第1種放射線取扱主任者 化学問題・解説 第2弾
問1
次のうち、β- 壊変する核種のみの組み合わせはどれか。
A 33P, 35S
B 45Ca, 60Co
C 90Sr, 125I
D 131I, 147Pm
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
解説
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問2
次のうち、半減期が 1 万年以上の核種の組み合わせはどれか。
A 40K
B 90Sr
C 129I
D 131I
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 2
解説
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問3
半減期が 24 時間と 6 時間の 2 つの放射性核種 X,Y の放射能が合わせて 70 MBq であった。この放射能が 24 時間後には 17.5 MBq となった。両核種の娘核種はいずれも非放射性である。初めにあったそれぞれの核種の放射能(MBq)として最も近い組み合わせはどれか。
核種A 核種B
1 30, 40
2 25, 45
3 20, 50
4 15, 55
5 10, 60
解答 1
解説
2つの放射性核種 X(T=24h)、Y(T=6)の放射能をそれぞれ、A(X0)、A(Y0)、24時間後の放射能をA(X24h)、A(Y24h)とすると、次の関係式が成り立つ。
A(X0) + A(Y0) = 70 MBq・・・①、
A(X24h) + A(Y24h) = 17.5 MBq・・・②
半減期 T の放射性核種の t 時間後の放射能は、At = A0・e^(-λt) = A0・(1/2)^(t/T) となる。
したがって、
A(X24h) = A(X0)・(1/2)^(24/24) = A(X0)/2
A(Y24h) = A(Y0)・(1/2)^(24/6) = A(Y0)/16
よって、A(X0) = 2・A(X24h)、A(Y0) = 16・A(Y24h)。①、②式より A(X24h) = 15 MBq。A(Y24h) = 2.5 MBq となる。これにより、A(X0) = 30 MBq。A(Y0) = 40 MBq。
問4
陽電子放射断層撮影法(PET)で利用される次の放射性核種のうち、2 時間以内に放射能が 1/100 に減衰する核種の組み合わせは次のうちどれか。
A 11C
B 13N
C 15O
D 18F
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 4
解説
A 誤:11C の半減期は20分なため、2時間後には 1/64 にしかならない。
B 正:13N 半減期は10分であるため、2時間後には 1/4096 になる。
C 正:15O 半減期は2分であるため、2時間後には (1/2)^60 になる。
D 誤:18F 半減期は110分であるので、2時間後はほぼ半減する。
問5
1.0 MBq の 14C の原子数として最も近い値は次のうちどれか。ただし、14C の半減期は 5730 年(1.8 × 10^11秒)とする。
1 2.2×10^14
2 1.8×10^15
3 1.2×10^16
4 2.6×10^17
5 3.9×10^18
解答 4
解説
原子数 N の放射性核種の放射能 A[Bq] とその壊変定数 λ[s^(-1)]とその半減期 T[s]の関係式は次のようになる。
A = λN = (ln2/T)・N すなわち、N = (A・T)/ln2 から N = (1.0×10^6×1.8×10^11)/0.693 = 2.6×10^17
問6
9.0 MBq の 14C を含む 10 g の CaCO3 希塩酸で溶液したところ、放射性の気体が発生した。この気体の放射能濃度(MBq/l)として最も近い値は、次のうちどれか。ただし、CaCO3 の式量は 100、気体 1 モルの体積は 22.4 l とする。
1 2.0
2 4.0
3 6.0
4 9.0
5 20
解答 2
解説
次のような化学反応が起こる。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑
※ 炭酸塩の様な弱酸の塩に強酸を加えると、弱酸である CO2 が発生する。 10 g の CaCO3(式量100)は 0.1 mol である。回収率100%とすると、発生した 0.1 mol の CO2 が全て回収されている。
気体 1 mol の体積は 22.4 l であるため、0.1 × 22.4 = 2.24 l
9.0 MBq の 14C を含むので、9.0 MBq ÷ 2.24 l = 4.0 MBq/l となる。
問7
