私は診療放射線技師として働いて14年、胃X線検査に携わって12年です。その間もCT、MRI、アンギオ、一般撮影などなど多岐に渡り業務を行ってきましたが、胃X線検査は一番難しく、教えてもらわないとなかなか撮影できないものだと実感しました。

病院や健診施設によってはあまり教えられないところや、一人で業務を行い、どのように撮影し、どのような写真がいいものなのかわからないことが多々出てくると思います。

そこでこのブログでは、私が学んだ胃X線撮影・画像について洗いざらい書いていきたいと思います。

  • はじめに

胃がんは悪性腫瘍でも死亡率の高いがんである。しかし早期で発見できれば5年生存率は95%を超えるものとなっています。胃X線検査、内視鏡検査は胃がんによる死亡率減少効果が認められる唯一の検診法である。(厚生労働省「がん検診の有効性評価に関する研究班」)しかし、その撮影法は全国均一とは言えず、画質とともに施設間でのばらつきがあるのが実情である。

胃X線検査による一次検診の定着とさらなる普及には撮影法の標準化により質の高い画像を提供することが望まれる。

標準化の流れとしては既に2005年に日本消化器がん検診学会より「新・胃X線撮影法ガイドライン」が刊行され手技が普及していったが、それは最低限の写真であることは肝に命じて頂きたいと思います。

放射線技師が扱う画像には一般撮影、CT、MRI、超音波、RI、PET、胃X線などたくさんありますが、特に胃X線画像は撮影者の技術に依存する撮影の一つであると感じています。私自身胃X線写真は4つの分類に分けられると感じています。

画像が綺麗で、病変もきっちり描出できている画像。

これはいうまでもなく一番理想とされる形であります。

バリウムが腸の方に流れて見栄えは悪いが、きちんと病変部が描出されている画像。

バリウムが流れてダメだという方も中にはいらっしゃいますが、きちんと病変部を発見、撮影をしているため、良い画像である。

画像は綺麗だが、病変部が描出できていない画像。

これは胃X線撮影に慣れだしたぐらいに勘違いしがちな画像になります。実際私もそうでした。本来の目的は病変を見つけ出すことにあるのに、綺麗に写真を撮ろうとするあまり、本来の目的から外れた写真になり、勘違いな写真となりますので注意しなければなりません。

④  バリウムが流出し胃にバリウムが付着していない汚い画像かつ、病変を描出できていない画像。

これは一番最悪な画像です。健診施設、特にバス健診なんかで一番ありがちな画像です。早く撮影し、回すことを一番に考えた結果、何もわからない画像となり、結果的に異常なしで挙げられてしまいます。こんな画像を出すぐらいなら、血液検査や呼気検査などでピロリ菌の有無を調べた方がよっぽど有益なものが得られるため、このような画像は絶対に出さないように努力をするべきだと思っています。

 

胃X線検査に携わるからには①を目指してやっていかなければならないのですが、すぐにこのレベルにはなりません。順序立てて、かつ情熱を持ってやっていけば必ず報われると思っています。ここでは撮影方法、画像の見方、症例を通して私の全てをお教えできればなと思います。

そこでまず第一歩として撮影方法を覚えなければなりません。最初に教科書的な基準撮影について触れたいと思います。

      背臥位正面(鈎状胃)

標的部位は前庭部~胃体部後壁

 

背臥位第一斜位(鈎状胃)

 

標的部位は胃体部大彎よりの後壁~幽門部小彎よりの後壁

 

背臥位第二斜位(鈎状胃)

標的部位は胃体中部~下部小彎後壁と前庭部大彎後壁

 

腹臥位正面二重造影像

標的部位は前庭部~胃体中部前壁

 

腹臥位第二斜位二重造影像

標的部位は前庭部~胃体中部前壁小彎、大彎

 

