過去問と解説を日々更新していきたいと思います。

下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

下の解説は一部なのでまとめたものが欲しい方は上記サイトまで。

被ばくの管理

実際に被ばく管理を行うためには、実効線量と等価線量を評価しなければならないが、日常的な放射線管理で全ての組織・臓器の線量を直接測定することは不可能である。そこで外部被ばく管理のための線量測定の方法として、一点のみで線量が決められ、なおかつ同一被ばく条件では実効線量や等価線量と比較して一般に下回らない値を示す実用量が国際放射線単位測定委員会によって定められている。 それらの実用量とは、モニタリングのための周辺線量当量、方向性線量当量および個人線量当量である。

周辺線量当量と方向性線量当量の基準となる線量はICRU球と呼ばれる線量計算用ファントムを用いて計算される。ICRU球は直径 30 cm の組織等価物質でできた球である。一方個人線量当量の基準となる線量の計算には、組織等価物質でできた 30cm × 30cm × 15cm の大きさの線量計算用スラブファントムが用いられる。 実効線量は、場のモニタリングによりファントムの表面から深さ 10 mmの周辺線量当量に相当する線量を測定するか、あるいは個人のモニタリングにより深さ 10 mmの個人線量当量に相当する線量を測定することによって評価する。これらの線量の法令等での名称は、ともに1センチメートル 線量当量である。皮膚や眼の水晶体に対する等価線量は、場のモニタリングにより深さ 0.07 mmの方向性線量当量、あるいは個人のモニタリングにより同じ深さの個人線量当量に相当する線量の測定により評価する。ただし眼の水晶体に対しては、放射線によっては深さ 10 mm線量が用いられることもある。また、 実効線量については、計算より評価することもできる。X、γ線の場合、自由空気中の空気カーマから実効線量への換算に用いる係数が法令等に規定されている。

 

内部被ばく管理

内部被ばくの管理においては摂取した放射能(Bq)に実効線量係数を乗ずることにより預託実効線量を求める。摂取した放射能を被検者の測定から求めるには、体外計測法やバイオアッセイ法などがある。体外計測法は取り込まれた核種から放出される放射線を直接測定する方法で、測定には主にホールボディカウンタを用いγ線 を放出する放射性核種が対象になる。測定時における体内放射能の評価制度はバイオアッセイ法に比べて高い。バイオアッセイ法は被検者の尿、便などの放射能を測定して、その値をもとにして摂取量を推定するものである。全ての核種が測定対象になるが、特に 90Sr のようなβ線だけを放出する核種の場合はバイオアッセイ法に適している。 ただし、尿、便のバイオアッセイ法では排泄率などのパラメータの個人差による誤差に注意する必要がある。空気中の放射性物質の吸入による摂取量の推定には、空気中放射能濃度から算定する方法もある。この場合も呼吸率などのパラメータが必ずしも個人の実際の値と一致しているわけではなく、摂取量の評価の評価制度は高くない。

摂取した放射性物質は、体内に留まっている限り被ばくの原因になるので、排泄などによってそれが体外に出るまでの体内動態を知ることが大切である。内部被ばく線量の評価には、放射性核種で決まっている物理学的半減期と、摂取された放射性物質が体外に排出されるまでの時間を反映する生物学的半減期から計算される有効半減期を用いる。131I の場合、物理学的半減期は 8 日であり、 生物学的半減期を 80 日 とすると、有効半減期は約 7 日となる。137Cs の場合、物理学的半減期は 30 年であり、生物学的半減期を 100 日とすると有効半減期は約 100 日となる。内部被ばくを低減するためには、放射性物質の摂取をなるべく少なくするとともに、万一摂取してしまった場合、体内から素早く排除するための手段を講じることが重要である。 放射性ヨウ素に対しては薬剤として安定ヨウ素剤を予防的あるいは摂取後速やかに投与すると効果がある。セシウムはカリウムと化学的性質が類似しており、経口摂取すると消化管から吸収されて全身に分布する。放射性セシウムを摂取した場合プルシアンブルー(イオン交換剤)を投与する。この薬剤はセシウムと結合してコロイドとして便に排泄されることにより、消化管からの吸収を阻害する。

内部被ばくの計測

内部被ばくは放射性核種が体内に取り込まれた場合に生じる。放射性核種が体内に取り込まれる経路としては、経口摂取、吸入摂取、皮膚からの吸収、創傷からの吸収がある。一般にこれら4つの経路の中では、皮膚からの吸収が最も体内に取り込まれにくい。内部被ばくの評価には、体内にある放射性核種の同定と放射能を測定・評価する必要がある。内部被ばくによる放射能の評価は体外計測法とバイオアッセイ 法によって行われる。体外計測法は、体内に存在する放射性核種の定性・定量を測定するもので、γ線やX線を体外から測定する。全身を測定する装置は一般にホールボディカウンタ(WBC)と呼ばれる。WBCはバックグラウンド放射線による計数を少なくするための遮蔽と検出器及び放射線計測部からなっており、検出器を遮蔽室内に設置する精密型WBCと検出器周囲を遮蔽した 簡易型WBCに分類することができる。

WBCに用いる遮蔽室は宇宙線や遮蔽室の外部にある放射性核種からの放射線を遮蔽するもので、基本遮蔽材料としては主に鉛またはてつが用いられる。遮蔽材料の厚さは、一般に鉛で 5 ~ 10 cm、鉄で 10 ~ 20 cm程度であり、これ以上厚さを増してもあまり効果がない。遮蔽室は主に外部にある放射性核種からの放射線を遮蔽するためのものであるが、測定時に人体に取り込まれた放射性核種から 放出されるγ線が遮蔽室の壁に入射し、γ線のエネルギーが大きい場合には主にコンプトン効果による散乱線が検出器に入射することがあるため、低エネルギー部の計数率が増加することがある。この影響は遮蔽材料の原子番号が大きいほど少ないので、主な遮蔽材料が鉄の場合には、その内面に 3mm 程度の鉛を内張りすると軽減する。遮蔽の最も内側の物質が 鉛のように原子番号が大きいものを使用した場合には内側の物質とγ線との相互作用によって放出される特性X線が検出器に入射するため低エネルギー部にピークが生じる。これを除去するには鉛の内面にさらに 0.5 ~ 3mm 程度の銅を内張りにする。

遮蔽室を有するWBCで体内の放射能を測定する場合であっても測定する前にバックグラウンドを測定し、その値を差し引く必要がある。バックグラウンドとして、宇宙線に由来する 0.51 MeVの特性X線がある。この他にはラドンの影響がある。大地を構成する土壌・岩石から空気中に放出されたラドンは、地表面から待機中に散逸するか、または建物の床を通して屋内大気に侵入する。遮蔽室を有する WBCは、重量が大きいため、1階や地下に設置位されることが多い。このため室内ラドン濃度は高くなる傾向がある。バックグラウンドに対する寄与としては、 214Pb とその娘核種である214Bi が重要である。これらの核種の多くは大気浮遊塵に付着して存在しているので、空気清浄機によりバックグラウンドの低下をさせることができる。この他に、光電子 増倍管のガラス窓に含まれる 40K もバックグラウンドの原因となるので注意が必要である。



コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です