32P で標識したリン酸トリブチル(TBP)を合成したところ、10 MBq を含む 1.0 g の製品を得た。この製品の化学純度は 90 重量%、放射化学純度は 86 % であった。この[32P]TBP の比放射能(MBq/g)として最も近い値は次のうちどれか。
1 0.86
2 0.90
3 0.96
4 9.6
5 10
解答 4
解説
放射化学的純度とは、特定の化学形の放射能が、全放射能に対して占める割合である。ここでは、着目する核種は 32P であり、目的物質は 32P で標識したリン酸トリプチル([32P]TBP)である。
化学純度が90重量%であるため、純粋なTBPは、1.0 g × 0.9 = 0.9 g
また化学純度的純度が 86% であるので、10 MBq × 0.86 = 8.6 MBq
よって比放射能は 8.6 MBq ÷ 0.9 g = 9.6 MBq/g となる。
問8
比放射能が 7.0 MBq/μg の 11CO2 から 20 分かけて、11CH2I を合成した。得られた 11CH3I の比放射能(MBq/μg)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、11C の半減期を 20 分、CO2 と CH3I の分子量はそれぞれ 44 と 142 とする。
1 0.4
2 0.7
3 1.1
4 2.2
5 3.5
解答 3
解説
11CH3Iの式量142、11CO2の式量44より、11CO2を x μgとすると、11CO2の放射能は、7.0x MBq となる。11Cの半減期 20 分より、20 分後には 3.5x MBq となる。全ての11Cが反応して 11CH3I が合成されたとすると、得られた 11CH3I は(x/44) × 142 μg である。よって、11CH3I の比放射能は 3.5x ÷ [(x/44)×142] = 1.1 MBq/μg となる。
問9
親核種 X から生成する娘核種 Y は、さらに放射壊変して安定核種に至る。初めに親核種 X のみであった。その後の X の放射能と Y の放射能を合わせた値(Bq)の経時変化を下図に示す。次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A X の半減期は 2 時間を超えない。
B Y の半減期は、10 時間以上経過した後の放射能の変化から求めることができる。
C 10 時間経過した時点では、X よりも Y の放射能(Bq)の方が大きい。
D 10 時間以上経過すると X と Y は放射平衡になる。
1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ
解答 1
解説
A 正:最初は 8×10^3 Bq、半減する4×10^3 Bq になるのに大体1時間のところを指しているので、Xの半減期は 2 時間を超えない。
B 正:全体の放射能は 1 時間経過で半分になっているため、親核種 X の10時間経過後は、親核種は減衰してほぼ 0 になるため娘核種の半減期を求めることができる。
C 正:10時間後はほぼ娘核種のみとなる。
D 誤:図より親核種Xと娘核種Yの放射能を合わせた値は経時的に減少しているため放射平衡は成立しない。
問10
1.0 MBq の 140Ba と過度平衡にある 140La の放射能(MBq)として最も近い値は次のうちどれか。ただし、140Ba の半減期は 12.7 日、140La の半減期は 1.68 日とする。
1 0.8
2 1.0
3 1.2
4 1.5
5 1.8
解答 3
解説
この場合、親核種の半減期が娘核種の半減期より十分長いため過渡平衡が成り立つため、N(La)/N(Ba) = λ(Ba)/[λ(La)-λ(Ba)] = T(La)/[T(Ba)-T(La)] が成り立ち、
N(La) = [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × N(Ba)
A(Ba) = [0.693/T(Ba)] × N(Ba) より、N(Ba) = [A(BA)・T(Ba)]/0.693
したがって A(La) = [0.693/T(La)] × N(La) = [0.693/T(La)] × [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × N(Ba) = [0.693/T(La)] × [T(La)/[T(Ba)-T(La)]] × [A(BA)・T(Ba)]/0.693 = [A(BA)・T(Ba)]/[T(Ba)-T(La)] = (1×10^6×12.7)/(12.7-1.68) = 1.2 MBq
問11
ハロゲン元素の同位体を生成する核反応として、正しいものの組み合わせはどれか。
A 16O(3He,p)
B 40Ar(d,α)
C 75As(α,pn)
D 20Ne(p,pn)
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 1
解説