右側臥位二重造影像

標的部位は穹隆部小彎~噴門部、線状分離線

Ò噴門部~胃体上部小彎へバリウムを流しながら撮影を行います。これにより線状分離線を描出し不整の有無を観察します。
   背臥位第二斜位振り分け撮影
   

  標的部位は胃体中部~上部小彎後壁

 

腹臥位立位正面二重造影像

標的部位は穹隆部前壁

 

背臥位立位正面二重造影像

標的部位は穹隆部後壁

これが一般的に撮影されている撮影になります。おそらく健診バスではこれよりも少ない枚数でこなしている施設もあるかと思います。これはあくまでも最低限の写真になります。胃がん検診の最終的な目的は、胃がん死亡率の減少ないし胃がんによる死亡リスクの低減を図ることであるため、胃の粘膜を全て観察、撮影することが本来の撮影だと言えます。

基本撮影だけで胃の粘膜全体を撮影できればいいのですが、それはなかなか難しいと考えています。そこで付着不良や描出が難しい部位はきちんとバリウムを付着させた上で追加撮影をすることが望ましいと考えます。

その部位とはまず幽門・前庭部後壁撮影です。幽門・前庭部後壁は背臥位正面で撮影出来るが、バリウムが溜まったり、付着不良だったりで観察されずに終わっていくことが多々あります

     ① 背臥位正面

①  幽門・前庭部後壁追加撮影

②   背臥位正面

②  幽門・前庭部後壁追加撮影

③   背臥位正面

③  幽門・前庭部後壁追加撮影

このように追加撮影するだけで幽門・前庭部後壁の見逃しを減らせることができます。では、なぜこのような撮影を追加した方がいいのかというと、このような症例もあるからです。

  ① 背臥位正面

この撮影ではバリウムの付着不良とハレーションが重なって幽門部〜前庭部がきちんと読影ができる写真にはなっていないかと思います。そこで幽門・前庭部後壁を意識して追加撮影を行うとこのような撮影ができます。

①  幽門・前庭部後壁追加撮影

このような所見が隠されているということです。こちらの病変・読み方に関しては随時追加して行きますので、まずは、撮影の重要性を発信して行きたいと思います。

続いて基準撮影では描出ができない胃体上部小彎後壁の追加撮影です。

撮影方法は寝台を水平の状態から右側臥位にして少し背臥位に戻すと描出されます。

胃体上部小彎後壁撮影

胃体上部小彎後壁に存在した症例

基準撮影だけでは見つけられない症例であります。

ここまでは鈎状胃の撮影法を示してきました。しかし、撮影を続けていくとこのような鈎状胃だけではないのが現状です。横胃や瀑状胃といった胃の向き・形をしているものもあります。

そこで続いては横胃の症例に対しての撮影法を示していきます。最大の違いは背臥位正面画像です。鈎状胃の背臥位正面画像は胃角がきちんと正面視しているが、

背臥位正面(鈎状胃)

横胃の場合の背臥位正面画像は次のような画像になります。

胃角が描出されず、鈎状胃での撮影でいう背臥位第二斜位画像となってしまうことがわかります。ここで横胃に対して、胃角を正面視するためには、背臥位ないし少し第一斜位の状態で上半身を持ち上げた状態で撮影を行うと次のような画像が描出されます。

教科書的には体の向きで表現されているものが多いが、あくまで観察しているのは胃の粘膜であるので、胃の向きを把握した上で撮影することが望ましいと考えます。あとは通常通り次のように撮影していければ問題ないと思います。

背臥位第一斜位

背臥位第二斜位(横胃では背臥位正面で撮影できる。)

腹臥位正面二重造影像

腹臥位正面第二斜位二重造影像

右側臥位二重造影像

胃体上部小彎後壁撮影

背臥位第二斜位振り分け像

腹臥位立位正面二重造影像

背臥位立位正面二重造影像

 

続いて横胃で問題になるのは幽門・前庭部後壁撮影です。横胃の場合幽門・前庭部後壁が撮影できていない場合が多々あります。その場合、前にもお話ししたように幽門・前庭部後壁に焦点を当てた撮影を行わなければなりません。

