運動 エネルギーに分配される。一般に、β線のエネルギーを表わす場合には、電子が持ち出す最大のエネルギーが用いられる。 β+壊変では陽電子とニュートリノが放出される。陽電子のエネルギー分布の形状はβ-線のエネルギー分布と異なる。 β+壊変における親核の原子質量を X 、生成核の原子質量を Y とすると、壊変エネルギーQは、(X-Y-2m)・c2と表わすことができる。ただし、c を光速度、 m を電子の静止質量とする。軌道電子捕獲は、原子核の陽子が軌道電子と結合して中性子になり、ニュートリノを放出する現象である。これにより、電子軌道に 空孔が生じ、そこへ外側の軌道電子が遷移した場合には、特性X線またはオージエ電子が放出される。K軌道及びL軌道における電子の結合エネルギーを Ek及びElとすると、特性X線のエネルギーはEk-El、オージエ電子のエネルギーはEk-2Elとなる。
II
β壊変と同様に、電子を放出する過程に内部転換があり、励起状態にある原子核がそのエネルギーを軌道電子に与えて、これを放出する現象をいう。 ただし、この過程は、電磁相互作用として起こり、つねにγ遷移の競合過程として存在する。137Csがβ壊変して137mBaが生成するとき、その確率をp、 137mBaの転移における全γ線放出光子数に対する内部転換による全放出電子数の割合をαT、K軌道電子に対して起こる割合をαK、K特性X線の放出される割合 (K殻蛍光収率)をωとする。このとき、1壊変当たりにK特性X線の放出される確率は(p・(αk/1+αT)・ω)であり、662keVのγ線の放出される割合を(p・(1/1+αT))となる。
詳しい解説など下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。
https://www.radiologist-study.org