ここは計算をしてハロゲン元素を覚えておけば解ける問題である。
問12
24Na を生成する核種として、正しいものの組み合わせはどれか。
A 23Na(n,γ)
B 24Mg(n,p)
C 27Al(n,α)
D 35Si(n,αn)
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 1
解説
ここも計算を間違えなければ解ける問題である。
問13
サイクロトロンを用いて半減期 20 分の放射性核種を製造する時、ターゲットを荷電粒子で 20 分間照射する場合に比較して、照射電流を 2 倍、照射時間を 40 分間とすると、何倍の放射性核種が製造されるか。次の値のうち最も近いものはどれか。
A 2.3
B 2.5
C 3.0
D 3.5
E 4.0
解答 3
解説
試料とする元素を t 分間照射して、得られる半減期 T 分の生成核の放射能 A(Bq) は次の式から導出できる。
A = fσN(1-e^(λt)) = fσN(1-e^((-ln2t)/T))
照射電流は照射粒子束密度に比例するので
A(20分) = 1・f × σ × N × [1 – (1/2)^(20/20)] = fσN/2
A(40分) = 2・f × σ × N × [1 – (1/2)^(40/20)] = (2fσN×3)/4
よって A(40分)/A(20分) = 3 となる。
問14
リンの同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A 30P は β+ 壊変して安定な 30Si になる。
B 31P はリンで唯一の安定同位体である。
C 32P は β- 壊変して安定な 32P になる。
D 32P の半減期は 33P の半減期より長い。
E 33P は β- 壊変して放射性の 33S になる。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 1
解説
リンの安定核種は 31P のみである。そのほかの核種については別紙の放射化学にまとめて記載している。
A 正:30P は β+ 壊変及び EC 壊変で 30Si となる。
B 正:31P は安定同位体である。
C 正:32P は β- 壊変して 32S(安定)となる。
D 誤:32P の半減期は 14.26 日、33P の半減期は 25.34日である。
E 誤:33P は β- 壊変して 33S(安定)となる。
問15
環境中の放射能に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A 14C は、大気中の 14N と宇宙線の(p,n)反応で生成する。
B 大気中の 3H は、主として 1H3HO として存在している。
C 大理石の方が花崗岩より表面線量率が高い。
D 海岸での大気中ラドン濃度は、海風より陸風の時に高くなる。
1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD
解答 5
解説
A 誤:14N(n,p)という反応で 14C が生成する。
B 正:3H は天然には大気上層の核反応で作られ、大気中の水素や雨水に混じる。大気中では 3H ガスや水蒸気(1H3HO)として存在している。
C 誤:大理石は石灰岩が変成してできた変成岩の一種である。石灰岩(石灰岩に含まれている放射性核種は 238U 系列と 232Th 系列であり平均して 20Bq/kg 放出される。)は他の岩石に比べて放射性物質が少ない。花崗岩(花崗岩に含まれている放射性核種は 238U 系列と 232Th 系列であり平均して 100Bq/kg 放出される。)が多く分布している地域は線量が高くなる。
D 正:ラドンは岩石・鉱物中のラジウムのα壊変によって生成し、大気中に放出されるため、海より放出は少ない。よって、陸風時に高くなる。
問16
希ガスに関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A 3He がトリチウムの β- 壊変で生成する。
B 40Ar が 40K の β- 壊変で生成する。
C 85Kr が 235U の熱中性子による核分裂で生成する。
D 220Rn が 224Rn の α 壊変で生成する。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 3
解説
A 正:3H は β- 放出体であり、β- 壊変により、3He を生成する。
B 誤:40K は β-、EC の分岐壊変を行い、40Ca(安定)と 40Ar(安定)にそれぞれ変換する。
C 正:235U の熱中性子による核分裂では 80 種類以上の核分裂片が生じ、その質量数はおよそ 72 ~ 160 である。85Kr も核分裂生成物の1つである。
D 正:220Rn(トロン)は天然に存在するトリウム系列に属し、224Ra の娘核種であり、α壊変により生成する。
問17