腹臥位正面第二斜位二重造影像まで普通に撮影を行い、右側臥位二重造影像を撮影する前に撮影することをおすすめします。撮影方法は腹臥位正面第二斜位二重造影像を撮影した後、そのまま腹臥位のまま寝台を立位の状態にしていきます。寝台を立位にした後に背臥位にし、少し第一斜位に胃角が見える状態をキープしたまま寝台を倒していきます。そして、幽門・前庭部に空気が入ったタイミングで撮影を行うと、幽門・前庭部後壁撮影が上手いことできるかと思います。

 

撮影ができるようになったら続いて行うことは透視下でバリウムの流れの変化を捉えることです。

被ばくの問題でよく撮影以外で透視は出さないようにと指導されたりすると思いますが、透視下でバリウムの流れの変化を捉えることが早期発見につながることが多々あります。撮影すると病変部として捉えられるものでも、透視下で見ると食物残渣だったりすることもあるので、教えられる先輩にもよりますが、自分に少し余裕が出てきたら、透視下で病変部を確認して頂けたらなと思います。

撮影をきちんとでき、透視下で確認できるようになったならば、次は存在診断ができるような画像を医師に提供できるがどうかです。

撮影中何かがあって写真を撮影してもその所見に再現性が取れなければ残渣なのか病変なのか説明できません。所見があったときにその所見がどこの部位にあって、どの体位で撮影すれば再現性がとれるのかを考えながら撮影しなければいい画像は撮影できません。

ここではどこに所見があって、どの体位で撮影すればいいのか症例を用いていきたいと思います。

症例1

 

病変部は胃体下部〜胃角部後壁に存在します。

 

再現性を描出するために薄層法で撮影を行います。

まずは存在診断を行うため、この病変がなんなのかは後ほどゆっくり解説していきます。

 

症例2

病変は胃体下部〜胃角部小彎にあります。

撮影体位は背臥位第二斜位もしくは右側臥位から背臥位に戻したタイミングで撮影を行うと良い。

 

このようにスクリーニング検査の中できちんと撮影でき、透視下で発見し、存在診断ができるような再現性のある画像を提供できるようになったならば、次に進むべき道は、質的診断ができる画像を提供できるかになります。健診のバリウム検査ではそこまでは求められないと思いますが、実際の現場では医師に胃カメラでの精密検査を進める際に、根拠のある助言を医師に伝えることができれば、精密検査の実施が上昇し、結果的に胃がんによる死亡率を下げ、QOLもよくなると思います。そこで次に質的診断にはどのような画像と、どのような読み方が必要かを提示していきたいと思います。

質的診断に必要なものは、組織型・病変部の範囲・病変の深達度の3つです。

はじめに、ž胃癌とは粘膜の上皮にできる悪性腫瘍のことをいいます。我々が行う胃X線検査は胃の形態はもちろんのこと粘膜上皮の変化を画像としてとらえていくことなので、胃の粘膜構造とその変化について知ることが大事だと考え胃の基本である粘膜構造とその変化ついてお話したいと思います。
ž胃の粘膜構造は上から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という構造を呈しています。

病理組織画像で表すと次のようになります。

胃粘膜の変化

ž胃粘膜上皮は物理的、化学的な刺激を常に受けているため、細胞更新機構が発達しています。何らかの傷害があっても元通りに再生する能力をもっていますが、粘膜への傷害が再生能を上回ると、胃粘膜は萎縮をし始めます。
 炎症・再生・剥離を繰り返す
    胃固有粘膜  →  萎縮(粘膜を構成する腺管密度が低下し、粘膜の丈が低くなる)
ž
ž萎縮が始まると量的な変化に加えて質的な変化も認められます。それが腸上皮化生と幽門腺化生です。