ウラン系列は 238U(原子番号92) で始まり 206Pb(原子番号82) で終わる。この間の α壊変と β-壊変の回数として正しい組み合わせは次のうちどれか。
α壊変 β壊変
1 6回 8回
2 6回 10回
3 8回 6回
4 8回 8回
5 8回 10回
解答 3
解説
α壊変が x 回、β- 壊変が y 回起こったとすると、質量が 32 減少しているので、-4x = -32。原子番号が 10 減っているので -2x + y= -10 となり、x = 8、y = 6 となる。
問18
同位体に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。ただし原子番号を Z、中性子数を N とする。
A Z と N の和が 5 である安定同位体は存在しない。
B 水素、リチウム、ホウ素、窒素では、Z と N がともに奇数の安定同位体が存在する。
C 安定同位体では Z と N がともに偶数のものが最も多い。
D Z が偶数で N が奇数の同位体が β- 壊変すると、Z も N もともに偶数の同位体になる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 1
解説
安定同位体を別紙の表に示す。
A 正:N+Z=5 は質量数なので、質量数5の安定同位体はない。
B 正:H(Z=1),(安定同位体の質量数 A=1,2)、Li(Z=3),(安定同位体の質量数 A=6,7)、B(Z=5),(安定同位体の質量数 A=10,11)、N(Z=7),(安定同位体の質量数 A=14,15)。これによりZ と N がともに奇数の安定同位体が存在することがわかる。
C 正:安定同位体は陽子と中性子の数がほぼ等しく、中でも、陽子と中性子の数が共に偶数であるものが最も多い。これはこのように覚えておいた方が良い。
D 誤:β- は原子番号が1増加するので、z が偶数の場合は +1 になると奇数になるため誤りとなる。
問19
放射性同位元素の測定に関する次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。
A 51Cr はGe検出器で測定できる。
B 3H は液体シンチレーション検出器で測定できる。
C 14C は BF3ガスカウンタで測定できる。
D 18F はBGO検出器で測定できる。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
A 正:Ge検出器はγ線用の検出器である。通常のGe検出器が測定できるγ線エネルギーの下限は約 50 keV であるが、広領域では数keV程度の低エネルギーX線まで測定可能である。ここで、 51Cr は軌道電子捕獲と低いエネルギー(0.32MeV)のγ線放射(9.92%)によって 51V(安定) となるため、放出するγ線を測定できる。
B 正:液体シンチレーションは低エネルギーβ線、α線を検出するため、3H は高感度で測定可能である。
C 誤:BF3カウンタは熱中性子に対して大きな断面積を持つ核反応を利用する検出器であり、中性子測定に用いられる。14C の β-線のエネルギーは非常に低いのでBF3カウンタでの測定はできない。
D 正:BGO はγ線測定用シンチレータの一つであり、実効的な原子番号が高く、比重が大きいので、小型でも高い検出検出効率を持つ。18F は陽電子放出核種であり、陽電子消滅反応による消滅光子をBGO検出器で測定できる。PET装置の検出器によく用いられる。
問20
次の操作により、放射性核種が沈殿する反応の組み合わせはどれか。
A [14C]炭酸ナトリウム溶液に塩化カルシウム溶液を加える。
B [35S]硫酸ナトリウム溶液に塩化バリウム溶液を加える。
C [90Sr]塩化ストロンチウム溶液に炭酸ナトリウム溶液を加える。
D [131I]ヨウ化ナトリウム溶液に硝酸銀溶液を加える。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説 下に反応式を示す。
A 正:Na2[14C]O3 + CaCl2 → Ca[14C]O3 ↓ + 2NaCl
B 正:Na2[35S]O4 + BaCl3 → Ba[35S]O4 ↓ + 2NaCl2
C 正:[90Sr]Cl2 + Na2CO3 → [90Sr]CO3 ↓ + 2NaCl
D 正:Na[131I] + AgNO3 → Ag[131I] ↓ + NaNO3
問21
64Cu、65Zn、110mAg を含む金属イオンの硝酸酸性溶液に HCl を加え、生成した沈殿 A をろ過する。残った溶液に硫化水素ガスを通し、生成した沈殿 B をろ過し、ろ液 C とする。A、B、C それぞれに主として含まれる核種の組み合わせとして正しいのは次のうちどれか
沈殿A 沈殿B ろ液C
1 65Zn 64Cu 110mAg
2 64Cu 110mAg 65Zn
3 64Cu 65Zn 110mAg
4 110mAg 64Cu 65Zn