腸上皮化生 →胃粘膜には本来存在しないはずの腸型の細胞が出現することをいう。

幽門腺化生 →胃底腺粘膜が傷害されると本来の胃底腺細胞が消失し粘液細胞に置き換わることをいう。

この萎縮、腸上皮化生の大きな原因はヘリコバクター・ピロリ感染によるものだといわれています。50歳以上の日本人の70%以上が感染していると報告されています。Hpが胃炎の主たる原因であることが判明した当初、Hp感染と分化型癌発生との関連が強調されてきたが、現在では未分化型癌もほとんどがHp胃炎のある粘膜に発生することが分かってきています。ž従ってヘリコバクター・ピロリに感染した胃は注意深く観察、撮影をしていかなければなりません。ヘリコバクター・ピロリに感染しているかどうかの検査法には血液検査、ペプシノーゲン法、尿素呼気テスト、内視鏡検査、胃X線検査があります。我々が扱う胃X線ではどのような画像所見があればヘリコバクター・ピロリ感染が疑われるのでしょうか?

žヘリコバクター・ピロリ陽性の胃X線画像の特徴的所見をあげていきます。

まずは大彎ヒダ形、走行で判断していきます。

正常型(Hp-)・・・背が低い、立ち上がりがなだらか、表面・辺縁が平滑、やわらかい・伸展して細くなる、まっすぐである。非萎縮画像を下に示す。

 

異常型(Hp+)・・・太い(発砲酸5gで4mm以上)、背が高い、立ち上がりが急峻、表面・辺縁が粗い、硬い・伸展不良、蛇行・屈曲ある。

 

胃粘膜表面像

ž次に胃の粘膜表面像の観察です。

Hp陰性の胃粘膜模様は平滑で無構造や、微細で均一な表面模様がみえる画像です。

Hp陽性の胃粘膜模様は敷石様、顆粒様の粗い画像としてみえます。

実際の画像を提示します。

萎縮画像

 

非萎縮画像

žこのように胃X線検査でHp感染胃をみつける方法は

1 胃粘膜の表面像 2 ひだの形状 3 ひだの分布 の3つを組み合わせて判定していきます。

胃粘膜表面像が平滑、無構造型、ひだの形が正常型のものをHp陰性胃と判断します。

胃粘膜表面が敷石状、顆粒様構造型、ひだの形が異常型のものをHp陽性と判断します。

 

胃粘膜は生来噴門腺粘膜、胃底腺粘膜および幽門腺粘膜の三種類の固有粘膜から成り立っているが、時間とともにピロリ菌の感染、物理的、化学的刺激、加齢などの影響により幽門腺粘膜領域から胃底腺粘膜領域に向かって腸上皮化生を伴う粘膜の萎縮性変化が広がっていくことが知られている。粘膜の萎縮はほとんど常に腸上皮化生を伴う。

中村によれば胃固有粘膜から発生する癌は腺管構造の形成に乏しい未分化型癌になり、腸上皮化生粘膜から発生する癌は腺管構造を伴う分化型癌に発育するという。

胃固有粘膜      →      腸上皮化生

↓                   ↓

 

未分化型癌      →       分化型癌

腸上皮化生

腺管構造が乏しいか形成しない   腺管構造を形成

 

このように背景粘膜を知ることで組織型を予測していくことができる。ここで胃癌の組織型分類を下に示す。

胃癌の組織型分類(悪性上皮性腫瘍組織型)

分化型

乳頭腺癌 papillary adenocarcinoma (pap)

管状腺癌 tubular adenocarcinoma (tub)

高分化型(tub1)

中分化型(tub2)

未分化型

低分化腺癌 poorly differentiated adenocarcinoma

充実型(por1)

非充実型(por2)

印環細胞癌 signet-ring cell carcinoma  (sig)

粘液癌 mucinous  adenocarcinoma  (muc)

 

分化型癌と未分化型癌の発生様式

 