5 110mAg 65Zn 64Cu
解答 4
解説 下の表に沈殿表を示す。
問22
次の操作のうち、放射性の気体が発生するものの組み合わせはどれか。
A [14C]NaHCO3 に硫酸を加える。
B [32P]Ca3(PO4)2 に硫酸を加える。
C [35S]FeS に硫酸を加える。
D [36Cl]NaCl に濃硫酸を加える。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 3
解説
下に反応式を示す。
A 正:NaH[14C]O3 + H2SO4 → NaHSO4 + H2O + [14C]O2 ↑
B 誤:Ca([32P]O4)2 + 2H2SO4 → Ca(H2[32P]O4)2 + 2CaSO4 これはリン鉱石と硫酸を反応させて過リン酸石灰を製造する方法である。
C 正:Fe[35S] + H2SO4 → FeSO4 + H2[35S] ↑ 硫化物のような弱酸塩に強酸を加えると弱酸の硫化水素が発生する。
D 正:Na[36Cl] + H2SO4 → NaHSO4 + H[36Cl] ↑
問23
半減期 14 日の放射性核種のある製品について、検定時の核種純度が 98.5% であり、不純物として半減期 25 日の核種だけを含むとき、この製品の検定時から 63 日後の核種純度(%)として最も近い値は次のうちどれか。
1 82
2 86
3 90
4 94
5 98
解答 4
解説
放射性核種純度:化学形とは関係なく着目する放射性核種の放射能がその物質の全放射能に占める割合。
全放射能を A とすると、着目する核種の放射能は 0.985A、不純物の放射能は 0.015A となる。それぞれの半減期は 14日と25日であるので、63日後に着目する核種の放射能は、
0.985A × (1/2)^(63/14) となる。また、不純物の放射能は、
0.015A × (1/2)^(63/25) となる。
よって、63日後の放射能は、0.985A × (1/2)^(63/14) + 0.015A × (1/2)^(63/25) となる。
よって求める核種純度は、
[0.985A × (1/2)^(63/14)]/[0.985A × (1/2)^(63/14) + 0.015A × (1/2)^(63/25)] = 0.943
したがって約 94%
問24
有機標識化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 有機化合物にリチウム化合物を混合して熱中性子照射することにより、トリチウム標識化合物を合成することができる。
B トリチウム化合物の水溶液は、冷凍して保存する。
C 非放射性の不純物の混入は、放射性核種純度を低下させる。
D 化学純度を上げていくと、比放射能は一定の値に近づく。
E 放射化学純度は、逆希釈法で求めることができる。。
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 3
解説
RIの貯蔵・保管に際して、非密封RIに対して第一に守るべきことは汚染に関する安全確保である。使用後貯蔵施設に保管する際には貯蔵容器表面に汚染がないことをスミア検査で確認する。放射性物質を直接入れる内容器のほかに万一も 場合に備えて気密性のよい外容器を用意する。外容器とは緩衝材や吸収剤を入れて内容器の転倒破損を防ぎ、万一破損しても溶液が外に漏れないようにする。放射線の遮蔽のためにX線、γ線に対しては鉛容器、β線に対してはプラスチック容器に入れて保管する。
また、RIの種類によっては貯蔵温度を調整する必要がある。3H、14C、35Sなどの低エネルギーのβ放出体の標識有機化合物はそれ自身の化学的安定性のほか自己放射線により分解が促進されやすいので低温で貯蔵する。
水溶液:2℃
ベンゼン溶液:5~10℃
溶液を凍結すると分解を促進するが液体窒素温度での凍結は分解を抑制する。
A 正:Li をターゲットとする場合、熱中性子のような低エネルギー中性子でも核反応を起こす。6Li(n,α)3H:6Li + n → 3H + 4He となる。
B 誤:3H 化合物は凍結すると分解が早いので、2℃ くらいで保管する。
C 誤:放射性核種純度は、化学形とは関係なく着目する放射性核種の放射能がその物質の全放射能に占める割合である。したがって、非放射能の不純物の混入は、放射性核種純度に関与しない。
D 正:化学純度を上げることで不純物が減少する。したがって、比放射能は一定の値に近づいていく。
E 正:放射化学的純度は、指定の化学形で存在する着目する放射性核種が、その物質全放射能に占める割合である。微量物質である標識化合物の放射化学的純度の検定には、各種のクロマトグラフィと逆希釈法の利用が適切である。
問25
試料中の成分 A を定量するため、放射性同位元素で標識した同じ化学形の化合物 A (比放射能100kBq/mg)を 10 mg を加え均一した。その後、A を分離して生成したところ、比放射能は 25 kBq/mg になった。試料中の成分 A の量(mg)は次のうちどれか。
1 20
2 30
3 40
4 60
5 80
解答 2
解説
同位体希釈分析法の基本形で RI によって定量分析をする手法である。定量する資料の重量 X、添加する同じ化学形の RI の重量 a、比放射能 S0 とすると次式の関係が成り立つ。S(a+X) = S0a この式より 100 × 10 = 25( 10 + X ) X = 30。
問26
熱中性子放射化分析で照射試料を入れる容器の材料として適しているものの組み合わせは、次のうちどれか。ただし、照射終了 2 時間後に容器ごと Ge検出器で測定するものとする。
A アルミニウム
B ポリエチレン
C ホウケイ酸ガラス
D ポリ塩化ビニル
E 石英ガラス
1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ
解答 2
解説
放射化分析:試料に中性子を照射して核反応を起こさせ、生成する放射性核種からの放射能特性及び放射能を計測・解析することで試料元素の定量を行う分析法。中性子照射する際に用いる容器は、不純物の量が少ないことが原則である。
A 正:アルミニウムは 27Al(100%)からなる。27Al(n,γ)28Al が生成する。しかし 28Al の半減期は 2.241 分と短いので、2時間後には検出されない。
B 正:ポリエチレンはエチレンの重合体で原子番号の小さい水素、炭素の化合物であり、放射化されない。ポリエチレンは機器中性子放射化分析(INAA)用試料用器材としてよく用いられるが、長時間照射による融解、ポリエチレンに含まれる不純物量に注意が必要である。
C 誤:ホウケイ酸ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)とホウ酸(B2O3)を混合したガラスである。照射容器に B や Li など中性子吸収に伴う核反応の発熱で試料が熔けたり容器が変形したりする。したがってホウケイ酸ガラスを用いることはできない。
D 誤:ポリ塩化ビニルは塩化ビニル(CH2=CHCl)の重合体である。塩素の同位体存在度は 35Cl が 75.77%、37Cl が 24.23% である。35Cl(n,γ)36Cl で 36Cl(半減期3.01×10^5 年)が生成し、35Cl(n,α)32P で 32P(半減期 14.26日)が生成し、 26Cl(n,p)35S で 35S(半減期 87.51日)が生成する。また、37Cl(n,γ)38Cl で、38Cl(半減期37.24分)が生成する。したがって、2時間後の測定では影響を及ぼす。
E 正:長時間照射の場合は、石英管が試料容器として最もよく利用されている。石英ガラスの成分は、二酸化ケイ素(SiO2)である。30Si の同位体存在度は 3% 。熱中性子に対する断面積は 0.1 barn である。30Si(n,γ)31Si によって得られる 31Si の半減期は 2.622時間である。
問27
アクチバブルトレーサーに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A トレーサーの検出に放射化分析が用いられる。
B 放射化断面積の大きい元素が適している。
C 自然界における存在量の少ない元素が適している。
D 魚類の回遊調査に利用された例がある。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 5
解説
一般に放射性核種は、トレーサーとして各方面に用いられるが、その放射能が対象物に影響を与えるおそれのある場合、アクチバブルトレーサーの利用が着目される。アクチバブルトレーサーの検出には、放射化分析が利用される。これには 放射化分析の感度が高く、対象物中に存在する元素により誤差を生じることがなく、かつ、化学的に挙動が類似してトレーサーの役割が果たせるという条件を備えた安定同位体が用いられる。アクチバブルトレーサーは魚の放流場の回遊状態の調査や地下水の活動調査などに利用されている。
A 正
B 正
C 正
D 正
問28
放射性同位元素の利用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A ガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ(ECD)で 63Ni の EC 壊変が利用される。
B 透過型厚さ計で、137Cs からのγ線が利用される。
C フィルムの厚さ計で、147Pm からのγ線が利用される。
D 蛍光 X 線分析装置で、241Am からのγ線が利用される。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 4
解説
別紙の放射化学の特性表に示す。
A 誤:63Ni ガスクロマトグラト用ECDは、放射性物質(63Ni)から出るによるガスの電離を利用している。