参考

1.組織型
分化型(tub1,2,pap) 未分化型(por1,2,sig,muc)
・胃の腸上皮化生粘膜 ・胃固有粘膜(幽門線、胃底線)
・早期癌の陥凹型と隆起型 ・早期癌の大部分が陥凹型
 (隆起型であれば分化型) ・陥凹辺縁は明瞭、なめらか
・陥凹辺縁は不明瞭、鋸歯状 ・陥凹面は粗大結節状
・陥凹面は平滑 ・陥凹境界が明瞭で断崖状、

蚕食像

・陥凹面が比較的平滑 ・大きく外に凸
・陥凹境界が微細で棘状、星芒状 ・辺縁隆起はない
・小さく内に凸(ギザギザ) ・カメラでは褐色調、白色調
・辺縁に顆粒状隆起
・カメラでの色調は発赤調
2.深達度 「SM」以深を示す所見
1) 壁肥厚所見
 ・陥凹内のSMT様隆起
 ・陥凹辺縁の隆起
 ・粘膜ひだ先端の肥大・融合
 ・陥凹周囲の周堤形成
2) 壁伸展不良、壁硬化所見
 ・側面像における胃辺縁の変形
 ・集中する粘膜ひだの走行変形やひだ間の

狭小化

マクロ所見による陥凹型癌の深達度診断

分化型 未分化型
M癌〜SM微小浸潤 壁変形 なし なし
陥凹表面 胃小区模様が保たれる インゼルが保たれる
陥凹辺縁 蚕食像が保たれる 同左
集中ヒダの所見 蚕食像を伴うひだ先端の途絶、段差形成 同左
ひだ先端のやせ、先細り 同左
ひだが陥凹内部まで流入 同左
SM深部浸潤癌 壁変形 あり あり
陥凹表面 胃小区模様の癒合、粗大化 インゼル(再生粘膜)の消失
胃小区模様の消失、びらん、潰瘍形成 陥凹表面の無構造化
陥凹辺縁 蚕食像の消失、粘膜下腫瘍様辺縁 同左
集中ヒダの所見 隆起の形成 同左
ひだ先端の棍棒状腫大 同左
ひだの融合 同左

蚕食像とは癌の辺縁の細かい不整を表す用語で癌組織が粘膜内を非常に不規則に浸潤した結果生じるマクロ所見。

 

これを踏まえた上で、健診で病変部を発見したり、異変を感じた時にどのような画像を提出したら医師に対して根拠を示せるのかを症例を用いて提示していきたいと思います。

初心者だったり、どのように所見を書けば分からない方に参考までに貼っておきますのでぜひ臨床の現場でご活用ください。

初めは存在診断からの精密検査をしていただきたい方への画像のアプローチの仕方を行なって頂いた後は、バリウムでの質的診断の行い方を続いて解説していきたいと思いますので、まず始めの方の症例は、見つけ方から精密検査への移行についての解説を行なっていきます。

症例1

 

健診でこの様な画像が出てきた時にどこに病変があるかを薄層法などで再現性を確認します。

 

場所は胃体上部前壁に周囲の粘膜とは違う陰影が見られます。まず病変部を見つけたら

①病変部は隆起なのか陥凹なのか。

②陥凹底・表面性状。

③陥凹境界はどうなのか。

④空気量を調整して硬さがどのようになっているのか。(健診の撮影では空気量の調整は難しい)

⑤陥凹周囲の粘膜異常・粘膜ヒダの性状。

こちらの撮影は、まず、胃体上部前壁に病変があるので、再現性を出すために寝台を水平にしローリングを行います。その後寝台を立てていくことでバリウムが徐々に流れていきます。タイミングを見計らって撮影を行います。胃体上部なので少量のバリウムを追加で飲んでもらうとなお綺麗に描出されます。

①陥凹を呈し、大きさは10 ~ 20 mm。

②陥凹面は粗大結節状

③陥凹辺縁は追っていける。

⑤陥凹周囲はアレア像を示しているが、ヒダ内部に病変は存在しているがヒダ先端は中断している。

このことから悪性の可能性が高いということになり、精密検査にまわしたほうが良いという見解が得られます。実際のカメラ画像を下記に示します。

生検の結果 未分化型 sig が検出されました。健診ではまず、悪性なのか良性なのかを診断できるような画像を提供することが重要である。続いて範囲診断と深達度診断を行っていきます。これは精密バリウム検査と精密内視鏡両方で診断していきます。とても重要で外科的治療になるか内視鏡的治療になるかの重要な判断材料になるからです。