B 正:137Cs は元来 β- 放出体でありながら、γ線源として取り扱われる。137Cs 透過型厚さ計は 137Cs からのγ線を利用している。
C 正:147Pm 厚さ計は β-線の透過あるいは散乱作用を利用している。
D 正:低エネルギーγ線源は電子捕獲壊変に伴うX線を利用するものが多い。241Am は低エネルギーγ線源として蛍光X線分析装置などに用いられる。
問29
液体シンチレーションカウンタによる測定に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 液体シンチレータでは、蛍光物質を有機溶媒に溶かしてある。
B 水溶液の測定には、乳化シンチレータが用いられる。
C α壊変核種の測定には適さない。
D 4π測定では計数効率が大きい。
1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて
解答 2
解説
液体シンチレーションカウンタは、バイアルと呼ばれるガラスやプラスチック製の小ビンに測定試料を溶かし込んだシンチレータを入れて測定する。バイアル中のシンチレータから放出される光を光電子増倍管で受けて増幅、電気信号に変えて 測定する。
A 正:トルエン、混合キシレン、プソイドクメン、ジオキサンなどの溶媒に、PPOブチルPBD などの蛍光物質の溶質を溶かし込んだものが有機シンチレータである。
B 正:水溶性試料には界面活性剤を配合した乳化シンチレータが広く用いられる。
C 誤:液体シンチレータはα線、β線等の荷電粒子を測定できる。
D 正:内部線源測定であるから、幾何学的検出効率は 100% であり、β線測定の際に問題になる線源による自己吸収、後方散乱、検出器の窓による吸収などの問題が全て解決できる。
問30
放射線化学に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A LET が大きいほど、単位長さ当たりのスプール数は少なくなる。
B スプール内のラジカルは、不対電子を持つ。
C ラジカル捕捉剤としてメタノールが用いられる。
D 水溶液中では、水和電子が生成する。
1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD
解答 4
解説
A 誤:1個のスプールを作るに要する平均エネルギーでLETを割れば、単位距離内にできるスプールの数になる。したがって、LETが大きいことは単位距離あたりに多くのスプールができることである。
B 正:放射線照射によってスプールが形成され、イオン、ラジカル、励起分子などの活性化学種の集団が形成される。ラジカルは、不対電子を持つ原子、原子団分子である。
C 誤:ラジカル捕捉剤は、遊離基を捕捉して反応機構に変化を与え、この変化によって反応機構を解明する。NO、DPPH、O2、I2、H2S、オレフィン類などがある。
D 正:イオン化により生じた電子は、さらに高次のイオン化を起こしたり、親イオンを再結合したりして消滅する。水中では、水分子数個にゆるく束縛され水和電子を形成する。
中性子や荷電粒子の照射により起こる核反応についての記述
図は陽子数が 24 ~ 28、中性子数が 26 ~ 36 の核種を表している。太枠で囲まれているものは安定同位体で同位体存在度(%)が併記されている。そのほかのものは放射性同位体(RI)である。RI は安定同位体から核反応によって作られることが多い。
Ⅰ
この核図表では同位体が横に並び、縦には同中性子体が並んでいる。放射壊変において、60Co は β- 壊変して、 60Ni となり、57Co は EC 壊変して 57Fe になる。中性子捕獲反応によって生成する RI の種類は、照射する元素における安定同位体の分布に依存する。例えば単核種元素の Mn をターゲットとする(n,γ)反応では RI として 56Mn のみが生成するが、Cr をターゲットとすると複数の RI が同時に生成することがわかる。(n,γ) 反応では原子番号が 変わらないため、生成する RI には大量の担体が含まれる。そこで比放射能の大きな RI の製造には原子番号が変わる核反応を選択する。57Co は、(α,p) 反応で 54Fe から製造することもできるし、60Ni (p,α) 57Co 反応や 55Mn (α,2n) 57Co 反応を用いることもできる。これらの反応では、反応核に Co をターゲットから化学分離すると無担体の 57Co を製造することができる。
補足
Mn の同位体には 54Mn、55Mn、56Mn、57Mn が存在するが、安定同位体は 55Mn のみである。他には別紙の表に記載している。
Ⅱ