症例2

 

病変部位は胃体中部小彎後壁にあります。

撮影方法は背臥位第二斜位振り分けと右側臥位撮影です。

隆起性病変を見つけたらまず

①隆起の辺縁はどうなっているのか。

②隆起の面はどうなっているのか。

③隆起の高さはどのくらいか。

④空気量を調整して硬さがどのようになっているのか。(健診の撮影では空気量の調整は難しい)

⑤隆起周囲の粘膜はどのようになっているか。

振り分け画像から隆起性病変だと分かる。隆起の辺縁は明瞭なので、上皮性の病変だということが分かる。隆起の表面は大小不同の結節影を示している。この時点で悪性の可能性が高いことになる。高さは病変部の側面像を撮影しなければならない。

隆起性病変での深達度診断で重要なのは高さであります。一般的に2cm以上で無茎性、広基性の場合や腫瘍表面に陥凹面やくずれ像がある場合にはSM浸潤を疑う。カメラの画像も示す。

また隆起性病変の深達度の所見の捉え方でSM浸潤を疑うべき所見とは

①粘膜化腫瘍状に立ち上がる無茎性

②周囲ひだの引き込みがある

③隆起の中に陥凹が存在する場合やその陥凹内にくずれがある場合

④隆起表面の胃小区様構造が消失し、平滑化している

今回は病理結果で 分化型  tub であることが分かった。健診ではまず、悪性なのか良性なのかを診断できるような画像を提供することが重要である。続いて範囲診断と深達度診断を行っていきます。これは精密バリウム検査と精密内視鏡両方で診断していきます。とても重要で外科的治療になるか内視鏡的治療になるかの重要な判断材料になるからです。

症例3

この画像から病変を見つけてみよう。

 

 

病変は胃体下部小彎前壁〜後壁に存在する。撮影方法は少し頭低位の状態での背臥位第二斜位振り分けと腹臥位第二斜位で撮影を行いました。

①隆起の境界は追っていけ、芋虫状を呈している。

②隆起の面は顆粒状、結節状を呈している。

③隆起周囲は萎縮性粘膜を呈しており悪性の可能性が高いことがわかります。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検の結果分化型 tub が検出されました。

症例4

この一枚から異変を感じよう。

病変部は胃体上部小彎後壁にあります。

胃体上部小彎後壁に大小不同の顆粒状陰影が存在します。大きさは15mm前後。陥凹や隆起の境界は不明だが、粘膜の変化から上皮性の変化だということは分かる。このような所見を捉えられる画像を提供できれば健診では十分だと思います。なるべき短時間で異常を発見し、的確に病変部を描出できるようになるまではかなりの時間がかかると思いますが、目標を持ってやっていけばできるかと思います。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 分化型 tubが検出された。

症例 5

病変部を指摘してみよう。

 

病変部は前庭部前壁に存在します。

 

病変部の粘膜上皮は大小不同の顆粒状陰影があり、明らかに周りの粘膜とは違うことがわかります。しかし、陥凹面や隆起は指摘できず、境界も不明瞭であります。未分化型癌を疑った場合、陥凹面があり、境界は明瞭に描出される傾向がありますが、どちらも見受けられません。バリウム検査上で異常を指摘できたならば、まず内視鏡をやることをお勧めします。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検結果 マルトリンパ腫であることが分かった。

症例 6

病変部を指摘してみよう。

 

横胃なので病変部位が分かりにくいが、立位圧迫撮影により前庭部後壁にあることがわかる。このような横胃では振り分けが難しい場合、形態がわかるような撮影を試みなければならない。

圧迫撮影から陥凹を呈していることがわかる。陥凹の形状は不整形、陥凹の境界は棘状を示している。ヒダは正常に見える。これにより悪性の可能性が高いことが分かり、精密検査にまわすことが望ましい。

次に内視鏡画像を提示する。

生検の結果 分化型 pap が検出された。

症例7

このような画像は健診ではよく見られるのでよく見ておいたほうが良い症例です。

 

病変部位は胃角部小彎後壁にあります。

 

これだけバリウムも付着しているが、明確な陥凹も隆起も指摘できません。では、どこで異変に気づかなければならないのかというと、胃角部小彎の辺縁が若干直線化しているのが分かるかと思います。胃X線画像ではこのような変化であるが、内視鏡画像を見てみると上皮の変化がはっきりと見ることができます。

 

生検結果は 未分化型 sig が検出された。

最近はピロリ菌の除菌も保険適用されたことにより、ピロリ菌の除菌をされる方が多くなっています。除菌後の胃の粘膜上皮は変化しにくく、逆に粘膜下にがん細胞が潜り込んでいく傾向があります。バリウムの検査は胃の上皮の変化を捉える検査ですが、このような除菌後の胃を検査する際は、粘膜上皮だけでなく、胃の辺縁をしっかり確認しなければなりません。

症例8

病変部位を探してみよう。

病変部位は穹窿部前壁にあります。

バリウムが溜まっているので、陥凹性病変であることが分かります。陥凹内部は円形だが一部棘状化しており、陥凹内部は平坦に見える。陥凹周囲の粘膜には異常は見られない。

このことにより、陥凹内部のみ悪性を疑うので、精密検査にまわす必要があると考えます。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検結果 分化型(tub) が検出されました。

症例9

病変部位はどこか見つけよう。

 

病変部は胃角部後壁大彎にあります。

胃角部後壁大彎に大きさ 20mm 程度の陥凹性病変が存在します。陥凹内部は無構造、陥凹の形状は不整形を示している。悪性である可能性があるので精密検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 未分化型(por)が検出されました。

 

症例10

病変部を探してみよう

病変部は胃体下部小彎に存在します。

胃体下部小彎前壁に周囲の粘膜上皮とは違う大小不同の顆粒状陰影が存在します。はっきりした陥凹や隆起は見当たらない。ヒダの集中なども見当たらないが、明らかに粘膜不整があるので、バリウム検査だけでなく内視鏡検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像を提示します。

生検の結果 アデノーマ(腺腫) が検出された。

ここまでは存在診断からの精密検査への移行の仕方を行なってきました。

続いて、精密を行なった後の胃X線画像・内視鏡画像・インジゴカルミン散布画像・病理画像のマクロ像・ミクロ像を提示したいと思います。

これは実際に症例発表した時のものです。

*背景は萎縮性粘膜

*胃体中部小彎後壁側の陥凹性病変

*内部は平滑、辺縁は棘状を呈す

*陥凹周囲には顆粒を認め、明らかな側面変形を認めない

*空気量を増やした画像で病変部は大きく広がりを呈す。

上記の読影より0-Ⅱc病変、分化型癌 進達度はmと読影しました。

しかし、実際の病理結果は tub2>tub1 > Por1, sm2(粘膜筋板下1000μm) 分化型主体の中に未分化型も混合している癌でありました。深達度もsm2 まで浸潤していました。

このように精密検査を行い、病理標本であるマクロ像、ミクロ像を見て検証することで、バリウムによる発見も進歩していくんではないかと考えています。

症例10

ここから症例に戻りたいと思います。

こちらの画像で病変部を探してみよう。

病変部位は胃角部前壁に微小な陥凹性病変が存在します。

陥凹形状は不整形を示し、陥凹境界は棘状を示している。陥凹内部は微小な顆粒を呈しているように見える。このことから悪性の可能性が高いため精密検査にまわす必要がある。

続いて内視鏡画像も提示します。

生検の結果 分化型(tub)と未分化型(sig) の混在型の成分が検出された。

 

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