中性子や荷電粒子の照射によって生成する RI の放射能は nfσ(1-e^(-λt)) と表される。ここで、 n はターゲット核の数、f は照射粒子フルエンス率、σ は反応断面積(b)、λ は生成核の壊変定数、t は照射時間である。この(1-e^(-λt)) を飽和係数といい、例えば照射時間 t が半減期と等しいときには 0.5 となる。Fe を熱中性子照射すると、(n,γ)反応により 55Fe と 59Fe が同時に生成する。半減期に対して照射時間が短い場合には飽和係数が λt と近似できることから、熱中性子をフルエンス率 1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1) で 1 日照射した直後の Fe 中の 55Fe と 59Fe の放射能(A) の比 [A(55Fe)/A(59Fe)] を見積もると、約 1.5 となる。なお (n,γ) 反応断面積と生成核の半減期を表に示す。
ターゲット核 | 反応断面積 σ(b) | 生成核 | 半減期(日) |
---|---|---|---|
54Fe | 2.2 | 55Fe | 1000 |
58Fe | 1.3 | 59Fe | 45 |
解説
生成放射能の計算 A = f・N(0)・(1-e^(-λt)) = f・N(0)・(1-e^(-ln2・t/T))
ここで、t << T のとき、以下の近似ができる。
e^(-lnλt) ≒ 1 – λt
この 2 式より
A = f・N(0)・(1-(1-λt)) = f・N(0)・λt = f・N(0)・ln2(t/T) ・・・・① という式が成り立つ。
照射した直後の 55Fe 及び 59Fe の放射能は、それぞれ 1/1000 << 1、1/45 << 1 として ① の式より、ターゲット核の数を N(Fe) とすると(54Fe:5.4%、58Fe:0.3%)なので、 A(55Fe) = 1.0 × 10^12 × 2.2 × 10^(-24) × 0.058 × N(Fe) × ln2 × (1/1000)
A(59Fe) = 1.0 × 10^12 × 1.3 × 10^(-24) × 0.003 × N(Fe) × ln2 × (1/45)
よって、[A(55Fe)/A(59Fe)] = (2.2 × 0.0058/1000)/(1.3 × 0.003/45) = 1.47 ≒ 1.5 となる。
Ⅲ
速中性子照射では (n,p) 反応が利用できるため高比放射能の RI トレーサーを製造することができる。例えば Co からは 59Fe が得られる。速中性子照射後の Co ターゲットから 59Fe を化学的に分離する方法がいくつかある。まず照射後の Co ターゲットを希硝酸に溶解すると Co は +2 価、59Fe は +3 価となる。陽イオン交換樹脂充填カラムを使う方法では、0.5 mol/l 塩酸溶液中で Fe(3+) の方が Co(2+) より樹脂に吸着しやすいことを利用して、カラムに 59Fe(3+) を吸着させ Co と分離する。陰イオン交換樹脂を用いて分離する 方法では、0.5 mol/l 塩酸溶液中で Fe(3+) のみがクロロ錯体を形成する性質を利用して分離を行う。また 8 mol/l の塩酸溶液からの溶媒抽出では、 Fe だけを選択的にジイソプロピルエーテルに抽出することができる。
解説
陽イオン交換樹脂・・・陽イオンを吸着、自身の陽イオンを放出。特性として周期表の同一族では原子番号の増加するとともに、多価陽イオンほどに吸着能が高くなる。アルカリ金属イオンの吸着能はイオン半径が大きいほど小さくなる。
陰イオン交換樹脂・・・陰イオンを吸着、自身の陰イオンを放出。特性としてほとんど吸着・全く吸着しない元素として、Sc、Y、Ac、Tl(I)、Ni、Al がある。
吸着するものとして Fe(3+)、Co(2+)、Zn(2+) は塩化物イオンが存在すると FeCl(4-)、CoCl4(2-)、ZnCl4(2-) のクロロ錯体を形成する → 陰イオン交換樹脂に強く吸着する
クロロ錯体の形成の強さとして → Ni(2+) < Mn(2+) < Co(2+) < Cu(2+) < Fe(3+) < Zn(2+)
続いて Fe(3+) を含む 7.7 M から 8 M 塩酸溶液を分液漏斗に入れ、同容量のジイソプロピルエーテルを加えて振り混ぜて溶媒抽出すると、Fe(3+) は塩酸溶液中でクロロ錯体 HFeCl4 を作り、イオン会合して 100% 近くジイソプロピルエーテルに抽出される。
Ⅳ
59Fe の比放射能が 1.0 MBq/mg Fe の希塩酸溶液がある。これから 10 kBq を Fe 濃度が未知の水溶液 1.0 l に加えてよく撹拌して混合した。アンモニア水を加えて水酸化鉄を沈殿させ、その沈殿から酸化鉄を得た。この酸化鉄中の 59Fe の比放射能は 100 Bq/mg Fe であった。この実験から濃度未知の水溶液中の鉄の濃度は 0.1 g/l と見積もられる。
解説
これは直接希釈法なので計算式は 10 × 10^3 = 100(x+0.01) x = 99.99[mg Fe] ≒ 0.1[g Fe] 溶液は 1.0 l なので、0.1/1.0 = 0.1[g/l] となる。